あらすじ
再び東京へ出てきたはな(吉高由里子)がかよ(黒木華)の働き先を訪ねると、そこは銀座のモダンなカフェーであった。店内ではかよが女給として働いており、はなはびっくり。演劇論を交わしている帝大生の客・宮本(中島歩)にかよが絡まれるのを見たはなは心配になるが、かよは大丈夫だと言う。翌日、新しい職場・聡文堂に初出勤したはなは、梶原(藤本隆宏)や醍醐(高梨臨)らに迎えられ、早速企画会議に参加するが…。
67回ネタバレ
尋常小学校
廊下
生徒たち「さいなら! はな先生!」
はな「ありがとう。」
教室
本多「おまんは この小学校の誇りじゃん!」
緑川「元気で頑張れし!」
朝市「安東先生の事は 決して忘れんさ。」
道中
<はなは また 新しい曲がり角を 曲がろうとしていました。 夢をかなえるために 東京の出版社で 働く事にしたのです。>
カフェー・ドミンゴ
かよ『お姉やんが東京に来たら また一緒に暮らせるね。 楽しみに待ってるじゃんね。 かよより』。
はな「てっ。 ここけ。」
かよ「いらっしゃいませ。」
はな「てっ! かよ!」
かよ「(小声で)お姉やん ほんな大きな声 出さねえでくれちゃ。」
<なんと かよは カフェーの女給さんに なっていたのです。>
はな「かよ。 女給さんって 一体どういう事でえ?」
かよ「話は 仕事が終わってから。 ご注文は ブラジルコーヒーでよろしいですか?」
はな「ブラジルコーヒー?」
かよ「ここのお客さんは みんな ほれを飲みに来るだよ。」
はな「ほれじゃあ それを。」
「シェークスピアは どうだ?」
「作品によるだろう。」
「『リア王』は?」
「あんな強欲なジジイの話して 誰が喜ぶんだよ!」
「ここは 『ハムレット』なんて どうだ? それこそ貴族の話じゃないか。」
<当時の 銀座の町には こういう しゃれたカフェーが 次々にオープンしておりました。 さて 初めて飲むコーヒーのお味は?」
はな「苦え!」
かよ「最初は みんな ほうだけんど 何べんも飲んでるうちに おいしくなるだよ。」
はな「ほうけ。」
田中「よし 分かった。 今度の公演は チェーホフをやらないか?」
荒井「『かもめ』か 『桜の園』は?」
龍一「いや 脚本は一から作る。 今 この時代を生きている 女性の叫びを芝居にするんだ。 例えば…。 君。 君は ここへ来る前 何をしていたの?」
かよ「えっと… 洋服店の縫い子や 製糸工場の女工をしてました。」
龍一「女工は つらかったろう。」
かよ「死ぬほど つらくて 逃げ出しました。」
龍一「それは 大変だったね。 ほら。 この子も 資本家に 踏みつけにされた犠牲者だ。 特権階級は ますます私腹を肥やし 労働者は 苦しむ一方だ。 だが ロシアでも革命が起きた。 俺たちは 演劇による革命を 起こそうじゃないか!」
「おう! やってやろう! そのとおり!」
はな「かよ。 大丈夫なの?」
かよ「あの学生さんたち いっつも ああいう話ばっかしてるだよ。 まるで おとうみてえずら。」
かよ宅
玄関
(猫の鳴き声)
かよ「ここが 今 おらが住んでるお城だ。」
居間
はな「かよ。 洋服店は どうして辞めたでえ?」
かよ「おら 前から カフェーで働きてえと思ってただ。 きれいな着物の女給さんたちに 憧れてただ。」
はな「そう…。」
かよ「おら 製糸工場逃げ出して おかあに迷惑かけたら。 ふんだから うちに仕送りしてえさ。 ふんだけど おらは お姉やんみたいに 学校行っちゃいん。 お金が うんと もらえる 職業婦人には なれん。 ほれでも 女給になれば お客さんから チップがもらえるだよ。 頑張って働けば働いた分 うんと稼げるじゃん。」
はな「ふんだけど お姉やん 心配だ。」
かよ「あのお店は いかがわしい事する カフェーじゃねえから安心して。 男のお客さんだけじゃんくて 女のお客さんだって多いし。」
あっ ほうだ。 醍醐さんも よく來るだよ。」
はな「醍醐さんも?」
かよ「本当に大丈夫だから。 おら お姉やんよりは しっかりしてると思ってるし。」
はな「ほうだね。」
かよ「お姉やんこそ 東京の男には 気を付けろし。」
はな「おとうにも 同じ事言われたさ。 ほれじゃあ 今日っから お世話になりやす。」
かよ「こっちこそ よろしくお願えしやす。」
(笑い声)
聡文堂
<さあ はなの出勤1日目です。>
はな「ごきげんよう。」
醍醐「はなさん!」
はな「醍醐さん ごきげんよう。」
醍醐「首を長くして待っていたのよ。」
梶原「いや~ 安東君! 来たか。」
はな「梶原編集長 また お世話になります。 よろしくお願いします!」
梶原「今日から働いてもらう安東君だ。」
はな「よろしくお願いします!」
一同「よろしく!」
梶原「我々の目標となる『赤い鳥』には 芥川龍之介 有島武郎 泉 鏡花などといった 名だたる作家が寄稿している。 うちの創刊号も それに匹敵するような作家を 引っ張ってこよう。」
須藤「そうですね。」
「はい!」
梶原「そして この聡文堂の顔になるような 新しい児童雑誌を作るんだ。 安東君。 君も 小学校の 教員をしていた経験を踏まえて 自由に意見を出してくれ。」
はな「はい。」
醍醐「物語だけじゃなくて 子どもたちが わくわくするような記事も 載せましょうよ。」
梶原「例えば どんな?」
醍醐「毎号 最新のおリボンやお帽子の 記事なんかも入れたいですね。」
三田「この雑誌を手に取る読者が リボンの記事なんか喜びますかね。」
はな「あ… あの… 子どもたちの作文を 投稿してもらったら どうでしょうか?」
三田「間違ってもらっては 困る。 児童向けといっても 大人が読むに堪える小説や詩を 載せるべきだと 私は思いますね。 まあ この雑誌に必要なのは あくまで芸術性だ。」
須藤「僕も 三田君に賛成です。」
三田「まず 宇田川先生の交渉を 継続しましょう。」
須藤「交渉は やっぱり 醍醐君ですかね。」
醍醐「私ですか?」
<結局 はなは ひと言しか発言できず それも あっさり却下されてしまいました。>
カフェー・ドミンゴ
梶原「今日の主役は 安東君だ。 ようこそ 聡文堂へ。」
はな「あっ あの… 私 お酒は ちょっと。」
梶原「そっか… 作家の先生たちは 酒好きも多いから 飲めるようにならないと大変だよ。」
醍醐「はなさん ブドウ酒じゃないんだから 大丈夫よ。」
須藤「編集者は 飲むのも仕事のうち!」
三田「そうだよ。」
はな「では 少しだけ。」
梶原「では 新しい仲間を歓迎して乾杯!」
一同「乾杯!」
はな「おいしい! このお酒 おいしいですね!」
梶原「ウイスキー 気に入った? 西洋のね 焼酎みたいなものだ。」
はな「へえ~。」
かよ「お姉やん ほれ 強えよ。 大丈夫?」
はな「ブドウ酒じゃねえから大丈夫だ。 くあ~! あ~ おいしい! もう一杯!」
<ちょっと まずい予感が致します。>
はな「西洋の焼酎 もう一杯下さ~い!」
梶原「それくらいにしといたら?」
はな「編集長。 まだ3杯目ですよ 3杯目!」
醍醐「3杯で酔っちゃうなんて はなさんって そもそも お酒が強くなかったのね。」
はな「まだ酔ってませんってば!」
梶原「安東君…。」
はな「あ~!」
かよ「お姉やん 送ってくから もう帰ろう。」
はな「まだまだ 夜は これっからじゃんね! 先輩。」
三田「先輩?」
かよ「姉のために 歓迎会を ありがとうございました。 お姉やん! 大丈夫? あっ お姉やん!」
道中
はな「あっ 星…。 ♬『Twinkle, twinkle, little star,』
かよ「もう お姉やん 帰るよ!」
はな「こっち?」
かよ「そう!」
はな♬『How I wonder what you are』
かよ「お姉やん 危ねえよ。」
はな♬『Up above the world so high,』
かよ「はいはいはい。」
英治「あっ! すいません!」
はな「痛…。 あっ 壁かと思ったら 村岡印刷さん。」
英治「歓迎会に呼んで頂いたのに 遅くなってすいません。 もう だいぶ酔ってますね。」
はな「村岡印刷さん ご無沙汰してます。 ごきげんよ~う。」
英治「わあ ちょっと! おうちまで送ります。」
かよ「すみません!」
かよ宅
玄関前
かよ「こちらです。」
英治「はい。」
居間
かよ「助かりました。 ありがとうございました。」
英治「いえ。 じゃあ 僕は これで。」
はな「あ~! あっ 逃げるだけ。」
英治「逃げませんよ。 また明日 会社で会いましょう。 じゃあ。」
英治「どうして 辞書が漬物石に…。」
はな「あれ~?」
かよ「あっ おらが置いたの。 ちょうどいい重さだったから。」
はな「うわ~! あなたのくれた辞書 なかなか役に立つじゃんね! 全然 使っていなんだし ちょうどいいだよ。」
英治「花子さんは 英語の勉強 やめてしまったんですか?」
はな「てっ 花子! 花子なんて呼ばれたら 酔いがさめちもうら。」
英治「英語の翻訳 続けてなかったんですか?」
はな「エヘヘヘ…。」
<はなにとっては 痛い言葉でした。 ごきげんよう。 さようなら。>