あらすじ
規律の厳しい寄宿舎生活になじめず、ホームシックにかかってしまったはな(山田望叶)と醍醐(茂内麻結)は、ブラックバーン校長(トーディ・クラーク)の悪口を言った罰として、外国人教師の部屋を掃除することになる。一生懸命に掃除し、部屋の主・スコット先生(ハンナ・グレース)に感謝されるものの、はなの心は晴れない。その後も英語の授業について行けないはなは、ある夜、寝室からこっそり抜け出して庭へ出る…。
9回ネタバレ
修和女学校
寄宿舎
はな「おかあ… 会いてえよ!」
<規律の厳しい寄宿舎の生活に なじめず はなは 重いホームシックに かかってしまいました。>
講堂
はな「もし 本当に 神様がいらっしゃるなら おらの願いを聞いてくれちゃあ。 早く うちに帰してくりょう。」
醍醐「神様。私も こんな所 もう嫌。 お父様 お母様のいる イギリスへ 行かせて下さい!」
富山「なぜ そんなに ここが嫌なのですか?」
はな「てっ? 神様け?」
醍醐「だって 神様! ここには すごく おっかない先生がいるんですもの。」
はな「ブラックバーンちゅう 鬼みてえに おっかねえ先生だ。」
醍醐「私たちは ここから出してもらえないなら あの人たちを カナダに帰しちゃって下さい!」
はな「神様 お願いしやす!」
(足音)
富山「校長先生は あなたたちのような悪い子を よい子にするために はるばるカナダから いらしたのです。 何ですか 今のお祈りは。」
校長室
茂木「ここに入ってくる 多くの子たちがかかるホームシックです。 あの子たちも じきになれるはずです。」
富山「茂木先生は 甘すぎます。 茂木先生が そんなだから 甘えるんです。」
ブラックバーン『あの二人に仕事を与えましょう ホームシックの特効薬は 体を動かすことです』
廊下
醍醐「もう嫌になっちゃう。 掃除なんて うちで させられた事ないのに。」
はな「掃除した事ねえだけ!」
醍醐「うちでは 使用人がするの。」
茂木「廊下を歩く時は 静かに。 ここが スコット先生のお部屋です。」
はな「はい。」
茂木「お部屋に入る時は ノックなさい。」
はな「ノック?」
醍醐「お部屋を お掃除に参りました。」
スコット『授業に行くので お願いします』
スコットの部屋
はな「てっ!」
醍醐「まあ きれい! はあ~…。」
はな「不思議の国みてえだな…。」
茂木「2人とも。 遊びに来たのではなくて 罰当番ですよ。 分かってますか?」
2人「はい!」
茂木「鏡台と机の上は スコット先生の 大事な物ばかりですから 決して触らないように。」
2人「はい!」
茂木「しっかり やって下さいね。」
2人「はい!」
醍醐「お母様の部屋にも こんなの なかったわ! 女の子は きれいなものに囲まれていれば 元気が出るんですもの! はなさん! 見てごらんなさい。 これ きっと スコット先生の大切な人よ!」
はな「随分 鼻の高え男の人だな。」
醍醐「いいなずけかしら!」
給湯室
白鳥「ところで 一条様 お見合いなさったんですってね。 お相手は どんな方ですの?」
一条「外交官ですの。 来年 フランスの大使館に赴任するので 卒業を繰り上げてくれないか なんて むちゃな事 おっしゃるのよ。」
一同「まあ~!」
茂木「醍醐さん 安東さん。 スコット先生が お部屋が大変きれいになったと 喜んでいらっしゃいましたよ。 あなたたちに毎日 お掃除当番を お願いしたいそうです。」
醍醐「はい! 喜んで。」
はな「はい!」
富山「お掃除も結構ですが その調子で 英語の授業は もっと頑張って下さいね。」
醍醐「はい!」
教室
富山「I get up at six o’clock.」
一同「I get up at six o’clock.」
富山『―過去形』
一同「I get up at six o’clock.」
富山『未来形』
一同「I will get up at six o’clock.」
富山「安藤さん。」
はな「は… はい…。 ア… アイ ゲット アップ…。」
富山「違う!」
富山『未来形!』
校長室
富山「あの子は ここに なじもうともしないし 英語の授業にも 全く ついてこられません。 このままでは これまでの給費生と同じように 学校を去る事になると 私は 思います。 (英語)」
茂木「でも そうと決まった訳じゃ…。 富山先生。」
廊下
はな「あのハトに乗っかって 甲府の空まで飛んでいけたらな…。」
<ここでは 空想の翼を広げる事もできず はなは 羽の折れた鳥のようでした。>
はな「はい…。」
労民新聞
<そのころ 行商で東京に来ていた おとうは またもや とんでもない事を 考えていました。>
回想
浅野「資本家は ますます富み その一方 我々 労働者は 過酷な労働を強いられ 一向に生活は 改善しない!」
一同「そうだ そうだ!」
回想終了
吉平「あの~。」
「失礼。」
「何か?」
吉平「私は キリスト教を信仰していて 神の下では 金持ちも貧乏人も 皆 平等だという考え方に 共鳴しております。」
「それが?」
吉平「あの講演会で それを実現しようと 孤軍奮闘している 浅野先生のお姿 大勢の労働者の 熱気に感動しました。 私にできる事は 何でもしますから 協力させて下さい!」
「でしたら これを。」
吉平「寄付… ですか? 私は 甲府から生糸を売りに来た しがない行商です。 寄付する金なんて ありません。」
「そうですか。 でしたら 結構ですよ。」
(戸にぶつかる音)
浅野「行商って言ってたな。 面白そうだ。 宿を突き止めてくれ。」
「はい。」
修和女学校
寄宿舎
醍醐「白鳥様は まだ ご縁談は ないんですか?」
白鳥「それは 降るようにございますよ。 ただ 私のお眼鏡にかなう男性が なかなか いらっしゃらなくて。」
一条「修和女学校の生徒は 外交官や貿易会社の殿方から 引く手あまたなのよ。」
醍醐「そうなんですか!」
(ノック)
スコット『皆さん、おやすみなさい』
一同『おやすみなさい スコット先生』
醍醐「はなさん。 私 我慢して ここで頑張る事にしたわ。 お母様のお手紙にも 書いてあったの。 ここの生徒でいれば 山ほど いい縁談が来るんですって。」
はな「縁談?」
白鳥「小さい人たち! 早くお休みなさい。」
はな「あっ ちょっと ご不浄へ。」
白鳥「消灯前に行くのを 忘れたのですか? しかたがないですね。」
ガス灯の下
はな「うちに帰りてえなあ…。 おとう… ごめん。 おら おとうの期待には応えられんさ!」
吉平「グッド イブニング。 グッド イブニング はな。」
はな「てっ! おとう!」
吉平「し~。 ほら 危ねえから下りろ。」
はな「おとう…。」
吉平「下りろ。 滑って落っこたら大変じゃ。 はな 元気にしてたか? どうしただ? 元気そうじゃねえな。」
はな「おら… ホームシックにかかっちまって。」
吉平「何じゃ? ほりゃあ。」
はな「先生たちが言ってたけんど ホームシックっちゅうのは おかあに会いたくなって うちに帰りたくなる病気みてえだ。」
吉平「ホームシックか。 へえ~! はな もう ほんな難しい英語を覚えただか! やっぱし はなは すげえな。」
はな「おとう。 おら ちょっこし元気になっただよ。 おとうの顔見たら こぴっと元気になったさ!」
吉平「おとうもじゃ。 はなの顔見たら こぴっと元気になった。」
はな「おとう!」
スコット♬『(英語での歌声)』
吉平「美しい声じゃな。」
はな「スコット先生…。」
スコット♬『(歌声)』
<この時 初めて あんなにも嫌いだった英語が はなの心に 優しく響いてきたのでした。 ごきげんよう。 さようなら。>