あらすじ
北海道へ嫁いだもも(土屋太鳳)のために新しい童話を書き上げ、東京の出版社へ持ち込んだはな(吉高由里子)。さっそく読んでもらおうとするが、梶原(藤本隆宏)は忙しそうで取りつく島もない。そうこうしていると売れっ子作家になった宇田川満代(山田真歩)がやってきて、はなは鼻であしらわれてしまう。醍醐(高梨臨)から「明日、出直した方がいい」と言われ、はなは肩を落としながら、かよ(黒木華)の部屋へ泊まりに行く。
60回ネタバレ
向学館
はな「よし。 こぴっと売り込むだ。」
<はなは 書き上げた新作を かつて働いた事のある出版社に 持ち込む事にしました。>
梶原「あれ? 安東君じゃない?」
はな「梶原さん! ごきげんよう。」
梶原「どうしたの?」
はな「あっ あの 新しい物語を 書いたので 読んで頂けたら…。」
梶原「さっきの書類なんだけどさ まとめて 机の上に置いといて。」
「分かりました。」
はな「お忙しいですか?」
梶原「これから 打ち合わせなんだ。 とにかく 中に入ってて。」
宇田川「ちょっと邪魔。 どいて。」
はな「あっ すいません。 てっ!」
梶原「宇田川先生 お待ちしてました。 こちらへ。」
須藤「宇田川先生 さあ どうぞ こちらへ。」
<どうした はな。 こぴっと 売り込むんじゃなかったの?>
梶原「いや~ 面白いですね。」
回想
(拍手)
宇田川「売れっ子の小説家に すぐに なってみせます。」
回想終了
<はなと一緒に 児童の友賞を 受賞した宇田川満代は あの言葉どおり 人気作家になっていました。 それに引き換え…。>
宇田川「あら? どっかで見たような 顔だと思ったら 『みみずの女王』の?」
梶原「そうです。 一緒に 児童の友賞を受賞した安東君です。 ちょっと ご挨拶しなさい。」
はな「はい。 どうも ご無沙汰しております。」
梶原「彼女も新作を書いたそうです。」
宇田川「ふ~ん。 あなた もう書くのは やめて 田舎で教師やるとか 言ってなかった?」
はな「ええ。 でも…。」
宇田川「ちょっと見せて。」
はな「あっ いえ…。」
宇田川「『たんぽぽの目』。 相変わらず ぬるい作文みたいな題ね。 こっちは 命懸けで書いてんのよ。 田舎教師の趣味と違うの。」
<これでは いつ読んでもらえるか 分かりません。>
醍醐「はなさん お久しぶり。」
はな「醍醐さん!」
醍醐「編集長 今日は ずっと打ち合わせだから 明日 出直した方がいいわ。 必ず読ませるから。」
はな「うん。」
かよ宅
かよ「どうぞ。」
はな「お邪魔します。」
かよ「ちっくいけど ここが おらのお城。」
はな「うん。 洋服店の旦那さんも女将さんも いい人で よかったね。」
かよ「お姉やん 座ってくりょう。」
はな「ありがとう。 へえ~。」
はな「かよに話したい事が いっぱいあるさ。 手紙に書ききれんかった事も たくさんあっただよ。」
かよ「おら いっとう びっくりしたのは ももの事じゃん。 あの子が こんなに早く お嫁に行くとはね。 ほれも 北海道なんて。」
はな「おら まだ納得できん事がある。 ももは 朝市の事が好きだったのに…。 もも こぴっと 朝市に気持ちを伝えただよ。 ほれなのに…。」
かよ「朝市の方から断っただね。」
はな「うん…。」
かよ「ほれで ももは 北海道なんて 遠い所に お嫁に行っただけ。」
はな「おら 朝市の事が許せなくて…。 もも 一生分の勇気を振り絞って 朝市の気持ちを伝えただと思う。 ほれを断るなんて 男の風上にも置けねえ。」
かよ「お姉やん… 何で 朝市が ももの事断ったか 本当に分からんの?」
はな「分からんから怒ってるだよ。 もも あんなに いい子なのに。」
かよ「お姉やんは 誰かを 本気で好きになった事ねえの? 本当に好きになったら ほかの人と取り替えなんか 利かねえさ。 朝市が本当に好きなのは…。 きっと ほういう 取り替えの利かねえ相手なんだよ。」
はな「かよ…。 知らんうちに大人になっただね。」
かよ「お姉やんは ちっとも変わらんね。」
はな「てっ。 ほんな…。」
<確かに 3人姉妹の中で 恋愛問題に一番疎いのは はなかもしれません。」
安東家
居間
ふじ「静かじゃんね。」
周造「そうさな…。」
リン「やだよ~。 ここんちは お通夜みてえじゃん。」
ふじ「リンさん おいでんなって。」
リン「はなちゃん 東京行っただとう?」
ふじ「うん。 自分の書えたもんが 本になるかどうか 見てもらいに行っただよ。」
リン「本当に小説家になる気ずらか。 困ったねえ…。」
周造「何で おまんが困るでえ?」
リン「うちの朝市だけんど 縁談があっても 断ってばっかしだから おかしいと思って おら こぴっと考えただ。 『ひょっとしたら 心に決めた人がいるずらか』って。 『ほりゃあ はなちゃんじゃねえか』って!」
ふじ「リンさん おかあのくせに 今っ更 気が付いただけ。」
周造「そうさな。」
リン「てっ! やっぱし ほうけ! 何で 2人とも 言ってくれなんだでえ! やっぱし ほうけ!」
かよ宅
はな「勢いで 出版社に持ち込んでみたけんど 宇田川満代さんに会って 圧倒された。 小説一本でやってく人は やっぱり違うさ。」
かよ「本当に小説家になりてえなら 何だって できるはずじゃん。 お姉やんが本当に本気なら。」
はな「かよの言うとおりかもしれねえ。 本当は 自信がないの。 うん。 かよは 何でも自分で決めて いっつも前に進んで偉いじゃんね。」
かよ「おやすみ!」
はな「おやすみ。」
向学館
醍醐「編集長 いらっしゃいました。」
梶原「その辺に座ってて。」
はな「はあ…。」
梶原「『君は 小説家になるには 普通すぎる』と言ったよね。」
はな「はい。 諦めた方がいいと言われました。」
梶原「君の新作は ひどく普通だ。」
はな「平凡すぎる私が 本を出したいなんて やっぱり無理ですよね。 分かりました。 諦めます。 お時間とらせて 申し訳ありませんでした。」
醍醐「はなさん…。」
梶原「安東君。」
はな「あっ あっ 大丈夫です! 慰めとか そういうのは 一切いりませんから。 これで こぴっと諦めがつきました。 ありがとうございました! ごきげんよう。 さようなら。」
梶原「話は 最後まで聞きたまえ。 この作品は 何気ない ありふれた日常を切り取ってる。 ささやかな暮らしの断片に 光を当て 奇をてらったところが 少しもない。 そこが 実にいい。」
はな「てっ…。」
梶原「君は 平凡さを逆手に取って すばらしい作品を書き上げた。 洗練された平凡。 それは 直ちに非凡さに通じるものだ。 是非 出版させてくれ。」
はな「本にして頂けるんですか?」
梶原「よろしく。」
醍醐「おめでとう はなさん! …じゃなかった。 安東花子先生 おめでとう!」
<はなは ふわふわ どこかへ 飛んでいきそうな気分でした。 ついに 花子の名前で 本が出版されるのです。>
教会
図書室
<そのころ 朝市は…。>
回想
もも「朝市さんも こぴっと伝えんきゃ駄目だよ。」
回想終了
朝市「よし。」
<朝市は 決意していました。 はなが東京から帰ってきたら 今度こそ 気持ちを打ち明けようと。>
朝市「安東はな様。 堅っ苦しいな…。 はな。 おら ずっと はなの事が好きだっただ。 結婚してくりょう。」
向学館
はな「今度こそ 安東花子の名前で 出して頂けるんですよね。」
梶原「もちろん! ただし 出版社は ここじゃない。」
はな「えっ?」
梶原「実は 近々 出版社を作る事になったんだ。」
醍醐「私も 編集長についていくの。」
はな「醍醐さんも?」
梶原「この『赤い鳥』のような 児童向けの本を作りたいと 思ってる。 独立後の第1冊目として 君の あの話を出版したいと 思うんだが どうかな?」
はな「ありがとうございます!」
梶原「もし 君が 本気で 執筆を続けていく気があるなら 東京に来ないか? 新しい会社で 一緒に働いてほしい。 きっと いろんな出会いが あるだろうし 君にとっても いい勉強になると思う。」
醍醐「はなさん! 一緒に頑張りましょう。」
はな「てっ…。」
<この続きは また来週。 ごきげんよう。 さようなら。>