ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第107回「自信」【第19週】

あらすじ

糸子(尾野真千子)の思いに反し、オハラ洋装店では筒型のサックドレスの注文が相次ぐ。どうしてもサックドレスがよいと思えず、糸子は八重子(田丸麻紀)に世の中に遅れを取る不安を訴える。予想どおり糸子がデザインした服は売れず、北村(ほっしゃん。)に頭を下げることに。夏休み、直子(川崎亜沙美)が源太(郭智博)たち同級生を連れて帰省してくる。その奇抜な格好にどぎもを抜かれ、糸子は若者との違いをまたも痛感する。

107ネタバレ

小原家

オハラ洋装店

<悪ない… 何も悪ない。 ここが くびれて ふわっと広がる。 女を 一番きれいに見せる形や せやけど…>

2人「こんにちは!」

昌子「いらっしゃい!」

糸子「いらっしゃい。」

松田「いらっしゃい。」

「あの~ サックドレス 作ってほしいんですけど。」

昌子「はあはあ サックドレス。」

「これ。」

昌子「任せて下さい。 先生! お願いします。」

糸子「は~い。」

昌子「今日も 朝から もう3件 ありましたわ サックドレスの注文。」

「ほんまあ。 人気やもんな。」

「うちも はよ着たいわ~。」

糸子「こんにちは。」

「こんにちは。 このサックドレスちゅうの お願いします。」

糸子「はいはい サックドレスな 任しといて。 ウフフッ どうぞ!」

珈琲店・太鼓

糸子「こんな不安 初めてや。」

八重子「う~ん けど… 全然 悪い事は ないで。 これ うちは 欲しいけどなあ。」

糸子「いや せやけど サックドレスの注文 この1週間で 倍に増えてな 昨日なんか 8割 超えたんや。 うち… 読み違えた。 サックドレスは うちが思てたより ずっと はよ 大阪に届いたっちゅうこっちゃ。」

八重子「う~ん その… この商品は もう仕上がってしもたん?」

糸子「100着 25万円分。 今頃 北村が 問屋 走り回ってるやろけど… 売れてるとは思われへん。」

八重子「はあ…。」

糸子「うち やってしもたかもしれん。」

八重子「いや まあまあ なあ 糸ちゃん そない思い詰めなて。 まだ 分かれへんし あかんかっても また 取り返したら ええやんか なあ。」

糸子「いや ほんでもな… うち 一番ショックなんは…。」

八重子「はあ?」

糸子「どないしても サックドレスが ええと 思われへん事なんや。 あんなけ若い子ぉらが 目ぇ輝かしてるデザインに うちは よう 目ぇ輝かさんやし。 うちは… 世の中に 後れ 取ってしもてる。 間違いのう。」

小原家

居間

北村「おい 猫 なめた事 あるで。」

(笑い声)

北村「逆にいっちゃった みたいな。」

昌子「何で なめたんですか? そんなん あきませんわ。」

北村「男はね なめられたら あきまへんねんで これ!」

昌子「せやけど なめるって… どうでした?」

北村「ザラザラやな あれ!」

(笑い声)

北村「どんなね きれいな猫でも ザラザラ あれ。」

千代「そんな あきませんわ。 帰ってきた。 お帰り。」

聡子「お帰り。」

一同「お帰りなさい。」

北村「おう。」

糸子「何や また あんた 来てたんけ。」

千代「ほら あんたも飲み。」

北村「やっぱ なめられたら 終わりやからの。 男としてよ。」

聡子「でも なめんのは おかしい。」

<この自慢たれの調子乗りが 一切 商売の話を しようとしませんでした>

北村「びびっとった。 めっちゃ びっくりしとったのう あれ。」

(笑い声)

オハラ洋装店

糸子「売れへんかったんけ?」

北村「何で 分かんよ?」

糸子「分かるわ そら。」

北村「3日でよ 15軒 回って 大口は 全滅や。 小口もよう えっらそうに『古い』や『後れてる』や さんざん言われたわいや。」

糸子「残った分… 全部 買い取っちゃら。」

北村「はあ?」

糸子「うちの責任や。」

北村「格好つけんなよ お前。 たかが こんな岸和田のよう ちっこい店の女店主がよう…。 お互いの損で 痛み分けや。 ほれで ええがな。」

糸子「うちが甘かった。 また 一から出直し 勉強や。 あんたには ほんま… 悪い事したな。 堪忍。 このとおりや。」

北村「うっわ! うわうわうわうわうわ! 気色悪う! えらいもん 見てもうたがな これ。 あかんあかん これは 中から 酒で清めな えらい事になるぞ これ。 ほんま… ああ あかん あかん!」

玄関前

♬~(お囃子)

「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ! ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」

(ミシンの音)

♬~(お囃子)

(ミシンの音)

♬~(お囃子)

「ソーリャ! ソーリャ! ソーリャ! ソーリャ! ソーリャ! ソーリャ!」

2階 座敷

聡子「お客さん用って これ?」

昌子「それそれ。 それ 3つ 出しといて。」

聡子「うん。」

<夏休みに入った直子から 友達と一緒に 帰ってくるちゅう 連絡がありました>

居間

千代「はあ へえ はれまあ…。」

テレビ『練った肉を2等分し…』。

<お客は 例の男の子3人で お母ちゃんは また 大いに張り切ってます>

テレビ『もう片方の手のひらに…』。

千代「あ~あ~あ。」

千代「ハンバーグと 豚カツと それから うなぎと お寿司をとろうかと 思てんや。」

糸子「多すぎるわ。」

千代「せやけど 男の人が 3人も来やんのに。」

昌子「男の人ちゅうても 学生でしょ? ほんなもん 芋の煮っ転がしで 十分ですよ。」

千代「あかんあかん そんな! 若い男の子が うちで 飢え死に してしもたら どないすんや!」

糸子「せえへん!」

昌子「しません!」

<なんぼ言うても お母ちゃんは 聞く耳持たず>

台所

(千代の鼻歌)

糸子「何を どんなけ食わせるつもりや。」

千代♬『高原列車は ララゝゝゝ行くよ』

オハラ洋装店

3人「こんにちは。」

昌子「いらっしゃい… はれ。」

源太「あの~ 初めまして。 僕ら 直子さんの東京の同級生で…。」

昌子「はあ! ようこそ!」

源太「どうも!」

昌子「先生 先生!」

糸子『は~い! はいはい はいはい。』

糸子「あ~ まあまあ いらっしゃ~い! あれ? え… 直子は?」

源太「あ 今 そこの下駄屋のご主人と しゃべっておられて『先 行っててくれ』って 言われたもんで。」

糸子「そうですか。 まあ 遠いとこ ようこそ! まあ 上がってよ! な どうぞ どうぞ!」

<はあ このジャガイモみたいなんが 源太やな。 ほんで この ちょっと 大人っぽいんが 吉村君で この優しそうなんが 小沢君やな。 みんな よさそうな子ぉや>

直子「ただいま。 ただいま。」

糸子「ひょっとして…。 え? 直子か?」

直子「ただいま。」

糸子「直子かいな?!」

昌子 松田『直ちゃん?!』

直子「うん。 あ みんな 荷物 まだやろ? こっち おいで。 2階。 2階に置いといたら ええねん。」

吉村「お邪魔します~。」

糸子「何や あんた それ? 何が…? どないしたんや 一体?! え~っ?! え え…。」

居間

千代「食べや~。 何もないけど ね。 遠慮せんと。」

<お化けや。 お化けが 豚カツ 食べてる…>

源太「ところで あの おかあさん。」

糸子「へっ?」

源太「おかあさんが 立体裁断されてる ってゆうのは 本当ですか?」

糸子「立体裁断?」

直子「あの お母ちゃんの服の作り方や。 ほら お客さんの体に 直接 布あてて 切るやろ。」

糸子「ああ~ あれ 立体裁断ちゅうんけ?」

吉村「僕ら 今 まさに その立体裁断 習い始めたところなんですよ。」

小沢「あれは 国内では ほとんど やる人 おらんけんど パリでは むしろ 主流なんじゃそうですよ。」

糸子「へえ~。」

源太「こないだ ピエール・カルダンが来日した時に 実演して見せたそうです。 それが 実に 合理的だっていうんで うちの授業にも 新しく 取り入れる事になったんですよ。」

糸子「へえ~。」

吉村「それを 我流で始められたって 本当すごいなあ!」

源太「なあ!」

小沢「天才的じゃなあ!」

糸子「いえいえ そんな 褒めてもらうほどの事 ちゃうわ。 せっかちなだけ。」

小沢「そんな事ないですよ。」

糸子「ほんま 我流やよって 授業のとは 違うかもしれへんで?」

吉村「はい。」

小沢「はい。」

糸子「で ここを 留める。 ここは まっすぐ切ったら あかん。 ちょっと斜めや。 あとで 後ろの布 来るからな。」

小沢「これか…。」

モバイルバージョンを終了