ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第104回「自信」【第19週】

あらすじ

昭和33年、直子(川崎亜沙美)が東京の服飾専門学校に進む日が近い。糸子(尾野真千子)は八重子(田丸麻紀)からディオールの最新デザイン、トラペーズラインの写真を見せられるが、肩から裾に広がるシルエットがアッパッパのようでよさが全く理解できない。北村(ほっしゃん。)から一緒にそのデザインの服を作ろうと持ちかけられるが、きっぱりはねつける。東京でバカにされまいと服や髪型に悩む直子は意外な服装で上京する。

104ネタバレ

安岡家

安岡美容室

糸子「こんにちは!」

八重子「あっ 糸ちゃん! いらっしゃい…。」

糸子「うん? 何?」

八重子「ううん。」

糸子「ん?」

八重子「ああ いや ちょっとバタバタしててな。 ハハハ… ハハハ。」

糸子「誰なん? うん?」

八重子「いやいや…。 うっ?」

糸子「ほっ。」

八重子「ううん…。」

糸子「あ! あんた 何 パーマなんか あててんや?!」

直子「ええやんか! もう 高校も卒業したんやし。」

糸子「あ か ん!」

八重子「いや まあまあ 糸ちゃん。 直ちゃんかて せっかく 小遣い ためて 来てくれたみたいやし。」

糸子「あかんちゅうたら あかん! こんな すねっかじりが パーマなんぞ 100年早いわ!」

直子「せやけど こんな頭で 東京 行ったら『田舎者や』て ばかにされる!」

糸子「田舎者で 何が悪いんや? 岸和田より東京が偉いて 誰が 決めたんや? ああ? 言うてみ!」

八重子「あ~ もう お母ちゃんには かなわへんわ。 な! カットで かわいいしよか な! ちょっと あんたら ロット 外しちゃって。」

直子「もう~ 何で こんな時に来るんよ!」

糸子「あっ せや! こんなんで来たん ちゃうかった。 ちょっと 八重子さん よう見せて。 よう見せて。」

八重子「これ おかげさんでなあ『センスがようて モダンや』ちゅうて お客さんに評判なんやし。」

糸子「せやろ~? うちも ごっつい自信作や。」

八重子「おおきになあ。」

糸子「いや あんたらも よう似合うて…。」

「はい。 こんな ええのん 着られて うれしいです。」

<この春 八重子さんに頼まれて 安岡美容室の制服を一新ししました>

八重子「せや 糸ちゃん!」

糸子「ん?」

八重子「ディオールの最新のデザイン見た?」

糸子「見てない。 もう 何かに載っちゃあった?」

八重子「載っちゃあったんやけどな これが また ごっつい変わってんやし。 もう 見たら びっくりすんで。」

糸子「あれやろ? あの後釜の サンローランとかゆう 若造のデザインちゅう事やろ?」

八重子「そうそうそう それや それや…。 これ! これやねんけどな…。」

糸子「え… 何これ? こ… こんなん ただのアッパッパやん。」

八重子「せやろ? うちも そう思たんやし。」

糸子「うわ~ 全然ええ事ない。 何で こんなん したんやろ?」

八重子「トラペーズラインとかゆうらしいんやけど。」

糸子「トラペーズライン…。」

八重子「台形ちゅう意味らしいんやねん。」

糸子「台形…。 はあ~ あかんわ あの若造。 このサンローラン!『あんた こんなん ただのアッパッパやで!』ちゅうて 誰か 怒っちゃあった ええのにな。」

八重子「そやな アッパッパやねんな これ。」

玉枝「ほれほれ 直ちゃん これ。 これ 食べり。 なあ これ カリントウや。」

直子「おおきに。」

玉枝「大丈夫や 直ちゃん。あんたみたいな別嬪 東京 行ったかて 誰も ばかになんかせえへん。 たんと食べ。 なあ。」

<変なとこで 妙に気にしいの直子は…>

小原家

2階 座敷

糸子「あんた 荷造り まだ済んでへんけ?」

直子「服 ない。」

糸子「はあ?」

直子「東京に持っていける服 ない。」

<急に こんな事を言いだしたりします>

直子「こんな田舎くさいん… 着たかて どうせ ばかにされるだけや。」

糸子「はあ? 何 訳 分けわからん事 言うてんや。 さっさと詰めて ちゃ~っと送り! はよ! ああ もう… よしよ。 ほれ!」

階段

糸子「こら 聡子!」

聡子「はい!」

糸子「あんた『うちの階段で 足 鍛えな』ちゅうたやろ!」

聡子「はあ…。」

<聡子は 相変わらず この調子>

聡子「ふ~ん…。」

<ネジ1本… いや 5本くらい 抜けてるような顔して…>

オハラ洋装店

昌子「はれ 聡ちゃん また どっか行くん?」

聡子「うん。 川原 走ってくる。」

<これで 案外 テニスは強いらしい>

玄関前

北村「おう!」

聡子「あっ 北村のおっちゃんや。 どないしたん?」

北村「お前んとこの お母ちゃんに ちょっと用事や。 拾い食いすんな~。」

聡子「せえへんわ!」

居間

千代「すんませんなあ。」

北村「わいの方こそ 悪いのう。」

千代「いいえ~ そんな。 はい どうぞ。」

北村「おおきに。」

千代「これも どうぞ。」

北村「わあ~。」

糸子「こら。」

北村「おう。」

糸子「あんた 誰の許し もうて 勝手に上がってんじゃ?」

北村「お~ 昌子や昌子。 昌子が『上がってって』言うさかい わい ごっつい忙しいのに わざわざ 靴 脱いで 上がっちゃあったんやんけ。」

糸子「昌子のアホが ほんまに…。」

千代「ほな 北村さん 今日は ええ塩辛が ありますよって あとで。」

北村「あら そない おかあちゃん かまわんとってよ~。」

糸子「いらんいらん。 こいつに食わせる 塩辛なんぞ ない! いらんで!」

千代「はいはい。」

北村「ところでよ。」

糸子「何や?」

北村「サンローランが 新作 出したの 見たけ? 今年の春夏の トラペーズライン。」

糸子「何で知ってんや?」

北村「常識でしょう。 わいも この道10年やってるさかいのう。 なめてもらっては 困るわ。 おかげさんでよう うっとこの店も ごっつい順調に 売り上げ 伸ばしてんやし。 ま お前んとこみたいなオーダーメードは どうか分からんけどよ わいとこみたいなレディーメードは これから 絶対に まだまだ伸びる。 せやから わい ここいらでよ 一発 勝負かけちゃろ 思てんやし。」

糸子「ほうか。」

北村「ほんでやな。」

糸子「うん?」

北村「わいと組めへんけ?」

糸子「死んでも嫌じゃ。」

北村「何で?!」

糸子「何が悲しいて ホラ吹き男と 手ぇ組まな あかんねん。」

北村「ちゃうちゃう!」

糸子「アホらしい!」

北村「わいは 商売では ホラ吹いた事ないっちゅうねん。」

直子「いらっしゃい。」

糸子「ああ ええとこ 来た。 もう あと こいつの相手 しちゃって。」

北村「相手て 何やこら! 寝んなや お前! おいおい…。 おい これよ 知ってるけ? トラペーズラインゆうて 今年のディールの新作や。」

直子「はあ ええなあ。」

北村「せやろ? おっちゃんな これから 夏に向けて これで 一発 ドカ~ンと 打ち上げちゃろ思てんやし。」

直子「うん。 ええんちゃう。」

北村「ほんまけ? ほんま そう思うけ?」

直子「うん。」

糸子「こら。 ええかげんな事 言いな。」

直子「え?」

糸子「どこが ええんや? そんなアッパッパ。 そら これまでのディオールのラインとは 全然 ちゃうよって チョロっと目新しいだけで ほんだけじょ。 それ以上の価値ないわ ほんなもん。」

直子「ほんな事ないで。 ええで これ。」

北村「なあ。」

糸子「分かってへんなあ。 あんたもな 洋裁の道 進むんやったら よう考えられるようにならんと あかんで。 これ 日本人が着てるとこ 想像してみ? 腰のくびれもない。 丈も中途半端。 どないしたかて アッパッパにしか 見えへんわ。 こんなもん こさえたかて 売れるかいな!」

北村「ほな どんなんやったら 売れるっちゅうんよ?」

糸子「そら これまでどおりの こう… 腰が シュッと締まって ふわっと…。 やめとこ。」

北村「やめんといて! 何で? 寝んなって! おいおい…。 どうしたらええん? 言えよ!」

糸子「嫌や。 もったいない。 何で あんたなんかに 説明しちゃらな あかんねん。」

北村「寝んなっちゅうねん。 おい!」

直子「ええんやけどなあ これ。」

台所

(小鳥の鳴き声)

(千代の鼻歌)

聡子「おはようさ~ん。」

千代「おはよう。」

糸子「直子。 直子 起きてるか?」

聡子「うん。 起きてるけどなあ まだ 着替えてへん。 何や 隅っこで ショボンてしてる。」

糸子「何で?」

聡子「何 着て 東京 行ったらええか 分かれへんやて。」

糸子「え~? また あんな事 ほんまに…。 直子?! 直子!」

2階 寝室

糸子『あんた はよせな 電車 乗り遅れんで?! 分かったな!』

直子「せやけど!」

糸子『ああ?!』

直子「何 着ていったらええか 分かれへんねん!」

糸子『また 何 訳 分からん事 言うてんや! はよしいや! 分かったな?!』

オハラ洋装店

「おはようさん。」

直子「おはようございます。」

居間

糸子「あんた あんなけ騒いで 結局 それかいな。」

直子「ええんや。 中途半端な格好しか でけへんやったら これのが ましや。」

(鈴の音)

<はあ~ この けったいな見栄っ張り。 誰に似たんやろな?>

直子「行ってきます。」

オハラ洋装店

<ほんな ややこしい娘でも>

糸子「ただいま。」

松田「お帰んなさい。」

昌子「お帰んなさい。」

松田「直ちゃん あんじょう 出発でけましたか?」

糸子「ああ おかげさんで。 あ~ くたびれた。」

2階 寝室

<おらんように なってまうと… 寂しいもんやなあ…>

居間

糸子「せ~の! ほい!」

<ほな訳で とうとう うちも テレビジョンを買いました>

木之元「4チャンネル つけてみ。『のど自慢素人演芸会』やってるさかい。 おもろいから。」

糸子「ここや。」

木之元「まだや まだや まだや。 まだやで。」

一同「おお~!」

♬『白樺林』

聡子♬『山越え谷越え』

一同♬『はるばると ララゝゝ ラゝゝゝゝゝゝ 高原列車は ララゝゝゝ 行くよ』

(歓声と拍手)

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