ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第79回「ゆれる思い」【第14週】

あらすじ

はな(吉高由里子)は英治(鈴木亮平)に妻がいたことのショックを胸にしまい、新雑誌『にじいろ』刊行の仕事に打ち込んでいた。ある日、文芸誌に連載中の宇田川(山田真歩)の小説がはなと英治の恋愛をモデルに書かれたと気づき、はなは動揺。一方で宇田川は『にじいろ』のための児童小説を書き始め、聡文堂の面々を歓喜させる。カフェーで宇田川の原稿を受け取ったはなは、梶原(藤本隆宏)から村岡印刷に届けてくれと頼まれ…。

79ネタバレ

道中

かよ「お姉やん。 もう あの人の事 待ったりしちゃ駄目だ。 村岡さんは 結婚してるだ。」

かよ宅

玄関前

はな「聞きました。 全部。」

英治「言いそびれていて すいません。 これからも 花子さんが翻訳するページは 手伝わせて下さい。 あなたのためにできる事は それしいかないんです。」

居間

<まさか 自分が 道ならぬ恋をしていたなんて 思ってもみなかった はなでした。>

聡文堂

<はなたちは 新しい雑誌の完成に向けて 大忙しの毎日を送っていました。>

須藤「安東君 これも よろしく。」

はな「あっ はい。」

梶原「よし。」

醍醐「あとは 宇田川先生の 連載小説だけですね。」

須藤「もう これ以上 待てません。 ほかの作家に頼んだら どうでしょう?」

梶原「いや 宇田川満代の連載は この雑誌の目玉になる。 諦めずに口説き落そう。」

三田「いや~ 宇田川先生 やっぱり 今 勢いありますよ。 『文学東洋』に連載してる『逢引』も 気合い入ってます。 『なぜ あんな告白を してしまったのだろう。 女の口から 『あなたを好きです』と 言ってしまったのだ。 どしゃ降りの雨の中 男は ハル子を追ってきた。」

三田「ハル子の胸は 春の嵐のように 轟々と高鳴っていた。 男は 傘を差し出し ハル子を抱き締めた。 だが 明くる日 男は ハル子に 信じられない言葉を言い放った。 『ゆうべの事は 忘れて下さい』』。」

醍醐「はなさん この小説 ひょっとして…。」

梶原「安東君 どうかしたのか?」

はな「あ… いえ…。」

(電話の呼び鈴)

「安東さん 電話。」

はな「あっ はい。 ありがとうございます。 はい 安東でございます。」

宇田川『宇田川満代です。』

はな「てっ う… 宇田川先生! はい! あ… すぐに伺います! はい。」

梶原「宇田川先生 何だって?」

はな「うちの連載の第1話を 今 書いて下さってるそうです!」

(どよめき)

醍醐「すごいわ はなさん! お手柄よ!」

はな「行ってきます!」

一同「行ってらっしゃい!」

カフェー・ドミンゴ

はな「宇田川先生…。」

宇田川「話しかけないで! ここまで来たら 一気呵成よ。」

平祐「今日は 静かでいいなあ。」

かよ「お姉やん よかったね。 苦労したかいがあったじゃん。」

(時計の音)

(時計の時報)

宇田川「出来たわ。」

はな「宇田川先生 ありがとうございます。 『銀河の乙女』ですか! すぐに読んでも よろしいでしょうか?」

宇田川「それが編集者の仕事でしょ。」

はな「では。」

宇田川「コーヒー お代わり。」

かよ「はい。」

はな「すばらしいです! 傑作です!」

宇田川「簡単に褒めないでちょうだい。 作家に最高の作品を求めるのが 編集者でしょ。 駄目を出してちょうだい 駄目を。」

はな「駄目なんて そんな…。」

宇田川「まあ 『みみずの女王』に言われても 私は 書き直さないけど。」

はな「本当に すばらしいです! 特に ここ。 『『スピカ スピカ。 おお 私の美しい星よ』。 ルカは ささやきました。 『二度と この地球に 帰ってこられなくてもいいの』。 その時 銀河の女王が見えない翼を ルカに そっと授けました』。」

宇田川「そこ 実は 私も一番 気に入ってるの。」

はな「本当にすばらしいです。 本当に ありがとうございました。 第2話以降も楽しみにしています。」

平祐「ごちそうさま。 (小声で)君のお姉やんも ようやく 編集者らしくなってきましたね。」

かよ「ありがとうございます。」

聡文堂

梶原「もしもし 安東君。 宇田川先生の原稿 どうだ?」

はな『たった今 すばらしい原稿が仕上がりました。』

梶原「そうか! もう 時間がないんだ。 そのまま 村岡印刷に届けてくれ。」

はな『村岡印刷… ですか。』

梶原「安東君。 何か 問題でもあったのか?」

はな『ああ いえ…。 分かりました。 これから すぐに届けます。』

カフェー・ドミンゴ

玄関前

はな「村岡印刷か…。 こぴっと届けるしかねえ。」

宇田川「あの男は 結婚してたんじゃないかしら。」

はな「あの男って…。」

宇田川「だから 抱き締めた翌日 『ゆうべの事は忘れて下さい』と 言い放った男よ。 作家の勘ではね 彼には 妻がいたのよ。 あなたも大変だったわね。」

はな「あ… 宇田川先生! だから それは 友達の事で 私は 大変なんか 全然…。」

宇田川「まあ 頑張って。 原稿 無くさないで届けてね。」

はな「こぴっとしろし。」

村岡印刷

はな「ごきげんよう。 聡文堂です。 あの… こ… この原稿を 至急 『にじいろ』のページに 組み版して頂きたいんです。」

英治「分かりました。 確認します。」

はな「はい。」

英治「あ… 宇田川先生 書いて下さったんですか。 よかったですね。」

はな「ええ…。 では よろしくお願いします。」

英治「できるだけ 早く 組み版して 弟に届けさせます。」

はな「では 失礼します!」

かよ宅

(猫の鳴き声)

居間

はな「(ため息)」

かよ「お姉やん… 眠れんの?」

はな「てっ… ごめん。 起こしちまったけ?」

かよ「今日 村岡印刷に行ったら? 大丈夫だったけ?」

はな「ああ… 村岡さんの事? もう 忘れた 忘れた。 奥さんのいる人だって 分かった途端 ただの物体に見えたさ。」

かよ「物体?」

はな「うん。 大きくて邪魔な か… 壁じゃん。 うん。」

かよ「お姉やん 無理しんで。」

はな「てっ 無理なんて…。」

かよ「お姉やんのこんだから きっと 仕事場では うんとこさ 無理して頑張ってるら。 おらの前まで 無理しんでいいだ。」

はな「かよ…。」

かよ「お姉やんが 本気で好きんなった人 ほんな簡単に 嫌いになれる訳ないじゃん。 おやすみ。」

はな「おやすみなさい。」

聡文堂

郁弥「お待たせしました!」

梶原「みんな! 届いたぞ。」

<2週間後 ついに 『にじいろ』の 創刊号が完成しました。>

梶原「よし! いい出来だ!」

梶原「記念すべき 『にじいろ』創刊号の 完成を祝って 乾杯!」

一同「乾杯!」

醍醐「英治さん こんな日にも いらっしゃらないなんて残念ね。」

はな「きっと お忙しいのよ。」

醍醐「(小声で)でも はなさんとは 順調に 愛を育んでるんでしょう?」

はな「醍醐さん… それは もういいの。」

醍醐「『いい』って?」

梶原「そういえばさ ずっと 英治君 見ないけど 奥さんの具合 そんなに悪いの?」

郁弥「はあ…。」

醍醐「奥様!? お兄様 結婚なさってたんですか?」

三田「僕も知りませんでした。」

郁弥「兄と結婚してすぐに 義姉は胸を患って 今も入院してるんです。」

醍醐「はなさんは 知ってたの?」

はな「あ… ええ…。」

醍醐「はなさん 大丈夫? こんなに ロマンチックな挿絵を 描いてくれた人が 結婚してたなんて…。」

<これからも この絵を見る度に はなは 切ない気持ちになるのでしょうか。>

病院

廊下

英治「どうも。」

(ノック)

病室

英治「香澄。 今日は どう?」

<この人が 奥さんの香澄さん。 なんと美しい人なんでしょう。 ごきげんよう。 さようなら。>

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