ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第7回「エーゴってなんずら?」【第2週】

あらすじ

東京の修和女学校に編入したはな(山田望叶)は、英語教師・富山(ともさかりえ)に「一度でも落第点を取ったら退学」と告げられ、緊張する。はなは寮母・茂木(浅田美代子)に寄宿舎へ案内され、同室となる醍醐(茂内麻結)と意気投合するが、上級生・白鳥(近藤春菜)には、さっそく言葉遣いや振舞いを厳しく注意されてしまう。やがて校内で大きな図書室を見つけ、小躍りして喜ぶはなだが、並んでいる本を開いてみると…。

7回ネタバレ

東京

1945年(昭和20年) 東京

「火の元 用心! 明かり漏れに注意! 火の元 用心!」

花子「『名前は 何ていうの?』 子どもは ちょっと ためらってから 『私を コーデリアと 呼んで下さらない?』と 熱心に頼んだ。 『私の名前って訳じゃ ないんですけど すばらしく優美な 名前なんですもの』 『コーデリアというんでないなら 何という名前なの?』 『アン・シャーリー。 アンなんて とても現実的な 名前なんですもの』」。 私みたい。」

回想

武「はな。 はなたれ。」

はな「はなじゃねえ! おらの事は 花子と呼んでくりょう。」

武「はあ?」

吉平「貧乏を抜け出すためには これからの時代は 女のボコも 学問を身につけとかにゃ ならんのじゃ。」

ふじ「はなが これを読むと 幸せが いっぱいの気持ちに なる事だきゃあ 分かるだよ。 おまんの顔が キラキラするだ。」

吉平「東京の女学校へ行ったら 大好きな本が なんぼうでも読めるだぞ。」

はな「本当?」

回想終了

汽車

1903年(明治35年)

(汽笛)

<はなは 10歳で 故郷の甲府を旅立ちました。 汽車に乗るのも 東京へ行くのも 生まれて初めての事ばかり。 はなの小さな胸は 緊張と不安で 今にも破裂しそうでした。>

はな「おとう… おら…。」

吉平「心配するな! 修和女学校は ほりゃあ すばらしい学校じゃ。 はなの大好きな本が 山ほど読めるし 海の向こうの カナダっちゅう国から 来た先生たちが 英語で 授業をして下さるんじゃ。」

はな「エーゴ?」

吉平「グッド モーニング。 グッド アフタヌーン。 グッド イブニングじゃ。」

はな「何でえ ほれ。 何かの… 呪文け?」

吉平「(笑い声) 英語の挨拶じゃ。 おとうも これしか英語は知らんが これさえ覚えとけば 大丈夫。 なんとかなる。 朝は グッドモーニング。」

はな「グッドモーニング…。」

吉平「昼は グッドアフタヌーン。」

はな「グッドアフタヌーン…。」

吉平「そうじゃ。 夜は グッドイブニングじゃ。」

はな「グッドイブニング?」

(トンネルですすだらけになる)

はな「(せきこみ)」

吉平「ああ 大事な日なのに すすだらけになっちまった。」

はな「アハハ! おとう 鼻。」

吉平「あっ! アハハハ! はなも 鼻。 アハハハハ! やっと笑ったな。 真っ黒じゃ~ アハハハ! 真っ黒じゃ~。」

修和女学校

正門

吉平「はな 着いたぞ。 ここじゃ。」

はな「てっ…。」

<そこは はなが生まれ育った 甲府の村とは まるで別世界でした。」

吉平「いいけ? はな。 華族のお嬢様なんかに負けるな。 しっかり精進して 見返してやるだぞ。」

エントランス

吉平「ごめんくださいませ! 今日は 日曜日じゃから 学校は 休みずらか。」

ブラックバーン「Stop!」

ブラックバーン『男は立入禁止です!』

吉平「あの… 今日から こちらで お世話になる 娘のはなです。 私は 父親の…。 グッドアフタヌーン。」

茂木「安藤はなさん? ようこそ 修和女学校へ。」

<修和女学校は 明治時代の初めに カナダの宣教師によって作られた ミッションスクールです。 生徒の多くは 華族や富豪といった 特権階級のご令嬢たちでしたが はなは 吉平の奔走で 特別に入学を許されたのでした。 学費免除の給費生として。」

校長室

(英語)

富山「校長の ミス ブラックバーン先生です。」

吉平「あっ こちらが 校長先生ですか。」

富山「私は 校長の通訳を担当する 英語教師の富山です。」

茂木「寄宿舎の寮母と お裁縫の教師をしております 茂木でございます。」

吉平「娘が お世話になります。 ほら。 はなも ご挨拶しろし。」

はな「グッド… グッド モー…。」

吉平「日本語でええから。」

はな「安藤はなでごいす。 よ… よろしくお願いしやす。」

茂木「よろしくね はなさん。」

はな「本当の名前は はなだけんど おらの事は 花子と呼んでくりょう。」

吉平「はなで結構でございます。 これ はなの着替えと勉強道具です。 お願いします。 はな。 今日から ここが はなのうちじゃ。」

茂木「そうですよ はなさん。 神様の御前では 人は平等。 身分なんて関係ありません。 寄宿生は みんな 姉妹同然ですからね。」

富山「ただし あなたは 給費生です。 その自覚だけは 忘れないように。 ここでは 徹底した英語教育をしています。 特に給費生は ほかの生徒よりも 一層 勉強に励まねばなりません。」

はな「はい。」

富山「一回でも落第点を取ったら 学校をやめてもらいます。」

はな「てっ!」

富山「『てっ』?」

吉平「ああ… すいません。 甲府のなまりです。 あの… はなのほかにも 給費生が いると伺ってるんですが…。」

茂木「それが…。」

富山「落第して学校を去りました。」

吉平「てっ!」

富山「以上です。 お父様は もうお引き取り下さい。」

吉平「あ… はい…。 娘を どうか よろしくお願い申します。」

寄宿舎

茂木「ここが 今日から お友達と生活する お部屋です。 失礼します。」

はな「し… 失礼しやす。」

<寄宿舎では 予科 本科 高等科の 生徒が一緒に暮らしていて 少女から成人した生徒まで 年齢は まちまちでした。>

3人「ごきげんよう。」

はな「ごき…?」

茂木「編入性の安東はなさんです。 こちら 高等科の白鳥かをる子さんと 本科の一条高子さん。 こちらは あなたと同じ 編入性の醍醐亜矢子さん。」

醍醐「私も ここへ来たばかりなんです。」

はな「本当け。」

白鳥「『本当け』?」

醍醐「父が貿易会社の社長で 母とイギリスへ旅立ってしまって。 でも 大きい方たちが それは親切にして下さいますわ。」

はな「大きい方?」

<大きい方というのは 目方の事ではなく ここでは 上級生は 大きい方 下級生は 小さい人と 呼ばれていました。>

醍醐「はなさん 私のお友達になって下さらない?」

はな「いいずら! おらこそ 友達になってくれちゃ。」

白鳥「『ずら』? 『おら』? 『くれちゃ』?」

醍醐「まあ うれしい!」

はな「おらの事は 花子と…。」

白鳥「小さい人たち。 ちょっと お待ちになって。 今の言葉遣いは 感心致しません。 『私こそお友達に なって頂きとう存じます』と 言うべきです。」

はな「えっ?」

茂木「白鳥さんは 言語矯正会の会長役ですから 言葉遣いには 厳しいんですよ。」

白鳥「言葉の乱れは 精神の乱れです。 美しく正しい日本語を 話せるように努力なさって下さい。」

はな「はい。」

茂木「まあ 急には 無理だから ゆっくりと直していきましょう。」

(ベル)

茂木「お夕食の時間です。 食堂に参りましょう。」

醍醐「はなさん おリボンは どうなさったの?」

花「はっ? おリボン?」

醍醐「髪に おリボンをつけないのは 着物に帯を締めないのと 同じなんですって。」

はな「え…。」

醍醐「私のを 1つ差し上げるわ。」

安東家

居間

吉太郎「くたびれた。 はな~! 水をくりょう。」

周造「はなは いねえだ。」

吉太郎「てっ。 ほうじゃんけ~…。」

もも「おかあ!」

ふじ「はあ 帰ったよ。」

かよ「お姉やんがいないと ももは 言う事聞かんし つまらんじゃん。」

ふじ「はなは どうしてるだかねえ。」

周造「そうさな。 華族のお嬢様なんかと うまくやってけるずらか。」

ふじ「大丈夫 大丈夫。 きっと 今頃 目ぇキラキラさして 大好きな本を 思いっきし読んでるら。」

修和女学校

廊下

はな「ちょっと待ってくりょう!」

醍醐「はなさん?」

図書室

はな「本じゃん。 本の部屋じゃんけ! これ 全部 読んでいいずらか!」

富山「『読んでもよろしいのですか?』と 聞くものですよ。」

はな「読んでも… よ…。」

富山「もちろん 読んでもいいのです。 ただし 読めればですけど。」

はな「てっ! 何でえ こりゃ!」

富山「ここは 全部 英語の本です。」

はな「英語…。」

富山「明日からの授業に ついてこられるかしら。 まあ 頑張って下さい。 落第して退学になった ほかの給費生のように ならないように。」

<『おら こんなとこで やってけるんだろうか』。 はなは 心の底から不安になりました。 ごきげんよう。 さようなら。>

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