あらすじ
聡子(安田美沙子)のロンドン行きを許したものの、3人の娘の誰にも店を継いでもらえなかった糸子(尾野真千子)はがっかりする。恵(六角精児)と昌子(玄覺悠子)がそんな糸子を明るく慰める。三浦(近藤正臣)から周防が長崎に戻ると聞いて、その境遇を思う糸子。北村(ほっしゃん。)がカーネーションの花束を手に訪れ、優子(新山千春)と組んで東京に進出することを告げる。そして糸子に一緒に東京に行かないかと誘う。
125回ネタバレ
珈琲店・太鼓
昌子「ロンドン…?!」
松田「先生 何で そんなもん 許してまうんですか?!」
糸子「いや ほんでもな 聡子が あの怖い姉ちゃんの2人 ギャンギャン言われて 何にも よう言い返せんと じ~っと 下 向いちゃったんや。 そら 見てたら かわいそうで こっちも カ~ッと なるがな。 分かるやろ?」
(ため息)
糸子「ほんで まあ… つい 言うてしもたんや『ロンドン 行け』て。」
松田「また 要らんとこで 格好つけるんやさかい もう。」
糸子「いや 格好つけた訳 ちゃうて。 でも『行きたい』ちゅうんやさかい 行かせてみてやな あかんかったら 戻らせたら ええがな。」
昌子「けど 万が一…。」
糸子「はあ?」
昌子「万が一 向こうで モノになって 戻ってこんかったら どないするんですか?!」
松田「聡ちゃんまで 出てしもたら もう あと いてへんちゅう事ですよ!」
糸子「え…。 そら… そん時やろ。 うちが でけるとこまでやって あとは うちが 畳むがな。 それしかないやろ。」
小原家
玄関前
<うちの大事な看板は 結局 みんな 要らんらしい>
糸子「はあ~…。」
泉州繊維商業組合
(ドアの開く音)
糸子「明けましておめでとうございます。」
三浦「おお。」
糸子「本年も どうぞ よろしゅうお願いします。」
三浦「いや はあ え こっちこそ…。」
糸子「ああ…。 すんません 組合長。 新年早々 お恥ずかしい話なんですけど 実は こないだ 言うてた うちの3番目の娘が 後 継ぐちゅう話 あれが ちょっと 結局…。 うん? どないかしましたか?」
三浦「そこな… 今の今まで 周防が 座っとったんや。 擦れ違わなんだか?」
糸子「いえ…。」
三浦「あ~ ハハハ。 いや もう ほんの さっきの話やねんけど。 ああ あ~ あ あ あ~ うんうん… うん! いや… あいつ 長崎へ戻るんやて。」
糸子「周防さんですか?」
三浦「うん。 あいつとこもやな 子供ら みんな 独立してるし かみさん 死んで もう あいつ一人や。 そういうふうになったら『やっぱり 生まれ育った所に 帰りたい』そういうとった。 長崎の田舎に 一軒家 買うて 畑か何か やりながら こう 暮らすんやて。 ハハハ。 どないしたんや?」
糸子「いえ…。 寂しいないですやろか?」
三浦「うん?」
糸子「そんな 独りで…。 また新しいとこで…。」
三浦「さ 寂しいない… かも… しれんけどや。 も… もう 心配しちゃんな。 ほれ あいつは 自分で選んだ道や。 周防は 人間が ええさかいな どこ行っても ちゃんと やっていきよる。 第一 あんな男が 独りで暮らしててみい? ほら もう みんな 近所のおばさんらも ほれ 世話焼きに来よるぞ。 ハッハッハ! 泣いちゃる事ない。 ない!」
珈琲店・太鼓
北村「ほな ホットケーキ 3つね。」
木之元「はい。」
聡子「へ? 何で 3つも?」
北村「お前 どうせ2つ食うやんけ。」
聡子「食べへんよ!」
北村「何でよ?」
木之元「何で?」
聡子「え? いや うちも もう そない食べる年 ちゃうよ。 ウフフフ。」
木之元「何や… 寂しいのう。」
北村「のう。」
聡子「いや そんなん言われても 食べられへんし。」
北村「う~ん ほな 2つで。」
木之元「ほい…。」
北村「お前 ほんでよ ロンドン行って どこで 何すんよ?」
聡子「まずは 英語の学校 行ってな ほないしながら 働けるとこ 探す。」
北村「あて あんのけ?」
聡子「あては ないけど 洋裁の腕は あるよって。」
北村「お前 大丈夫け? ほんまに。」
聡子「ふん。 うち こんなんやけど 日本でも どないかなってるしな ロンドンでも どないかなると 思うねん。」
北村「何じゃそら?」
聡子「犬が どこでも暮らせるのと 一緒や。」
北村「う~ん… とうとう お前も どっか行ってまうんけ。」
聡子「寂しいん?」
北村「アホけ! 何で わいが 寂しいんじゃ。」
聡子「嘘や 寂しいんや~。 うちら おらんようなったら うちで 御飯 食べにくなるしな~。 いや ほんでもな おっちゃん うちらが おらんくても おばあちゃんが おったら 御飯 食べさしてくれるよって 大丈夫やで。」
北村「お前の おかんのよう。」
聡子「へ?」
北村「好きな花 何や?」
聡子「お母ちゃんの?」
北村「うん。」
小原家
居間
千代「ほな すんません。 お先に 休まさしてもらいますよって どうぞ ごゆっくり。」
北村「おかあちゃん ゆっくり休んでよ。 お休みなさい。」
千代「お休みなさい。」
糸子「お休み。」
千代「お休み。」
糸子「…で 何や? 何か話あって 来たんやろ。」
北村「おう…。 あ 優子からよ。」
糸子「うん。」
北村「わいと ライセンス契約するちゅう話 聞いたけ?」
糸子「聞いてへん。 ほんまけ?」
北村「おお。 店開く時よ それが前提の融資やら 何か冗談で 言うちゃあったら 小原優子の名前が ほんまに売れたさかいのう 冗談や のうなったわ。」
糸子「ふ~ん そら 結構なこっちゃ。」
北村「来年辺り 東京 出るど。」
糸子「誰が? 優子が?」
北村「優子と わいも。」
糸子「ほんなん 何も聞いてへん。 悟さんは?『ええ』て 言うてんかいな?」
北村「うん… その前に あんまし うまい事いってへんど あっこ。」
糸子「はあ?! はあ… やっぱり ほうかいな。 道理で 今年の正月も 悟さん 顔 見せへんかったしな 気には なっちゃったんや。」
北村「優子の方はよう『もう 別れたい』ちゅうちゃった。」
糸子「熱い! ほんまかいな?! はあ~…。 熱い…。 ふ~ん。 ふ~ん…。」
北村「何や?」
糸子「あんた… 何で 急に 花なんか持ってきてん?」
北村「何がや?」
糸子「ふ~ん。 ふ~ん…。」
北村「はあ?」
糸子「分かってんや。 うちはな 昔から 人より疎いよって こういう事に。 せやけど… あんたら うちの目を盗んで なんちゅう事を…! おお?!」
北村「お前 何か勘違いしてへんけ?」
糸子「ああ?」
北村「わいと優子は できてへんど。」
糸子「え? そ… そう ちゃうんかいな?」
北村「アホけ?! 何で わいが 優子と できなあかんねん! 気色悪い。」
糸子「何や ちゃうんかいな。」
北村「何 考えてんねん お前。」
糸子「よかったあ~。」
北村「何にも分かってへんやんけ! この花はよ… この花は…!」
(笑い声)
北村「お前に買うてきてんど!」
糸子「えっ? おおきに。」
北村「お前… 長崎 行けへんのけ?」
糸子「行けへんわ。 行くかいな。」
北村「ほな わい…! わいと 東京 行けへんけ?」
糸子「東京?」
北村「せや。」
糸子「何しに?」
北村「何しに? 仕事や。 決まってるやんけ。 東京の新会社の 副社長になってほしい。」
糸子「ふ~ん…。」
北村「いや… 社長でもええど。 お前が そっちの方が やりやすいんやったらよう。」
糸子「う~ん。 おおきに。 そら おおきに。 ちょっと 時間くれるか? 考えさしてもらいます。」