あらすじ
東京で優子(新山千春)を教えている原口(塚本晋也)が小原家に立ち寄る。優子が心酔していたので千代(麻生祐未)は結婚の申し込みかと心配し、糸子(尾野真千子)はもちろん、直子(川崎亜沙美)にすら、あきれられる。原口のデザインについての話に聞き入る糸子たち。原口は直子が描いた絵から才能を見抜く。直子は一晩原口と話し込み、自分も上京して優子が通う洋裁専門学校に進み、原口の教えを受けたいと糸子に申し出る。
103回ネタバレ
小原家
台所
千代「は… 原口先生?! 東京の?」
直子「えっ?」
千代「はれ はれ!」
直子「何?」
オハラ洋装店
原口「いや~ ついでが あったもんですからね 厚かましいかと思ったんですが 寄らせて頂きました。」
糸子「まあまあ そら どうぞ 上がって下さい。 何もありませんけど。」
木之元「何もありませんよ。」
糸子「そんな言わんでも。」
原口「ほ~う! すばらしい! 一流の生地を そらえていらっしゃいますな!」
糸子「はあ~ さすが! いや『さすが』ちゅうたら 生意気ですけど うちは 生地だけは 最高のもの 扱うようにしてます。」
原口「元は 呉服屋さんで いらっしゃったとか?」
糸子「あ… そうなんです~。 父が やってました。 呉服屋は とにかく 反物勝負ですさかい その気質が うちにも残ってんやと思います。」
原口「う~む なるほど!」
糸子「ええ!」
台所
千代「何やろ? 何で わざわざ 東京から…。」
直子「え?」
千代「ええっ そんな そやけど 優子は まだ お嫁に行くような年 ちゃうし…。」
直子「嫁に行く? 誰が?」
千代「原口先生とは 年も離れてるし…。」
直子「おばあちゃん 何の話?」
千代「直ちゃん…。」
直子「えっ?」
千代「もしかしたら… おばあちゃんの 勘違いかもしれんけどな。」
直子「うん。」
千代「結婚の申し込みに来たんと ちゃうやろか?」
直子「ああっ?!」
(泣き声)
直子「いや 泣いてる。 何や? 何 泣いてんの?」
千代「直ちゃ~ん!」
居間
原口「いや~ 皆さん! よ~く 覚えておいて下さい。 デザインの力というのは これはもう ものすごいものなんですねえ。」
木之元「そう 先生! わしも その デザインが 気にくわんと 電気屋 やめたんです。」
原口「ほう そりゃまた!」
<優子が かぶれるだけあって 確かに 原口先生は ごっつい ええ先生でした>
原口「はあ なるほど! 言われてみれば 昨今の電気製品は 美というものが 追求されなく なっていってますな。」
木之元「ほうなんです! 美というものが 追求されなくっているんです。」
原口「うん!」
木之元「うん。」
原口「本来 美というものは 過剰な飾りの中に あるものじゃないんですね。 ものには そのものにとって 必要な形というのが あるんです。」
原口「これからはですね 近くだけを見てちゃ 駄目ですね。 広~い視野を持たないと。 ねえ! アメリカのデザイン いいでしょう。 私は 今 ヨーロッパから 目が離せません。 フランスのデザイン。 あれはね すごいものが ありますよ。 イタリアも しかりです。 ですから これからは 日本のデザイナーも…。 あれっ 今 何時です? あれ~! もう2時?!」
(笑い声)
糸子「原口先生 今日は もう うち お泊り下さい。」
原口「いやいやいや そんな訳には いきません。 ご迷惑です。」
昌子「ほんでも もう この時間 電車も動いてませんわ。 アハハハ!」
原口「いや~…。」
2階 座敷
糸子「ほな お休みなさい。」
原口「ああ お休みなさい。 ほお~! こ… これは?!」
糸子「先生?」
原口「これは… これは どなたが描かれたんですかな?」
糸子「あ~ これは 次女です。 直子の絵ですわ。」
原口「あのお嬢さんが?」
糸子「はい。」
原口「ああ 君か?! 君が描いたのかい?」
直子「はい。」
糸子「あ… ほな あとは あんたが お話しいな な!」
直子「うん。」
原口「他の絵も 見せてくれるかな?」
直子「はい。 これです。」
原口「ほう! う~ん!」
<結局 そのあと 朝方まで 直子は 原口先生と 絵の話をしたようでした>
台所
原口「おお~ こりゃ いけませんなあ。」
千代「そうなんです。 危ないなあて 思いながら こんな ちょこっとの事やさかい 職人さん 呼ぶんも 悪うて…。」
原口「いやいやいや こりゃ 直さなくっちゃ。」
直子「おはようございます。」
原口「お~! いいところに来た。 直子さん 君 ペインティングナイフを持ってないかね?」
原口「君は 高校を出たら どうするんだい?」
直子「美大に行きます。」
原口「美大か…。」
直子「はい。」
原口「だけど お母さんの後を継ぐなら 美大は 遠回りじゃないかい?」
直子「えっ?」
原口「お姉さんのように すぐに 服飾の 専門学校に進んだ方が 早いよ。」
直子「後なんか 継ぎません。」
原口「継がない?」
直子「はい。 うちは 画家になるんです。」
原口「あ… そうか。 そりゃ 悪かったね。 君は 服よりも絵が好きって事か。」
直子「いや そういう訳でもないけど…。 店は もう 姉ちゃんが継ぐって 格好つけてるし。」
原口「そうか。 なるほど。 じゃあ 継がないで 自分の店を持てばいいじゃないか。」
直子「えっ?」
原口「それはそれで 格好いい。」
直子「先生…。」
原口「うん?」
直子「もし うちが 東京 行ったら 教えてくれますか?」
原口「うん。 いいよ。」
玄関前
糸子「優子を お願いします。」
原口「はい。 じゃ 失礼します。」
<直子は ほんまにうれいしいと 笑ってんのか 怒ってんのか 分からんようになる事があ
って こん時は どっちか 分かりませんでした やっと どっちか分かったんは その夜>
居間
(ラジオ)
糸子「アハハハハハハ…。」
直子「お母ちゃん。」
糸子「ええ?」
直子「高校 卒業したら 東京に行かさして下さい!」
糸子「はあ?
直子「お姉ちゃんと同じ学校に入って 原口先生のご指導を 受けたいと思てます。」
糸子「はあ?!」
直子「お願いします!」
糸子「そら まあ…。 ええけど。」
<そないして 笑た時でした>
珈琲店・太鼓
北村「何じゃ お前ら? お前ら2人ともよう『死んでも お母ちゃんの後なんか 継ぐか』言うちゃあってんけ。 せやけど あれやぞ よう考えよ。 案外 きつい話やど。 いっぺん 同じ土俵に立ったらな 身内やゆうても お互い 敵になるっちゅう事やさかいな。 おかんとも おねえとも いつか 闘わなあかん日が 来るかもしれんど。」
直子「かまへん。」
北村「ちっとは 離れちゃあった方が 気ぃは楽 ちゃうか?」
直子「そら 楽かもしれんけど… 楽ちゃう方が… おもろい。」
北村「食えや! もう。」
聡子「おおきに!」
北村「おう 食え! 言え ちゃんと口で。 いっぱい食え。」
聡子「あげる。」
北村「要らんわ アホ。」
小原家
居間
千代「ちょっと このお豆さん 食べてみて。」
静子「今年は うまい事 炊けたんや~。」
千代「はい。」
静子「頂きます。」
千代「どうぞ。」
静子「うん いや おいしいわ!」
千代「ハハハ!」
静子「う~ん うまい!」
千代「もっと食べ。」
静子「うん。」
玄関前
律子「はい!」
優子「はい!」
律子「はい!」
優子「うわ~!」
律子「はい!」
優子「はい!」
律子「はい!」
優子「律ちゃんたら ほんと 上手ね。」
居間
優子「はあ? 嫌や 困るわ! そんな事 勝手に決められたかて!」
糸子「何が困る事 あるんよ。 妹が 一緒に住むようになるだけの こっちゃないか。 うちはな 東京の家賃 2人分も 払えるほど お金 無いんや。 まあ 今より ちょっと広めのアパート 移ったかて かめへんさかい。」
優子「大体 あんたは 絵描きに なるんやったん ちゃうんけ?!」
糸子「何や知らん 考え 変えよったんや。」
優子「何で今更 洋裁なんか始めるんよ?! 洋裁は うちの道や!」
糸子「うちの道て 1人しか通れん道 ちゃうがな。 一緒に仲良う 目指したら ええやろ。」
優子「嫌や…。 嫌や…。 絶対 嫌や!」
糸子「はあ? 何が そこまで嫌なんや?」
直子「姉ちゃんはな。」
糸子「うん?」
直子「うちの才能が 怖いんや。」
糸子「はあ?」
優子「はあ?!」
糸子「あっ!」
<優子が笑たら 直子が泣き>
井戸
優子「あ~っ!」
<直子が笑たら 優子が泣く>
(泣き声)
居間
<お父ちゃん おばあちゃん 勝さん。 手に負えんわ…>