ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第62回「グッバイ!はな先生」【第11週】

あらすじ

はな(吉高由里子)がリン(松本明子)に連れられ家に駆けつけると、ふじ(室井滋)が見知らぬ女・サダ(霧島れいか)と対じしていた。サダは、かつて木賃宿で吉平(伊原剛志)と夫婦のように暮らし、一緒になると約束したから迎えに来た、と話す。ふじは「うちの人に限ってそんなことはあるはずない」と反論するが、サダは決定的な“証拠”を指し示す。周造(石橋蓮司)はじめ一同が絶句する中、吉平が帰って来る…。

62ネタバレ

教会

図書室

朝市「おら…。 ずっと はなの事…。」

リン「はなちゃん!」

朝市「てっ! おかあ。」

リン「ふじちゃんが… ふじちゃんが!」

はな「てっ。 おかあが どうしたでえ!」

朝市「何か あっただけ?」

リン「とにかく大変だ! 早く来てくれちゃ! 早く 早く!」

安東家

居間

はな「おかあ!」

はな「お客さん?」

周造「そうさな…。」

はな「どなた?」

ふじ「おとうの女じゃん。」

<さて おとうの女は ふじに何を言いに来たのでしょう。>

はな「どうぞ。」

サダ「お母さんと違って 気が利くのね はなさん。」

はな「何で 私の名前を ご存じなんですか?」

サダ「吉平さんが いつも自慢してたんですよ。 娘のはなは 東京の女学校を出て 英語もしゃべれるって。」

はな「あの… うちの父とは どこで知り合ったですか?」

サダ「新潟で知り合って しばらく一緒に過ごしました。」

はな「あ… あの… 『一緒に』というのは?」

サダ「まるで夫婦のように。」

リン 周造「てっ!」

サダ「吉平さんは 新潟を去る時 こう言いました。 『必ず サダさんを 迎えに来るから』って。」

はな「父がですか!?」

サダ「ええ。 こうも言いました。 『山梨に置いてきた古女房とは 別れるから 一緒になろう』と。」

ふじ「てっ…。」

リン「落ち着いて。」

サダ「それから 私 ずっと待ってたんですけど 寒くなると ぬくもりが恋しくて…。」

はな「ぬ… ぬくもり?」

サダ「ええ。 お嬢さんの前でなんですけど 吉平さんのぬくもりが 恋しくなって こっちに迎えに来ちゃいました。」

ふじ「ほんな話 うちの人から いっさら聞いてねえです。 人違いじゃねえですか? ほんな… うちの人に限って ほんな事…。 絶対に信じられんねえ。」

リン「ほうだよ! 吉平さんは 肝心な時にゃ いっつも うちにいねえし 4年間も 家族ほっぽらして 音沙汰なかったし… いろいろ問題のある 婿殿だけんど!」

はな「おばさん…。」

リン「ふんだけんど! ふじちゃんの事を 裏切るようなこんだけは するはずねえ!」

周造「そうさな。」

サダ「でも 確かに 吉平さんは そう言ったんです。 このくしも 吉平さんがくれました。 『私に よく似合う』って。 『このくしには 俺の気持ちが籠もってる』って。」

リン「ああ…。」

はな「おかあ!」

サダ「それにしても 吉平さん遅いわね。 よっぽど このうち 居心地が悪いのかしら。 そういえば ふじさんの話もしてくれたっけ。」

はな「おとう おかあの事 何て言ってたですか!?」

サダ「違いますよ。 あのふじさん。 甲府から見えるのは 裏富士で 吉平さんの生まれた故郷の静岡から 見えるのが 表富士だって 教えてくれました。 『いつか お前には 表側の富士山を見せてやる』って。」

周造「バカっちょが!」

はな「わあっ!」

周造「こっちが表に決まってるら!」

朝市「周造じぃやん 落ち着いてくりょう。」

周造「帰ってくりょう。 二度と来んでくりょう!」

サダ「また来ます。」

吉平「あれ? サダさん!」

サダ「吉平さん!」

吉平「どうしたんじゃ?」

サダ「どうしたって… はるばる新潟から会いに来たに 決まってるじゃない。」

はな「おとう…。」

サダ「じゃあ 吉平さん また出直すわ。」

吉平「あれ? サダちゃん もう帰るだけ?」

はな「おとう!」

吉平「おお はな。 帰ったぞ。」

はな「『帰ったぞ』じゃねえら!」

居間

吉平「帰ったぞ~! みんな どうしたでえ?」

はな「おとう… さっきのサダさんって人 何なの?」

吉平「ああ 新潟で しばらく 同じ木賃宿に泊まってただけんど。」

リン「ほれだけじゃねえら!」

はな「おとう! 本当の事言って。」

吉平「(小声で)サダさん なにょう言ったでえ?」

朝市「おじさんと約束したって…。」

吉平「約束? 何の?」

朝市「け… 結婚…。」

吉平「てっ! 結婚!? ほんな事ある訳ねえら! 何でえ? みんな ほんな話信じただけ! ハハハハハハハハ! はあ…。 バカ言え! サダさんには ちゃ~んと旦那がいるだ。 ふんだけんど ほの旦那が 荒くれもんで けんかっ早くってな。 サダさんは いっつも あっちこっち行って謝って ほれで また 旦那にたたかれたりして 気の毒な身の上じゃん。」

はな「おとう ほれじゃ 何もなかっただけ?」

吉平「酒を一緒に飲んだこんはある。」

リン「酒の勢いで 何かあったじゃねえだけ? 荒いざらい白状しろし!」

吉平「酔っ払ったあとのこたぁ…。」

ふじ「ふんじゃ… ふんじゃ… あの白くて高そうな くしは 何でえ?」

吉平「くし? ああ~! サダさん 気に入ってくれたからな。 ハハハハハ。」

吉平「てっ!」

ふじ「あんたみてえな男 もう愛想が尽きたじゃん! 出てってくりょう! 出てってくりょう! 出てけ!」

吉平「ちっと待ってくれ…。」

ふじ「出てけ! 出てけ!」

吉平「違う…。」

ふじ「出てけ 出てけ 出てけ!」

吉平「何かの間違えだ ふじ…。」

ふじ「出てけ! 出てけ!」

リン「あの女といい 婿殿といい とんでもねえじゃん! 塩まいとけし 塩!」

周造「そうさな。」

(ふじの泣き声)

リン「ふじちゃん! 絶対許しちゃ駄目だからね!」

ふじ「許せる訳ねえじゃん…。」

(ふじの泣き声)

玄関

吉平「ふじ…。」

周造「まだ いただか。」

徳丸商店

徳丸「何で わしが おまんを泊めんきゃならんだ。 帰ってくりょう。」

吉平「頼む! 今晩1晩だけでいいから! うち 追ん出されて 行くとこ ねえだ!」

徳丸「追い出されただとう?」

吉平「頼む。」

吉平「恩に着るじゃん。」

徳丸「ほの新潟の女のとこでも 行かれちゃ ますます ふじちゃんが気の毒

ずら。 今夜だけだぞ 明日は 出てってもろうからな。」

吉平「あの晩 酔っ払って サダさんと… いや~ ほんな事は ねえと思うけんど…。 いや… ふんだけんど 酔っ払ってたからな…。 いや 参ったな。 思い出せねえ…。」

徳丸「どうしようもねえ男だと 思ってたけんど 本当に許せんやつじゃん!」

吉平「何で 徳丸さんは ほんなに怒るだ?」

徳丸「うるせえ! 黙って寝ろし!」

吉平「(ため息)」

尋常小学校

(鐘の音)

教務室

はな「ゆんべ おとう どけえ泊まったずら。」

朝市「心配だなあ…。」

はな「ほうだけど おかあの気持ち 考えたら許せねえじゃん。」

廊下

朝市「(小声で)どうするです? これっから。」

吉平「(小声で)ゆんべは 徳丸さんちに 泊めてもらったけんど ほこも追い出された。 おまんちに泊めてもらえんけ?」

朝市「いや~… ほれは…。 うちのおかあ おばさんより カンカンに怒ってるから…。」

(ため息)

吉平「今夜は 野宿するしかねえか…。」

教会

図書室

朝市「牧師さんに許可もらってきたです。 今日は 泊まっていいって。」

吉平「ほうか。 ありがとうな 朝市。」

朝市「ふんじゃあ とりあえず おらは これで。」

吉平「寒っ。」

はな「朝市…。」

吉平「はな。」

朝市「どうして ここが?」

はな「2人の来そうなとこぐらい 分かるさ! おとう! おかあが もう帰ってこなんでいいって。」

<秋深し。 おとうとおかあの間も このまま 冷えきってしまうのでしょうか。 ごきげんよう。 さようなら。>

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