あらすじ
英治(鈴木亮平)が結婚していることを知ってしまったかよ(黒木華)は、はな(吉高由里子)に告げるべきか迷う。かよに「あの人はやめた方がいい」と言われたはなは、もうふられたのだと打ち明ける。そのころ村岡印刷では英治が『王子と乞食』の割り付けに取り組んでいた。その熱心ぶりに郁弥(町田啓太)が感心していたところへ、二人の父で社長の平祐(中原丈雄)が戻って来て、病気の妻と離縁してはどうか、と英治に告げる。
75回ネタバレ
カフェー・ドミンゴ
かよ「結婚? 英治さん 結婚なさってたですか?」
<かよは 知ってしまったのです。 お姉やんの恋は 道ならぬ恋だと。>
かよ宅
(猫の鳴き声)
居間
はな「何?」
かよ「お姉やん 村岡さんのお兄さんの方 どう思う?」
はな「『どう』って…。」
かよ「お姉やん あの人の事 好きずら?」
はな「てっ! 何言うでえ? ほんなこん…。」
かよ「お姉やん見てたら 分かるさ。 おら あの人は やめた方がいいと思う。」
はな「かよ…。 やめるも何も… 言われただよ。」
かよ「何て?」
はな「『忘れて下さい』って。」
かよ「てっ… 本当け? お姉やん 振られたのけ。 何だ… ほうか。 よかった よかった…。 あ… ごめん。」
はな「ううん! もう いいの。 本当に おとうの言うとおりさ。 全く 東京の男は 何を考えてるだか分からん。」
かよ「ほうだよ。 おらたちみてえな田舎もんは こぴっと 気ぃ付けんと。」
はな「ほうだね。」
カフェー・ドミンゴ
「ごちそうさま。」
かよ「もう お帰りですか?」
「ああ。」
かよ「今日のコーヒー お口に合いませんでした?」
「いや~ 大変おいしかったよ。 ちょっと 約束があってね。」
かよ「てっ! 逢い引きですか?」
「てっ! だといいんだがね。 ハハハハハ!」
村岡印刷
英治「おはようございます 社長。」
郁弥「また ドミンゴで コーヒー飲んできたんですか?」
平祐「かわいい女給の友達が できてね。 てっ!」
郁弥「『てっ!』? かよさんだ! 父さん ずるいですよ! 僕だって 行きたいのを我慢して ここで働いてるのに。」
平祐「じゃあ 始めようか。」
2人「はい。」
平祐「郁弥の挨拶回りは 済んだのか?」
郁弥「はい。 兄さんの打ち合わせにも 同行させてもらってます。」
平祐「梶原君の立ち上げた聡文堂の 新しい雑誌は どうなってる?」
英治「目玉となる作家先生の 原稿の めどが立っていないようで 校了までには まだ しばらくかかるかと。 それで よりよい割り付けを 思いついたページがあるので 今日 その提案に行ってきます。」
郁弥「へえ~。 兄さんが 割り付けするなんて 珍しいね。」
英治「そんな事ないさ。」
平祐「引き続き しっかり頼む。」
2人「はい。」
平祐「英治。 昨日 また 香澄さんの見舞いに 行ったそうだな。」
英治「はい。」
平祐「向こうの父上から連絡があった。 『こんなに頻繁に 病院に 来てもらっては 申し訳ない。 いつ治るか 分からないのだから 英治君のためにも 離縁を考えてほしい』と 言っていた。 あちらも そう言ってる事だし お前も そろそろ…。」
平祐「父さん。」
郁弥「病気の義姉さんを見捨てろと 言うんですか?」
平祐「英治。 お前は まだ若い。 健康な人と一緒になって 子どもを育てる そういう家庭を持つ事だって できるはずだ。 お前のためにも この会社のためにも 考えてみなさい。」
英治「そんな事 考えられません。」
英治「郁弥。」
郁弥「ん?」
英治「これ 聡文堂に届けてくれないか?」
郁弥「何で 兄さんが行かないの? 今 手ぇ離せないよ。」
英治「分かった…。」
聡文堂
廊下
醍醐「まあ 英治さん ごきげんよう。」
英治「どうも。」
醍醐「どうぞ。」
職務室
醍醐「昨日は いらっしゃらなかったから どうされたのかと思いました。」
英治「ああ…。」
梶原「英治君。」
英治「どうも。」
(電話の呼び鈴)
醍醐「お茶は 私が!」
はな「あ… お願いします。」
須藤「醍醐君。 岡田先生から電話。」
醍醐「はい。 ああ もう… はなさん お茶 お願いするわ!」
はな「お茶… はい。」
英治「こういう感じは どうかと思いまして。」
梶原「ちょっとな… ほかのページと違い過ぎるな。」
英治「だからこそ 目を引いていいと思うんですよ。」
梶原「どう?」
三田「違い過ぎますね。」
英治「どうも。」
はな「いいえ。」
梶原「安東君 これ どう思う? 君が翻訳してくれたページの 新しい割り付け案だ。」
はな「物語の世界に合っていて すてきだと思います。」
梶原「そう…。 村岡君が新たに考えてくれたんだ。」
英治「この方が 読者に より物語が伝わると思いまして。」
梶原「そうかな…。」
英治「あの… 翻訳物の連載は まだ どこもやっていませんし せっかく 新しい児童雑誌を 作るんだったら これぐらい 遊び心があった方が いいと思うんです。」
醍醐「編集長。 絶対に この方がいいと思います! 上品で洗練されていて まるで 村岡さんみたい…。」
三田「醍醐君の感想は 私情が入り過ぎてます。」
醍醐「そうかしら。」
梶原「分かった。 この割り付けで 一度 組み版してみて。」
英治「はい。 すぐに。」
醍醐「村岡さん ほかの割り付けも 少し変更したいんですけど。」
英治「ええ。」
廊下
はな「あっ 村岡印刷さん!」
英治「はい… 僕 また 何か忘れ物しましたか?」
はな「いえ。 お礼が言いたくて。 あの… すてきな割り付け 考えて下さって ありがとうございました。」
英治「いえ…。」
はな「では よろしくお願いします。」
英治「花子さん。」
はな「はい。」
英治「続き 楽しみにしてます。 あなたの翻訳する言葉は 本当に素直で美しい。 そのよさが 読者にも伝わるような 誌面にしますから。」
はな「どうして 急に そんな優しい事 言うんですか? いつもみたいに 『バカでも分かる』でいいのに…。 そんな事 言われたら また 勘違いしちゃうじゃないですか。 これでも こぴっと頑張ってるんです。 あなたを忘れなきゃって…。 もう 優しくしないで下さい。」
英治「すみません…。」
カフェー・ドミンゴ
宇田川「どういうつもりかしら? この間 私を振り切るようにして 帰ってから 謝罪の言葉もないなんて。」
はな「申し訳ありません!」
宇田川「私 面白い恋愛の題材を ずっと待ってるんだけど。」
♬~(レコード)
はな「あの… 友達の話なんですけど…。」
宇田川「つまらなそうだけど聞くわ。」
はな「友達が ある男性と再会して… ひょんな事から その人の事を 好きだと気付いてしまって 思わず 思いを告げてしまったんです。 とっさに後悔して 彼の前から 立ち去ったんですけど なぜか 彼は どしゃ降りの雨の中 追いかけてきて… そして 傘を差し出してくれて…。」
宇田川「それで?」
はな「抱き締めて…。」
宇田川「それで?」
はな「あっ あくまで 友達の話です!」
宇田川「それで?」
はな「翌日 彼は こう言ったんです。 『ゆうべの事は 忘れて下さい』と…。」
かよ「お姉やん…。」
宇田川「それで おしまい?」
はな「はい…。 そもそも 『忘れて下さい』って 何なんですかね? わざわざ追いかけてきて それから… だ… 抱き締めて それなのに 『忘れて下さい』って! しかも 『忘れろ』とか言っときながら 仕事では 助けてくれたり 急に 優しい事 言ってきたり…。 あの人は どういうつもりなんですか!?」
宇田川「あなた 大丈夫?」
はな「ああ…。 …と 友達が怒ってました。 あの… 先生?」
宇田川「何か進展があったら また教えてちょうだい。」
はな「あの… うちの原稿は?」
(ドアが閉まる音)
かよ「お姉やん… 編集者の仕事って 本当に大変だな。」
はな「うん…。」
(ため息)
かよ「いらっしゃいませ。」
龍一「やあ。 いつもの頼む。」
かよ「かしこまりました。 いらっしゃいませ。 てっ?」
はな「てっ…。 兄やん… だよね?」
かよ「うん。」
はな「兄やん!」
かよ「本物の兄やんじゃん!」
吉太郎「(小声で)しっ。 任務中だ。 悪いが 知らねえふりをしてくりょう。」
<憲兵になった吉太郎の任務とは 一体 何なのでしょう? ごきげんよう> さようなら。>