ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第65回「グッバイ!はな先生」【第11週】

あらすじ

病床の周造(石橋蓮司)に頼まれて『たんぽぽの目』を読み聞かせていた吉平(伊原剛志)は、畑から帰ってきたふじ(室井滋)に話し合おうと声をかける。しかしふじは取り合わず、吉平はしかたなく安東家を後にする。そのころ小学校で、生徒たちから「おじぃやんにお見舞い」と草花をもらうはな(吉高由里子)。そこへ突然、騒動の原因となったサダ(霧島れいか)が訪ねてくる。放課後の教室で、サダは、はなに事の真相を話し出す。

65ネタバレ

安東家

居間

ふじ「お父やん 帰ったよ。」

吉平「ふじ。」

吉平「ふじ。 こぴっと話し合おう。」

ふじ「おらのいねえ間に お父やんに取り入るなんて 調子いいだから!」

吉平「ちっと待ってくりょう! ふじ!」

尋常小学校

廊下

きよ「これ はな先生の おじぃやんにお見舞い。」

はな「ありがとう。 みんな 気を付けて帰るのよ。」

生徒たち「は~い!」

「帰ろう!」

「帰ろう!」

<おとうの女ずら。>

安東家

居間

はな「ただいま。」

ふじ「ああ お帰り。」

はな「あっ おじぃやん もう大丈夫け?」

周造「ああ。 お帰り。」

はな「あのね おかあ 今日 学校にサダさんが来て…。」

ふじ「てっ!」

はな「おらも びっくりしたけんど 謝りに来ただ。」

ふじ「どういうこんでえ?」

はな「もともと おとうとは 何にもなかったって。」

回想

サダ「実はね この間の話 全部 嘘なのよ。」

はな「てっ… う… 嘘って。」

サダ「だって 幸せそうなんだもん。 あんたのお母さん 旦那の事 信じきってるし 私が何を言っても かばうもんだから… こんなに旦那を愛してる奥さんも いるんだって 悔しくなっちゃって。」

はな「ふ… ふんだけど ほのくしは…。」

サダ「あっ これ? これは 気に入ったから自分で買ったの。 うちの旦那は こんな物 買ってくれる人じゃないから。 これ 買った時 吉平さんったら あんたのお母さんに くしをあげた時の話を ずっと うれしそうにするのよ。」

回想終了

はな「ほれとね 富士山の話も嘘だったの。」

回想

サダ「『いつか お前には 表側の富士山を見せてやる』って。」

回想終了

はな「おとう 本当は こう言っただって。 『うちのやつに表側の富士山を 見してやりてえだ。 俺のふるさとの景色を 見てもらいてえだ」って。』

ふじ「ほんな事を…。」

はな「おとう 教会の本の部屋にいるよ。」

ふじ「はな!」

周造「何べん言ったら分かるだ。 こっちが表で あっちが裏。」

教会

図書室

ふじ「あっ! あっ!」

吉平「ふじ。」

ふじ「あんた…。 もう 全部聞いただよ。 はなの学校にサダさんが来て。」

吉平「てっ…。」

ふじ「あんた…。 いつ 表の富士山を 見に連れてってくれるでえ?」

吉平「てっ… ほれも聞いただか?」

ふじ「おらを 生まれ故郷に 連れていきてえなんて ほんな事 思っててくれてたなんて… うれしいよ…。」

吉平「おい。 泣く事ねえら。」

ふじ「(泣き声) ふんだけんど… 夢みてえじゃん! (泣き声)」

吉平「俺は おまんと一緒になって ここで暮らして 甲府の事が大好きになった。 おまんにも 俺の生まれ故郷を 好きになってもれえてえだ。」

ふじ「あんた…。」

安東家

居間

周造「はなの作る話は 面白えなあ…。 今日 何べんも何べんも 婿殿に読んでもらっただ。」

はな「てっ… おとうに?」

周造「ああ。 はなは ボコの頃 わしに言ったら。 『自分が周造じゃなく 周右衛門や周左衛門に なったと思ったら 景色が違うて見える』って。」

回想

はな「名前が変われば 見える景色も変わるだよ。 自分が花子だと思うと…。 ほ~ら 風の匂いまで違うじゃん!」

周造「フフフフフフ。」

回想終了

周造「はなに言われてっから わしは 時々 周左衛門になってみてるだよ。 ほうすると はなの言ったとおり 何か わくわくしてくるだ。 そうさな…。 はなの夢みる力が わしにも伝わるだな。」

周造「はな。 見っけた夢は 夢中になって追っかけろし。 この手で わしらの作れんものを 作ってくれっちゃ。 『たんぽぽの目』。 じぃやん 大好きじゃん。」

はな「おじぃやん…。」

翌朝

吉平「おじぃやん! 籠借ります! ほれと クワも。」

周造「おお 頼んだぞ。」

吉平「ふじ!」

はな「おとう おかあ 行ってこうし。」

朝市「おはようごいす。」

ふじ「おはよう!」

朝市「おはよう!」

はな「おはよう! おじぃやん。 おらも学校行ってきます!」

周造「おお 行ってこうし。」

朝市「行ってきます!」

(戸が閉まる音)

周造「ああ… 初雪か。 『まだまだと おもひすごしおるうちに はや 死のみちへ むかふものなり。 周座衛門』。」

<甲府に初雪が降った日 周造は 眠るように 息を引き取りました。>

尋常小学校

教務室

はな「この度は お休みを頂き ありがとうございました。 おかげさまで 無事に祖父を送る事ができました。」

本多「顔は おっかなかったけんど 優しいおじぃやんだったな。」

緑川「安東先生 お力落としのねえように。」

はな「ありがとうごいす。」

緑川「亡くなったおじぃやんも 花嫁姿 見たかったらねえ。」

はな「いえ…。 祖父は 私に 夢を追っかけろと 言ってくれました。」

緑川「夢? 嫁じゃなくて夢?」

はな「ええ。 夢です。」

教会

図書室

(足音)

朝市「ごめん。 待ったけ? 校長先生に捕まっちまって。」

はな「大丈夫?」

朝市「うん。 相談って何ずら? 学校の事け?」

はな「ううん。」

朝市「ふんじゃあ…。」

はな「あっ。 その前に 朝市の大事な話って 何だったでえ?」

朝市「てっ…。」

はな「ほら! 何か話があるって言ってたじゃん。」

朝市「ああ~…。 ああ… 何だったっけな…。 忘れちまった。 あ… あれは もういいだ。 ほれより どうしたでえ?」

はな「東京から 出版社の人が来た事あったら? ほの事で…。」

朝市「迷ってるだけ?」

はな「おかあたち残して とても上京なんてできねえって 一遍は 諦めたけんど…。」

朝市「はなは 東京に行きてえだけ?」

はな「うん。」

朝市「ふんじゃあ 行けし。」

はな「朝市…。」

朝市「一生懸命やって勝つ事の 次にいい事は 一生懸命やって負ける事だ。」

<ごきげんよう。 さようなら。>

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