ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第85回「最高のクリスマス」【第15週】

あらすじ

月日がたち、12月。ある日、朝市(窪田正孝)と武(矢本悠馬)が、かよ(黒木華)の働くカフェーへやってくる。驚いたはな(吉高由里子)が理由を尋ねると、武はぶどう酒の売り込みのため上京し、朝市はそのお供だと言う。はなはカフェーに居合わせた宇田川(山田真歩)に積極的に話しかけ、連載が好評の『銀河の乙女』を単行本化したいと持ちかける。朝市は、はなが元気を取り戻して仕事に打ち込む様子に、少しほっとするが…。

85ネタバレ

かよ宅

玄関前

はな「奥様の事でしょう? 聞きました。 全部。」

英治「言いそびれていて すいません。」

病院

郁弥「義姉さんが 兄と離婚したいと 言いだしたんです。」

病室

香澄「あなたの心には ほかの女の人がいるわ。」

聡文堂

執務室

はな「てっ… 校正! どうしよう!」

梶原「安東 お前 ずっと どうかしてるよな。 しばらく 会社に出てこなくていい。」

協会

図書室

はな「今度こそ 忘れてやらあ!」

朝市「はな! なんて事するでえ!」

安東家

居間

はな「おら… 好きになったらいけん人を 好きになっちまった。 奥さんがいる人だって知らなんで 本気で好きになっちまっただ。」

<おかあに全てを打ち明けた はなは いつもの明るいはなに戻って 東京へ帰ってきました。>

<季節は巡り 年の瀬の事でございます。>

カフェー・ドミンゴ

玄関前

<おや? 朝市と武じゃありませんか。>

ホール

女給「いらっしゃいませ。」

武「朝市 キョロキョロするじゃねえ。 お上りさんだと思われて バカにされるら。」

朝市「おらたち 正真正銘のお上りさんじゃん。」

武「しっ! 黙ってりゃあ分からんら。」

武「て~っ! 銀座のカフェーの女給って 美人ばっかしだな。 おらに笑顔を振りまいてるじゃん。」

かよ「キャッ!」

武「おねえさん かわいいなあ~。」

かよ「お客さん! ここは そういう店じゃねえから やめてくれちゃ。」

朝市「てっ! かよちゃん?」

かよ「てっ 朝市!」

朝市「久しぶりじゃん!」

<朝市と武は 一体どうして 銀座のカフェーなんかに やって来たのでしょうか。>

朝市「久しぶり!」

かよ「びっくりしたよう。」

かよ「お姉やん。」

武「よう はなたれ。」

朝市「はな!」

はな「てっ… 朝市 どうしたでえ?」

武「朝市は おらのお供だ。 おらは お父様の言いつけで ブドウ酒を東京で売るために来ただ。」

朝市「武が 一人で東京行くの 心細いって言うもんで。 学校も ちょうど冬休みだし。」

武「いや~ 来てみたら 銀座なんて どうって事ねえな!」

はな「…で いつまでいるでえ?」

亜d西市「上野に宿とったから 2~3日は。」

武「この際だから 東京見物もしてえしな。 とりあえず 銀ブラに連れてけし。」

かよ「あの~… 銀ブラの意味 分かってます?」

武「バカにするじゃねえ。 銀座をブラブラするから 銀ブラに決まってるら。」

2人「違います。」

武「てっ?」

朝市「てっ?」

はな「銀座で ブラジルコーヒーを飲むから 銀ブラというんです。」

<それが銀ブラの 本来の意味だという説もあります。>

朝市「すげえなあ。 2人とも すっかり東京になじんでて。」

武「ほ… ほれじゃあ 2人で おらたちを案内しろし!」

かよ「悪いけど 私たち そんなに暇じゃないんです。」

(ドアベル)

はな「宇田川先生 いらしたから ほれじゃ。 ごきげんよう。」

かよ「いらっしゃいませ。」

宇田川「コーヒー。」

かよ「はい。」

宇田川「あの お上りさんたち 知り合い?」

はな「田舎の幼なじみです。」

宇田川「へえ~。」

はな「宇田川先生。 先日は 『銀河の乙女』の原稿 ありがとうございました。 感動的な最終回でした。 編集長たちも大喜びです。 これで 『にじいろ』新春特別号も きっと大評判ですね。」

宇田川「次の連載の依頼なら 当分 忙しいから駄目よ。」

はな「もちろん 次も お願いしたいのですが その前に 『銀河の乙女』を 是非 単行本にしたいんです。」

宇田川「…単行本?」

はな「はい。」

宇田川「話 聞こうじゃないの。」

はな「ありがとうございます。」

回想

朝市「『今度こそ忘れてやる』って どういう意味でえ? はな…。 話してくれちゃ。」

はな「朝市…。 ごめん…。」

回想終了

<朝市は あれから ずっと はなの事が心配だったのです。」

はな「装丁も凝ったものにしたいんです。」

朝市「はな 元気んなってよかったな…。」

かよ「朝市 もしかして お姉やんの事 心配で 様子 見ぃ来ただけ?」

朝市「うん。 あっ おじさんにも はなが元気で仕事してるか 見てきてくれちゃって言われて。」

かよ「おらも 少し前まで心配したけんど お姉やん 今では あのとおり すごく 仕事に燃えてるさ。」

朝市「ほうか。 本当によかったな。」

武「苦え! これが5銭もするだか!」

聡文堂

執務室

醍醐「編集長。」

梶原「ん?」

醍醐「これ。 奥様 お亡くなりになって 半年たつんですね。」

梶原「ああ…。」

醍醐「村岡さん まだ お力 落としていらっしゃいますか?」

梶原「いや… もう忙しそうに働いてるよ。」

醍醐「そうですか。」

(ドアが開く音)

はな「戻りました。」

梶原「これは 宇田川先生!」

宇田川「『銀河の乙女』連載の中で 一番 評判いいんですってねえ。」

梶原「それは もう。」

宇田川「『みみずの女王』がね 早速 単行本にしたいって言うの。」

はな「編集長 是非やらせて下さい。」

梶原「もちろん。 私からも お願いしようと思ってたんです。」

宇田川「じゃあ 早速 取りかかってちょうだい。」

梶原「はい。」

はな「ありがとうございます!」

須藤「(小声で)やるね 安東君。」

三田「(小声で)あいつに 先越されるとは一生の不覚…。」

梶原「単行本の担当は… 安東と醍醐でよろしいですか?」

宇田川「女性編集者だけ? まあ 使えない男の人よりは マシかしら。」

2人「よろしくお願いします!」

宇田川「私 挿絵を描いてもらう人は もう決めてるの。」

梶原「誰ですか?」

宇田川「『王子と乞食』の挿絵 描いてる人。」

三田「はい これですね!」

宇田川「そう。 著名がないけど… 何ていう絵描きさん?」

はな「それは… えっと…。」

醍醐「それを描いたのは 印刷会社の方で 本職の絵描きさんじゃないんです。」

宇田川「構わないわ。 私 創刊号から ずっと気に入っての。 この人に頼んで。 何? その人じゃ駄目なの?」

はな「あ… いえ! この絵 本当にいいですよね。 『銀河の乙女』の物語に合わせて もっと すてきな挿絵を 描いて頂きましょう。 早速 村岡印刷さんに 頼んでみます。」

廊下

醍醐「村岡さんと顔合わせるの 久しぶりね。」

はな「ええ。」

醍醐「はなさんは もう大丈夫?」

はな「醍醐さん。 その節は ご心配おかけしました。 でも もう本当に大丈夫。 今 私の頭の中は 仕事の事でいっぱいなの。」

醍醐「そうみたいね。 翻訳も好評だし その上 宇田川先生の単行本の話まで 進めちゃうなんて。 意外に はなさんって野心家ね。」

はな「野心を持つという事は 楽しい事だわ。 一つの野心を 実現したかと思うと もっと高いところに 別のものが輝いてるんですもの。 人生で とても 張り合いのあるものになるわ。」

醍醐「はなさん…。」

はな「今 私のパルピテーションは 仕事なの。」

醍醐「そうね。 私も負けてられないわ。」

はな「さあ 行きましょう。」

醍醐「ええ。」

<仕事に燃えるのは 結構ですが 恋のパルピテーションは 本当に すっかり 消えてしまったのでしょうか?>

村岡印刷

郁弥「父さん… 見合いするの?」

平祐「バカ言うな。 英治の見合いだよ。 新しい縁談が次々に来てるんだ。」

英治「断って下さい。」

平祐「英治 お前は 3年間 病気の香澄さんに よく尽くした。 そろそろ 新しい家庭を築いて 子どもを作る事を考えろ。 ほら このお嬢さんなんか 良妻賢母になりそうじゃないか。 会ってみたら どうだ。」

英治「僕は いいです。 郁弥 お前 どうだ?」

郁弥「僕も いいよ。 My better halfは 自分で探すから。」

平祐「全く うちの息子たちは…。」

(ノック)

醍醐「ごきげんよう。 聡文堂です。」

はな「ごきげんよう。」

郁弥「こんにちは。」

平祐「いらっしゃい。」

英治「どうも。 ご無沙汰してます。」

はな「こちらこそ ご無沙汰しております。」

醍醐「突然 押しかけてしまって 申し訳ありません。 今日は お兄様に 仕事のお願いがあって参りました。」

郁弥「あ… 僕じゃなくて 兄に?」

醍醐「ええ そうなんです。 お話し中でしたか?」

郁弥「父が兄に見合いを 勧めてるんですよ。」

醍醐「まあ。」

平祐「君たちも 早く結婚した方が いいんじゃないか?」

醍醐「もちろん いい出会いがあれば。 私たち 仕事に理解のある すてきな男性がいらしたら 明日にでも結婚したいですわ。 ねえ はなさん?」

はな「ええ。」

平祐「そんなに都合のいい男が いるもんか。」

郁弥「父さん 今日は まだ コーヒー飲んでないだろ? カフェーでも行ってきたら?」

平祐「ああ… そうするか。 私は 消えるから 仕事の話を存分にして下さい。 では ごゆっくり。」

英治「失礼しました。 どうぞ お掛け下さい。」

はな「失礼します。 実は この度 宇田川満代先生の 『銀河の乙女』の 単行本を出す事になりまして。 つきましては 村岡さんに 挿絵をお願いしたいんです。」

英治「え… 挿絵を?」

はな「はい。」

醍醐「宇田川先生は 『王子と乞食』の 挿絵を大層 気に入っていらして ああいう絵をお望みなんです。」

英治「はあ… しかし…。」

はな「どうか 引き受けて下さい。 お願いします。」

醍醐「お願いします。」

はな「あの… いかがでしょうか?」

醍醐(心の声)『はなさんの頼みですもの。 きっと引き受けて下さるわ。』

はな(心の声『引き受けてくれるまで 今日は帰らねえぞ。』

郁弥(心の声)『兄さん この人に弱いからなあ…。』

はな(心の声)『きっと引き受けてくれるら…。』

英治「お断りします。」

はな「てっ…。」

<てっ! そんなに 甘くございませんでしたね。 ごきげんよう。 さようなら。>

モバイルバージョンを終了