ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第122回「悔いなき青春」【第22週】

あらすじ

昭和45年、今やサイケの女王と呼ばれる直子(川崎亜沙美)の結婚パーティーが、東京の店で盛大に開かれる。時を同じくして源太(郭智博)がパリコレにデビューし、直子は悔しがる。糸子(尾野真千子)は、聡子(安田美沙子)に手伝わせながら、直子や心斎橋の優子(新山千春)の店の売れ残りを、オハラ洋装店でさばいたりしている。意外な売れ行きに驚く糸子。ある夜、思いがけず、喪服姿の北村(ほっしゃん。)が訪ねてくる。

122ネタバレ

直子の店

♬~(『ウエディングマーチ』)

<昭和45年 直子が結婚しました>

(拍手)

(クラッカーの音)

「おめでとう!」

「おめでとう!」

(拍手)

<今や サイケの女王 オハラナオコ。 その結婚ちゅうたら それなりの記事になるらしい>

吉村「お久しぶりです。」

小沢「おかあちゃん。 おめでとうございます。 おかあちゃん。」

糸子「はれ 吉村君と… 小沢君。」

小沢 吉村「はい!」

糸子「はれ~ あんたら えらい立派になったんやてなあ。」

吉村「いえいえ。」

糸子「あんたらも 自分の店 やってんやろ? 忙しいとこ 来てくれたん?」

吉村「そりゃ おかあちゃん。 我らが直子の 結婚披露パーティーですから。」

糸子「おおきにな。」

小沢「源太も 来れたら よかったんですけど。」

糸子「あ~。 あら しゃあない。」

吉村「聞きましたか? おかあちゃん 源太の事。」

翌日

糸子「はれ はあ~。 あんたら これ 見たか? 源太 載ってんで。」

聡子「見た。 ごっついなあ 源ちゃん。」

直子「けったくそ悪い。」

糸子「はあ? 何がや。」

直子「何も うちの結婚パーティーの次の日に 載らんでもええやろ。『お前は 結婚パーティーで 喜んどれ。 おらは パリコレで喜んどるぞ』ちゅうて 言われてるみたいや。」

糸子「ひがみな! 友達が こない立派に成功したのに。 素直に喜んだらんかいな。」

直子「喜べるか! あんなジャガイモに 先 越されて。 は~ 腹立つ! まあ けどな 見とけよ。 うちかて いつか 絶対 パリコレやったるからな。」

<よう こんな娘を 嫁に もろてくれました。 ほんだけでも ありがたいのに 大輔さんは ほんまに気の優しい ええ青年で」

大輔「お母ちゃん 休んでて下さい そんな事は 僕らで やりますから。」

糸子「ああ ほうか? おおきにな うん。 ほな 呼ばれるわ。」

<ところで これは 直子が2年前に 原宿でオープンさせたプレタの店です。 話題性は抜群で 評判も上々 一見 派手に儲かってるようやけど 内情は ボロボロです>

糸子「あれ? ここで買うてる この生地は?」

大輔「ああ それは 買ったものの 気に食わなくて 使わなかったみたいです。」

糸子「はあ? なんちゅう無駄な事を…。 あのウスラボケ…。 大輔さん。 頼むさかい これからは うちの代わりに お宅が どないか あれ うまい事 仕切っちゃってな。 デザイナーとしては どうか知らんけど とにかく 経営者としては 赤ん坊以下やさかいな。」

大輔「はい。」

糸子「なあ 頼むで。」

<サイケ ヒッピー モッズルック。 このごろのモードは もう おしゃれ ちゅうより 仮装です>

「ジョニーじゃない!」

「やだ ほんとだ!」

直子「あら いらっしゃい。 どうも 奥へ どうぞ。 ごめん。 ちょっといい?」

「うん いいわよ ジョニーだもん。」

「早く行ってあげて。『毎日忙しくて 2時間しか寝てない』って インタビューで言ってたし。」

直子「じゃあ ごめんね。」

ジョニー「あ~。」

直子「ちょっと 何で 脱いでんのよ? 早く履いてよ 今から 丈 見るんだから。」

ジョニー「だって これ 疲れんだよ~。」

直子「いいから 早く履いて。」

ジョニー「なあ もう いいんじゃないの? 俺 背低いの バレても。」

マネージャー「そういう訳には いかないよ。」

ジョニー「俺 音楽だけで 勝負できると思うんだけど。」

マネージャー「まあ そりゃ あと3年後の話。」

直子「いいから はよ履いて。 時間 ないんねやろ? なあ。」

マネージャー「あと5分で移動。」

直子「ほれ 見てみ。 はい! はよ履き! 早く。 靴べらも はい。」

ジョニー「ったくよ~。」

直子「はよ立って! 子供か! はい! よいしょ。」

ナナコ「そういう苦労 知ってるから 私 もっと一流の女優になって 親孝行したいんです。」

糸子「うんうん。」

ナナコ「だから どんな恥ずかしくたって それで 有名になれるんなら 私 何だって やってやろうと 思ってるの。」

糸子「ふ~ん ほうか 偉いなあ。」

(泣き声)

糸子「泣きな~ なあ。」

(泣き声)

ナナコ「おかあちゃん。 私 間違ってないかしら?」

糸子「何も間違うてへん。 自信持って やり。 いざっちゅう時はな いつでも 岸和田 来たら うちで 雇ちゃるさかい。 なあ。」

ナナコ「ありがとう。 ありがとう おかあちゃん!」

糸子「大丈夫や 大丈夫や。 なあ。」

ジョニー「あれ? おかあちゃん 来てたの?」

糸子「あれ 久しぶりやな。」

ジョニー「いつから? あ そっか 直子の結婚式で?」

糸子「せや。 あんた また 背ぇ 高なったか?」

ジョニー「なったよ~。 見てよ これ。 今度は 15cmだぜ? 勘弁してほしいよ!」

マネージャー「ジョニー 行くぞ。」

ジョニー「じゃあね おかあちゃん。 …と 誰? 君。」

ナナコ「白川ナナコ。」

ジョニー「ナナコ。 おかあちゃんと ナナコ。 じゃあね。」

小原家

オハラ洋装店

糸子「こんにちは。」

居間

糸子「よっこらせ。 ちょっと 見ちゃあってくれるか? あの子な また こんなんしてんや。」

松田「うん? ちょっと… うん。 ああ? こりゃ… ハハハハ…。 あ~あ もう ここ こんなんして…。 あら ここも こんなんして もう… あんなけ言うたのに もう~。 先生も 直ちゃんには ええかげん 厳しい言わんと あきませんよ。 中途半端に助けるよって いつまでも甘えるんです。」

糸子「いや 言うて直る事やったら 言うけどな あら 直らんよって もう。」

松田「ちょっと…。 せやけど これは あんまりやで これ もう~。」

オハラ洋装店

「小原さ~ん 小包です~。」

<月末になったら 優子と直子から 店の売れ残りが届きます オートクチュールの優子の店からは 生地束。 プレタの直子の店からは 商品>

居間

糸子「う~ん… 6,000円。」

聡子「へ? けど これ 1万8,000円て 買いてあるで。」

糸子「売れるか これが 1万8,000円なんか。 岸和田のお客っちゅうんはな 東京みたいに 甘い事ないで。」

聡子「けど 直子姉ちゃん 怒らへんやろか?」

糸子「いや ほんでも これ 6,000円でも売れるやろか? 東京には 東京の厳しさが あるか知らんけどな 岸和田には 岸和田の厳しさが あるよってな。」

オハラ洋装店

2人「こんにちは。」

聡子「いらっしゃい!」

「また新しいの 入った?」

<姉ちゃんらの商品を売るんは 聡子の仕事。 これが 若いお客さんらには えらい人気でした。>

「これ 似合いそうやわ。 どやろ?」

「ひゃ~ これ 格好ええ!」

聡子「やろ?」

「なんぼ?」

「1万円?!」

「1万円? 安う!」

「なあ 安いなあ。」

聡子「やろ?」

「え~ うちも欲しい。 聡ちゃん もう一個 同じの ない?」

聡子「同じのは ないんやけど これ どやろ?」

「え~ こっちも ええなあ。」

「格好ええやん。」

聡子「ピンクやねん。 ほな ここもな ピンクやねん。」

「あ ほんまや。」

「これ ええ!」

「なあ 格好ええなあ これ。」

「これは なんぼ?」

聡子「これも 1万円。」

「安い!」

<この商売 いつまでたっても 難しいもんです>

居間

昌子「ええですわ うちは。」

糸子「かまへん かまへん。」

<今 うちの縫い子は 7人やけど 住み込みちゅうんが このごろは もう少のなって 今は この子だけです>

ジョニー『ありがとう!』。

聡子「あ ジョニーや。」

糸子「あ ほんまや。」

ジョニー『みんな 今年は お花見に行ったかい?』。

(歓声)

ジョニー『僕は 行ったよ』。

聡子「これも 直子姉ちゃんの服やな 多分。」

千代「まあ ほんまかいな!」

糸子「絶対せやで そのドギツイんは。 また 高い靴 履かされて かわいそうに。」

昌子「ほんまや。 ハハハハハハ…。」

糸子「ハハハハハハハ…。」

(戸をたたく音)

糸子「あ? 誰や?」

(戸をたたく音)

勝手口

糸子「何や? どないしてん?」

北村「死んだど。」

糸子「えっ 誰が?」

北村「死んだ。」

糸子「せやから 誰がや? 誰が死んでん?」

千代「まあ 北村さん いらっしゃい。 こんなとこ 座らんと どうぞ 上がって下さい。」

北村「今日は 帰ります。」

糸子「はあ? 何や?」

北村「お邪魔しました。」

モバイルバージョンを終了