あらすじ
はな(吉高由里子)が聡文堂で宇田川(山田真歩)の足止めを食らっているころ、蓮子(仲間由紀恵)もカフェーで見知らぬ男にからまれていた。帝大生の宮本龍一(中島歩)にブルジョアは帰れと言われた蓮子は、世界で一番大切な友達と会うから帰らないと言い張り、はなのことだと気づいたかよ(黒木華)はうれしくなる。じりじりと時間が過ぎることに耐えられなくなったはなは、宇田川を振り切り聡文堂を飛び出してゆくが…。
71回ネタバレ
カフェー・ドミンゴ
蓮子「それで 私に何かご用ですか?」
龍一「ここは あなたのような ブルジョワの来る所じゃない。 女給に たっぷり チップをはずんでから お帰り下さい。」
蓮子「セイロンティーがないなら シャンペンを頂くわ。」
かよ「シャ… シャンぺ…?」
蓮子「ないの? じゃあ ブランデーを。」
龍一「分かんない女だな! あんたの飲むものは ここには ないんだよ! 帰った 帰った!」
蓮子「帰りません 絶対に。 私は 世界で一番大切な友達と 今夜 ここで会うんです。」
聡文堂
(時計の音)
宇田川「さあ 早く。 あなたの恋愛の話を 聞かせてちょうだい。」
はな「申し訳ありません! 完全に経験不足で お話しできる事は 一つもございません! 失礼します! 蓮様…。」
<はなと蓮子は 無事に再会を 果たす事ができるのでしょうか?>
カフェ・ドミンゴ
かよ「いらっしゃいませ。 お姉やん…。」
はな「蓮様は? 蓮様?」
かよ「お姉やん… 何時だと思ってるでえ?」
はな「帰っちまったの…? 1時間も 待ちぼうけさしちまったから…。」
かよ「ほうだよ。」
はな「せっかく 10年ぶりに会えると思ったのに…。」
蓮子「はなちゃん。 帰る訳ないでしょ!」
はな「蓮様!」
蓮子「お久しぶり はなちゃん。」
はな「蓮様~! 遅くなって ごめんなさい! 待っててくれたのね!」
蓮子「はなちゃん!」
はな「蓮様! 会いたかった!」
蓮子「私も!」
蓮子「まずは 乾杯しましょう。」
はな「ブドウ酒…。」
蓮子「覚えてる? あの事件。」
はな「忘れたくても忘れられたないわ! 私 あれから 自分に ブドウ酒禁止令を出したのよ。」
蓮子「はなちゃんには 苦い思い出かもしれないけど 私にとっては 大切な大切な思い出なの。」
はな「蓮様…。」
蓮子「はなちゃんを待ってる間に 次から次へと あのころの事が 頭に浮かんだの。 もう… 何もかも懐かしくって どうしても ブドウ酒で乾杯したくなったの。 10年ぶりの再会に。」
はな「そして…。」
2人「腹心の友に。 乾杯!」
はな「はあ… 何だか 本当に夢みたい。 私 この10年間 ずっと 毎日のように 想像の翼を広げて 蓮様と こうして再会する日を 夢みていたのよ。」
蓮子「まあ うれしい!」
はな「何かを楽しみに待つという事が その うれしい事の 半分にあたるのよ。」
蓮子「すてきな言葉ね。 はなちゃん ちっとも変わらないわ。」
はな「蓮様も。 すっかり すてきな奥様ね。」
蓮子「お金が いくらあっても 生きがいのない暮らしは むなしいわ。 はなちゃんと寄宿舎で過ごした あの半年間だけが 私にとっては 宝物のような時間なの。 どんな宝石の輝きにも負けないわ。」
はな「蓮様…。」
蓮子「今夜は あの輝きを取り戻すわ!」
はな「ええ!」
(笑い声)
かよ「いらっしゃいませ。」
英治「どうも。」
郁弥「こんばんは。 これ かよさんに。 この花 かよさんみたいでしょう?」
かよ「私 チップの方が うれしいんですけど。」
郁弥「よく似合います。」
かよ「てっ…。」
かよ「お姉やん。 村岡さんよ。」
はな「てっ。」
英治「どうも。」
蓮子「はなちゃん こちらは?」
はな「あっ。 聡文堂の取引先の村岡印刷さん。 あっ 女学校時代の腹心の友の 蓮子さんです。」
英治「ああ。 初めまして。」
蓮子「ごきげんよう。」
英治「逢い引きって こういう事だったんですね。」
はな「あれは 編集長たちが 勝手に言ってた事で 私は 逢い引きなんて ひと言も言ってませんんから!」
英治「えっ そうですか~?」
はな「そうですよ!」
英治「あれ? ブドウ酒には 嫌な思い出があったんじゃ?」
はな「今日は いいんです。」
英治「まあ 腹心の友との再会なら 思う存分 飲んで下さい。 何なら また おぶっていきますから。」
蓮子「はなちゃん 相変わらず 酒癖が悪いの?」
はな「もう 蓮様まで~…。」
英治「もしかして もう 酔っ払ってるんですか?」
はな「まだ 酔ってません! あっ もう 本当に お構いなく! あっ 私 郁弥さんに 本のお礼を言わなくちゃ。 蓮様 ちょっと失礼。」
英治「お邪魔しました。」
蓮子「あっ お待ちになって。 ちょっと お座りにならない?」
はな「郁弥さん。 先月は 貴重な原書を ありがとうございました。 夢中になって 一晩で読んじゃいました。 あれを翻訳して 新しい雑誌に 載せる事ができたらいいなと 思ってるんです。」
郁弥「あれは 兄です。 兄から あなたの気に入りそうな本を 贈りたいと言われたんです。」
はな「えっ?」
郁弥「あなたに 英語への 情熱を取り戻してほしいって。 今日も何冊か持ってきたんです。」
はな「あっ…。 あっ 読んでもいいですか?」
郁弥「どうぞ。」
蓮子「はなちゃん ちっとも変わってないわ。 村岡さんは はなちゃんの事が好きなのね。」
英治「花子さんを? そんな…。」
蓮子「はなちゃんは ずっと 花子って 呼ばれたがっていたんです。 あなたのような人が現れて よかったですね。」
英治「いえ… そんな事は 断じてありません。」
蓮子「どうして 『断じて』なんておっしゃるの?」
英治「だって 僕は…。」
かよ「てっ! お姉やん 駄目!」
はな「えっ?」
かよ「それ 3杯目だから 駄目!」
はな「えっ?」
蓮子「はなちゃん 3杯目は いけません。」
郁弥「3杯目は駄目だと お二人が言ってます。」
はな「みんな そこまで 必死に止める事ないじゃん。」
かよ「駄目ずらって! 駄目!」
蓮子「いけません! はなちゃん!」
はな「大げさ…。 大丈夫 大丈夫だから。」
郁弥「置きましょう。」
蓮子「はなちゃん!」
かよ「お姉やん!」
はな「蓮様 大丈夫です~。」
蓮子「大丈夫じゃありません!」
かよ宅
(猫の鳴き声)
居間
かよ「おはようございます。」
蓮子「かよさん おはよう。」
かよ「お姉やん! 蓮子さん 起きてるよ。」
はな「う~ん…。」
かよ「姉は 毎日遅くまで 英語の本を読んでるから いつも朝寝坊なんです。」
蓮子「この辞書 見覚えがあるわ。 修和女学校の頃 寄宿舎に送られてきたの。」
かよ「お姉やん ずっと大切にしてるんです。」
蓮子「どなたの贈り物?」
かよ「村岡さんです。」
蓮子「ゆうべの あの大きい方?」
かよ「はい。 大きいお兄さんの方から もらったそうです。」
蓮子「そうだったの。」
番頭「奥様~! 蓮子様~! 奥様~!」
はな「てっ! どうしたでえ!?」
蓮子「がっかりだわ。 もう 迎えが来てしまったようね。」
玄関前
はな「てっ…。」
かよ「人力車。」
居間
玄関前
蓮子「かよさん お世話になりました。」
かよ「いえ また来てくれちゃあ。」
蓮子「はなちゃん 楽しい時間は あっという間に過ぎてしまうわね。」
はな「蓮様 今度 いつ会えるかしら?」
蓮子「…主人の許可が出たらね。」
番頭「奥様。」
蓮子「ごきげんよう はなちゃん。」
はな「ごきげんよう 蓮様。」
蓮子「すてきな恋をしてる はなちゃんが 羨ましいわ。」
はな「えっ?」
<続きは また明日。 ごきげんよう。 さようなら。>