あらすじ
直子(川崎亜沙美)の見舞いに行った千代(麻生祐未)。若者たちの将来に思いをはせる。一方優子(新山千春)の店での修業もかなり板についてきた。若い妊婦からサックドレスの注文が入り、糸子(尾野真千子)は優子に任せてみる。はりきって取り組む優子だが、まじめで完璧主義なのが気になる糸子。案の定、仮縫いに時間をかけすぎ妊婦が倒れてしまう。大したことはなく、謝った優子も気を取り直すが、直子からある知らせが入る。
109回ネタバレ
東京・小原宅
直子「うちは ほんまの本気で 学校 入るまで『自分は 天才や』と 思ちゃあったんやけどな この子らに会うて ちょっと焦った。」
千代「うん?」
直子「ほんま すごいんや この3人。 3人とも それぞれ うちに ないもん 持ってる。」
千代「源太君もかいな?」
直子「源太 すごいで。 あんな…。 授業で こういうデザイン画 描かされるやろ?」
千代「う~ん…。」
直子「源太のはな その線が もう ごっつい きれえんや。 その線 見てるだけで『ああ こいつの作る服は ごっつい ええんやろなあ』思わされるんやし。」
千代「はあ~ ほんなもんか。」
直子「ほんなもんや。」
千代「楽しみやなあ~。 みんな 立派な洋裁師に なりやんねやろなあ。」
直子「うん。 せやな… なるやろな。」
小原家
玄関前
木之元「ほな また よろしゅう!」
「うん。」
木之元「あっ 千代さん! 大丈夫やったけ? 直ちゃん。」
千代「はあ おかげさんで。 ただの風邪でしたわあ…。」
優子「風邪 風邪。」
木之元「そら よかったわ~。 なあ!」
千代「はあ すんません。」
木之元「ちょっと ゆっくりしいや。」
千代「へえ。 あとで また…。」
<風邪ひいた直子の見舞いに 行ってた お母ちゃんが 無事に 東京から帰ってきました>
居間
糸子「えっ 5,000円 全部 使たん?!」
優子「嘘…。」
千代「う~ん…。」
糸子「何で?! 何に5,000円も使うんよ? 観光も何も してへんやろ?」
千代「まあなあ…。 ほんでも 次から次から お友達が 見舞いに来やるやんか~。 来てくれてんのに 何ぞ 食べささん訳に いかんしなあ。 うなぎやら お寿司やら とってたら あっちゅう間に…。」
優子「学生に うなぎなんか 食べささんで ええのに。」
千代「ほうかあ?」
優子「あんな ジャガイモら 芋でも 食べさせとったら ええねん。」
糸子「優子 優子。」
優子「え?」
糸子「無駄。 言うても 無駄。」
優子「せやな。」
千代「けどな 何 出しても 喜んで 食べてくれて よかったわあ。 若いんやさかい 栄養つけななあ。 う~ん。」
オハラ洋装店
(ため息)
『こんにちは。』
優子「はれ いらっしゃ~い。」
<優子が 店に出始めて1か月。 まあ 仕事ぶりも ぼつぼつ 様になってきました。 若いお客さんなんかは むしろ 優子の方が 打ち解けやすいようです>
「妊娠してて…。」
優子「そうですか! そら おめでとうございます!」
「おおきに。」
優子「ちょっと 待っといて下さいね。 先生!」
糸子「は~い。」
優子「お願いします。」
糸子「は~い。 いらっしゃい! こんにちは。」
優子「お客さん おめでたなんやって。」
糸子「はあ~! そらそら。 おめでとうございます。 何か月?」
「おおきに。 4か月なんです。」
糸子「へ~え…。」
優子「ほんで 今度 お友達の結婚式に 出るさかい それ用に サックドレスを 作りたいそうです。」
糸子「はあ~ なるほど! ほな あんた 採寸さしてもらい。」
優子「はい。 ほな どうぞ。」
優子「はい ありがとうございました~。」
「おおきに。」
優子「どうぞ お疲れさんでした~。 ほな そちらへ お掛け下さい。 どうぞ。」
糸子「優子。 あんた… デザイン やってみるか?」
優子「えっ?」
糸子「サックドレスやったら できるやろ? あんた。」
優子「はい! できます。 自信あります。」
糸子「ほな やり。」
優子「はい!」
2階 寝室
糸子「どうや?」
優子「だいぶ 出来てきた。」
糸子「見せてみ?」
優子「大丈夫。 完成してから 見せるから。」
糸子「うん。」
<とにかく 真面目で 何でも完璧に やりたがりよんのは ええけど>
居間
優子「お客さんは『せっかくやから お産が済んで おなかが戻ってからも着たい』ゆうた。」
糸子「うん。」
優子「おなかが大きい時に 着るんやったら こっちやけど 戻ってからやったら こっちなんや…。」
糸子「あんたな 頭で考え過ぎなや。」
優子「え?」
糸子「そら お客さんは おなかも大きなるし 肥えもするし 痩せもする。 考えだしたら 切り ないんや。」
優子「ほな どうしたら ええの?」
糸子「お客さんの気持ちになったら 分かるがな。 そら 来月 着る時に 一番よう似合うて うれしいよう こさえたら ええんや。 お産が済んでも 着たいて そら 今は 思うかもしらへんけど そん時は もう サックドレスかて 廃れてるかも しれへんやないか。」
優子「ええ?! けど…。」
糸子「何や?」
優子「うちは せっかく作るもんが 1回しか着られんで終わりなんか 嫌や! ず~っと大事に 着てほしい。」
糸子「あんたが決める事 ちゃう!」
オハラ洋装店
客「こんにちは。」
優子「あ~! いらっしゃい~! はれ 痩せました?」
客「うん… そうなんや。 つわりが ひどうてな。」
優子「はあ…。」
糸子「ちゃうやろ。 まあ そら そんなとこ 出てきてもうて 申し訳ないなあ。 ささっと済ませますよって どうぞ。」
<お客が 痩せた事で また 優子の計算が ややこしなってしもたようでした。>
優子「先生! うちが しますよって。」
糸子「すみません。 ちょっと待っとってよ。 ほな ささっと済ませや。 おなかに障ったら えらいこっちゃで!」
優子「うん。」
糸子「分かってんか?!」
優子「うん!」
優子「すんません。 お願いします~。」
客「お願いします。」
昌子「大丈夫ですか?」
糸子「まあ… まあまあ。」
(物音)
優子「すんません。 ほんま すんません。」
客「ううん。 あらあら…。」
糸子「まあ… まあまあ。」
(柱時計の時報)
糸子「ここに ちょっと 膨らみ 持たせましょうか?」
「せやなあ。」
糸子「ほな 柔らかなるよって。」
「ええなあ。」
糸子「ちょっと ベルトしましょか?」
糸子「これぐらいで ええのかな?」
「うん。」
糸子「ほな これぐらいに さしてもろて。」
「せやなあ。」
糸子「ボタンは 白とか どうやろ?」
「ええなあ。」
糸子「ほな 白。 ボタンは 白に…。」
優子「はい! ほな お疲れさんでした~。」
客「おおきに。」
優子「どうぞ 履いて下さい。」
客「はい。」
糸子「ああっ!」
優子「あっ えっ?」
松田「大丈夫ですか? ちょっと。」
昌子「先生!」
優子「大丈夫ですか? どないしよう。」
糸子「そっち 空き!」
松田「とりあえず こっち。 ここ空けましょう。」
糸子「立てるか?」
居間
優子「失礼します。 ほんまに… 申し訳ありませんでした。」
客「何で 謝るん?」
優子「え?」
客「倒れたんは うちの勝手やんか。 丁寧に やってくれたから 時間が かかっただけやろ?」
優子「おおきに…。 ほんま すんませんでした。」
客「何で 泣くん? やめてや~。 フフフ!」
優子「はい すんません。」
玄関前
優子「ほんまに すんませんでした。」
「気にせんといてて。 こっちこそ 世話かけて 堪忍やで。」
優子「おおきに。」
糸子「おおきに。 お大事にして下さい。」
2人「おおきに。」
優子「気ぃ付けて。」
<たまたま 優しいお客さんやったんは 優子にとって よかったんか 悪かったんか…。 もっと厳しいお客で こってり 油 搾られ方が ためになったん ちゃうけ ちゅう気もするけど…>
糸子「ああ~! よかったあ… よかった…。」
居間
優子「すんませんでした。」
昌子「まあまあ。 そら そない一足飛びに 一人前には ならへんて。」
松田「みんな 失敗しながら ちょこっとずつ 上がっていくもんやよって。 なあ?」
昌子「うん!」
(電話の呼び鈴)
松田「はいはい はい。 はい もしもし オハラ洋装店でございます。」
昌子「縫い子かてな 最初から 何でも うまい事いく子ぉほど 伸びへんねん。 初めのうちは 失敗しといたら ええんやて。」
松田「はれ 直ちゃん。 どないしたん? えっ? ええ どうゆう事?」
昌子「えっ 何?」
優子「直子が どないしたん?」
松田「何や 直ちゃんが ごっつい賞を 取ったらしいわ!」