ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第113回「あなたを守りたい」【第20週】

あらすじ

卒業後、東京の百貨店に店を構えた直子(川崎亜沙美)だが、直子の服はデザイン重視で実用性がなく、店員ともうまくいかない。糸子(尾野真千子)は上京して、客のための服を作るよう直子を諭し、手伝う。源太(郭智博)ら若いデザイナーたちにごちそうしてやりながら、世界に広がるその夢をまぶしく思う糸子。岸和田に戻ると、北村(ほっしゃん。)が聡子(安田美沙子)をデザイナーとして育てたいと申し出て、糸子はあきれる。

113ネタバレ

小原家

オハラ洋装店

千代「ふ~ん アハハハハハハハ!」

<この4月から 東京の百貨店で 店を始めた直子が 毎晩のように 電話を かけてくるようになりました>

居間

千代「はあ~。 さあ 食べよ。」

糸子「また 直子?」

千代「うん。 頂きます。」

糸子「あの子 電話代 大丈夫やろか?」

千代「う~ん『大家さんに ちゃんと払てる』ちゅうてたで。」

糸子「けど こんな毎晩 相当 かさんでるはずやで。」

千代「いや せやろか?」

糸子「うん。『もう かけてきな』て 言いや お母ちゃん。」

千代「ほんでも こない急に 毎晩 かけてきやるちゅう事は よっぽど 仕事がきつうて へこたれてるんやと 思うんや。」

聡子「直子姉ちゃん 案外 気にしいんとこ あるしなあ。」

千代「あんた いっぺん 東京に 様子 見に行ったった どうないや?」

糸子「うちが?」

千代「うん。」

糸子「いや…。 あのへそ曲がりが『うちが行く』ちゅうて ホイホイ喜ぶかいな。」

<ところが ものは試しに 次の日の電話で…>

オハラ洋装店

糸子「うちも 久しぶりに 東京 行ってみたいし 観光ついでに あんたの店も いっぺん見てみたいしな。」

直子『うん。』

糸子「え?」

直子『ええよ うちは。』

糸子「え?! ええんか ほんまに行くで?」

直子『うん 待ってるわ。』

<こら よっぽど へこたれてるに 違いありません。 このごろは『こだま』っちゅう 特急列車がでけて 東京まで7時間。 世の中 ほんま便利になったもんです>

直子の店

東京・銀座

店内アナウンス『本日は ご来店を頂きまして 誠にありがとうございます。 今週の催し物につきまして ご案内を申し上げます』。

「小原君 小原君!」

直子「はい。」

「言ったろう?! この鉄くず 奥へ 下げたまえ!」

直子「いや けど これは…。」

「いいから 下げなさい! アートだか何だか知らんが 汚らわしい! 目障りだ! ここは 百貨店なんだよ。 もっと 品のある店づくりをしたまえ!」

直子「手伝うて。」

「だから 言ったのに。」

「ねっ。」

(2人の笑い声)

直子「何?!」

(2人の笑い声)

糸子「また あとにしようか…。」

<そない思て 店を一回りして 戻ってきたら>

直子「どうも ありがとうございます。」

「ありがとうございます!」

直子「どうも ありがとうございます。」

「ございます!」

糸子「また 怒られてるわ…。」

「ありがとうございます!」

糸子「しゃあないな…。」

<ほんなこんなで 百貨店を3周ほどしてから>

糸子「こんにちは。」

「いらっしゃいませ。」

直子「お母ちゃん!」

糸子「これ…。 直子が いつも お世話になってます。」

直子「お母ちゃん。」

糸子「はあ~ やれやれ やっと着いたわ。」

直子「何や えらい遅かったな どっか 寄っちゃあったん?」

糸子「うん ほんな事も ないけどな フフフッ…。 せやけど あんた ほんま こら 立派な店やんか! へえ!」

直子「まあな。」

糸子「はあ…!」

直子「まあ 上司も うちの才能 認めてくれてるよって 好きに やらしてもうてるわ。」

糸子「うん… ほうか。 うん。」

「こんにちは。」

直子「あ いらっしゃい…。 いらっしゃいませ。」

「あのさ~ 私 こないだ ここで パンタロン 作ってもらったんだけどね。」

直子「はい ありがとうございます。」

「ちょっとさ 作り直してよ。」

直子「え… どうしてですか?」

「歩きにくいったら ないんだから。 あんた よく こんな不良品で お金 取れるわね! どういう神経してんの はっ 信じられない!」

糸子「見せてみ。 見せてみ! あんた こら むちゃや。 別珍を こんな縫い方して。 ほんで また こんなとこへ ポケットつけたら そら歩きにくいわ。 とりあえず このポケット 取り。 ほんでな ここを…。」

直子「ふん。 分かってへんなあ お母ちゃんは。」

糸子「はあ?」

直子「そのポケットが 肝心なんや。 このデザインは このポケットがついて 初めて 完成するんや。」

糸子「アホか。 服が ポケットで 完成するかいな。 服ちゅうんはな 買うた人が気持ちよう着て 初めて完成するんや! ほれ やり直し。 手伝うちゃるさかい。」

小原宅

小沢「ほな 握りを 何人前? 3人前?」

糸子「何で 3人前や? 5人前 取りいな!」

小沢「えっ ええんですか?!」

糸子「かめへん! 握りの松やで。 梅やら竹やら 取りなや!」

小沢「ありがとうございます!」

源太 吉村「ありがとうございます!」

糸子「ええて。 飢えた若い子に おなかいっぱい食べさすんが おばちゃんらの役目やさかいな。」

吉村「ありがとうございます!」

糸子「ハッハッハッハッハ…。」

源太「そういや 直子。 俺のオブジェ 評判 どんだ?」

糸子「あ! あれ あんたが こさえたんかいな。」

源太「あ おかあちゃん 見られました?」

糸子「見た見た~!」

直子「え? お母ちゃん いつ 見たんよ?」

糸子「はれ? 気のせいやったかいなあ?」

直子「え…? アホの支配人に『汚い鉄くず 置くな』言われて 片づけた。」

源太「えっ 本当に?」

直子「うん。」

糸子「分かってへんでなあ 支配人。」

源太「おかあちゃんには 分がってもらえますが?」

糸子「いや~ うちにも まあ 鉄くずにしか 見えへんけどやな。」

源太「あら…。」

吉村「ハハハ ハハハ!」

直子「せやから お母ちゃん いつ見たんよ?」

糸子「ほんでも 何ちゅうか おばちゃんも このごろ ちょっと賢うなってな。」

源太「はあ…。」

糸子「若い子のやる事 自分に分からんからて 間違うてるとは 限らんちゅう事を 覚えたんよ。」

直子「へえ~。」

糸子「要はな 外国語みたいなもんなんや。 うちには 分からんでも それで 通じ合うてる人らが いてる事は 分かる。 ほんでな 相手が どんくらい本気か 気持ちを込めて言うてるか ちゅうんも 何とのう 分かるもんなんや。 あの鉄くずは 本気なんやなあて 思うたで。」

源太「ありがとうございます。」

吉村「よかったな 源太。」

源太「ああ!」

糸子「なあ あんたら 将来 どんな夢 持ってんの?」

吉村「それは やっぱり プレタのデザイナーですね。」

源太「俺も。」

糸子「やっぱし プレタけ。」

源太「はい。 プレタのデザイナーさ なって 世界中の人に 僕のデザインした服 着てもらいたいんです。」

糸子「世界中?」

吉村「ええ。 おかあちゃん でも 本当に プレタなら 世界中の人を お客さんにできるんですよ。」

糸子「はあ~!」

直子「うちは 東京を 今のパリみたいにしたい。 東京が 流行の発信地になって パリのデザイナーが コレクション 開きにくる くらいになったら おもろい。」

吉村「東京コレクションか。」

直子「うん。」

吉村「いいねえ!」

糸子「ふ~ん… 世界! はあ…。」

小沢「頼んできました 握りの松。」

<若い子らの夢の形は 思てもみんほど 広々と どこまでも高うて 聞いてるこっちまで 飛んでいけそうでした 夢は大きいほど 壊れやすいかもしれんよって どうか どうか 守っていけるように>

小原家

居間

千代「へ~え。」

糸子「お母ちゃん 小沢君の 作ってや。」

<とりあえず おなかいっぱい食べさすんが やっぱし おばちゃんらの役目やな 直ちゃんばっかり あかんで。>

珈琲店・太鼓

北村「ほ~! ほな ここのマスター なったんけ?」

木之元「ほうなんや! もう おかげで 毎日 楽しいてよ。」

北村「おう 息子さんはよ?」

木之元「あ あれはな 日本橋の電気屋 勤める事になってなあ。」

北村「日本橋 行っちゃうのけ! よかったのう!」

木之元「ほんまや。 アハハハ…。」

(ドアの開く音)

糸子「こんにちは。」

聡子「こんにちは。」

木之元「糸ちゃん 聡ちゃん!」

糸子「おっちゃん。 ホットケーキとココア 頂戴。」

木之元「よっしゃ! おう よっしゃ。」

糸子「何や? 話て。」

北村「お前よう…。 聡子を わいに預けへんけ?」

糸子「何の話よ?」

北村「聡子を 一流のデザイナーに育てちゃろ 思てんねや。」

糸子「何?」

北村「ほら わいよ『これから プレタポルテを やりたい』言うちゃあったやろ。 …で いろいろ当たってみたんや。 せやけど それが うまい事 いけへん。 有名どころは 皆 もう さっさと契約しちゃある。」

糸子「そらそやろ…。」

北村「そこでや 今の有名どころと 組まれへんかったらよう 逆に わいが 若い者 集めて ほんで 一流のデザイナーに 育てちゃったら ええんじゃわ!」

糸子「ほんで 聡子け?」

北村「せや!」

糸子「アホか。」

北村「何がや!」

糸子「あんたな 手当たりしだいも ええとこやな。」

北村「手当たりしだい ちゃうわ! こいつかて お前の娘や 素質あるやろ?」

聡子「けど うち…。」

北村「うん 興味あるか?」

聡子「ふん ない事ない。」

北村「お~!」

糸子「あかん! この子は 洋裁なんか せえへん。」

北村「何でや お前 今『興味ある』言うちゃあったやろ?」

糸子「あんたな デザイン画の一枚でも 自分から描こうとした事 あるけ? そんな甘いもんと ちゃう。 中途半端な事 言いな!」

北村「いや ほやけど…。」

糸子「おっちゃ~ん! ホットケーキ まだ?」

木之元「あ 堪忍や~! これ 案外 焼くん 難しいやし。」

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