ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第116回「鮮やかな態度」【第21週】

あらすじ

短大を卒業して洋裁の学校に通い始めた聡子(安田美沙子)。勉強が苦手な聡子は3日で辞めたいと言いだし糸子(尾野真千子)をあきれさせる。しかしテニスの恩師から、聡子には根性があると聞く。糸子は自分のデザイン画をどっさり渡して、写し描いて練習するように言う。優子(新山千春)は東京で直子(川崎亜沙美)を手伝っているが、競い合いは相変わらずだ。ある日聡子のために優子と直子それぞれのデザイン画が送られてくる。

116ネタバレ

小原家

<いつも 隅っこで 笑てるだけの子や思てた聡子が…>

2階 寝室

聡子「今日かぎりで… テニス やめるわ。」

糸子「何でや?」

聡子「もう さみしい。 さみしいさかい。」

<初めて見せた そんな顔が うちには 案外 こたえたんです>

オハラ洋装店

聡子「お母ちゃん。」

糸子「ん?」

聡子「うち 短大 卒業したら 洋裁学校 行かしてもらわれへんやろか?」

糸子「うん。 やりたいように やり。」

玄関前

聡子「行ってきます。」

千代「行ってちょいで。」

糸子「頑張っちょいでや。」

<これまで なあんも 目ぇかけてやられへんかった分 これからは 何なと与えちゃろう>

糸子「行っちょいで!」

聡子「行ってきます!」

<珍しく そんな甘い気ぃに なってました。 ところが…>

居間

糸子「はあ? あんた 今 何ちゅうた?」

聡子「せやからなあ… やめたい。」

糸子「何を?」

聡子「学校。」

糸子「学校 やめたい?! はあ~!? あんた まだ3日目やろ?!」

聡子「ふん…。」

糸子「『ふん…』ちゃうわ! あんた 自分が言うてる意味 分かってんか? ああ?!」

千代「とりあえず 話… 話 聞いたりな。」

糸子「おい! おお?!」

千代「ちょっと 話 聞こうか。 なあ。」

糸子「3日で… ああっ…。」

糸子「机?」

聡子「うちな… 机に じ~っと座って 勉強ちゅうんがな ほんまに ようせんねん。」

糸子「あんたな…。 あんたが『洋裁の学校 行かしてくれ』ちゅうたんやろ?」

聡子「はい… そうです。」

糸子「ほな 我慢せんかいな! 何でも 最初の基礎ちゅうたらな 机に じ~っと座って 勉強するもんや! 分かったか? 分かったんか?!」

聡子「ふ~ん?」

<『糠に釘』 せやけど こっちは もう 学費も納めてしもてんや>

玄関

聡子「行ってきます~!」

<当然 翌朝も行かせちゃりました>

玄関前

糸子「ほんま あのアホ娘が。」

「お前ら もうちょっと頑張らな あかんぞ。 気合い 入れてな。」

糸子「あ!」

「今度の選抜から 外さな あかんよう なるからな。」

糸子「先生! ご無沙汰してます 先生。」

「いや こっちこそ。」

糸子「いつぞやは ほんま すんませんでした。」

オハラ洋装店

「ハハッ よう分かります。」

糸子「そうですか?」

「ええ。 聡子さんは そうゆう子ぉですわ おかあさん。」

糸子「どうゆう子ですやろ?」

「その『学校 やめたい』ちゅうんも 根性がのうて 言うてるんと ちゃうんです。 聡子さんの根性は もう ごっついもんです。 10km走れ」ちゅうたら 必ず走る。 腕立て200回 素振り1,000回。 やれちゅうた事 やらんかった事は 一回もありません。 やりきるか 倒れるかの どっちかでした。」

糸子「はあ…。」

「あいつには とにかく でっかい山を ド~ンと置いちゃる ちゅう事が 大事なんです。『この山を登れよ』ちゅうて 言うときさえしたら どんだけ しんどても 脇目も振らずに 登っていく。 ハッと気ぃ付いたら もう えらいとこまで 行ってるんです。」

糸子「はあ…。」

「やる気がのうて『学校 やめたい』言うてるんやない。 がむしゃらに 洋裁をやりたいだけ ちゃうやろか。 自分には そんな気ぃします。」

<持つべきものは 中学校の恩師です>

糸子「先生…。」

「は?」

糸子「おおきに。」

「いえ。」

糸子「ほんま おおきに。」

<早速 山を ド~ンと 置いてみちゃる事にしました>

2階 寝室

糸子「お母ちゃんのデザイン画や。 今日から こんで練習しい。 見んでも 同じように 描けるようになったら 学校 やめさせちゃら。」

聡子「はい。」

<最初は それが 山やちゅう事すら よう分かってないようでした>

オハラ洋装店

(ミシンの音)

(柱時計の時報)

糸子「は~…。 さあ 寝ようか。」

2階 寝室

糸子「はれ あんた まだ 起きてんかいな。」

(紙の破れる音)

糸子「あ…。」

聡子「はれ~。」

<翌朝 もっかい のぞいてみたら>

<どうやら ほんまに 山を 登り始めたようなんが 面白て>

糸子「とりあえず ほっといてみちゃろか…。」

<さしあたり『学校に行け』とは 言わんときました。>

直子の店

<ところで 一方 東京の直子の店は ちゅうと 今や ごっつい人気店なんやそうです>

直子「駄目よ。 ミナはさ せっかく タッパがあるんだから それを生かさなきゃ。」

ミナ「そうかな? だけど 自分では 嫌なのよね。 女のくせに こんなデカいの。」

直子「駄目駄目 そんな弱気じゃ。 私の服を着るなら もっと堂々としてほしいの。 じゃなきゃ 作んないわよ。」

ミナ「嫌だ そんなの 困る! 分かった。 私 堂々とするわ。」

直子「そうよ。 その方が ずっとイカすわ。」

「こんにちは。」

直子「いらっしゃいませ…。 姉ですか?」

「ええ。」

直子「すみません 今 出張に出てるんです。」

「あら そうなの?」

直子「金曜には 戻りますから お名前 お伺いしておきましょうか?」

<その出張先ちゅうのが つまり 岸和田のオハラ洋装店です。 優子は この2年間 ずっと 岸和田と東京を 行き来して暮らしています>

小原家

居間

優子「あ~ しんど!」

糸子「また えらい 顔 しっかりしてきたなあ。」

千代「ご苦労さんやったなあ。 お店 相変わらず 繁盛してるんか?」

優子「先月の売り上げも 去年の倍や。」

千代「いや~ すごいなあ。」

優子「そのうち 6割が うちの売り上げ。 4割が 直子。」

糸子「やっぱし あんたの服のが よう売れるんか?」

優子「そうや。 せやから まあ 直子が ひがんで やりにくい やりにくい。」

直子の店

「優子さんは?」

「申し訳ございません。 ただいま 出張に出ておりまして。」

「じゃあ また 来週に出直すわ。」

<直子が嫌がる仕事を 優子が 代わりに引き受けてるうちに 優子のお客が どんどん 増えてったんやそうです>

小原家

居間

千代「まあ 一軒の店に 糸子が 2人おるような もんやもんなあ。 そら やりんくかろでなあ。 アハハハハハハ!」

糸子「何で やりにくい?」

優子「なあ。」

糸子「仕事は やりやすいやろ?」

<ほんでも 直子が言うには>

直子の店

「どうですか? 今 お時間。」

直子「ああ ちょっと ごめんね。」

「ひょっとして 取材?」

直子「うん。『モード・ジャパン』のね。」

「わあ すっごい。 さっすが!」

直子「ほんと ごめんね。 また来て。 すみません。 どうぞ そちらに。 嫌になっちゃう。 私 取材 多いのよね~。 姉んとこには ちっとも来ないのに。」

<…やそうです>

小原家

2階 寝室

優子「聡子。」

聡子「はい!」

優子「何してんの?」

聡子「はあ… お帰り。 ウフフン フン…。 デザイン画の練習。」

優子「ふ~ん。 へえ~ お母ちゃんの 手本にしてるんか。」

聡子「ふん。」

直子の店

優子「ご苦労さま。」

「お帰りなさい 優子さん。」

「お帰りなさい。」

優子「どうだった? 留守中。」

「まとめておきました。」

優子「うん。 ありがとう。 あ そうだ 直子。」

直子「ああ?」

優子「あんた 古いデザイン画 持ってる?」

小原家

2階 寝室

<優子が東京に戻って 何日かしてから 聡子に 新しい山が届きました>

聡子「お母ちゃんのと 優子姉ちゃんのと 直子姉ちゃんのと 全部 全然ちゃう! すごいなあ~ どれも!」

糸子「はあ… あかん! 負けてられへん。」

糸子「負けてられへん!」

<それが 腹立つほど ええんです>

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