ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第70回「銀座のカフェーで会いましょう」【第12週】

あらすじ

聡文堂で働くはな(吉高由里子)に、福岡の蓮子(仲間由紀恵)から電話がかかってきた。娘の結婚式で東京に出てくる蓮子と再会する約束をし、喜びでいっぱいになるはな。それは蓮子も同じで、ご機嫌のあまり記者・黒沢(木村彰吾)に大量のネクタイを贈ろうとするが、黒沢に断られる。再会の日、いつもよりおめかししたはなが、6時の約束に間に合うよう会社を出ようとした時、突然、宇田川(山田真歩)がやって来て…。

70ネタバレ

聡文堂

蓮子『はなちゃん 私よ。 ごきげんよう!』

はな「てっ! 蓮様!?」

嘉納邸

蓮子「お仕事中 ごめんなさい。 いつぞやは ご本とお手紙 ありがとう。 東京での生活は どう? もう 落ち着いた?」

はな『ええ なんとか。 蓮様は お元気ですか?』

蓮子「はなちゃんと話して 元気が出たわ!」

はな『お電話下さるなんて 蓮様 どうなさったの?』

蓮子「あのね 私 東京へ行く事になったの。」

はな『本当に!?』

蓮子「東京にいる間に 是非会いたいわ。」

はな『私も 是非ぜひ!』

蓮子「じゃあ 近くなったら また お知らせするわね。」

はな『もう 今から楽しみで 眠れそうにないわ!』

蓮子「私もよ!」

はな『では ごきげんよう。』

蓮子「ごきげんよう。」

嘉納「『ごきげんよう』か。 お前の そげな ごきげんさんな声は 久しぶりに聞いたばい。」

聡文堂

<なんと 10年ぶりに 腹心の友と再会できるのです。>

嘉納邸

蓮子「お待ちしてたんですよ。」

黒沢「何か いい事があったんですね。」

蓮子「あら お分かりになって?」

黒沢「ず~っと ふさぎこんでいらしたから 心配していたんですよ。 どんな いい事があったんですか?」

タミ「誰かしゃんは 二度も 婚礼ば経験しちょるとに ちっとは 嫁入り支度ん手伝いば しちゃっても よかろうにねえ。」

冬子「お母様は この結婚に ず~っと反対なさっちょるき。」

タミ「あっ。 あら~ 奥様 おんしゃったとですか。」

蓮子「黒沢さん 参りましょう。」

黒沢「冬子さんの嫁入り支度 女中さんたちに 任せきりのようですが よろしいんですか?」

蓮子「私も 冬子さんくらいの時 いやいや 結婚させられた事を 思い出して どうしても 祝福できないのよ。 さあ ご覧になって! 気分がいいから 黒沢さんに贈り物をしたいの。 どれでも お好きな物を選んでね。」

黒沢「こういう贈り物は 新聞社の規則に反しますから…。」

蓮子「私 ジャブジャブ お金を使う事に 決めたの。 新興成金の妻らしくね。」

黒沢「湯水のように お金を使っても あなたの心の空洞は 埋まりませんよ。」

蓮子「ねえ それじゃあ 東京のお土産は 何を買ってきたらいいかしら?」

黒沢「(ため息)」

蓮子「10年ぶりに東京に帰るのよ! この幸せを 誰かと分かち合いたいの!」

黒沢「心配です。 あなたは まるで ここから逃げ出そうと しているように見える。 この10年の生活を 全て壊して。」

蓮子「大げさね。」

黒沢「そうでしょうか…。」

蓮子「東京で私に許された自由な時間は たった 一晩。 腹心の友に会って たわいない おしゃべりをして… それだけよ。 私には ここ以外に戻る場所なんて どこにもないんですもの。」

カフェー・ドミンゴ

はな「先生。 是非とも考えてみて下さい。 お願いします!」

宇田川「じゃあ 私の代わりに よその連載小説の続き 書いてくれる?」

はな「承知しました! そしたら うちにも 原稿 書いて下さるんですよね?」

宇田川「安請け合いしないでよ。 逢い引きもした事無い あなたに 恋愛小説が書ける訳ないでしょ!」

宇田川「梶原さんに付けといて。」

かよ「ありがとうございました。」

(ドアが閉まる音)

「今日も せっかくのコーヒーがまずい。」

かよ「すみません!」

かよ宅

(はなが英文を読む声)

はな「elaborate…。 elaborate… elaborate…。 あった。 『入念な』か。」

<そして 待ちに待った再会の日が やってまいりました。>

はな「ねえ このくし おかしくねえ?」

かよ「お姉やん ほれ聞くの何回目でえ?」

はな「ふんだって…。」

かよ「大丈夫。 こぴっと決まってるじゃん。」

はな「そう? よし! 夕方 あのカフェーで 待ち合わせしてるから かよにも蓮様を紹介するね。 本当に すてきな方なのよ。」

かよ「お姉やん 会社遅れるよ。」

はな「あっ… ほれじゃ 行ってきます!」

かよ「行ってらっしゃい。」

聡文堂

須藤「よろしく。」

英治「確かに お預かりしました。 何か 安東さん いつもと違って見えますね。」

須藤「飾りじゃない?」

英治「ああ。 なるほど。」

須藤「今日 大切な人に会うらしいよ。」

英治「へえ~。」

醍醐「はなさん 待ち合わせ6時よね? 10分前よ。」

はな「てっ 10分前? 編集長! 今日は お先に 失礼しても よろしいでしょうか。」

梶原「ああ。 待ちに待った逢い引きの日か。」

はな「逢い引きだなんて そんな…。」

醍醐「お二人で積もる話も あるでしょうから 私は お邪魔しませんから。」

はな「醍醐さんまで…。」

カフェー・ドミンゴ

かよ「いらっしゃいませ。 お一人様ですか?」

蓮子「待ち合わせです。 もう一人 後から来ます。」

かよ「こちらへどうぞ。 ご注文は?」

蓮子「ああ… 紅茶を。」

かよ「かしこまりました。」

蓮子「あっ セイロンティーにしてちょうだい。」

かよ「えっ?」

蓮子「セイロンティーを。」

かよ「かしこまりました。」

かよ「『せーろんてえ』って…。」

「『せーろんてえ』?」

「さあ…。」

かよ「あの… 『せーろんてえ』って 誰か 知ってます?」

「『せーろんてえ』?」

龍一「誰が そんな物 頼んだの?」

かよ「あの お客様が。」

龍一「ブルジョアか…。」

聡文堂

はな「では 皆さん 今日は お先に失礼します。 ごきげんよう。」

一同「お疲れさま。」

醍醐「蓮子様に よろしくね。」

はな「ええ。」

宇田川「邪魔。」

梶原「宇田川先生。」

はな「宇田川先生…。」

須藤「どうぞ こちらへ! さあ!」

梶原「先生の方から来て頂けるとは 思いませんでした。 連載の件 考えて頂けましたか?」

宇田川「いいえ。 苦情を言いに来たんです。 この『みみずの女王』に しつこくされて 本当に迷惑してるんです。」

宇田川「それは 大変失礼しました。」

はな「申し訳ありません。」

梶原「ですが 安東は それだけ 先生に書いて頂きたいんです。 彼女だけじゃありません。 社員一同 新しい雑誌には 是非とも 先生に書いて頂きたいと 心から思ってるんです。」

宇田川「梶原さんたちには 賞を頂いたご恩もあるし そこまで 熱心に誘って下さるなら こちらも 書きたいのは やまやまなんだけれど…。 今 よその恋愛小説で 煮詰まってて…。 それが終わらないと こちらの連載まで手が回らないの。」

醍醐「私たちでよければ いくらでも題材をご提供しますわ。 そのかわり うちの雑誌に 書いて頂けませんか?」

宇田川「面白い恋愛の話を 提供してくれるなら 考えてもいいわ。」

宇田川「ちょっと どこ見てんのよ。」

はな「すいません!」

宇田川「まあ この人は 経験不足だから 使えないわね。」

須藤「そんな事ありません! 安東は 今夜 逢い引きの約束があるんです。」

宇田川「へえ~…。」

はな「いえ… その…。」

カフェー・ドミンゴ

蓮子「はあ… はなちゃん お仕事 忙しいのかしら…。」

かよ「大変 お待たせ致しました。」

蓮子「これは セイロンティーとは 全く違う飲み物ね。」

かよ「そうですか…。」

蓮子「香りも味も まるで違います。 コーヒーを 水で薄めたもののようだけれど…。」

かよ「そんなはずは…。」

龍一「ここには 気取った紅茶なんかありません。 『新興成金の奥方には わざと まずいコーヒーでも飲ませて 追っ払え』と 僕が言ったんですよ。」

蓮子「私の事 ご存じのようね。」

龍一「筑豊の石炭王 嘉納伝助夫人 蓮子さんでしょう?」

かよ「てっ この人が蓮子さん…。」

蓮子「それで 私に何かご用ですか?」

<はなが 約束の時間に遅れなければ この2人が出会う事も なかったのに。 ごきげんよう。 さようなら。>

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