あらすじ
英治(鈴木亮平)に『銀河の乙女』の挿絵を描いて欲しいと頼んだものの、あっさり断られてしまったはな(吉高由里子)。しかしはなはひるむことなく、宇田川(山田真歩)からも必ず口説き落とせと言われ、醍醐(高梨臨)とともにさらに意気込む。はなと醍醐が作戦会議のためにカフェーへ来ると、朝市(窪田正孝)と武(矢本悠馬)が再びやって来ていた。近くの席にいた平祐(中原丈雄)は、はなと醍醐の話が耳に入り…。
86回ネタバレ
村岡印刷
はな「実は この度 宇田川満代先生の 『銀河の乙女』の単行本を 出す事になりまして。 つきましては 村岡さんに 挿絵をお願いしたいんです。」
英治「え… 挿絵を?」
はな「はい。」
醍醐「宇田川先生は 『王子と乞食』の挿絵を 大層 気に入っていらして ああいう絵を お望みなんです。」
英治「はあ… しかし…。」
はな「どうか 引き受けて下さい。 お願いします。」
醍醐「お願いします。」
はな「あの… いかがでしょうか?」
英治「お断りします。」
はな「てっ…。 そんな… どうしてですか?」
英治「いえ 挿絵は 本職ではありませんから。」
醍醐「でも はなさんのページには あんなに すてきな絵を 描いていらっしゃったじゃないですか。」
英治「素人ですが あの挿絵だけは 描きたかったんです。 とにかく そのお話は お断りします。 勝手を言って申し訳ありません。」
<久しぶりに 英治と再会した はなですが 依頼は あっさり断られてしまいました。>
はな「村岡さん。 私 諦めません。」
醍醐「はなさん…。」
はな「引き受けて頂くまで 諦めませんから!」
聡文堂
執務室
梶原「そうか。 断られたか。」
はな「『自分は 本職ではないから』と…。」
須藤「奥さんが亡くなって まだ半年でしょう。 まだ 立ち直れないんないですか?」
梶原「亡くなって もう半年と思うか まだ半年と思うかは 人によって違うからな。」
醍醐「そうですね…。」
(ドアが開く音)
宇田川「失礼するわ。」
はな「宇田川先生…。」
須藤「これは これは…。」
三田「わざわざ お越し頂きまして…。」
宇田川「さあ 単行本の挿絵の 打ち合わせをしましょう。」
醍醐「先生 それが…。」
宇田川「私 大変 忙しいの。 さっさと始めましょう。」
はな「先生。 実は 村岡さんに断られてしまいました。」
宇田川「私の本に挿絵を描けるのに? こんな光栄な事を 断る人がいるの?」
醍醐「先生 まだ たった一度 断られただけですから…。」
宇田川「必ず 口説き落して。」
はな「お任せ下さい。 ただいま お紅茶を。」
<はなも 随分と たくましくなったものです。>
醍醐「はなさん。 何か いい策があるのね?」
はな「何もないわ。」
醍醐「えっ…。」
<大丈夫でしょうか?>
カフェー・ドミンゴ
<この2人 またいるんですね。>
武「おい 遅えぞ。」
かよ「それは 申し訳ありませんね。」
朝市「ありがとう。 頂きます。」
武「うわっ 辛え!」
かよ「カレーだから甘くねえさ。」
(せきばらい)
かよ「騒がしくて すみません。 静かにしろし。 ほかのお客様に迷惑じゃん。」
(ドアが開く音)
はな「とりあえず 作戦会議しましょう。」
醍醐「ええ。」
朝市「はな。」
はな「てっ…。 2人とも ほかに行く場所 ねえだけ? ブドウ酒 売り込みぃ東京来たなら こぴっと仕事しろし。」
武「だから こうして カフェーに売り込みぃ来てるじゃんけ。」
はな「遊んでるようにしか見えんけど。」
かよ「全く コーヒーは 苦くて飲めねえって言うし カレーは辛いって文句言うし。」
醍醐「はなさん お知り合い?」
武「てっ…。」
はな「あ… 幼なじみの朝市と武。」
はな「こちらは 聡文堂の醍醐さん。」
武「はなたれんとこの地主の 徳丸 武でごいす。」
醍醐「ごきげんよう。」
朝市「はな こぴっと仕事してますか? ご迷惑かけてねえですか?」
はな「ちょっと 朝市 余計な事 言わないでいいから!」
醍醐「ご心配なさないで。 はなさん こぴっとやってましてよ。」
朝市「はな 抜けてるとこあって 失敗も いぺえするけんど 頑張り屋ですから どうか よろしくお願えします。」
はな「もう 朝市! いいから。」
(せきばらい)
平祐「コーヒーを静かに味わいたいんだ。」
はな「すいません! あっ 社長?」
醍醐「あの… どうしたら 英治さんに 挿絵を描いて頂けるでしょうか?」
はな「宇田川先生の単行本の挿絵を お願いしたら 断られてしまったんです。」
平祐「ここで 仕事の話はしないでくれ。」
はな「失礼しました。」
醍醐「はなさんの『王子と乞食』には 自分から進んで 挿絵を描いて下さったのにね…。」
(ため息)
醍醐「『銀河の乙女』の物語が お好きじゃないのかしら…。」
はな「それなら 物語のすばらしさを 分かってもらえるように 説得しましょう。 これから 毎日でも通って…。」
平祐「それは 困る! 毎日 会社に来られて 居座られでもしたら仕事にならん。 はあ… 私から 英治に言っておこう。」
はな「本当ですか?」
醍醐「ありがとうございます。」
はな「ありがとうございます。 私 早速 宇田川先生に 電話してくるわ。」
醍醐「ええ。」
平祐「君のお姉やん よく頑張ってるからね。 ごちそうさま。」
かよ「ありがとうございます。」
醍醐「ありがとうございました。」
武「美しい…。」
かよ「醍醐さんは 社長令嬢だから 相手にされっこねえよ。」
武「てっ 社長令嬢け。 地主のおらに ますます ぴったりじゃん。 醍醐さん。」
<武。 その人は無理。 無理 無理!>
村岡印刷
英治「お帰りなさい。」
平祐「『銀河の乙女』の挿絵 お前が描け。」
英治「えっ? 何ですか いきなり。」
平祐「作家の お前に描いてほしいと 言ってるそうじゃないか。」
英治「いや でも ほかに仕事もありますし…。」
平祐「もう引き受けてしまった。 社長命令だ。」
英治「父さん。」
平祐「引き受けた以上 よい本にしろ。」
翌日
(ノック)
醍醐「おはようございます。」
はな「ごきげんよう。 聡文堂です。」
郁弥「あれ? お二人とも 今日は何ですか?」
はな「早速 挿絵の打ち合わせに 参りました。」
郁弥「えっ…。」
英治「どうぞ こちらへ。」
はな「失礼します。」
はな「ここと ここ。 それから ここに 挿絵を挿入したいと考えています。」
英治「どんな挿絵にしましょうか?」
はな「物語を読んで感じたままを 自由に描いて下さい。」
英治「自由にですか…。」
醍醐「はなさんのページと同じ要領で 描いて下されば結構ですから。」
はな「あと 1枚だけ 宇田川先生の強い希望があります。」
英治「はい。」
はな「え~っと… ここ。 ここの部分に 主人公 ルカの絵を 入れたいとの事です。」
英治「すいません。 先生は どのようなルカを 想像されてるんでしょうか?」
はな「村岡さんが物語を読んだ印象で 自由に描いて下さいとの事です。」
英治「素人にとっては それが一番 難しいですね…。」
醍醐「心配いりませんわ。 私たち いくらでも相談に乗りますし。」
はな「ええ。 先生 村岡さんの絵を 楽しみにしてますよ。」
英治「はあ… 分かりました。」
2人「よろしくお願いします。」
夜
郁弥「ただいま戻りました。」
英治「お帰り。」
郁弥「兄さん その挿絵 どうして引き受けたの?」
英治「えっ? いや… 父さんが勝手に 引き受けてきちゃったんだよ。」
郁弥「それなら 兄さんから 断ったらいいじゃないか。」
英治「そういう訳にもいかないだろ。 社長命令なんだから。」
郁弥「安東さんの頼みだから 引き受けたんじゃないの?」
英治「急に どうしたんだよ? 郁弥。」
郁弥「いや… 何でもない。 邪魔して ごめん。」
英治「ちょっと… 出てくる。」
(ドアが閉まる音)
<これは 亡くなった香澄さんのカメオ…。 どうして 彼が持っているのでしょう? 何か秘密がありそうです。>
カフェー・ドミンゴ
蓮子「はなちゃん こっちよ。」
はな「蓮様! お待たせして ごめんなさい。」
蓮子「ううん。」
かよ「朝市と武なら いねえよ。 ほかのカフェー教えてやったら ようやく いなくなってくれたさ。」
はな「あっ コーヒーお願い。」
かよ「はい。」
蓮子「朝市君って はなちゃんの幼なじみの? 東京にいらしてるの?」
はな「ええ そうなの。」
蓮子「甲府で一緒に釣りをしたのが 懐かしいわ。」
はな「蓮様… 今日は 一段ときれい。」
蓮子「まあ… うれしい。」
<恋する女は 美しいのです。 たとえ それが許されない恋でも。」
はな「ねえ。 頂いたお手紙に 『会わせたい人がいる』って 書いてあったけれど。」
蓮子「そうなの。 実は 今日 彼も ここに呼んでいるの。」
はな「てっ… えっ 彼って もしかして 帝大生の?」
蓮子「そう。 もうすぐ来るわ。」
はな「『もうすぐ来るわ』って… だって ご主人は? 一緒に 東京にいらしてるんでしょう?」
蓮子「あの人は 今頃 新橋で芸者を揚げて遊んでるわよ。」
はな「だからって 蓮様… いけない事よ。」
蓮子「はなちゃん そんな怖い顔しないで。」
はな「だって… いけないわ。」
(ドアベル)
かよ「いらっしゃいませ。」
嘉納「おお はなちゃん! 久しぶりやね。」
蓮子「あなた…。」
嘉納「サイダー 飲みよるか?」
はな「あ… いえ…。」
<修羅場の予感が致します。 ごきげんよう。 さようなら。>