ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第77回「その恋、忘れられますか?」【第13週】

あらすじ

カフェーに来た伝助(吉田鋼太郎)に「きょう蓮子(仲間由紀恵)と会う約束ではないのか」と聞かれ、はな(吉高由里子)は苦し紛れにそうだと答え、必死に取りつくろう。伝助の目に射すくめられるはなだが、伝助は意外にも気さくにはなに話しかけ「蓮子をよろしく」と去ってゆく。そのころ蓮子は龍一(中島歩)と会っていた。初めて屋台に行った蓮子は注文も不慣れで、龍一が注文する様子に素直に感動する。龍一はそんな蓮子に…。

77ネタバレ

カフェー・ドミンゴ

はな「蓮子さんが そう おっしゃったんですか?」

嘉納「今日 こん店で はなちゃんと会うち…。」

屋台

<なんと そのころ 蓮子は 龍一と会っていたのです。>

蓮子「乾杯。」

カフェー・ドミンゴ

はな「あっ! あ… あれ そういえば 今日だったわ。 確かに 蓮子さんと約束しました。 明日と勘違いしていたけど 金曜日の約束だから… 今日です! 今日です!」

嘉納「ばってん 蓮子は 何ばしようとや?」

はな「あっ きっと 蓮子さん 本屋さんです。 蓮子さん 本がお好きだから 本屋さんに入ると 時間を忘れて 本を読みふけってしまうんです。」

<はなは 心臓がバクバクしていました。 こんな ごまかしが 通るのでしょうか? 何しろ 相手は 石炭王の嘉納伝助です。>

はな「サイダー お好きなんですか?」

嘉納「サイダーは 夢の水たい。」

はな「えっ?」

嘉納「初めて飲んだ時 世の中には こげな うまいもんがあるかと 腰 抜かしそうになった。」

(笑い声)

はな「私も そうです。」

嘉納「勘定してくれ!」

はな「えっ もうお帰りになるんですか?」

嘉納「俺は あいつと本の話はできん。 あんたが話し相手になっちゃって。」

はな「あっ! あの… これ!」

嘉納「よかよか。」

はな「あ… え… ああ… ありがとうございました!」

かよ「ありがとうございました!」

女給たち「ありがとうございました。」

屋台

龍一「屋台なんか連れてきて 怒られるかと思いましたよ。」

蓮子「あら。 『あなたが いつも行くお店に 連れていってほしい』と 頼んだのは 私だもの。 この おでんもお酒も おいしいわ。 お代わり 頂けますか。」

龍一「『頂けますか』なんて言う客は ここには いませんよ。」

蓮子「じゃあ 何と言うの?」

龍一「おやじ 冷や。」

おやじ「はいよ。」

蓮子「世の中には 私が知らない事が たくさんあるのね…。 何か?」

龍一「まさか 1週間で 書き上げてもらえるとは 思いもしませんでしたよ。」

蓮子「お気に召して?」

龍一「あなたの激情が ひしひしと伝わってきました。」

蓮子「ええ。」

龍一「だが 後半は 変えるべきですね。」

蓮子「え… どうしてよ?」

龍一「なかなかいい脚本ですが 最高にいい脚本ではない。 今のままだと 主人のいる女が 道ならぬ恋に溺れて 心中するという もう何百回と書き古された話で 終わってしまう。」

蓮子「私 一度書いたものは 推敲しない主義なの。」

龍一「白蓮の最高傑作になりそうなんだ。 そんな主義は 捨てて下さい。」

蓮子「おやじ。 冷や。」

おやじ「はいよ。」

蓮子「ほら 私でも注文できたわ!」

龍一「じゃあ その調子で 推敲にも挑戦して下さい。」

蓮子「強情な人。」

龍一「そっちこそ。」

(笑い声)

かよ宅

玄関

(ノック)

蓮子「ごめんください。」

はな「蓮様…。」

蓮子「はなちゃん ごきげんよう。」

はな「ごきげんよう。 どうぞ。」

蓮子「突然来て びっくりさせようと思ったのに あんまり驚いてくれないのね。」

居間

蓮子「はなちゃん… 主人と会ったの?」

はな「ええ…。 心配したわ。 どこにいたの?」

蓮子「ちょっとね。 お友達と会っていたの。」

はな「お友達?」

(戸が開く音)

吉太郎「邪魔するぞ。」

はな「兄やん…。」

蓮子「まあ! お久しぶり! ごきげんよう 吉太郎さん!」

吉太郎「蓮子さん… もう あの男とは 関わらない方がいい。」

はな「あ… 兄やん いきなり何でえ? あの男って?」

吉太郎「宮本龍一だ。」

蓮子「吉太郎さん… どうして?」

吉太郎「あなたと あの男じゃ 住む世界が違う!」

蓮子「吉太郎さんは 宮本さんの事 そんなに よくご存じなんですか?」

吉太郎「とにかく もう 会わないで下さい。」

はな「あ… 兄やん!」

(戸が閉まる音)

はな「兄やん…。 どうして…。」

はな「蓮様 『私に会う』って ご主人に嘘をついて その男の人に会っていたの?」

蓮子「ええ。 宮本さんは 演劇をやっていて 脚本を頼まれたの。 それだけのお友達よ。 その人の事は 嫌いじゃないわ。 今日も すごく楽しかった。」

はな「あんな立派なご主人が いらっしゃるのに 何を言っているの…。 石炭王なんて どれだけ 威張ってる方かと思ったけど 気さくで いい方だったわ。」

蓮子「はなちゃんが褒めるなんて 意外だわ。 じゃあ 少しは いいところもあるのかしらね。」

はな「蓮様…。 とにかく 道ならぬ恋だけは してはいけません。」

蓮子「フフフ! 考え過ぎよ! そんな愚かな事は しないわ。 私の事より はなちゃんこそ 村岡さんとの恋は 順調? どうしたの?」

はな「私… あれから 思いを伝えて…。」

蓮子「まあ! その日のうちに いろいろあって… そして 次の日に… 『忘れて下さい』って言われたの。」

蓮子「…えっ?」

はな「つまり 振られたの。」

蓮子「えっ!? どうして?」

はな「『どうして?』って こっちが聞きたいわ。 今 私の胸には こんなに大きな穴が開いてるの。」

蓮子「はなちゃん…。」

村岡印刷

(ノック)

社員「若社長 お客様です。」

英治「どなた?」

蓮子「ごきげんよう。」

英治「蓮子さん…。」

蓮子「ごきげんよう。」

郁弥「どうも 先日は。」

蓮子「ごきげんよう。 村岡さん。」

3人「はい。」

蓮子「こちらの村岡さんと 2人で話がしたいのですが よろしいですか? 本の事で ご相談があって。」

郁弥「どうぞ どうぞ。 あっ どうぞ。 白蓮さん。 次の歌集を出す時は 是非 弊社で刷って下さい。」

平祐「白蓮! あなたが…。」

郁弥「父さん。 見とれてないで。」

平祐「ああ…。」

蓮子「単刀直入に 伺います。」

英治「はい。」

蓮子「『忘れて下さい』なんて どうして おっしゃったの? はなちゃん 今 胸に こんなに 大きな穴が開いてるそうです。 いいんですか? このままで。 はなちゃんを傷つけたままで いいの?」

英治「これ以上 傷つける訳にはいかないんです。」

蓮子「あなた… はなちゃんに 何か隠してる事が あるんじゃない? ちゃんと向き合わないで 逃げるなんて ひきょうよ。 はなちゃんのために こぴっと向き合ってあげて。」

聡文堂

はな「この挿絵 本当にすてきです。」

郁弥「これ 誰が描いたと思います?」

はな「えっ? 無名の絵描きさんですか?」

郁弥「まあ そんなところです。」

(電話の呼び鈴)

梶原「安東君 電話出て。」

はな「はい。」

英治『あ… 花子さんですか。 村岡です。 もしもし?』

はな「はい。 ご用件は?」

英治『今夜 仕事が終わってから 会えませんか? 大事な話があるんです。』

はな「お話なら 今 伺います。 何でしょうか?」

英治『いえ 会ってお話ししたいんです。 今夜は ご都合悪いですか?』

はな「いえ…。」

英治『では6時に カフェーで。』

はな「分かりました。」

梶原「電話 終わったんじゃないの?」

はな「あっ… はい。 す… すいません。」

<再び はなの心臓は パルピテーションの嵐を起こしていました。 ごきげんよう。 さようなら。>

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