あらすじ
朝市(窪田正孝)は英治(鈴木亮平)に、はな(吉高由里子)が甲府へ帰って来たときに英治が贈った英英辞典を捨てようとしたこと、その時の彼女は自分が見たこともないような悲しい様子であったことを話す。酔いつぶれたはなが眠っている横で、朝市は英治に、はなのことが好きならば気持ちを受け止めてやってくれと言う。英治は、あなたこそ彼女を深く理解している、はなのことが好きなのではないかと問い返す。朝市は…。
89回ネタバレ
カフェー・ドミンゴ
朝市「はなに英語の辞書を 贈ったのは あんたですか?」
英治「はい。 そうですけど…。」
朝市「あんたに言ってきてえ事がある。 はなは… 甲府に帰ってきた時 あの辞書を捨てようとしたです。」
回想
はな「今度こそ忘れてやらあ!」
朝市「はな! なんて事するでえ!」
回想終了
朝市「ほんな大事なもん 投げ捨てようとするなんて… びっくりして止めました。 ほん時の はなは… おらが見た事もねえような 悲しい目してたです。 あの辞書をくれた あんたの事 必死に忘れようとしてただと 思います。 今は 元の明るいはなに 戻ったみてえに見えるけんど やっぱり おらには違って見えます。」
朝市「いっくら明るく笑ってても 昔の屈託のない はなの笑顔とは 違うです。 はなは きっと もう おらの知らん はなに なっちまった…。 あんたのせいじゃなですか? あんたも はなの事が好きなら はなの気持ち こぴっと 受け止めてやってくりょう。」
英治「ちょっと待って下さい…。 どうして 僕に そんな事 言うんですか? あなたは 僕より ずっと 彼女の事を分かってる。 朝市さんこそ はなさんの事が 好きなんじゃないんですか?」
朝市「はい。 おらは はなが好きです。 ボコの頃から はなは ず~っと おらのそばにいました。 いつか… おらの嫁さんに なってほしいと思ってました。」
英治「そんなに思ってるなら… あなたが彼女と結ばれるべきだ。」
朝市「はあ… まだ 分からんだけ。 おらじゃ駄目じゃん! あんたじゃなきゃ駄目どう! あ~…。 ヘヘヘ… ああ…。 あ~ 酔っ払った…。 武が待ってるから帰る。」
かよ「朝市。 もう 電車ねえよ。」
朝市「歩って帰る。 ちょうどいい酔い覚ましだ。 はなの事 お願えします。」
翌日
武「ここのライスカレーも 食べ納めじゃん。」
かよ「てっ… やっと甲府に帰るだけ?」
武「ほんなに さみしいなら もっと いてやらっか? ん。」
2人「あ~ ごっそさまでした!」
武「釣りは いらん。 世話になったじゃん。」
かよ「てっ…。 武 初めてチップくれたじゃん! ありがとう。」
武「やっぱし もっと いっかな。」
かよ「朝市。 お姉やんに会わんで 帰っちまうだけ?」
朝市「うん いいだ。 こぴっと頑張れって かよちゃんから 言っといてくりょう。 かよちゃんも 元気で。」
かよ「あっ ちっと!」
朝市「ん?」
かよ「ゆんべの朝市 うんとこさ かっこよかったよ。」
武「何でえ? 朝市のどこが かっこいいでえ?」
朝市「汽車乗り遅れるから 早く行こう! ごっそうさん!」
武「ごっそうさん!」
かよ「ありがとうごいした! フフフ。」
聡文堂
<朝市が はなのために そんな かっこいい事を してくれたなんて つゆほども知らない はなでした。>
はな「はあ…。」
醍醐「ゆうべは 相当飲んでたけど 大丈夫?」
はな「ああ… お恥ずかしいわ。 あっ 『銀河の乙女』 今日こそ入稿したいわね。 村岡さんの挿絵 まだかしら。」
醍醐「きっと すごく いい絵が あがってくるわ。」
はな「えっ?」
醍醐「私 そんな気がするの。」
郁弥「安東さん。」
はな「はい。」
郁弥「後で ちょっと話したい事が あるんです。」
はな「はい?」
郁弥「兄の事で…。」
村岡印刷
回想
醍醐「銀河の乙女は 誰の心にも いると思うんです。 英治さんの心にも きっと いるはずです。」
回想終了
カフェー・ドミンゴ
郁弥「ゆうべ ここで 兄と朝市さんが話しているのを 聞いてしまいました。」
かよ「あのね お姉やん 眠ってたけんど 2人で お姉やんの話をしてただよ。」
はな「そうですか…。 それで?」
郁弥「やはり 兄とあなたは 心が通じ合っていたんですね。 義姉さんが亡くなる前から。 義姉さんも気が付いていました。」
かよ「それで… お義姉さん 突然 英治さんと別れたいなんて 言いだしたんですか。」
郁弥「きっと そうです。 義姉さんの気持ちを思うと 僕は 兄とあなたが一緒になるのだけは 許せないんです。」
はな「そうだと思います。 私も… 自分の事 許せないんです。 正直に言います。 お兄さんの離婚話を聞いた時… 一瞬だけ 考えてしまいました。 お兄さんと 一緒になれるんじゃないかって…。」
はな「もう そんな事 二度と考えません。 好きだとか 一緒にいてえだとか そういう気持ちは 全部 甲州の山ん中に 捨ててきましたから どうか 安心して下さい。」
郁弥「そうですか…。」
はな「村岡さんとは いい仕事の仲間でいたいんです。 今は 心から そう思ってます。」
郁弥「分かりました。」
はな「すいません。 まだ仕事が残っているので… 失礼します。」
かよ宅
(時計の音)
村岡印刷
聡文堂
郁弥「おはようございます。」
一同「おはようございます。」
郁弥「おはようございます。」
はな「おはようございます。」
郁弥「これ 兄から預かってきました。」
醍醐「挿絵 出来たんですか?」
郁弥「はい。」
醍醐「拝見します! どうぞ。」
郁弥「失礼します。」
はな「すてき…。 これなら 宇田川先生も 気に入って下さるわよね。」
醍醐「これは… はなさんよね。」
はな「えっ?」
醍醐「だって ほら この女の子 想像の翼を広げてる。」
<英治の心の中にいる 銀河の乙女というのは ひょっとして…。>
はな「てっ…。」
<ごきげんよう。 さようなら。>