あらすじ
糸子(尾野真千子)は北村(ほっしゃん。)の既製服販売に加わる。上等な生地でウエストを絞ったデザインを考える糸子。が、ディオールのデザイナー、21歳のサンローランが発表したのは正反対の台形のデザイン。そのよさが理解できないことが不安になってくる。優子(新山千春)と直子(川崎亜沙美)の下宿に、教師・原口(塚本晋也)や直子の同級生が集まる。デザインの話で盛り上がるはずが、優子と直子の言い争いになって…。
106回ネタバレ
東京・小原宅
優子<お母ちゃん。 いよいよ 学校が始まりました。 入学式の朝 直子は やっぱり セーラー服を着て 随分 しょぼくれた顔で 出かけてったんだけど 夕方 アパートに帰ったら…>
優子「ただいま。」
直子「あ 姉ちゃん。」
優子<何だか 変な子を 連れてきてました>
源太「どうも! 初めまして 斎藤です。」
優子「はあ… どうも。」
源太「モディリアーニは 体のラインが すげえ。 直線と曲線の組み合わせが 想像を超えてる。」
優子<『何 考えてんの? 男の子を うちに入れるなんて!』って 思ったんだけど せっかく出来た友達だから 我慢する事にしてあげました。 それにしても 直子も その子も『一体 うちの学校に 何しに来たの?』ってくらいの イカしてなさなのよ>
珈琲店・太鼓
糸子「こないだ あんたが言うてた話。」
北村「ああ?」
糸子「『既製品で 大きい商売 仕掛ける』ちゅうてたやろ?」
北村「お前 その気になったんけ?」
糸子「まあな…。」
北村「よっしゃ~!」
木之元「静かにやれよ。」
北村「悪い悪い悪い…。」
糸子「こないだな 組合長から『ごっつい上物の生地 買えへんか?』ちゅうて 相談されたんや。」
北村「おう。」
糸子「それが 10反あってやな。」
北村「おう。」
糸子「さすがに うちだけでは よう さばかん思てたけど… その話やったら さばけるやろ?」
北村「いけるでえ。」
泉州繊維商業組合
三浦「ん~ よっと。」
北村「おおきに。」
三浦「はい。」
糸子「すんません。」
三浦「はあ~ ほうか! いや~ ほら おもろい話やな。 ハハハハ 乾杯や。 はい 乾杯。」
2人「乾杯。」
三浦「小原大先生に ついててもうたら もう ほれ 心強いなあ ハハハハ。」
糸子「まあ この人の商売は 正直 うちは どうでも ええんですけど。」
北村「『どうでもええ』って 何やねん お前!」
糸子「組合長の厚意に 応えられる ちゅうんが うれしいですわ。」
三浦「うん… うん。」
糸子「応援してもうて ありがたい思てます。」
三浦「いや~ そら ほれ まあ 何やかんや言うても あんた 一番 古うからの 知り合いやさかいなあ そらあ 身びいきも出るわな。 ないしょやで。」
糸子「アハハハハハ…。」
北村「な 何でんの? 身びいきて。」
三浦「お前は 知らんでええ。」
北村「組合長 教えて下さいよ! 何ぞ こいつに ひいきしたんでっか?」
三浦「知ら~ん。」
北村「組合長! 何でんの? 何したん?」
糸子「知ら~ん。」
北村「わっ! 何か 腹立つな お前は。」
<ちゅうて 楽しい祝杯 挙げて 帰ってきたのに… 何や… どっか 気持ちが 晴れませんでした 暗あて 重たい… 何や? これ>
台所
<ああ… やっぱし これや。 サンローランが出してきよった これが うちには 全然分からんちゅうのが 気になってるんです 分からんもんは しょうもないて 無視したい。 けど 分かれへん うちが 悪いんかもしらん サンローランは 21歳 21歳の時 うちも やっぱり…>
回想
糸子「うち 頑張るさかい 見とってな!」
回想終了
<誰よりも自分が 時代の先を 分かってるて思ってた。 あの自信は 何やったんや。 21歳が ほんまに そない分かってるもんやろか>
安岡家
居間
玉枝「21の時?」
糸子「うん…。 うち どない見えた?」
玉枝「はあ?」
糸子「よう もの 分かってるように 見えた?」
玉枝「21? ああ… 糸ちゃん 何しちゃあったかいな?」
糸子「今の店 開いて 結婚したんも 21や。」
玉枝「はあ~あ。 は~…。 せやなあ。 ああ~ 確か…。 やっと 自分の店 開いたもんの『客が来えへんのは 店構えのせいや!』て『出格子 切っちゃあった』ちゅうてたなあ。 訳の分からん テントの仕事 受けて『足 悪した』て聞いた 思たら…。」
回想
千代「まだ仕事してんのかいな!」
玉枝『祝言の日ぃまで 仕事 やめんと…。』
ハル「ほんまに もう このアホが。」
八重子「糸ちゃん 奈っちゃん!」
玉枝『ほんで ごっつい遅刻してきて…。』
奈津「この… ブタ!」
回想終了
玉枝「みんなに えらい怒られちゃあったなあ。 まあ よう もの 分かってるようには…。」
糸子「見えへんわなあ~。」
玉枝「うん。」
<はあ~ せやけど すっきりした! 21歳は 間違いのう>
糸子「アホや!」
<21歳なんぞ 何も怖がる事ない>
小原家
オハラ洋装店
昌子「やめときましょうよ そんな 桁のちゃう商売。 むちゃです。」
糸子「何も むちゃ ちゃうって。 縫製と販売は 北村社長が『やる』ちゅうてんや。 うちは 生地代だけ出したら あとは 売り上げの1割 返ってくんやで。」
松田「けど 先生 万が一 外したら…。」
糸子「外さへん! うちが デザインするんや。 しかも 生地は 一級品。 絶対 勝てるて。」
<自信を持って うちなりの商売 やったら ええんや>
糸子「せやさかい ここが 肝心やで。」
北村「うん。」
糸子「キュッ ふわっ キュッ ふわっ。」
北村「ほほ~。」
糸子「あの生地や。」
北村「うん。」
糸子「あの色や。 ここが キュッ ふわっ キュッ ふわっとしてな…。」
東京・小原宅
優子<お母ちゃん 聞いて下さい。 今日 アパートに帰ったら…>
源太「あ どうも こんにちは。 お邪魔してます。」
優子<男が 増えてたの!>
吉村「僕はね この卵の曲線に 宇宙を感じるんだよ。」
原口「そう! この卵には 全部 入ってますよ。」
優子「ほんっとに 冗談じゃないわよ。」
原口「自然の美しさ 全部 入ってます。」
優子「はい! さあ どうぞ~。 ね! 食べて下さいね~。 遠慮しないで いいですからね。」
「ありがとうございます。」
優子「いえいえ。」
原口「君達。 この小原直子の姉上は 入学以来 万年首席の優等生なんだぞ。」
優子「嫌だ 先生! 大した事ないですよ 私なんか。 生真面目なだけでね。」
源太「いや~ 万年首席なんて そうは取れねえべなあ。」
小沢「大したもんじゃなあ。」
源太「なあ!」
直子「いや ほんまに 真面目なだけやで。」
吉村「うん?」
小沢「えっ?」
直子「課題とかな アホみたいに キチキチ出しよんやし。 点取りが うまいだけで 別に 才能がある訳ちゃう。」
優子「はあ…?」
吉村「お… おねえさん やっぱり それ ディオールですか?」
優子「え?」
小沢「トラペーズラインでしょ? ね!」
優子「ああ… そうなの。 これね 自分で縫ったのよ。 ディオールなんて 買えやしないもの。」
吉村「人気ですよね サックドレス。」
源太「サンローランは やっぱり すごい。 次 どしたの 出してくるか ワクワクするよ。」
原口「うん!」
優子「ふ~ん…。 やっぱり みんな さすがに うちの生徒ね。」
原口「いやいや 優子君。 彼らはね うちの学校が初めて採った 男子学生だろう。」
優子「ええ。」
原口「確かに 見かけは まあ あまり パッとしないんだけど これが 驚くような粒ぞろいでね。」
優子「へえ~。」
原口「これから 必ず 彼らが 時代を切り開いていくよ。 見ててごらん。」
優子「はあ。」
源太「いや でも 先生。 直子も すごいです。」
原口「そう。 直子も すごい。」
優子「そうですか?」
原口「うん? まあ 優等生の君にすりゃ ちょっと頼りなく 見えるかもしれないけど…。」
優子「ええ。 私には ただの 出来の悪い妹にしか…。 だって うちの学生なのに こんなボロボロのセーラー服なんか着て 恥ずかしいったらねえ…。」
直子「うるさいんじゃ! うちは 姉ちゃんみたいに 能天気ちゃうねん!」
優子「はあ? 能天気?!」
直子「何が トラペーズラインや。 よう そんな他人がデザインした服着て ヘラヘラしてられんな?」
優子「はあ?」
直子「あんなあ この道 進むて 決めたら うちらは もう その瞬間から デザイナーなんや。 何 着るかは そのまま デザイナーとしての面構えなんや。 自分の面構えも決まってへんのに よその服 まねして 喜んでる場合 ちゃうんじゃ。 ほんな事も 分からへんけ?!」
優子「何 この~!」
直子「ああ 何や!」
優子「もう一回 言うてみ! この 出来損ないが! 何やと お前!」
直子「あ~ 何べんでも 言うちゃら! この半端者の 根性無し!」
優子「何やと?!」
直子「あんたなんかな 店 継ぐ資格 無いんじゃ!」
優子「ふざけんな この 不細工!」
原口「あ~ ちょちょちょ…。」
直子「何やと アホ こら!」
優子「誰が アホじゃ!」
直子「放せ! このアホ!」
優子「何やと?!」
原口「ちょっと 落ち着いて。」
「ちょっと ちょっと。」
優子「出来損ないが!」
直子「アホ! アホ! アホ アホ アホ アホ アホ!」
(泣き声)
小原家
居間
<そんな手紙が 優子から来ました。 うちには けんかの内容は どうでもようて それより 気になったんは…>
回想・小沢「トラペーズラインでしょ?」
回想・吉村「人気ですよね サックドレス。」
<ここや>