あらすじ
3年がたち、はな(山田望叶)は10歳になっていた。奉公が明けた兄・吉太郎(山崎竜太郎)が家へ帰って来るが、吉平(伊原剛志)と相変わらず折り合いが悪い。ふじ(室井滋)はお隣のリン(松本明子)に、なぜ吉平のような変わり者と夫婦になったのかと尋ねられ、道で偶然出会ったときのなれそめを語りだす。たまたまそれを聞いていたはなは、ふじが吉平を好きになったのは、自分が本を読んでるときの気持ちと同じだと話す。
6回ネタバレ
道中
1903年(明治36年)
ふじ「曲がり角の先へ 行っちゃいけんよ! 危ねえ 危ねえ! もも! 戻ってこう!」
はな「もも。 おかあんとこ 帰れ。 おかあが心配してるじゃんけ。」
はな「行ってきま~す!」
かよ「行ってきま~す!」
ふじ「行ってこうし!」
かよ♬『もしもし 亀よ』
<はなは いつか大好きな本と 思いっきり読んでみたいという 夢を胸に秘めながら 上の学年に上がりました。>
安東家
居間
<吉太郎が うちに帰ってきました。>
吉太郎「ここは ちっとも変わらねえ。」
<3年の年季奉公が明けたのです。>
ふじ「吉太郎 お帰り!」
吉太郎「おかあ。 ただいま。」
ふじ「元気しとったけ!」
吉太郎「ああ 死ぬほど こき使われたけんどな。」
かよ「兄やん お土産は?」
はな「お土産は?」
吉太郎「羊羹じゃ。」
(歓声)
吉太郎「おかあ お代わり。」
ふじ「奉公先じゃ 腹いっぺえ食えただけ?」
吉太郎「いんや おらが一番年下なもんで 遠慮しろって言われて。」
ふじ「大変だったなあ。 しっかり食えし。」
吉平「帰ったぞ!」
はな「あっ おとう! 兄やん 帰ってきてるさ。」
吉平「おお… もう 奉公明けただけ。」
ふじ「あんた すまんじゃんね もう 夕飯残ってねえだよ。」
吉平「酒 くれ。」
ふじ「ああ へえへえ!」
庭
リン「吉太郎 無事に帰ってきたはいいけんど 婿殿とは やっぱし 折り合いが悪いずら?」
周造「そうさな…。」
リン「ふじちゃんは 何で あんな変わりもんの亭主と 一緒になったずら? あんな よそもんと くっつかんでも なんぼでも ましなんが いたじゃんね。」
ふじ「よそもんだから 引っ掛かっちまっただよ。 お茶でも どうでえ?」
リン「へえ 頂かあ。 よそもんだからって どういうこんで?」
ふじ「もう お彼岸だに 暑い日だったさ。」
回想
吉平「娘さん。 くしや かんざしは 要らんですかね?」
ふじ「くしも かんざしも 要らん! てっ!」
ふじ「ここいらにゃあ 井戸も川もねえだから おブドウで 勘弁してくれちゃあ。」
吉平「甘い…。」
回想終了
リン「そもそも ほれが 大きな間違えの始まりけ。」
(笑い声)
ふじ「あの人は 行商で いろんな土地に行ってるだから どこにも行ったこんねえ おらは 初めて聞く話ばっかで…。」
回想
吉平「鎌倉の海には 海水浴の人が大勢いて 男も女も 水浴びして キャッキャ言って。 あっ… こういう話 退屈じゃ…?」
ふじ「おら 海なんて見たことねえから。 いまっと 話聞かしてくれちゃあ。」
吉平「あっ。 これ 江戸の職人がこさえた くしじゃ。 やっぱり ふじさんによく似合う。」
回想終了
はな「てえ~! ほうやって おとうと おかあは 結婚しただか。 親指姫と王子様みてえじゃん!」
ふじ「はな 聞いとっただけ!」
リン「ボコに聞かせる話じゃねえずら!」
周造「そうさな。 キチ 田んぼ行かざあ。」
吉太郎「はい!」
はな「おかあが おとうを 好きになったんは おらが 本を読んでる時の 気持ちと同じじゃんけ!」
ふじ「ほれ どんな気持ちでえ?」
はな「本を読むと 行った事ねえ場所や 見た事ねえ景色が どんどん 頭に浮かんでくるだ。 じっとしていられんほど ここが ドキドキして 熱~くなる。」
ふじ「はな。 思いっきし 本が読みてえけ?」
はな「えっ?」
ふじ「はな 言ってたじゃんけ。 う~んと本がある家に 住みてえって。」
はな「そりゃあ おらの夢ん中の話だ。 おかあ どうしただ?」
居間
ふじ「お父やん お願えがありやす。」
周造「何でえ 改まって。」
ふじ「はなの夢を かねえてやってくりょう。 はなを東京の女学校に 行かしてやってくりょう!」
はな「おかあ…。」
周造「どうしただ?」
ふじ「ずっと考えてただよ。 いつか この子の夢を かねえてやりてえって。 はなは うちの仕事を手伝ってくて 自分が遊びてえのも我慢して 妹たちの面倒 見てくれて 本当に本当に いいお姉やんだ。」
ふじ「これっからは はなの好きなように やらしてやりてえだよ! 吉太郎も奉公から帰ってきたし この機会に はなを 東京に行かしてやってくりょう! お願えしやす! お父やん!」
吉平「お願えします!」
(戸が閉まる音)
(戸が開く音)
作業場
周造「はな。」
はな「ずっと おじぃやんのそばにいるよ。 約束したじゃんけ。」
周造「そうさな…。 ふんだけんど はなのおかあは 頑固で 一度言いだしたら 絶対に聞かん。 富士山と一緒ずら。 てこでも動かんし たまにゃ 噴火もする。 名前が ふじだからな。」
居間
ふじ「あんた! おとうが許してくれたさ!」
吉平「ほうけ! ほうけ! ほうけ! はな よかったな! これで やっと 東京の女学校に行けるだぞ!」
ふじ「はな! よかったじゃん! おめでとう。」
吉平「どうしただ? はな。 もっと うれしそうな顔しろし!」
<…と言われても はなは まだ 実感が湧きませんでした。>
尋常小学校
教室
本多「安藤。」
はな「はい。」
<そして みんなに さようならを 言う日がやって来ました。>
本多「みんなも知ってのとおり はなは 東京の女学校に 転校するこんになりました。 今日で最後じゃんね。」
はな「皆さん いろいろ ありがとうごいした。 この学校の事も みんなの事も 決して忘れんさ。」
本多「どうしただ。 今日で最後ずら。 何か言えし。」
回想
本多「とりあえず こけえ座れ。」
(笑い声)
回想終了
朝市「はなの事は 決して忘れんさ。」
サト「はなちゃん。」
「さいなら はな!」
「さいなら はな!」
「さいなら はな!」
「さいなら はなちゃん!」
はな「みんな… みんな…。」
武「おまんの 言いてえ事ぐれえ 分かるさ。 『おらの事は 花子と呼んでくりょう』ずら?」
はな「ほうずら。」
本多「安藤…。」
「元気でいろし!」
「さいなら!」
「さいなら!」
「元気でいろし!」
道中
「さいなら!」
「さいなら はなちゃん!」
武「はなたれ~!」
「はな!」
「はな!」
はな「さいなら~!」
<こうして 10歳のはなは 故郷を旅立ちました。 曲がり角の先には 何が待っているのでしょう? この続きは また来週。 ごきげんよう。 さようなら。>