あらすじ
聡子(安田美沙子)のデザインした服は極端に丈が短く、鳥山(末成由美)は激怒する。落ち込む聡子を糸子(尾野真千子)はなだめたが、だんじり祭のために帰省してきた直子(川崎亜沙美)は、自分のやりたいデザインを曲げるなと励ます。聡子はロンドンの流行にヒントを得ていたのだ。北村(ほっしゃん。)が心斎橋の店舗物件を買わないかと糸子に持ちかけてきた。糸子は断るが、直子はこっそり物件をとっておいてくれるよう頼む。
118回ネタバレ
小原家
オハラ洋装店
鳥山「うちな 聡ちゃんに デザインしてほしいんや。」
糸子「あかん あかん。 この子 まだ そない一人前 ちゃうし。」
鳥山「ええやん! せやから うちが 第1号や。 聡ちゃんの若い感覚で ごっつい イカした服 こさえてほしいんや。」
優子「えらいスカート短いなあ。」
聡子「鳥山さんは『ほんまに 聡ちゃんが思うとおりにして』ちゅうんや。」
優子「ほな 自信持って やり それしかないし。」
聡子「あの… どないでしょうか? あの…。」
鳥山「あんた どうゆうつもりやの?! こんなハレンチな服 着れる訳ないやろ!」
糸子「ちょ ちょ ちょっと待って下さい 鳥山さん!」
鳥山「ああ?!」
糸子「そら ちょっと あんまりですわ。」
鳥山「何? 文句 言いたいんやったら あんた 着てみ! あんな短いスカート 膝 丸出しやないの! うちは そこまで 下種と ちゃうわ!」
糸子「まあ とりあえず 座って下さい。」
鳥山「あかん。 もうええ! 言うとくわ。 もう二度と ここには 金輪際 来えへんから。 ふん さいなら。 ふん!」
糸子「『もう… 来ん!』ちゅうた?」
昌子「言いました。」
松田「言うた。」
糸子「やった! もう来えへん。 やった!」
昌子「やった! やりましたね。」
松田「は~ これで 1個 心配事が減ったわ~!」
(笑い事)
糸子「あ…。」
(泣き声)
2階 寝室
糸子「ちゃんと 鳥山さんに確認したんやろ?『こうゆうデザインにします』て。」
聡子「うん…。『あんたが思うとおりに やってくれたら そんでええ』ちゅうてくれた。」
糸子「まあ ほんでも さすがに こない短かったら 着てみて びっくりするかも しれへんなあ。」
聡子「『ハレンチ』って 言われた。」
糸子「まあ 脚でも腕でも 出した事ないとこ 出すちゅうんは 恥ずかしいもんやさかいなあ。 丈は そこが難しいとこなんや。 勉強さしてもうたと思い。」
廊下
千代「どないや?」
糸子「うん。 心配 要らん。」
千代「ほうかあ?」
糸子「大丈夫や。 明日から 祭りやし。」
座敷
♬~(お囃子)
「ソーリャ! ソーリャ! ソーリャ! ソーリャ!」
(拍手と歓声)
<相変わらず 祭りの日ぃは 朝から大忙しで>
オハラ洋装店
「こんちは~。」
<入れ代わり立ち代わり やって来る お客さんや 一日中 居座る 酔っ払いのために とにかく 作っちゃ 出す>
台所
糸子「あっ! あ~あ… まあ ええわ。」
<失敗しても 出す>
居間
木岡「おっ 来たな。」
木之元「何 これ?」
縫い子「だし巻きです。」
木岡「だし巻き?」
北村「こら 駄目巻きやろ。」
木之元「アハハハハ!」
北村「おかん 助けて! これ もう~。」
千代「あれ まあ!」
木之元「駄目巻き!」
千代「食べれますて。」
北村「食べれるて ここまで香ばしいがな。 ハハハ!」
木之元「食べり。」
北村「子供は好きやど こんなん。」
2階 座敷
聡子「どやろ?」
直子「へえ~!ええやん!」
聡子「ほんま?」
直子「ふん。 あんた なかなか やるな。」
聡子「お客さんからは『ハレンチ』って 言われてしまったんけどな。」
直子「そんなん 言われたもん勝ちや。」
聡子「え?」
直子「うちなんか しょっちゅう言われてんで。 ハレンチやら 悪趣味やら。 ほんで ええねん。 デザイナーが ええ子ちゃんで どないすんねん。」
聡子「はあ…。」
直子「けど この丈 あんた 何で思いついたん?」
聡子「うん。 あんな ロンドンの女の子らがな こんなん よう はいてんやし。」
直子「ロンドン?」
聡子「うん。 ビートルズの記事とか見とったらな ファンの子らとか よう写真 写ってるやんか。 その子ぉらが 必ず この丈 はいたんねんか。 それが ごっつ格好ええねん。」
直子「ふ~ん。」
聡子「けどな『やっぱし そら ロンドンの女の子やから 似合うもんなんやで』って お母ちゃんは 言うちゃあった。」
直子「あかん あかん。 あんた そんな事 気にしちゃったら あかんで。」
聡子「はあ?」
直子「あんなあ あんたが ロンドン風 好きやったら ひたすら ロンドン風 作っちゃあたら ええねん。 ほしたら 勝手に ロンドン風の客が 集まってくるようになるんや。」
聡子「ほうなん?」
直子「お母ちゃんも姉ちゃんも 客に こび 売り過ぎなんや。 あんなん 聞いちゃあった あかんで。」
聡子「ふ~ん…。」
居間
北村「よう!」
直子「何や おっちゃん 来てたん?」
北村「相変わらず お前 ごっつい格好 しやんの~。 東京で 流行っちゃあんのけ?」
直子「東京の流行り ちゃうわ。 うちの流行りや。」
北村「お~お~ おお~!」
木之元「何が『お~』や。」
北村「さすがに もう 山猿 ちゃうのう。 都会の猿や。 言う事が ひねくれちゃあるわ。」
直子「どっちも 猿やなあ。」
木之元「まあ 飲め! お猿。」
北村「もらえ おしゃれ猿。」
<北村の 一流デザイナー育成計画は 案の定 挫折したそうです>
北村「ほら わいもよ すぐに一流 育てれる 思えへんかったけど あない ボンクラばっかり集まる 思てへんかったわ。」
直子「どっから 集めたんや?」
北村「大阪の洋裁学校や。 優子 行っちゃあった。」
聡子「ああ うちが 3日でやめたとこ?」
北村「あっこや あっこ! あっこの生徒やど。 もっとお前らみたいなよ がめつい 奴らが来る 思ちゃあったら 皆が皆 やる気 スッカラカンや。『デザイン 出せよ』ちゅうたら お前 5分で描きました ゆうようなもん ばっかり 持ってきやがってよう。」
直子「ほんで どないしたんよ?」
北村「なんぼかマシなん 2人だけ置いて あとは 工場 回しちゃった。」
糸子「ほれ 見た事け。 せやから 言うたやろ。『そんな簡単ちゃう』ちゅうて。」
北村「あ~ もう ばばあの 決まり文句やの。」
糸子「ああ?」
北村「『ほれ 見た事か』。 お前よ これからの人生 そればっかりで 生きていくつもりやろ。」
糸子「何じゃ?」
(直子と聡子の笑い声)
北村「簡単やない ちゅうのは 分かっちゃあんねん。 せやけど やらな 分からへんやんけ。 なあ?!」
直子 聡子「なあ! フフフフ。」
北村「ほんで わい 最近よ ちょっと 不動産にも 手ぇ出しやん。」
糸子「はあ?」
直子「不動産?」
北村「おう。 今よ ごっつい勢いで 土地の値段 上がってきちゃあんねやし。 そら もう 絡んじゃあったら 何か ええ事あるかな 思てよ。」
糸子「はあ… ほんま あんたのスケベ根性は 腐らんな。」
北村「心斎橋のよ ごっつい ええとこによ 1軒空き店舗が 出そうなっちゃあねんさかい お前 買えへんけ?」
糸子「買うか!」
直子「え! 買およ お母ちゃん。」
糸子「要らん! 新しい店 出す予定もないのに。」
直子「何でよ? ほんなの 値段 上がってんやったら 買うとくだけでも 買うといたら ええやん。」
北村「そや。 上がっちゃる時 売ったら お前 その分 儲けやないか。」
直子「せや なあ!」
糸子「要~ら~ん! そんな あぶく銭 要らん。 あんた いつから そんな猿知恵 働かせるようになったんや? 楽して 儲ける事ばっかし 考えちゃったら 罰 当たんで。 潰れんで! この人みたいに。」
北村「潰れてるか アホ。」
糸子「潰れかけてるがな。」
北村「かけてても 潰れてへんやろが。」
糸子「捕まったやろ。」
玄関前
<こないして見ると 毎年 同じ繰り返しのようで 祭りも 随分 変わりました。曳き手は 町ごとに そろいの 法被を 着るようになって 女の子らも みんな 当たり前みたいに着て だんじり 曳いてます>
北村「あのよ…。 ずっと前から 聞きたかったんやけどよ。」
糸子「何や?」
北村「お前よう…。 わい…。 こ… この前 お前 ごっつ安い絹 買うたんやしよ。」
糸子「はあ?」
北村「ほんで 偽物ちゃうかな思てん お前 どない思う?」
糸子「はあ?」
糸子「絹以外のもん 混じっちゃったら 溶けるさかい 見といてみ。」
北村「おう。 うおおおお~!」
糸子「溶けた。」
北村「『正絹』言うたぞ おっさん!」
糸子「偽物や。」
北村「え~っ! 早すぎるわ これ! 混ざり過ぎすぎやろ! 」
居間
直子「えらいこっちゃ。」
北村「ぎえっ!」
直子「うわ 堪忍 おっちゃん。」」
北村「お前!」
直子「うわ~ 寝坊してしもた~。」
台所
千代「おはようさん。」
直子「乗り遅れたら 姉ちゃんに ぶち殺される。」
千代「あんた これ 持っていき。」
直子「うん。 おおきに! ほなな おばあちゃん。 また帰ってくるよって。」
千代「もう行くんか?」
直子「うん。」
千代「え~っ!」
居間
北村「痛い! お前 ちゃんと見て歩け アホ!」
直子「は… せやせや。」
北村「もう!」
直子「おっちゃん。」
北村「ああ?」
直子「昨日の話。」
北村「何や?」
直子「『心斎橋に 空き物件ある』ちゅうちゃあたやろ?」
北村「おお~。」
直子「あれな もうちょっと 置いといてくれへん? お母ちゃんに ないしょで。」
北村「ああ?」
糸子『直子~! もう行くんけ?』
直子「ほな 頼むわ。 また 詳しい事は 電話するさかい。 な! は~い。 行ってくるわ!」
糸子『気ぃ付けや! 慌てた けがすんで!』
直子「せえへん!」
糸子「あ~あ もう 行ってもうた。 は~ だんじりか。 何や?」
北村「え?」
糸子「何 にやけてんや?」
北村「いやいやいや 何やろな 思てよ。」
糸子「何が?」
北村「いやいやいや こっちの話や。 いやいやいや。」
糸子「気色 悪いなあ。」
北村「イタッ! お前!」
千代「はれ~ 直子!」
北村「おかあちゃん!」
千代「もう 行ってしもたんか? はれ~ これも持たせよう 思たのに…。 北村さん。」
北村「ああ?」
千代「目玉焼きと 卵焼き どっちに しましょ?」
北村「いや もう そんな構わんといて おかあちゃん。」
千代「どっちか?」
北村「どっちか… ほんな もう 絶対 目玉焼き。」
千代「よっしゃ。」
糸子「聡子~! 起きりや~!」
<祭りが終わったら また 普通の日ぃが始まります>