あらすじ
祝言から一年半。安東はな改め村岡花子(吉高由里子)は、おめでたですっかりおなかが大きくなっていた。甲府から届いた手紙には、吉平(伊原剛志)が考えた女の子の名前ばかりが書いてあり、英治(鈴木亮平)とはなは思わず笑ってしまうが、平祐(中原丈雄)はまずは跡継ぎとして男の子を産んでもらうと言いだす。一方カフェーでは、龍一(中島歩)が蓮子(仲間由紀恵)からの手紙に目を通していた。そこにはある重大な決意が…。
93回ネタバレ
式場
森「生涯 愛する事を誓いますか?」
英治「はい! 誓います!」
花子「誓います。」
<甲府で祝言を挙げてから 1年半たちました。>
1921年(大正10年)・夏
村岡家
玄関前
<安東はな 改め 村岡花子です。>
花子「いい天気だね…。」
<あら? もう おめでたですか?>
はな「花子… フフフ。」
居間
(風鈴の音)
ふじ『はな。 元気にしてるけ? 無理して仕事してねえけ? くれぐれも 自分の体と おなかの赤ん坊を 大事にするだよ』。
吉平『…と おかあが言ってる。 ボコの新しい名前を考えたので 送ります。 父』。
英治「手紙 何だって?」
花子「おとうが 子どもの名前 考えたからって。」
英治「へえ。 女の子の名前ばっかりだね。」
花子「そうなの。 孫も 修和女学校に 入れたいんですって。 まだ どっちが生まれてくるか 分からないのに 困った おじぃやんですね~。 でも あなたが女の子だったら 絶対に 名前には 『子』を付けてあげますからね。 『子』。」
(戸が開く音)
平祐「邪魔するよ。」
玄関
花子「いらっしゃいませ。」
平祐「やあ。」
英治「父さん。 何か 急ぎの用でも?」
平祐「いや 天気がよかったから 散歩のついでに寄ったんだ。」
英治「そう言って 毎週日曜に来てますね。」
平祐「たまたまだ。 たまたま!」
居間
平祐「調子は どうだね?」
花子「ええ。 相変わらず よく動くんですよ。 夜でも 足で蹴るから 起こされちゃうくらいです。」
平祐「そうか。 結構 結構。 それなら 男の子だな。」
英治「元気な女の子かもしれませんよ。」
平祐「いや まず1人目は 村岡印刷の跡継ぎを 産んでもらわないとな。」
英治「どっちでもいいからね~ 元気に生まれておいで~。」
花子「生まれておいで~。」
英治「ね~。」
平祐「(せきばらい)」
花子「お義父様…。 お茶もお出ししてなくて 失礼しました。 ただいま…。」
英治「大丈夫。 僕が入れるから。」
花子「平気よ。」
英治「明日 醍醐さんが 原稿取りに来るんだろ。 締め切り厳守だ。」
花子「お義父様 せっかく いらして頂いたのに すいません。 ゆっくりしていらして下さいね。」
平祐「仕事やめれば 全て解決するぞ。」
英治「父さん! 『王子と乞食』の翻訳は 君にしか できないんだから。」
花子「ええ。」
英治「ねっ。 はい! じゃあ 頑張って。」
花子「はい。」
書斎
<英治の協力もあり 花子は 臨月まで翻訳を続けておりました。>
カフェー・ドミンゴ
かよ「今日は お疲れみたいですね。」
平祐「ちょっと あてられてしまってね。 いつまでも新婚気分で困るよ。 君のお姉やんは きっと 出産の最中でも翻訳してるよ。 あれは。」
かよ「そうですね。」
平祐「英治も英治だ。 村岡印刷の次期社長とも あろう者が 尻に敷かれて。 だから 2人の結婚には反対だったんだ!」
かよ「そんな事おっしゃって… また 遊びに行くんですよね。」
平祐「いや! もう行かないさ。」
かよ「フフッ。 すぐに おいしいコーヒーを お持ちします。」
蓮子『龍一様。 私は 覚悟致しました。 全てを捨てます。 あなたに このまま お会いできないなら 生きてる意味など ありません。 あなたのそばで生きられない 今の境遇に もう 耐えられないのです。 悪魔の涙にぬれる私を 一刻も早く救い出して下さい。 蓮子』。
嘉納邸
<それから 数日がたち…。>
蓮子の部屋
(ノック)
すず「奥様。 すずです。」
蓮子「あの方から お手紙が届いたの?」
すず「いえ。 お手紙ではなく…。」
龍一「久しぶりですね。」
蓮子「どうぞ。」
蓮子「私の事なんか とっくに お忘れになったと 思っていました。」
龍一「残念ながら 忘れる事がきなくて…。 手紙 拝読しました。 暇潰しに 僕をからかって 遊んでるんですか? それとも…。」
蓮子「そんな事を聞きに わざわざ いらしたの?」
龍一「違う! あなたを…!」
(足音)
廊下
タミ「何ばしようと?」
すず「あ… 何も…。」
♬~(レコード)
蓮子の部屋
蓮子「私を… 何ですの?」
龍一「今日 ここに来たのは あなたを連れ出すためです。 あなたの本当の気持ちを 教えてほしい。」
蓮子「その手紙のとおりです。 あなたのそばで生きられるなら 私は 全てを捨てます。」
龍一「それが どういう事か 分かってますか!?」
蓮子「分かっています! 宝石も着物も要らない! 家も名前も捨てます! あなたのそばで生きられるなら。 だから… 今すぐ 私を ここから連れ出して!」
龍一「あなたを試すような事を言って… すみませんでした。 逃げましょう。 そして 2人で暮らしましょう。 けれど 今すぐにという訳には いきません。」
蓮子「どうして…。」
龍一「今 逃げたところで すぐに見つかって 引き裂かれるのが 落ちだ。 あなたは この家に連れ戻され 僕は 牢屋に入れられる。 そうならないためにも 準備が必要だ。 僕たちは… 必ず一緒になれる。 だから もう少しだけ 我慢して下さい。」
蓮子「…分かったわ。」
村岡家
玄関前
花子「蓮様!」
居間
蓮子「はなちゃん すごくきれい。 やっぱり 村岡さんは はなちゃんの 巡り会うべき たった一人の人だったのね。」
嘉納「ほう…。」
蓮子「それにしても 大きなおなか。 もう 今にも生まれそうね。」
花子「私… 怖いの。 無事に産めるのか ちゃんと育てられるのかって…。」
蓮子「大丈夫よ はなちゃんなら。 小さい妹さんたちの子守りも こぴっとしてたんでしょ?」
花子「ええ…。」
蓮子「でも… 産む時は 覚悟した方がいいわよ。 ものすごく痛いから。」
花子「てっ…。」
蓮子「フフフ! そんなに怖がらないで。 『案ずるより産むが易し』よ。」
嘉納「よし。 安産祈願をしちゃる。」
花子「てっ…? てっ!?」
嘉納「俺の安産祈願は 評判ばい。 や~っ!」
花子「てっ! てっ…。」
嘉納「これで 安産間違いなしじゃ。 ハハハハハハ!」
花子「はあ… ありがとうございます。 嘉納さん そんなに大勢に 安産祈願なさったんですか?」
蓮子「よそに 女の人が 大勢いらっしゃるから。」
嘉納「男の甲斐性たい。 ハハハハハ。」
蓮子「ねえ あなた。 赤ちゃんが生まれたら すぐに会いに来たいの。」
嘉納「蓮子のやつ また すぐに 東京に来ようとしちゃるとばい。」
蓮子「ねえ 来てもいいでしょう?」
嘉納「分かった。 分かった。」
蓮子「ありがとうございます。」
嘉納「え~ さあ そろそろ行くばい。 じゃあ はなちゃん またな。」
花子「ええ。 蓮様 是非いらしてね。」
蓮子「はなちゃん 赤ちゃんが生まれたら すぐに知らせてね。」
花子「私 元気な赤ちゃんを産むわ。」
蓮子「待ち遠しいわ。」
<この時 蓮子が駆け落ちの計画を 進めていたとは 知るよしもない花子でした。>
蓮子「遠慮しないで。」
花子「そんな…。」
<ごきげんよう。 さようなら。>