ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第76回「その恋、忘れられますか?」【第13週】

あらすじ

カフェーに突然現れた吉太郎(賀来賢人)に「任務中だから知らないふりをしてくれ」と言われ、驚くはな(吉高由里子)とかよ(黒木華)。店内では龍一(中島歩)が学生仲間たちに、蓮子(仲間由紀恵)に演劇の脚本を頼んだことを熱く語っていた。それを鋭い視線で見つめる兄の姿に、はなもかよも戸惑うのだった。一方、村岡印刷では、英治(鈴木亮平)が郁弥(町田啓太)に、聡文堂の担当を代わってくれないかと提案する…。

76ネタバレ

カフェー・ドミンゴ

かよ「いらっしゃいませ。 てっ?」

はな「てっ…。 兄やん… だよね?」

かよ「うん…。」

はな「兄やん!」

かよ「本物の兄やんじゃん!」

吉太郎「(小声で)しっ。 任務中だ。 悪いが 知らねえふりをしてくりょう。」

<なんと5年ぶりの 兄弟の再会でしたが 吉太郎の様子が変です。>

田中「あんなブルジョアに 脚本を頼むなんて お前 どうかしてるぞ!」

荒井「あの女は 俺たちの敵そのものだろう!」

龍一「もっともな意見だ。 俺も そう思ってた。 でも これを読んで 気持ちが変わった。 それに あの人に会いに行って よく分かった。 あの人は まるで 籠の中の鳥だ。 本当の自由を知らない。 あの人こそ 俺たちが救うべき被害者だ。」

田中「お前 ただ あの女の色香に あてられただけじゃないのか?」

龍一「確かに美人だ。 だが 俺は 彼女の文学的な才能の方に はるかに引かれる。 あの人は 不思議な人だ。 強さと弱さが共存している。 その落差によって 彼女の文学は 光を増しているんだ。 彼女は 脚本を書くと約束してくれた。 それを読めば きっと みんなにも分かる。」

かよ宅

居間

はな「兄やんの任務って何ずらね?」

かよ「おら 何だか怖かった。 兄やんが おらの 知らねえ人みてえになってて…。」

(ノック)

はな「てっ。 こんな朝っぱらから誰ずら。」

かよ「おらが出る。」

玄関

かよ「てっ! 兄やん!」

はな「てっ! 兄やん…。」

吉太郎「何でえ 2人とも。 幽霊でも見たような顔して。 ゆうべは ゆっくり 話も できなんで悪かったな。」

はな「兄やん…。 立派になったね。」

かよ「会いたかったよ!」

吉太郎「昨日も会ったじゃんけ。」

はな「ほんなとこに立ってねえで 早く入って 入って!」

居間

かよ「兄やん 朝飯は?」

吉太郎「ああ 食ってきたから いい。」

はな「ほれにしても 兄やん 昨日は驚いたじゃん。」

吉太郎「おらの方が驚いただ。 偶然入ったカフェーに おまんらがいるなんて…。 かよ。 おまん あんな店で働いてるだけ。」

かよ「大丈夫。 心配しんで。」

吉太郎「心配するに決まってるら。 あすこ 夜は 酒も出すずら。」

かよ「ほうだけんど…。」

はな「初めは おらも心配したけんど かよは 真面目に頑張ってるだよ。 ほれより 兄やん お店に来たのは 憲兵の仕事け?」

吉太郎「いや コーヒー飲みに入っただけじゃん。 仕事中に カフェーで休んでんが 見っかったら 体裁悪いから 『話しかけんな』って言っただけだ。」

かよ「何だ。 ほうけ。」

吉太郎「かよ。 あの店 いつっから働いてるだ?」

かよ「半年くらいかな。」

吉太郎「昨日 奥の席で こむずかしい話 してた帝大生たちは よく来るだけ?」

かよ「ああ! あの人らなら よく来るよ。 『不平等な世の中を 変えねば』とか いっつも おとうみてえな事 言ってるさ。」

吉太郎「親しいだけ?」

かよ「世間話くらいは するけんど… 特に親しいって訳でもねえ。 どうして?」

はな「兄やん ほの人たちが どうかしたの?」

吉太郎「いや…。 かよに ちょっかい出してねえか 気になっただけじゃん。」

かよ「ちょっかいなんて… フフフ。」

吉太郎「何だ?」

はな「ううん… 兄やん 当分 東京にいるの?」

吉太郎「ああ。 おまんら 何か困ってる事ねえけ? 兄妹なんだ。 何かあったら 遠慮しんで いつでも おらの事を頼ってこうし。」

かよ「兄やんが そばにいると思うと 心強いじゃんね!」

はな「本当だね!」

吉太郎「ほれじゃ 朝の忙しい時に悪かったな。」

はな「てっ もう帰るだけ?」

かよ「まだ いいじゃん!」

吉太郎「2人の元気な顔見られて 安心しただよ。」

玄関

はな「兄やん 今度は ゆっくり ごはんでも食べよう。」

吉太郎「ほうだな。」

かよ「約束じゃん。」

吉太郎「ああ。 2人とも 気ぃ付けてやれし。」

かよ「兄やん 頼もしくなったね。」

はな「うん。 兄やん また来てくりょう!」

村岡印刷

郁弥「お先に。」

回想

英治「あなたの翻訳する言葉は 本当に素直で美しい。 そのよさが 読者にも伝わるような 誌面にしますから。」

回想終了

翌朝

郁弥「へえ~ 兄さんが描いたのか。 いいじゃないか。 そのページ 随分 こだわってるね。」

英治「児童雑誌で初めての 翻訳物だからな。」

郁弥「それだけじゃないだろ? 兄さん 本当に好きだよな。」

英治「…何が?」

郁弥「だから 安東さんの翻訳だよ。」

英治「なあ 郁弥。 今日から 聡文堂の担当は お前が代われ。」

郁弥「え…。 兄さん そこまで思い入れあるのに何で?」

英治「父さんも お前に早く 独り立ち してほしいと思ってるし 創刊号が刷り上がるまでは 俺も手伝うから。」

郁弥「分かった。 しっかりやるよ。」

英治「頼んだぞ。」

郁弥「行ってきます。」

聡文堂

醍醐「村岡印刷さんの打ち合わせ 何時からですか?」

須藤「もう来るはずだけど?」

醍醐「大変!」

郁弥「こんにちは。 村岡印刷です。」

醍醐「あら… 郁弥さん。」

郁弥「この度 聡文堂さんの担当を 引き継ぐ事になりました。 弊社の都合で 申し訳ないんですが 今後は 兄の代わりに 僕が伺いますので よろしくお願いします。」

梶原「そうか。」

郁弥「兄は 印刷所の方で 責任を持ってやりますから。」

梶原「分かった。 よろしく。 じゃあ 座って。」

醍醐「という事は もう お兄様は ここには いらっしゃらないのね。」

郁弥「これ 見て下さい。」

梶原「ああ。」

郁弥「『王子と乞食』のページに どうでしょうか?」

梶原「安東君。 ちょっと。」

はな「はい。 まあ… なんて すてきな挿絵なんでしょう!」

<その挿絵が 英治の描いたものとは知らず 心引かれる はなでした。>

かよ「失礼します。 お姉やん 大変!」

はな「(小声で)てっ… かよ。 どうしたでえ?」

かよ「お店に ひげを生やした おっかねえ おじさんが来て 『お姉やんの事 呼べ』って…。」

はな「てっ?」

かよ「こ… こんなに チップくれただよ!」

はな「誰? おっかねえ おじさんって…。」

かよ「とにかく来て!」

はな「ああ…。 皆さん 今日は お先に失礼します。 ごきげんよう。」

カフェー・ドミンゴ

かよ「あの人じゃん…。 知ってる人け?」

はな「あ… あの… 安東はなです。」

嘉納「あんたが はなちゃん?」

はな「はい… はなちゃんです。」

嘉納「まあ 座りんしゃい。」

はな「失礼します…。」

嘉納「何でん 好きなもんを 頼みんしゃい。 おい。」

かよ「はい。」

はな「あ… えっと… あ… 同じものを。」

かよ「はい。」

嘉納「遠慮せんでよか。 酒でん飯でん 好きなもんを頼め。」

はな「あ… いえ 見ず知らずの方に ごちそうになる訳には…。」

嘉納「嘉納伝助ばい。」

はな「てっ! 蓮子さんのご主人の!?」

嘉納「こないだは うちのが泊めてもろて 世話になったね。 こら そのお礼たい。」

はな「こんなに頂けません!」

嘉納「よかとちゃ。 うちのが ものすご楽しかったち 話しよったばい。 あげん 機嫌のよか蓮子は 初めて見たき。 そのお礼たい。 それに どうせ 今日もまた 世話になるきね。」

はな「今日?」

嘉納「いや あんたと会うっち聞いて こっちへ来るついでがあったき 迎えに来たとばい。」

はな「蓮子さんが そう おっしゃったんですか?」

嘉納「今日 こん店で はなちゃんと会うち…。」

はな「あ…。」

<はなは 頭の中が 真っ白になってしまいました。 蓮子は ご主人に なぜ そんな嘘をついたのでしょう?>

屋台

<蓮子が会っていたのは はなではなかったのです。>

蓮子「乾杯。」

<危険な薫りが致します。 ごきげんよう。 さようなら。>

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