ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第111回「あなたを守りたい」【第20週】

あらすじ

北村(ほっしゃん。)は糸子(尾野真千子)の服のタグをディオールに付け替えて売りさばき、詐欺罪で逮捕されたのだった。その騒ぎの中、直子(川崎亜沙美)が優子(新山千春)をしった激励する電話をしてくるが、優子には伝わらなかった。三浦(近藤正臣)から北村の話を聞き、がっくりする糸子。そこに優子が心を改めて店に出ると言い始める。数か月後、北村も招き優子の結婚式が行われた。直子は奇抜に装うが着替えさせられる。

111ネタバレ

小原家

オハラ洋装店

優子「装麗賞や。 うちが取られへんかったやつや。」

居間

優子「どうせ うちには 直子ほどの才能もない! 店に出たかて 迷惑ばっかりかける! どないしようもない 役立たずの邪魔もんや! やる事なんか ないやんか!」

松田「ああ!」

オハラ洋装店

刑事「小原糸子さんは おられますか? おととい 6月10日 北村達男を 詐欺で逮捕しました。」

糸子「え?」

東京・小原宅

(カラスの鳴き声)

松田『はい オハラ洋装店です。』

直子「あ もしもしお? うち 直子。」

松田『ああ 直ちゃん。』

直子「姉ちゃん おる?」

松田『優ちゃん うん いてるよ。』

直子「あ いや 代わらんでええねん。 あんな 姉ちゃんに言うといて ほしい事があるんや。」

松田『何?』

直子「こんな事 一生に一回しか 言わへんけどな。 ちっこい頃から うちの目の前には いっつも 姉ちゃんが 走っちゃあった。 いつか 絶対 あいつ 追い抜かしちゃるて ほんで うちも走ってこれた。 その姉ちゃんに 今更 岸和田から 見守られたかてな 迷惑や。 とっとと また うち追い越して 前 走ってくれな困る。」

<…ちゅうて 直子は せっかく 一生に一回の伝言を頼んだのに あいにく 恵さんの頭には ひと言も入ってませんでした>

小原家

オハラ洋装店

糸子「こんで全部です。」

刑事「全部ですね?」

糸子「全部です。」

松田「ほな 直ちゃん またな。 あの こっちの事は 何も 心配せんで ええよってな。 な! えっ? いやいや 何もない。 何もないさかい。」

刑事「ほな また連絡するかも しれませんけども。」

糸子「ご苦労さんでした。」

昌子「先生!」

松田「先生! 今度は また 何したんですか!」

糸子「何もしてへん。」

昌子「本当の事 言うて下さい!」

糸子「何もしてへんて!」

松田「何か差し押さえられるんですか?」

昌子「ミシン 取られるんですか?」

糸子「取られへんわ! 戦争中やあるまいし。」

昌子「けど!」

糸子「うちは! 天に誓うて 何も 後ろ暗い事なんか してへん。 余計な心配せんでええ。」

松田「どこ行くんですか?」

昌子「警察ですか?」

糸子「いや 組合 行ってくる。 また 妙なうわさ広められんように 組合長に頼んでくるわ。」

泉州繊維商業組合

三浦「うん。 ここにも来よったで 刑事。」

糸子「ほうですか。」

三浦「要はやな 例の あんたと組んで 作った洋服の売れ残り あれに 偽物のディオールのタグ付けて 売りおったんやてなあ。」

糸子「そうです。」

三浦「あいつの やりそうなこっちゃ。」

糸子「また そのタグが なんぼ偽物でも もっと しっかり 作らんかいちゅうぐらい ちゃっちいんですわ。 ほんま どこまで 詰めも 脇も 甘いんじゃて ほんま 腹立って 腹立って。」

三浦「まあまあ そやけどや。 堪忍したりや。 な! 去年も あいつ でかい失敗して 焦ってしもうとったんや。」

糸子「まあ あれは うちも痛かったです。」

三浦「けどな。 あいつの方が 傷は深いと思うで。 何ちゅうたかて あいつは 商売人としては まだ 半端もんや。 勢いだけは あっても 信用も人望も 薄い。 あんたとこなんかと比較したら もう 比べもんにならんほど 足元 もろいんやで。」

糸子「うちは そんな人 失敗させてしもたんやな。」

三浦「せやけど ほれ 初犯で捕まって よかったやないけ。」

糸子「え?」

三浦「これが もし 下手して うまい事いったらやで あいつのこっちゃ 調子に乗って なんぼでも 次から次から もう おんなじ事 繰り返しよる。 なあ!」

糸子「どのくらいの罪に 問われますやろか?」

三浦「まあ 初犯やさかいな すぐに ぶち込まれるという事は ないと思うで。」

糸子「はあ…。」

(ため息)

小原家

玄関前

(爆竹の音)

優子 聡子「キャ~!」

(爆竹の音)

糸子「何してんや あんたら!」

優子「お母ちゃん! 見てた? 今の。」

糸子「何や? これ。」

聡子「爆竹!」

糸子「爆竹て?」

優子「何や 昨日 警察 来てから みんな 気ぃが ふせいで あかんなちゅう話なってな。」

千代「ほしたら 聡子が 爆竹しようて言いだして。」

糸子「爆竹?」

優子「何でかしらんけど『そうゆう時は爆竹や!』て。」

聡子「買ってきてん うちが。」

優子「よう分かれへんけど まあね 試しに やってみようかちゅうて 今やったんやし。」

千代「やって よかったなあ。」

優子「なあ! すっきりしたわ。 おおきに 聡子!」

聡子「エヘヘ!」

千代「聡ちゃん!」

(笑い声)

糸子「何や? それ。」

優子「お母ちゃん。」

糸子「あ?」

優子「うちな 心 入れ替えたよって。」

糸子「え?」

優子「明日から また お客さんの前に立たして下さい。 うちなあ この店 ちっさい頃から あったもんやさかい あるんが当たり前みたいに 思てた。 けど ちゃうんやな。 お母ちゃんらが 必死に 守ってきたさかい あるんやな。 これからは うちも 一緒に守りたい思てます。」

居間

<こうゆう時に ニカッと笑て『偉い! お母ちゃん うれしいで』ちゅうような事を よう言わんのは… 血筋やろか? 血筋やな…>

善作『ちゃう!』

糸子「あ?!」

東京・小原宅

(ノック)

直子「はい!」

源太『俺!』

直子「源太け?」

源太『うん。』

直子「どないしたんや?」

源太「俺 取った。」

直子「はあ?」

源太「そ そ そ…。 装麗賞!」

直子「ほんまけ? ほ… ほんまけ?」

源太「取った。」

直子「あんた 取ったんけ?」

源太「取った!」

直子「あ~! やったやんか! この! この! 何 泣いてんや! おう!」

小原家

オハラ洋装店

昌子「へえ~! あのジャガイモがなあ!」

松田「前が 直ちゃんで 次が ジャガイモ君て えらい ごっつい 学年ちゅうこっちゃねえ!」

昌子「なあ!」

直子「フフフ!」

優子「ちょっと あんた?」

直子「え?」

優子「ひょっとして その格好で 式に出るつもり ちゃうやろな?」

直子「そうや。」

優子「はあ? あんた うちの結婚式 ぶち壊す気け?」

直子「はあ? 何で うちの格好が あんたの式 ぶち壊すんよ。」

優子「常識で考ええや! ちょっと… お母ちゃん! おばあちゃん!」

千代「何や どないしたん?」

優子「直子がな あんな格好で 式に出るちゅうんや!」

千代「ああ あかんやろか?」

糸子「うちは だいぶ 見慣れてきたけどなあ。」

優子「絶対あかんて! 向こうの 親族さんらは普通の人らなんや。 こんな オウムみたいな妹 座っちゃったら 何事や思われるやんか!」

糸子「まあ ええわ。 ほな 直子おいで。 着替えり。」

直子「嫌や!」

糸子「あかんで!」

直子「嫌やで!」

糸子 優子「直子!」

玄関前

直子「おっちゃん!」

北村「おお~!」

直子「どないしたん?」

北村「優子がよ 今日… 招待してくれちゃあねんけど 何か やっぱり 遠慮しとった方が ええかな思て ほんで 代わりに これや。 まあ あの よろしゅう 言うといてや。」

直子「ちょっと 何や? 何で 式 出えへんよ?」

北村「お前 話 聞いてへんのかよ?」

直子「何を?」

北村「もう ほんま よろしゅう 言うといてくれ!」

直子「ちょちょ 待ってえな おっちゃん! 何や 何や?」

北村「わいは 優子の式なんか 出れる立場ちゃうねんて!」

直子「え~! 姉ちゃん 姉ちゃん!」

北村「呼んだらあかん お前!」

直子「北村のおっちゃんや! おっちゃんが 何か よう分からん事 言うてる!」

優子「おっちゃん!」

北村「おう!」

直子「何か 今日の式 出えへんとか 言うてんや!」

優子「何言うてんや! おっちゃんが 式に出てくれへんかったら うちは嫌や!」

北村「わいは… お前に迷惑かけたないのや!」

優子「何の迷惑かけんねん? そんな寂しい事 言わんといてよ!」

北村「わいかて出たいよ それは!」

優子「おっちゃんに出てほしいねん! 出てほしいねん! おっちゃん!」

北村「殺生な事 言うなよ お前!」

優子「ほんとに出てや!」

北村「わいなんか ほっとけ お前!」

優子「絶対 出てほしいのや おっちゃんには!」

直子「何で泣くねん?」

(泣き声)

北村「お前の幸せだけ 考えとけよ!」

<そんな茶番が 今日も また繰り返されて>

玉枝 八重子「おめでとうございます!」

優子「おおきに!」

昌子「おはようございます。」

千代「よろしゅうお願い致します。」

八重子「おめでとうございます。」

昌子「こっちが お色直しので これが髪飾りですわ。」

八重子「まあ~!」

玉枝「八重子に任せて下さい。」

糸子「お待たせ~! ほな行こか。」

一同「ほな 行こ 行こ!」

糸子「皆さん 行きましょう。」

優子「おっちゃん!」

北村「なあ…。 わい ほんまに行って ええんけ?」

糸子「うちに聞くな ボケ。」

直子「行こ おっちゃん!」

聡子「行こ 行こ!」

北村「もう そこまで 言うんやったらのう。」

糸子「あ~あ 茶番 茶番。」

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