ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第87回「最高のクリスマス」【第15週】

あらすじ

カフェーで会っていたはな(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)の元へ、突然、伝助(吉田鋼太郎)がやって来た。思いがけない伝助の登場に動揺した蓮子は、一足違いで店に入ってきた龍一(中島歩)に来るなと合図し、はなもその様子に気づく。伝助は、料亭での接待までまだ時間があるから立ち寄ったのだと言う。蓮子が欲しがっていたものが見つかったから渡しに来たという伝助は、箱の中からある物を取り出してみせる…。

87ネタバレ

カフェー・ドミンゴ

蓮子「実は 今日 彼も ここに呼んでいるの。」

はな「てっ… えっ 彼って もしかして 帝大生の?」

蓮子「そう。 もうすぐ来るわ。」

(ドアベル)

かよ「いらっしゃいませ。」

嘉納「おお はなちゃん! ひさしぶりやね!」

蓮子「あなた…。」

嘉納「サイダー 飲みよるか?」

はな「いえ…。」

嘉納「蓮子 どげしたとか?」

蓮子「あなたこそ どうして ここに?」

嘉納「いや はなちゃんと この店で会うち お前が言うたとやないか。」

かよ「いらっしゃいませ。 今日は お一人ですか?」

龍一「あ…。」

かよ「こちらへ どうぞ。」

蓮子「あなたが カフェーなんかに来るなんて 一体 どうなさったの? 今夜は 料亭で接待があるって おっしゃってたじゃありませんか。」

嘉納「いや まだ少し時間がある。 お前が欲しがっちょったもんが 見つかったき 渡そうと思うてな。 ほれ。」

はな「てっ… きれい…。」

嘉納「こないだ あの… え~… 何とかブルグっち国の皇太子が 結婚した記事を見て このテアラっちゅう宝石を お前 欲しそうに見よったやろ。」

蓮子「欲しいなんて 私は ひと言も…。」

嘉納「言わんでん分かるたい。 お前 ここんとこ しばらく 元気がなかったき これで機嫌も直るち思うて おお 東京中の宝石店やら百貨店やら ハハッ 探させたとばい。 ほら。」

かよ「てっ… こんなに きれいな宝石 初めて見たじゃん。」

嘉納「おお よう似合うちょるばい。 なあ はなちゃん?」

はな「ああ… 蓮様 すっごく きれい。」

蓮子「こんなもの買うくらいなら 貧しい子どもたちの 寄付でもなさったら どう!?」

嘉納「蓮子!」

はな「でも 蓮様 すごくお似合いだったわよ!」

かよ「本当に お姫様みたいでした。」

はな「ねっ。」

嘉納「全く… わがままな お姫さんたい。 ハハハハハハ!」

蓮子「早く新橋に行った方が よろしくってよ。」

嘉納「いや たまには こういう店で食うともいいばい。 一番高い酒と 何でんいいき高い料理 どんどん持ってこんね。」

蓮子「そんな!」

嘉納「何か? 俺が ここにおったら いかんとか?」

蓮子「そういう訳では…。」

はな「今日は 思いがけず ご主人に お目にかかれて よかったです。」

嘉納「ああ。 俺もたい。 あんたとは 気が合いそうやきね。 さあ 早よ 酒 持ってきちゃってん。」

かよ「てっ! こ… こんなに たくさん…。」

嘉納「よかよか!」

かよ「ありがとうございます! すぐに!」

嘉納「あんたたちも これで一杯やんなさい!」

女給「ありがとうございます!」

嘉納「皆さんも どうぞ!」

「ありがとうございます!」

「ごちそうさまです!」

嘉納「どうぞ どうぞ! ハッハッハッハ!」

(机をたたく音)

(ドアが閉まる音)

嘉納「ん? どげしたとか?」

かよ「さあ! 乾杯しましょう!」

嘉納「おお… おう! 乾杯じゃ!」

はな「ほら 蓮様も。」

嘉納「では 乾杯!」

一同「乾杯!」

「頂きます!」

「頂きます!」

かよ宅

居間

はな「蓮様。 私… 今夜 ご主人がいらして下さって よかったと思ってる。」

蓮子「どうして? お金もうけの話ばかり聞かされて うんざりしたでしょう?」

はな「ううん。 嘉納さんって 今は すごく お金持ちだけど 子どもの頃は 貧しくて苦労なさった方なんじゃ ないかしら。」

蓮子「確かに 昔は 苦労したらしいけど…。」

かよ「ほれに 優しい人じゃん。 たくさんチップ 頂いちまって… 本当にありがたい事です。」

はな「蓮様… もう帝大生の方とは 会わない方がいいんじゃなくて?」

蓮子「それは 無理…。 今 この瞬間も 会いたいんですもの。」

はな「蓮様…。 言ってたじゃない。 『道ならぬ恋なんて 愚かな事は しない』って。」

蓮子「あの人を思う気持ちを 止められないの。 もう 恋に落ちてしまったんですもの。」

はな「そんな… ご主人を裏切っては駄目!」

蓮子「はなちゃん。 たとえ誰を傷つけても 私は この思いを貫くわ。 やっと分かったの。 私が この世に生まれて 今まで生きてきたのは 彼と巡り会うためだったの。 はなちゃんなら分かるでしょう? はなちゃんも 村岡さんの事を そう感じたから 好きになったんでしょう?」

はな「そんな事…。 そりゃあ ちょっとは パルピテーションを感じてしまった瞬間は あったけれど そんなのは とっくに昔の話よ。」

蓮子「村岡さんは 花ちゃんにとって たった一人の巡り会うべき人じゃ なかったのかしら。 私の思い過ごし?」

聡文堂

執務室

はな「いかがでしょうか?」

醍醐「どれも 物語の世界に合っていて すてきだと思うんですけど…。」

宇田川「これは 銀河の乙女ではないわ。 あとの絵はいいけど この絵は 描き直してちょうだい。」

英治「分かりました。」

はな「お願いします。」

英治「あの… 先生の思い描く 銀河の乙女を教えて頂けますか?」

宇田川「ここに書いてあるでしょ?」

英治「はあ…。」

はな「先生 せめて その絵の どの辺が違うのか…。」

宇田川「とにかく 何か違うのよ。」

英治「分かりました。 もう一度 読み直して描いてみます。」

宇田川「よろしく。」

醍醐「ああいう抽象的な感想が 一番 やっかいなのよね…。」

カフェー・ドミンゴ

(ドアが開く音)

かよ「いらっしゃいませ。 てっ… また来ただけ。」

武「また来てやったさ。 喜べし。」

朝市「やっぱり このお店の方が落ち着くじゃん。 ほかのカフェー 女給さんたちが あんまりにも積極的で。」

かよ「田舎もんには 刺激が強すぎたけ?」

武「う~ん 女給は 美人だったけんど こことは比べもんにならんくれえ 高かったさ。 ほういうもんけ?」

<どうやら しっかり ぼられたみたいです。>

かよ「そちらへ どうぞ。 コーヒーでいいけ?」

朝市「うん。 ありがとう。」

かよ「はい。」

はな「『銀河の乙女』の挿絵 どうでしょうか? 『銀河の乙女』を もう一度 読み返してみたんです。」

英治「はい。」

はな「これを見て下さい。」

英治「これは…。」

はな「ルカは 乙女座のスピカへ向かう 長い長い旅の途中で いろいろな敵に出会います。」

英治「アークトゥルスの巨人 プロキオンの悪魔…。」

はな「敵と戦うルカの姿に 何か 手がかりが あるのではないでしょうか? 参考になればよいのですが…。」

英治「すごく助かります。」

はな「という事で 次の締め切りなんですが…。」

英治「ああ ええ。」

村岡印刷

郁弥「それ… 安東さんが作った資料?」

英治「うん。 引き受けた以上 いい本にしないとな。」

郁弥「兄さん。 正直言って 僕は 彼女はやめてほしい。」

英治「何の話だ?」

郁弥「父さんが言うように 兄さんが再婚する事には 僕も賛成だ。 でも 安東さんは やめてほしい。 だって それじゃ… 義姉さんが あんまりにも かわいそうで…。」

かよ宅

居間

回想

蓮子「村岡さんは はなちゃんにとって たった一人の巡り会うべき人じゃ なかったのかしら。」

回想終了

(戸が開く音と かよの荒い息遣い)

かよ「お姉やん… どうしよう!」

はな「かよ! ほんなに慌てて どうしたでえ?」

かよ「武 どこ行ったか知らんけえ? 上野の旅館にも電話したけんど どこにもいんだ!」

はな「ちっと落ち着けし! 武が? どうしたでえ?」

かよ「お姉やん… おらには 武が必要なんだ!」

はな「てっ…。」

<マジですか? ごきげんよう。 さようなら。>

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