あらすじ
初雪の降る日、周造(石橋蓮司)は静かに息を引き取った。数日後、吉平(伊原剛志)は位はいの前で「行商をやめて百姓になる」と宣言し、ふじ(室井滋)を喜ばせるのだった。小学校に戻ったはな(吉高由里子)は、周造に言われた「見つけた夢を夢中で追いかけろ」という言葉を思い返していた。東京の出版社で働くことを諦めきれないはなは、朝市(窪田正孝)に相談しようと、教会の図書室に呼び出す。話を聞いた朝市は…。
66回ネタバレ
安東家
居間
周造「はな。 見っけた夢は 夢中になって追っかけろし。 この手で わしらの作れんものを 作ってくれっちゃ。」
はな「おじぃやん…。」
<甲府に初雪が降った日 周造は 眠るように 息を引き取りました。>
吉平「おじぃやん。 俺 行商をやめて 百姓をやる事にしたです。 これっからは ふじと力を合して こぴっと精進します。」
ふじ「あんた…。」
吉平「もう どこにも行かん。 おまんのそばにいる。 ずっと このうちにいる。」
ふじ「ふんだけんど 表富士には 連れてってくりょう。」
吉平「ああ。 分かってる。」
夜
はな「おとう おかあ。 聞いてくりょう。」
吉平「何でえ? 改まって。」
はな「おらを東京に行かしてくりょう。」
吉平「てっ…。」
はな「おら 本気で夢を追っかけてえ。 本 作る仕事に就きてえさ。 本当にごめんなさい。 おじぃやんがいなくなって いっとう さみしい時に こんな わがまま言って…。」
はな「おら これまで 人生は足し算だと思ってた。 明日は 必ず 今日よりも いい事があるって信じてた。 ふんだけんど 大好きなおじぃやんが 死んでしまって…。 人生は 引き算なのかもしれない。 ほう思ったら 何だか じっとしていられんくなったさ。 勇気を振り絞って 自分の足で 一歩を踏み出さんきゃって。」
吉平「ほれで 東京の出版社に?」
はな「お願えします! おらのわがままを 聞いてくりょう!」
ふじ「はなが ほうしてえなら ほうしろし。」
吉平「ふじ! いいだけ?」
ふじ「おじぃやんが生きてたら きっと応援してくれるら。 はなの あの本が 大好きだったからねえ。」
吉平「ああ。 おじぃやんにせがまれて 何十回読まされたか分からん。」
はな「ありがとう おかあ。 ありがとう おとう。」
1919年(大正8年)・3月
リン「本当に行っちもうだけ。 さみしくなるじゃんね。」
はな「おばさん。 おとうと おかあの事 よろしくお願えしやす。」
リン「分かってるさ。 ほれで うちの朝市は 何か言ったけ?」
はな「何か?」
リン「ほら 幼なじみずら。 引き止めたりしなんだけ?」
はな「いっとう最初に相談して 励ましてくれたのは 朝市です。」
リン「てっ 全く あのボコは…。」
尋常小学校
教室
<はなが学校を去る日が やって来ました。>
廊下
生徒たち「さいなら はな先生!」
きよ「東京へ行ったら 『たんぽぽの目』より もっと面白え話を 書いてくりょう!」
はな「ありがとう。 みんな 元気でね!」
「サンキュー! はな先生!」
生徒たち「ごきげんよう!」
はな「ごきげんよう。 Thank you!」
教室
(戸が開く音)
はな「校長先生…。 皆さん…。 本当に いろいろ ありがとうごいした。」
本多「どうした? 先生方 最後ずら 何か言えし。 思い出すら。 おまんが いっとう最初に学校に来た時 この机へ座ったじゃんね。」
回想
(笑い声)
回想終了
本多「うちの仕事が忙しくて 学校に来れなんで ほかの生徒より ず~っと勉強が後れていて 初めは 字も書けなんだ おまんが 教師になって戻ってきて 今度は 作家の先生目指して 東京に行くたぁ 本当に おまんにゃあ いつも びっくりさせられてばっかだわ。 東京へ行っても こぴっと頑張れし。 おまんは この小学校の誇りじゃん!」
はな「校長先生…。」
本多「元気で頑張れし!」
はな「はい。」
緑川「元気で頑張れし!」
はな「てっ! 緑川先生…。」
寅次「元気で頑張れし。」
はな「てっ! 小使いさん…。」
朝市「さいなら。 安東先生。 安東先生の事は 決して忘れんさ。」
回想
朝市「はなの事は 決して忘れんさ。」
回想終了
はな「朝市…。」
朝市「はなの言いてえ事ぐれえ分かるさ。 『おらの事は 花子と呼んでくりょう』ずら。」
はな「ほうずら。」
<そして いよいよ明日 はなは 東京へ旅立ちます。>
安東家
居間
ふじ「うんとこさ作ったから いっぺえ食べろし。」
はな「おとう おかあ。 ごめん。」
ふじ「なにょう言うでえ。」
吉平「はな。 ボコが 大人になっていくっちゅう事は こういうこんだ。 これっからは 夫婦水入らずで 仲良くやっていくじゃん。」
ふじ「はな。 女学校卒業して 甲府に戻ってきてくれて 本当にありがとね。 おまんが ここに帰ってきてからの 6年間は おかあにとって 一生の宝物だよ。 さあさあ 早く食べねえと 冷めちもうよ。」
吉平「『おかあの作る ほうとうは 日本一』って はな いつも言ってるら。」
はな「うめえ…。 うめえなあ。」
道中
<今また はなは 新しい曲がり角を 曲がろうとしていました。 曲がり角の先には 何があるのでしょう。 ごきげんよう。 さようなら。>