あらすじ
“絶縁状”に激こうした伝助(吉田鋼太郎)は、東西日報の下山(木下ほうか)にそそのかされ、蓮子(仲間由紀恵)への反論文を新聞に掲載しようとするが、黒沢(木村彰吾)に「そのような行動はあなたらしくない」と諭され、撤回する。しかし、腹の虫がおさまらないタミ(筒井真理子)は、掲載されるよう一策を案じる。新聞に載った反論文を見た花子(吉高由里子)と醍醐(高梨臨)は、心ないことが書かれた記事に憤慨する…。
98回ネタバレ
村岡家
居間
花子「兄やん… ひょっとして 蓮様が 今 どこにいるのかも 知ってるんじゃない? 知ってるなら 教えて。」
吉太郎「居場所知って どうするだ?」
花子「会って 話がしたいの。 蓮様 今 どこにいるの?」
吉太郎「俺にも分からんだ。」
龍一宅
龍一「すまない! 本当は 見知らぬ土地に行って 2人で新しい生活を 始めるつもりだったのに こんな事になってしまって…。」
嘉納邸
嘉納「新聞記者を呼べ…。」
タミ「旦那様?」
嘉納「今すぐ 記者を呼べ! こっちも あの女に反論するったい!」
<蓮子と龍一の駆け落ち事件は 更なる騒ぎへと 発展していくのでした。>
黒沢「東西日報の黒沢です。 失礼します。 遅くなって 申し訳ありませんでした。 別の取材で出ておりましたので…。」
嘉納「ああ よかよか。 今 こん人に 代わりに書いてもらいよるき。 続きばい。」
嘉納「『蓮子。 お前には 何不自由ない暮らしを 与えちゃり 勉強もさせちゃって 小遣いでん 欲しいだけ くれちゃった。 俺は 田舎者の無教養者で 文学の世界やら 分からんばってん お前が 歌集を出版したいち 言いよった時も 何一つ小言も言わんで 金を出しちゃった』。」
嘉納「『お前みたいな わがままなお姫様を 受け入れよう努力したとは 嘉納家の人間たい』。 まあ 言いたい事は こげなもんたい。」
下山「嘉納さん。 この反論を 手記として連載にしまっしょか。」
黒沢「私は 反対です。」
下山「はっ?」
黒沢「このような反論文など 公開すべきではありません。 あなたの名を おとしめるだけです。」
下山「黒沢! 何を言いよるとか!」
黒沢「冷静に考えてみて下さい。 このような手紙を 蓮子さんが自ら 新聞に公表したとは 私には 思えないんです。 蓮子さんは そんな非道な事を する人では ないでしょう。」
嘉納「分からん…。」
黒沢「嘉納さん。 反論文を公表するなど あなたらしくない。 考え直して下さい。」
下山「ばってん 恩を仇で返したとは あっちですばい。」
嘉納「いや。 反論文を出すとは やめた!」
下山「そげな…。 ちょ…。 嘉納さん! ちょっと待っ…。」
(ドアが閉まる音)
下山「お前は 何を考えちょるとか! こげな最高のネタを 潰すやつがあるか!」
黒沢「我々には もっと描くべき事が あるはずです!」
下山「おい…。」
タミ「下山しゃん。 旦那様の反論を 新聞に出しちゃってくれんね。 あのお姫さんに言われっ放しじゃ 腹の虫が治まらんばい。 やられっ放しじゃ 筑豊の男たちの気も 治まらんとですよ! 旦那様には うちから報告しちょきますき。 うちも取材に協力するき。」
村岡家
居間
花子「あっ お義父様。」
平祐「おお…。」
花子「おはようございます。」
英治「父さん。 どうしたんですか? こんなに早く。」
平祐「石炭王の反論文が出た。」
英治「えっ?」
花子「てっ…。」
龍一宅
龍一「『お前に 人の妻としての資格がない事は 紛れもない真実だ』だと? 自分は一切悪くないとでも 言うのか!?」
蓮子「そんなに怒る必要ないわ。」
龍一「こんなふうに書かれて あなたは 頭に来ないのか!」
蓮子「世間に どう思われていようと そんな事は もう どうでもいいのよ。 全て覚悟の上の事よ。」
龍一「蓮子…。」
蓮子「さあ 朝食に致しましょう。 私 この お芋を焼いた料理が 気に入ったわ。 今 お茶入れるわね。」
村岡家
居間
醍醐「結納金だの お小遣いだの 歌集の出版費だの 嘉納伝助さんの主張は お金の事ばかり!」
花子「きっと 嘉納さんは 愛情を表現するのが 不器用な人なんだと思う。 でも この反論記事は 許せないわ。」
醍醐「そうね。 私 ずっと 蓮子様は ぜいたくな暮らしがしたくて 石炭王と結婚したと思ってたの。 でも それは誤解だって この記事を読んで分かったわ。 蓮子様は お家の犠牲になっていたのね…。 きっと この10年 帰る所もなくて 遠い福岡で 寂しい思いを なさってたんだわ…。」
花子「蓮様と東京で再会した時に 言ってたの。 修和にいた半年間だけが 宝物のような時間だったって…。」
醍醐「私も もっと あの方に 優しくしてあげればよかった…。」
花子「醍醐さん…。」
醍醐「すごく恥ずかしいけど 私… あのころ はなさんを 蓮子様に取られたみたいで やきもちをやいてたの。」
花子「えっ?」
醍醐「今頃になって やっと分かったわ。 はなさんは あの方の孤独や悲しみを ほっておけなかったのね。 はなさんと蓮子様は やっぱり腹心の友よ。」
花子「醍醐さん…。 醍醐さんの事も 私 本当に大切な友達だと思ってるわ。」
醍醐「はなさん…。」
花子「醍醐さん 最初に会った時から いつも 私を助けてくれたじゃない。 本当にありがとう。」
醍醐「そんな…。 お礼を言うのは 私の方だわ。 はなさんには いつも 勇気と元気をもらってるんだから。」
平祐「女学校友達というのは 謎だな。 最初は 2人して怒ってて 次見たら 泣いてて 今見たら 笑ってる。」
花子「兄やん…。 い… いつ来たの?」
吉太郎「玄関で何べんも呼んだだぞ。 こちらのお父様が 迎えて下さった。」
花子「てっ… お義父様 すいません。」
吉太郎「また新聞記者が 押しかけてるじゃねえかって 心配になって寄ってみただ。」
花子「ああ…。」
醍醐「頼もしいお兄様がいて 羨ましいわ。」
花子「まあ…。」
醍醐「じゃあ 私は。 お邪魔しました。 ごきげんよう。」
玄関
醍醐「蓮子様は 今 幸せなのかしら…。」
花子「昔 聞いた事があるの。 『一番 欲しいものは 何?』って。 『一度でいいから 本気で誰かを愛したい』って 蓮様 言ってたわ。」
醍醐「そんな事を…。 とにかく 一日も早く 蓮子様の居場所が 分かるといいわね。 私も手を尽くして調べてみるから。」
花子「お願い。」
醍醐「じゃあ ごきげんよう。」
花子「ええ。 ごきげんよう。」
吉太郎「はな。 俺行くから。」
花子「えっ もう帰るの?」
吉太郎「ああ。 本当に様子見ぃ寄っただけだ。」
花子「ありがとう。」
吉太郎「うん。」
玄関前
嘉納邸
黒沢「今度の事で 私は 新聞社を去る事にしました。」
嘉納「辞めるとか。」
黒沢「はい…。 話題性ばかり求める 新聞社のやり方に ほとほと愛想が尽きました。 記事の掲載を抑える事ができず 本当に申し訳ありませんでした!」
嘉納「いや…。 俺の反論を載せちもろて 蓮子の絶縁状で逆上して 騒ぎよった連中も 少しは 気が済んだごとある…。 まあ これでよかったのかもしれんばい。」
(ノック)
タミ「旦那様。 葉山様が 今すぐ 旦那様にお会いしたいち いらしちょります。」
嘉納「…おう。」
葉山「嘉納さん…。 この度は 妹の不埒な行為によって あなたの名誉にまで 傷をつけてしまい 何とも おわびのしようもなく…。 申し訳ありません!」
葉山「これほどの事をしでかして なぜ 蓮子は 死んでくれぬか なぜ 尼寺へ やっておかなかったのかと 悔やまれて悔やまれて! 必ずや 蓮子を捜し出し あなた様の前に連れてきます。 あれの処遇は 全てお任せします! ですから どうか! どうか! 今しばらく ご容赦願いたく!」
村岡家
台所
(水滴が落ちる音)
(戸が開く音)
居間
英治「花子さん!」
花子「お帰りなさい。」
英治「これが玄関に…。」
花子「兄やんの字…。 ここに蓮様が?」
<ごきげんよう。 さようなら。>