あらすじ
はな(吉高由里子)から「会わせたい人がいる」と電報をもらい、驚く吉平(伊原剛志)とふじ(室井滋)。うわさを聞いたリン(松本明子)とともに安東家で待っていると、はなが英治(鈴木亮平)を連れてやってくる。酒をくみ交わすうちに英治を気に入った吉平は、自ら娘を嫁にもらってくれと言いだし、一同は笑いに包まれる。ところが吉平は酔った勢いで「はなは英語の辞書をくれた男にひどい目にあった」という話をし始め…。
91回ネタバレ
かよ宅
居間
英治「僕の人生には あなたが必要なんです。 結婚して下さい。」
はな「ありがとうございます。 よろしくお願い致します。」
かよ「お姉やん… よかったね…。 本当によかったね…。」
安東家
庭
郵便配達員「電報です。」
吉平「おお~。 大みそかに ご苦労さんでごいす。」
ふじ「ご苦労さんでごいす。」
吉平「おお! はなからだと。」
ふじ「はなから?」
吉平「『会わせたい人がいる』だとう。」
ふじ「てっ。 会わせてえ人…。」
居間
はな「おとう。 おかあ。 ただいま帰りました。 どうぞ。」
英治「お邪魔します。」
はな「父と母です。」
英治「初めまして。 村岡英治です。」
ふじ「はなの母でごいす。 あ… あんたも挨拶しちゃあ。」
吉平「はなの父でごいす。」
リン「お隣の木場リンでごいす。」
はな「朝市のお母さんよ。」
英治「そうですか…。 花子さんは この家で育ったんですね。」
吉平「『花子』?」
ふじ「『花子』…。」
リン「はなずら。」
英治「あ…。 これ つまらないものですが よろしかったら。」
夜
吉平「ああ ほうけ。 お宅は 印刷会社をやってるだか。 ほれじゃあ はなの出版社の本も 印刷してるだか?」
英治「はい。」
はな「村岡さんは 私が翻訳してる『王子と乞食』の 挿絵も描いて下さってるの。」
吉平「へえ~! あの挿絵描いたの 君だったか!」
ふじ「あれは いい絵だったじゃんね~!」
吉平「さあさあ 村岡さん 飲めし。」
英治「ところで… お義父さん… あの… 今日は… 大事なお話があって伺いました。 え~っと… そのですね…。 あの…。」
吉平「いや~ 村岡さん! もう英治君でいいら?」
英治「はい…。」
吉平「俺は 君の事が気に入ったぞ。 ボコの頃から本が大好きな はなに ぴったりの相手じゃん。 はなのこん 嫁にもらってくれちゃあ。 このとおり。」
英治「え…。」
ふじ「てっ! おとうが先に言っちゃ 駄目じゃんけ!」
はな「おとう! 村岡さん 困ってるじゃん!」
英治「ああ いえ…。」
吉平「てっ! アハハハハ!」
吉平「ほれにしても はなから電報もらったときゃあ 一体 どんな男が来るかと 思ったけんど 英治君みてえな青年でよかった。 アハハハハハ!」
英治「(せきこみ) すいません。」
吉平「全く 東京にゃあ ひでえ男もいるからなあ。」
ふじ「あんた! ほれぐれえにしとけし。」
吉平「英語の辞書をくれた男から はなは ひでえ目に遭ったらしい。」
ふじ「あ… すまんじゃんね。 この人 すっかり酔っ払っちまって。」
(雷鳴)
(雨の音)
ふじ「村岡さん はなの事 花子って呼んでくれるだね。」
はな「うん。」
ふじ「アハハ… よかったね。 本当にいい人に巡り会っただね。」
はな「うん。」
ふじ「はな。 あの… 辞書くれた人のこん もう忘れただね?」
はな「…うん。」
ふじ「はあ…。 村岡さんと2人で こぴっと幸せになれし。」
翌朝
吉平「頂きます。」
はな「頂きます。」
英治「あの… お義父さん。 お義母さん。 大事なお話があります。」
吉平「アハハハハ… ゆんべは 酔っ払ってたけんど 『はなを嫁にくりょう』って話なら こぴっと覚えてるだぞ。 アハハハハ。」
英治「いえ。 実は… お二人に黙っている事が ありまして…。」
はな「村岡さん その事は…。」
英治「正直に 全部話そう。 花子さんに 英語の辞書を贈った男は 僕なんです。」
ふじ「てっ!」
吉平「てっ! 一体 どういうこんでえ?」
ふじ「ふんだって ほの人は 結婚してるって…。」
英治「僕には 妻がいました。 半年前に 病気で亡くなりましたが…。 花子さんと初めて出会ったのは 花子さんが まだ 女学校に通っていた時の事です。」
英治「それから 妻に出会い 結婚しました。 花子さんと再会したのは 去年の春 花子さんが上京して 聡文堂で働き始めた時です。 僕は… 妻がいる身でありながら 花子さんの事を 好きになってしまいました。」
はな「違う… おらが悪いの。 英治さんが結婚してるなんて 知らなんで 『好きです』なんて 言っちまったから…。」
吉平「ほれで?」
英治「僕は なんとか 花子さんへの思いを 忘れようとしました。 でも 妻には 分かったようで 『離婚したい』と言われました。 離婚してすぐに 妻は 亡くなりました。」
ふじ「てっ!」
吉平「駄目だ。 この結婚は 認められん! 離婚しただけなら いい。 ふんだけんど… 奥さんを亡くしてる男とは 一緒になっても幸せになれん。」
はな「…どうして?」
吉平「亡くなった奥さんへの思いは この人の中に生き続ける。 ほんな男と一緒になっても はなは 幸せになれん。」
はな「おとう。 おら ほれでもいい。」
ふじ「はな!」
はな「前の奥さんの事も全部含めて おら 今の村岡さんを好きになったの。 おら… 自分は もっと強い人間だと思ってた。 ボコの時っから ちっとぐれえ つれえこんがあっても 心を強く持って 人前では 笑ってた。」
はな「ふんだけんど 村岡さんと会ってっから 自分は なんて 弱い人間なんだろうって思った。 泣くほどの つらい思いも 飛び上がるほど うれしい思いも どうしようもねえほどの ときめきも 全部 村岡さんから 教えてもらった。」
はな「村岡さんを好きにならなんだら こんな時分にも出会えなんださ。 おとう おかあ…。 おら 村岡さんと一緒に生きていきたい。 結婚させて下さい!」
英治「お願いします! 必ず 花子さんを幸せにします!」
ふじ「フフフフ…。 ほういや おらたちも…。」
回想
ふじ「お父やん! お願えしやす! こん人と結婚させてくりょう!」
吉平「お願えします!」
回想終了
ふじ「お父やんは 随分と頑固で…。」
吉平「本当に許してくれたのは おじぃやんが亡くなる間際だ…。」
ふじ「ほんなに待ってたら はなは おばぁやんになっちもう。 英治さん。 今のうちに もらってやってくりょう。 はなのこん 幸せにしてやってくりょう。」
吉平「英治君。 頼む。」
英治「はい。」
はな「ありがとう…。 ありがとうごいす…。」
教会
図書室
(鐘の音)
英治「ここが 花子さんの一番好きな場所ですか。」
はな「はい。」
英治「そうだ 花子さん。 ここで 結婚式をやりましょう。」
はな「結婚式?」
英治「はい。 この甲府で。」
<甲府で結婚式? さて どんな式になるのでしょう。 ごきげんよう。 さようなら。>