ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第128回「まどわせないで」【第23週】

あらすじ

糸子(夏木マリ)のもとに優子(新山千春)の娘で15歳の里香(小島藤子)が来ている。里香は髪を染め化粧をし高校へ行こうとしない。優子は一流ブランドのデザイナー兼社長で、里香の将来を悲観して電話をよこすが糸子は取り合わない。直子(川崎亜沙美)は世界をまたにかける有名なデザイナー、聡子(安田美沙子)はロンドンでブランドを持っている。糸子は今は中高年の客が多い洋装店で、忙しくも穏やかな日々を過ごしていた。

128ネタバレ

岸和田商店街

(小鳥の鳴き声)

小原家

寝室

里香「ばあちゃん。」

糸子「…うん?」

里香「朝。」

糸子「う~ん うん う う~っ うっ!」

<おはようございます>

糸子「うっ は~ うっ は~ うっ は~! はあ~。」

<年を取りました>

糸子「こら 里香 あんたも 起きや! 聞いてんけ?!」

<72歳になりました。 72歳の朝は 忙しいです>

オハラ洋装店

(かしわ手)

糸子「おはようさんです。 今日も一日 どうか よろしゅうお願いします。」

仏壇

(鈴の音)

糸子「おはようさんです。 今日も一日 どうぞ よろしゅうお願いします。」

<いろんな人が すっかり あっちへ逝ってしもて>

居間

糸子「おはようさんです。 今日も一日 どうぞ よろしゅうお願いします。 はれ あんた また 倒れてんかいな。 しっかりしいや。 死んでまで フラフラしちゃあった あかんで。」

<ほんでも あっち逝ったくらいで つきあい 諦めんのも 嫌で 何やかんや 供えたり>

糸子「これ うまいで。 忠岡堂の新作やて。 あ イテテテテ! ツ~ッ。 せやけど この膝も よう考えたら 長い事 頑張ってくれてんで。 はあ~ ぜいたく言うたら いかん。 なあ。」

<いろいろ 言うてみたり>

糸子「いや~ ああ イテテテ!」

(電話の呼び鈴)

オハラ洋装店

糸子「はい オハラ洋装店です。」

優子『お母ちゃん…。 どない? 里香。』

糸子「どうて 別に 何ちゅう事ないで。 何も迷惑な事 あるかいな。 これまで 年寄り一人やったんが にぎやかなって うれしいくらいや。」

優子のオフィス

優子「あの子 昨日の夜 出ていけへんかった?」

糸子『夜? さあ…。 朝には おったけどな。』

優子「多分 こっそり 抜け出してると思うわ。 こっちでも 毎晩毎晩 出てってなあ その… オートバイの後ろ 乗ったり してたらして…。」

小原家

オハラ洋装店

糸子「ふん。」

優子『あんな お母ちゃん。 うち あの子を 今のミッションスクールに 戻さすんは もう 半分 諦めてるんや。 けど せめて 公立の高校でも どないか出ささんと…。』

糸子「うん。」

優子『あの子が 何を思て そっちに行きたいやら 言いだしたか 分かれへんけど まあ 様子 見て なるべく早う 東京へ帰らせちゃってな。 今が 肝心な時なんやさかい。』

浩二「おはようございます。」

糸子「おはようさん。 あ 浩ちゃん。 あんた 昨日のあれ しときや。」

優子『ちょっと お母ちゃん。』

糸子「ちゃう ちゃう ちゃう。」

優子『聞いてるか?』

糸子「あ? ああ。 ま むつかし考えな。」

優子『はあ?』

糸子「チビのこっちゃ そりゃ やんちゃする事も あるがな。」

優子『チビて お母ちゃん 里香は もう15歳やで?! ここで下手したら 一生を 棒に振ってしまうんやさかいな?!』

糸子「はあ? アホか! あんなチビ つかまえて 物騒な言い方したりな!」

優子『せやけど ほんまに これからの3年間で 人生 決まってまうねん!』

糸子「決まらん! たかが3年で 人生なんぞ 決まってたまるけ! つい こないだ おしめ取れて 喜んじゃったような娘やないか。 歩けて しゃべれるだけで上等やと 思っちゃあって ええんや。」

「おはようさん。」

孝枝「おはようございます。」

糸子「はれ おはようさん でけてんで~ ごっつい ええの。 孝ちゃん。」

孝枝「はいはい。」

<お客さんらも 随分 年を取りました。 年寄りが 服を作るちゅうたら もう せいぜい 年に1回 あるかないかです。 ほんなら なおの事 その1回を 楽しんでほしい。 オハラ洋装店は 今は そんな ゆっくりした店になりました>

糸子「どない? どない?」

「どないやろ~? おかしないけ?」

糸子「ええわ~ やっぱし! なあ。」

孝枝「ええですわ! うん。」

「ほうか?」

糸子「ミサエちゃん あんた 色白いさかい この柄 よう映えるや。 こんなん なかなか 似合わんもんやけどな。」

「派手すぎひんけ?」

孝枝「な~んも 派手 ちゃいますわ。 熟女の魅力ですわ。」

「いや~。」

<うちは 一生 オーダーメードだけで やっていく。 その気持ちは 今も これからも ずっと変わりません ところで 店が ゆっくりしてても うちらが ゆっくりでける訳やありません。 何でか ちゅうたら>

(電話の呼び鈴)

浩二「はい オハラ洋装店です。 おはようございます。 ちょっと待って下さい。 先生。 先生!」

糸子「うん?」

浩二「優子さんです。」

糸子「もしもし?」

優子『あ お母ちゃん。 昨日の心斎橋店の売り上げって そっちに届いてる?』

<これや>

糸子「孝ちゃん。」

孝枝「はい。」

糸子「売り上げやて 昨日の 心斎橋の。」

<まあ 相変わらず この子らの世話の焼ける事。>

孝枝「昨日の心斎橋店 38万5,000円です。」

糸子「38万5,000円。」

<ユウコ・オハラは 今や 全国に30店舗を構える 一流ブランドに成長しました。 社長でデザイナーの優子は とにかく忙しい。>

優子「あと それからね 来月の20日に 吉沢会長のお誕生日パーティーが あるんだけど お母ちゃん ちょっと出てくれない? 私 その日 札幌に出張だから… うん。」

糸子「はあ~ ほんま 親は タダやと思て こき使いよる。」

(電話の呼び鈴)

糸子「はあ…! はい オハラ洋装店。 ああ おはようさん。」

直子のアトリエ

直子「お母ちゃん 明日のショー 見に来るやろ?」

<直子は 7年前に パリコレを成功させました。 以来 世界中を飛び回る 有名デザイナーになったんは ええけど>

直子「あれ 持ってきて。 岸和田のショッピングセンターの契約書。 うち コロッと忘れちゃったんや。」

<飛び回り過ぎて いつまでたっても 足元 スカスカ>

小原家

オハラ洋装店

糸子「孝ちゃん。」

孝枝「はい。」

糸子「岸和田のショッピングセンターの契約書やて。 今日中に こさえといちゃって。」

孝枝「あ 分かりました。」

<案外 一番 手ぇのかからんのが>

聡子のアトリエ

聡子「お母ちゃん 明日 直子姉ちゃんのショーやろ?」

<ロンドンにおる聡子です。 これは もう 遠すぎて 世話も 焼きようがないだけやけど>

糸子『行くで。 何か 言うとこか?』

聡子「うん。 まあ よろしゅう 言うと… うわ~あ~!」

糸子『な… 何や?』

聡子「ネズミや!」

<こんな聡子も 10年前 ロンドンに 自分のブランドを おこしました>

糸子『何?! どないしてん?!』

聡子「怖い! 信じられへん」

<信じられへんのは こっちや>

小原家

オハラ洋装店

糸子「こら! 里香! あんた いつまで寝てんや?」

<さて この虎の子ぉみたいなんは 優子の次女の里香で おとつい 東京の家を出て うちへ 転がり込んできました>

寝室

糸子「起き! 昼は 起きとくもんや!」

里香「うるせえよ…。」

糸子「あ~ ええ天気やな~! あんた どうせ 来るんやったら 先月 来た よかったのにな。 ほしたら だんじり 見れたで。 あんた いくつから 祭り 来てへんかいな? なあ?」

里香「さあ…。」

糸子「あれやで あんた。 だんじり 見てへんさかい こない グレてしもたんやで。」

里香「関係ねえし。」

糸子「来年まで ここ おり。 ほしたら だんじり 見れるさかい。 ええで~ だんじりは。」

岸和田商店街

<昔は 走って抜けた商店街も 今は ゆっくり歩くようになりました ほんでも だんじりは 今も昔も 何も変わらん速さで この道を突っ切っていく>

糸子「うれしいような… 切ないような。」

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