ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第131回「まどわせないで」【第23週】

あらすじ

里香(小島藤子)が地元のヤンキーとのけんかでけがをして帰ってきた。何も言わないのを、ふびんに思う糸子(夏木マリ)。譲(川岡大次郎)と栄之助(茂山逸平)は、買いすぎた生地を3色に染め分けて持ちこむが、糸子は突き返す。糸子は、閉じこもっている里香にさりげなく言葉をかけ、里香は初めて涙を見せる。ある日、譲の父(佐川満男)が糸子を訪ねてきた。妻に先立たれた男性のために糸子が開く食事会に、参加するためだ。

131ネタバレ

直子のオフィス

直子「はあ? けんか?!」

糸子『優子に言いなや。』

直子「アホやなあ 里香。 あんな お嬢さん育ちが ちょっとグレたぐらいで けんかなんか 強なる訳ないんや。 ちゃんと 分からせといちゃらな 危ないで。」

小原家

リビング

糸子「何や あの子 昨日から 御飯も食べんと じ~っと 部屋 籠もってなあ…。」

直子『うん。』

糸子「泣きも わめきも せんよって 余計 かわいそうでなあ…。」

直子『かわいそう? は! お母ちゃんも 年取ったもんやな。』

糸子「はあ?!」

直子『ヤンキーが けんかして 負けて 帰ってきたて ほんなもん アホが どアホなまね したちゅうだけの こっちゃんか。 何が かわいそうや。 甘ったれた事 言うちゃった あかんで?!』

(鈴の音)

<あんな怖いおばちゃん 一体 誰が産んだんでしょう…>

糸子「里香のけがが 大した事ありませんように。 どうか 早めに治しちゃって下さい。」

浩二「先生。」

糸子「え~! え~! 何や~?!」

浩二「お客さんです。」

糸子「びっくりするやないか!」

浩二「何べんも呼んだんですけど…。」

糸子「あんた 声 ちっちゃいんや! 何で そない体 でかいのに 声 ちっこいねん?!」

オハラ洋装店

栄之助「先生 こないだは ほんまに失礼致しました。」

譲「いや ねえ 先生 僕も 親から 金糸の生地の話 あれを 何べんも聞かされてたさかい つい こいつに『いっぺん 先生に相談してみ』ちゅうてしもたんですわ。」

(せきばらい)

糸子「あんなあ 譲。」

譲「はい?」

糸子「あんたの ひいじいさんと この子の話 一緒にしたったら ひいじいさん 泣くで。」

譲「はあ。」

糸子「先代はやな 一生懸命 商売してたんが たまたま 戦争で えらい 生地の 在庫を抱えるはめになってしもた。 せやさかい うちも 洋裁屋として 知恵 絞るとこから 手伝わしてもろたんや。 そない洋服が 簡単に売れる時代でもなかった。」

譲「はあ そのとおりです。」

糸子「あんたの話は ちゃうやろ?」

栄之助「はい。」

糸子「プラプラ 買い付けに出かけて ええかげんな契約してきてしもた。 お父ちゃんに怒られるよって どないかしてほしい。 こんなに景気ようて ほっとっても 物が売れる時代にや。」

栄之助「僕が 甘ったれてました。」

糸子「あんたは まず 自分の知恵 絞るちゅう事 覚え。 うちより あんたの頭の中の方が よっぽど 時代に向いた ええ知恵 あんのかも しれへんやないか。 人のん借りて 済ますやら もったいない事しな!」

栄之助「ほんまに おっしゃるとおりなんです。 けど 先生。 僕も 僕なりに 知恵 絞ってきました。」

糸子「何や?」

栄之助「染めてきました。」

糸子「ほんで?」

栄之助「3色になりました。」

糸子「ほんで?」

栄之助「へ?」

糸子「あんた… あんた 知恵 絞ったて ほんなけけ?! 3色にしたら うちが『ほうけ~ 3色け ようやったな』ちゅうとでも 思てんけ?! お前 どんなけ商売なめてんじゃ! 帰れ このアホぼんが! 帰れ 帰れ もう 今日は! 帰れ ほら! 帰れ!」

リビング

孝枝「ひゃ~ 金箔カステラやて! ちょっと 浩ちゃん 浩ちゃん! ちょっと 見てみ これ。 黒いとこが 金やで! キランキランや。」

浩二「ほんまですね。」

孝枝「これぐらいか?」

浩二「もっと大きい 切って下さい。」

孝枝「うわ~ いくらぐらい すんやろなあ これ?」

糸子「いや 先生 また これ 上等なお菓子 頂戴しました!」

浩二「うわっ! 何ですか?」

糸子「今度 来たら ぶつけちゃるんや。」

孝枝「先生 見て下さい。 キランキランのカステラですわ!」

糸子「何で カステラに 金箔 張らな あかんねん。 ぜいたくに のぼせ上がんのも ええかげんにせえ ちゅうんじゃ! ふ~ん… うまい!」

寝室

糸子「里香 金箔カステラ 食べるか?」

糸子「黒いとこが 金やで。 キランキランやで。 ふん 食べ。 うまいか? あんたな 言わな あかんで。 自分が 痛いやら しんどいやら あるんやったら 言わなあかん。 誰かて ほんなん… 自分一人で 我慢なんか でけへんねや。 言うたかて かめへんねん。 な?」

玄関前

糸子「ふん。 にいちゃんも 食べ。」

篠山「は?」

糸子「金箔カステラやて。」

篠山「何ですか?」

糸子「金箔張った カステラや。 何で張ってんか 知らんけどな。」

篠山「はあ そら ありがとうございます。」

糸子「うまいで 案外。」

篠山「あの…。 あの子 大丈夫ですか? 何か 孫みたいな子。」

糸子「ああ… おおきにな。 孫や。 にいちゃんも 食べるけ? 金箔カステラ。 ちょっと待っとき。 キランキランや。 あんたら 好きやろ キランキラン。」

2人「はあ…?」

寝室

(物音)

勝手口

正志「うっす。」

里香「何?」

正志「いや…。 遊ぼよ。」

里香「やめとく。」

正志「何で?」

里香「明日 朝早いから。」

正志「学校?」

里香「ばあちゃんの手伝い。」

正志「ふ~ん…。 まあ ええわ。 ほなな。」

里香「じゃあね。」

正志「バイバイ。」

リビング

糸子「はれ。 起きれるように なったんけ?」

里香「うん。」

糸子「まっすぐ置き。」

孝枝「いや~ おいしそうやなあ! これ ちょっと 持ってるから 里香ちゃん 置いていって 茶わん蒸し。」

里香「熱い!」

孝枝「上 持たな 熱いって。 上 上 持たな…。」

糸子「逆や これ 箸。 ほら ね?」

オハラ洋装店

譲の父「こんにちは~。」

糸子「こんにちは。 いらっしゃい。 お待ちしてました。 どうぞどうぞ。」

譲の父「先生 これ つまらんもんですけど。」

糸子「はれ! 金箔カステラ!」

譲の父「あ ご存じですか?」

糸子「ウフフフッ! こないだ 譲が 持ってきてくれたんですわ。 みんな 大喜びで 呼ばれたんです。」

<この人は 譲のお父ちゃん。 つまり うちが 金糸の生地を買うた 先代のお孫さんちゅう事です>

リビング

譲の父「先生。 こないだ 譲が また 先生に えらい説教してもろたそうで。」

糸子「いや~ 悪い事しました よう考えたら あの子 友達のために ついてきただけやのに えらい とばっちり 食わわせてしもて。」

譲の父「いやいや…。 ありがたい事ですわ。 ほんまに あのアホ息子が しっかりしてもらわん事には 家内も 会社が心配で おちおち 成仏できんよって。」

糸子「こないだの一周忌は あんじょう 済みましたか?」

譲の父「おかげさんで 滞りのう。 はあ… ほんまに あっちゅう間の1年ですわ。 ほんでも まあ 男一人 残されて どないなるやろ 思てたんが まあ 今日まで どないか やってきました。 息子がアホで かなんちゅう以外は。」

糸子「ハハハハハハ…。」

譲の父「ほんまでっせ!」

「いや~ うちの婿も アホやで~。」

譲の父「いやいやいや うっとこの息子ほどでも ないはずやわ。」

<男の人は 独りで 御飯 食べたら いかん>

糸子「いや 娘の話やったら うちに任せて下さい。」

<せやさかい 奥さんに先立たれた 男の人らを集めちゃあ こんな食事会をやります>

「どこの息子も 同じでっせ。」

<もし まだ この世に おるんやったら どうか あの人にも こんな場所が あってほしい。 そない思うからです>

モバイルバージョンを終了