あらすじ
だんじり祭が近づき、優子(新山千春)と直子(川崎亜沙美)が友人や家族を連れて戻ってくる。張り切って準備をする糸子(尾野真千子)。世話役の木岡(上杉祥三)や木之元(甲本雅裕)、また北村(ほっしゃん。)や三浦(近藤正臣)、そしてサエ(黒谷友香)といった多くの人々が小原家に集まる。糸子は親しい人々とともにだんじりを眺め、改めて岸和田の地への愛着を感じる。そして12年後、糸子(夏木マリ)は72歳を迎えた。
127回ネタバレ
小原家
ベランダ
(小鳥の鳴き声)
糸子「ん~!」
<今年も また 祭りが やって来ました>
寝室
糸子「起きや~!」
<直子と優子は どっちも 前の日ぃから 休み取って 帰ってきました。 実は 去年 テレビで 岸和田のだんじり祭りが 全国に 大々的に紹介されたせいで 今年は よそからも お客さんが ようさん来る事になって 女らは これまで以上に大忙しです>
玄関前
木岡「おう けが すなよ!」
<いつもの年寄り組は 神社のお参りを済ませたら>
居間
(鈴の音)
<善ちゃんに 報告に来て そのまま居ついて 飲みだします。 ほんで まあ 大体 そのころに>
玄関
北村「毎度やで~!」
居間
<いつの間にか 北村が座ってます>
台所
太郎「おはようさん!」
糸子「ああ おはようさん 太郎ちゃん!」
優子「久しぶりや~。」
太郎「くるみ餅 持ってきたで。」
糸子「それ ここ 置いといて。」
太郎「うん。」
直子「おおきに。」
糸子「あれ! 誰や この子?」
八重子「これ 三郎の子やし。」
<チビは もう 増え過ぎて どれが 誰の子ぉか よう分かりません>
玄関前
里恵「来た! 来た来た!」
玄関
里恵「来た だんじりや!」
ベランダ
♬~(お囃子)
「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」
(拍手と歓声)
玄関前
松田「組合長。」
三浦「おっ 松田や。」
松田「おお~ ほほ 組合長! ご無沙汰してます~。」
三浦「これから 店か?」
松田「ええ。 何や 今年は お客が多いよって 手伝うてくれちゅうて 言われて。」
三浦「ほな わし 邪魔やな。」
松田「いやいやいや とんでもない! 先生が喜びますわ。」
<東京からのお客さんは 昼過ぎた頃に 次々と やって来ました。 ジョニーは シークレットブーツなしやと 誰にも 気ぃ付かれんそうです。>
<案外 このごろ テレビで 人気が出てきた白川ナナコの方が>
「あれ! 白川ナナコ ちゃうか?」
「うわ ほんまや!」
ナナコ「嫌だ~ 気付かれちゃった。」
<大変やったそうです>
台所
サエ「こんにちは。」
糸子「はれ! どないしたん? あんた 家の方 手伝わんで ええんんかいな?」
サエ「いや それがな この子らが『どないしても ジョニー 見たい』ちゅうよって。」
居間
糸子「心斎橋のな おっちゃんらが 行かれへんような店の きれいどころやで。 おいで おいで!」
3人「失礼します~!」
男達「おう おう うお~!」
「きゃあ~ ジョニー!」
ジョニー「ありがとう ありがとう。 どっから来たの? どっから来た?」
「格好ええ。」
「すてき~。」
オハラ洋装店
優子「先生 ほんと ご無沙汰してます~。」
原口「いつ以来だっけ?」
優子「直子の結婚パーティー以来ですよ。」
原口「ああ~!」
玄関前
糸子「遠い所 よう来れたなあ。」
源太「ちょうど 予定が合ったんです。」
原口「源太! あれ~ よく来たなあ!」
吉村「お帰り。」
小沢「お帰り。」
オハラ洋装店
原口「パリ帰り。 パリ帰りの男ですよ~!」
北村「うお~ 斎藤源太氏や!」
直子「うわ 源太! あんた 来れたんやなあ。」
原口「座れ 座れ。」
優子「座って 座って~。 いや~ パリから よう来たな~。」
直子「ちょっと! ちょっと 姉ちゃんばっかり 座ってらんとよ。 代わって!」
優子「何や うちかて ほんの今 お酌しただけやんか!」
直子「ああ もう ええて!」
優子「何や うちかて 久しぶりやて。」
男達「まあ まあ まあ。」
優子「何や あんた!」
井戸
糸子「お母ちゃ~ん お母ちゃ~ん!」
♬~(お囃子)
糸子「お母ちゃ~ん。 いてたか?」
昌子「いてません。」
糸子「もう どこ行ったんや お母ちゃん。 こっちやろか? あっ!」
昌子「あ~あ よかった!」
糸子「もう! お母ちゃん どこ行っちゃあったんよ?!」
千代「はあ~ ようさん お客さん いてんのに おとうちゃん おらんよって どこ 行ってしもたんやろ…。」
糸子「お母ちゃん! お父ちゃん もう とっくになあ…。」
松田「先生! おとうちゃん『どこぞに 挨拶してくる』ちゅうてましたで。」
千代「はあ…。」
昌子「まあ よかった~ よかった。 おうち 入りましょう。 な なあ。」
松田「怒ったったら あきません。 うちの母も ああでした。 適当に 話 合わせといちゃったら ええんです。」
糸子「うん…。」
サエ「ちょっと! ちょっと 恵さん! 見た?」
松田「えっ ななな 何?!」
サエ「冬蔵! 冬蔵さん 来てんやて!」
松田「えっ どこ? どこ どこ どこ?!」
サエ「そこ! そこやて! テレビと一緒に来てるらしいで。」
松田「はあ~! いや~!」
サエ「きゃ~!」
玄関前
♬~(お囃子)
オハラ洋装店
直子「聞こえたか? 聞こえたか? もしもし 聡子?」
(聡子の泣き声)
ベランダ
糸子「極楽やな この世の。 はあ~…。 言うてくれちゃった話な。」
北村「うん?
糸子「うちを 東京の会社に 誘てくれた話。」
北村「ああ。」
糸子「断って ええか?」
北村「長崎 行くんか?」
糸子「行かへんわ! しつこいな。 考えたんやけどな やっぱし うちの土俵は 東京 ちゃう。 ここや。 極楽も地獄も 全部 この窓から見てきた。 うちの宝は 全部 ここにある。」
北村「おばはん 分かっちゃあるけ?」
糸子「はあ?」
北村「お前 もう 大概 年やど。」
糸子「うっさいな。 人の事 言われへんやろ。」
北村「ほうよ。 お互い この先 無くしてばっかしじゃ。 お前が言うちゃあった宝かて どうせ 一個ずつ 消えていく。 人かて みんな 死んでいくんじゃ。 お前 ここに いちゃあったら 一人で それに耐えていかな あかんねんど。 しんどいど… ほなもん。」
糸子「はっ… へたれが。」
北村「はあ?」
糸子「ほんなもん 分からへんやろ。」
北村「何がじゃ?」
糸子「そもそもやな『無くす 無くす』て 何 無くすねん? うちは 無くさへん。 相手が死んだだけで な~んも無くさへん。」
北村「はあ?」
糸子「決めたもん勝ちや。」
北村「何 言うてんねん。」
糸子「へたれは へたれて 泣いとれ。 うちは 宝 抱えて 生きていくよって。」
居間
(談笑)
岸和田商店街
(小鳥の鳴き声)
昭和60年
寝室
里香「ばあちゃん。」
糸子「うん…?」
里香「朝。」
糸子「う~ん うん う う~っ うっ!」
<おはようございます。 年を取りました>
糸子「よっこらせ。」