あらすじ
糸子(尾野真千子)は善作(小林薫)が呉服店の看板を自分に譲ってくれた経緯を思う。一方東京では、北村(ほっしゃん。)の前で優子(新山千春)と直子(川崎亜沙美)がけんかになる。“1つの店でやっていくことはできない”と優子は、岸和田に戻ることに。経営者にふさわしく成長した優子が戻った日、糸子は引退を決意し昌子(玄覺悠子)や恵(六角精児)を説得。八重子(田丸麻紀)と語らい、切なさをかみしめる糸子だった。
119回ネタバレ
小原家
玄関前
(とんびの鳴き声)
<うちん時は さっむい日ぃに 仕事から帰ってみたら 看板が消えちゃあった。 ほんで 店に入ってみたら>
回想
糸子「うん? 何これ?」
回想終了
オハラ洋装店
糸子「ほんで 家の中も ガラ~ンと しちゃあって…。『おばあちゃん… お母ちゃん』ちゅうたら おばあちゃんが 台所で 豚 揚げちゃあって。」
台所
糸子「『みんな どこ行ったん? なあ なあ…』。 ほしたら おばあちゃんが。」
回想
ハル「あんな 今日から うちと あんたの 2人っきりや。」
回想終了
糸子「…で うちが『ええ?!』。 くそ! ええなあ お父ちゃん あんな格好ええ事でけて。」
<今のうちは ああゆう訳にはいかん。 うちが雇うてきた従業員がおる。 つきおうてきたお客さんがおる。 責任も義理も 山ほどある。 あないバッサリはいかん。 店のためにも 優子のためにも>
オハラ洋装店
「ほな またな 小原さん。」
糸子「ああ おおきに。 また どうぞ!」
<やっぱし もっと こう… ボチボチと… 丸う丸う…>
糸子「ああ~ しょうもな。」
直子の店
「優子さん。」
優子「え?」
「直子さんが『今日 残業ないなら 優子さんのアパート 寄っていいか?』って聞いてます。」
優子「何で?」
「さあ…。」
優子「いいわよ。『9時くらいなら』って 言っといて。」
「はい。 9時くらいなら いいそうです。」
直子「ふ~ん… ありがと。」
『2人で話せば いいのにね。』
『このごろ ますます険悪だから あの2人。』
優子のアパート
(ノック)
北村『お~い 来たど~!』
優子「えっ? 北村のおっちゃんや。」
北村「『お~い!』お~!」
優子「どないしたん? 東京 来てたん?」
北村「ほうよ! 展示会 あってよ。 言うてなかったんかよ?」
直子「うん。」
北村「シューマイ 買うてきちゃった。」
優子「うん ありがとう。」
北村「チビ 元気か? お~い!」
優子「シ~ッ 今 寝たとこや。」
北村「直子もよ ここ 住んじゃあったんけ?」
直子「うん。」
北村「お~ そら お前ら2人と チビやったら こら 狭いわ。」
直子「せやから 出たんやし。」
北村「ああ…。」
直子「店でも 一日 顔 突き合わしてんのに うち 帰ってまで 一緒に おりたなあいし。」
優子「こっちのセリフや。」
北村「かわいいの~ チビはよ。 お~ 見てみい見てみい ほれ。 ちっこい手ぇしてよ~。 ハハハハ!」
優子「うん よう寝てるな。」
直子「あんな。」
北村「お~ お~。」
直子「うち 店 辞める。」
北村「ああ…。」
優子「はあ?」
直子「店 辞めて 心斎橋で 新しい店 やる。」
優子「何 言うてんや? 急に。」
直子「おっちゃんがな 心斎橋のごっつい ええ物件 紹介してくれたんや。 家賃と面積は そこそこやけど 立地が 抜群や。 新しい店やんのに もってこいの場所や。 なあ?」
優子「何 勝手な事 言うてんや? 今の店 どないすんねん?」
直子「せやから 辞めるちゅうてるやろ?!」
優子「辞める? よう そんな無責任な事 言うな? あれ あんたの店やろ? お客さんやら 従業員やら どないすんねん?!」
(机をたたく音)
直子「あんたが やったら ええんじゃ!」
優子「はあ?」
直子「あんたの売り上げのんが うちより ずっと高いんや。 あんた一人でも 十分やっていけるやろ!」
優子「あんなあ そもそも うちは ただの あんたの手伝いやんか。 な! そら うちの方が 売り上げが高い ちゅうたかて 店におらな あかんのは あんた ちゃうんけ?!」
北村「落ち着けよ。」
直子「知らん。」
優子「はあ?」
直子「あんな店… うちは もう どうでもええ。 とにかく…。 うちは あんたが 目障りなんや。 あんたの おらんとこで 自分の力だけで 店 やりたい。」
北村「おお それ 空や。 これ 飲め。」
優子「分かった。 うちが 店 辞める。 ほんで ええやろ!」
直子の店
優子「お世話になりました。 じゃあ あとは よろしくね。」
「はい 頑張ります。」
優子「里恵 行くわよ。」
小原家
<そないして 優子は 東京の店を辞め 岸和田へ帰ってきました>
オハラ洋装店
優子「ただいま。」
松田「お帰り。」
昌子「お帰り。 里恵ちゃん 元気してた?」
里恵「うん。」
優子「帰りました。」
<あ。 ここやな ここが うちの引き際や>
珈琲店・太鼓
松田「看板を譲る?」
糸子「うん。」
昌子「優ちゃんを 店の頭にする ちゅう事ですか?」
糸子「せや。」
松田「ほな 先生は どないしはるんですか?」
糸子「いや けど 別に うちかて 辞める訳ちゃう。 形で言うたら 今のまんまや。 これまでどおり 店に出て 仕事すんで。 けど… オハラの看板は もう あの子のもんや。 大きい事は これから 全部 あの子が決める。 うちは それを助ける役に 回るちゅうこっちゃ。」
糸子「東京と岸和田 行き来してる間に あの子も もう一丁前や。 いや 一丁前どころか 働き手としたら 相当デカなってまいよった。 一軒の店に うちと あれが 同じ大きさで おってみ? あんたらも 仕事しにくいで。」
昌子「はあ…。」
松田「はあ。」
糸子「ちゅうても あの子に『あんた もういっぺん ちいちゃなり』ちゅう訳にも いかん。 順番から言うたら うちの仕事や。」
昌子「けど まだ早いんと ちゃいますか? そんなん うち…。 先生が そんなん言うん 嫌です!」
松田「そうです。 別に ええやないですか もうちょっと このままでも ねえ。」
糸子「おおきに。 せやけど だんじりかて あない 役は どんどん替わるやろ? どんなけ寂しいても 誰も文句言わんと どんどん 次に渡していく。 格好ええやないか あんなんが。」
安岡家
安岡美容室
糸子「何で?」
八重子「堪忍な…。 うちが泣く事 ちゃうんやけどな。 糸ちゃんが 21で 看板 上げてから それからの事は 全部 見てきたよってなあ。」
糸子「いや… けど 別に オハラ洋装店の看板 下ろす訳と ちゃうよって。 何も変われへんよ…。 何も…。」
小原家
居間
糸子「ただいま。」
松田「お帰りなさい。」
優子「お帰り お母ちゃん。」
北村「おう!」
糸子「何や 来てたんか。 お茶 頂戴。」
聡子「あ うん。」
優子「あんな お母ちゃん。 話があんねんけど。 ええ?」
(柱時計の時報)