あらすじ
糸子(夏木マリ)のブランドの準備が始まり、譲(川岡大次郎)や栄之助(茂山逸平)らが毎日店に通ってきて、デザインを詰めていく。孝枝(竹内都子)は商社マン・守(藤間宇宙)のビジネス指南についていけず、泣きだしてしまう。和服の反物の柄を生かしたドレスなど、アイデア勝負で上質な洋服を作ろうとする糸子だが過労で倒れてしまい、里香(小島藤子)は心配する。宣伝を考えた守は、今や有名なデザイナーの三姉妹を挙げる。
137回ネタバレ
小原家
リビング
糸子「ほんな分けでな これから 娘らの手伝いは 一切せんでええ。 そのかわり 新しいブランドの仕事が どっと始まる事になる。 慣れん事やし 立ち上げは ほんまに大変やろうけど どないか頑張って ついてきてほしいんや。 よろしゅう頼むわ。」
孝枝「そら! そらそら 先生が そない決めてんやったら うちら もちろん できるかぎりの事します。 なあ!」
浩二「はい。」
糸子「おおきに…。 けど ほんまに大変やさかいな。 あんたらは 最近の この のんびりした店しか 知らんやろけど あんたらの前の2人ちゅうたら…。」
回想
昌子「もう!」
糸子「痛い…。」
昌子「先生 ええかげんにして下さい!」
<どんなけ 声 からして うちに 文句ばっかし 言うてたか…>
2人「無理です!」
回想終了
孝枝「ほんな 先生に 文句なんか なあ?」
浩二「はい。」
孝枝「うちら 心から 先生の事 尊敬してるんですわ。 黙って ついていくだけですわ。」
<ちゅうて 言うてくれてた 孝ちゃんでしたが>
オハラ洋装店
糸子「体系 崩れた 年寄りでも おしゃれに見せるんは こうゆうラインが ええんや。」
譲「でも これ ちょっと 形 凝り過ぎ ちゃいますか? 作んの 大変ですよ。」
糸子「何 言うとんね?! そこが 工夫のしどころやないか。 ええもん 作らんと 売れへんで!」
高山「あのね プレタは オーダーと違って 金になるまで 時間がかかるの。 ね? 大体… 生地代 付属品代 工賃 人件費 営業費 広告費 運搬費 その他諸経費。 ね! 月末払いどころか 銀行からの 融資だって必要なぐらいなんです。」
孝枝「ちょ ちょ ちょ… 分かれへん もっかい言うて下さい。 それは あれ? 借金せなあかん ちゅう事?」
高山「借金はしなくても いいんだけど 今までとは 違うんだから 生地屋さんに 10日締めの 翌月末払いにしてくれって だけの話!」
孝枝「え 何で?」
高山「はああ~!」
(舌打ち)
孝枝「はあ?! お宅 今 舌打ちしました?」
高山「してません。」
孝枝「嘘や! した! 舌打ちしたわ!」
高山「してません。」
孝枝「したやん! したって 言いや! あんた したやろ!」
糸子「ちょっと! どないしてん? 孝ちゃん。」
孝枝「先生。 うち もう無理です!」
糸子「ん?」
孝枝「うちみたいな おばちゃんに そない新しい事 じゃんじゃか言われたかて 無理なんです! ついていかれません!」
糸子「守。」
高山「はい。」
糸子「あんた また きつい言い方 したんやろ?」
孝枝「舌打ちしたんです。」
糸子「舌打ちした あかん。」
高山「は~い。」
孝枝「前のまんまが よかったです 先生。 こんな嫌な思い した事ないわ。 前の平和な店に 戻りたいです。」
糸子「まあまあ そう言わんと 座り。 なっ。」
<一方 浩ちゃんは 案外 辛抱強いたちで>
糸子「もっと。 もっと。 ちゃう。 この生地と ちゃうわ。 もっと厚手や。」
浩二「はい。」
<頼りになるっちゅう事が 分かりました>
孝枝「あ~ もう~! もう嫌や! もう分かれへん!」
糸子「孝ちゃん! 守! あんたも そない すぐメソメソしな! 仕事なんや! 歯ぁ食いしばって やらんかいな!」
孝枝「はい…。」
高山「ゆっくり いきます。」
岸和田商店街
正志「里香ちゃん?」
里香「そうだよ。」
正志「何 その格好? ここ 髪 キュッちゅうやつは?」
里香「やめた。」
正志「かいらしかったのに…。」
里香「悪かったな。」
『おなじみの ちり紙交換に 参っております。 古新聞 古雑誌 ぼろなど ございましたら…』。
「誰? あの小学生。」
「妹 ちゃう?」
「ああ『妹おる』言うちゃったな。」
小原家
リビング
糸子「あ 直子? あんな このベッド もう ちょっと 返したいんやけどなあ。 いや もう ほんま 邪魔になって かなんねや!」
高山「だから 販売網を作るにしたって いい縫製工場を 確保するにしたって とにかく 社会的な信用が 一番必要なんです。」
孝枝「はい。」
高山「もう一回 言いますけど 信用を得るには まず 資産があって それに 組織が きちっとしてないと駄目なんです。 ここまで 分かりますよね?」
孝枝「分かります。」
糸子「これか これか そうか これか。 難しいとこやなあ。 あんた どない思う?」
栄之助「これ。」
糸子「何で?」
栄之助「何となく。」
糸子「アホか! もう フフフ…。 ここは 大事なとこや。 しっかり考えんかい!」
譲「うまい!」
栄之助「おいしいわ 里香ちゃん。」
高山「俺 お代わり 欲しいっす!」
糸子「ま カレーやさかい そない失敗せんで。 なあ?」
孝枝「ほんでも 上手やわ。 野菜かて こんな丁寧に切ってあるし なあ!」
糸子「はれ 浩ちゃん もう食べたんかいな?」
浩二「何や おなか すいてしもて。」
糸子「あんた よう動いてくれたよってな。 里香 お代わり ついじゃり。」
里香「うん。」
孝枝「てんこ盛り しちゃり。」
里香「うん。」
栄之助「おいしいわ これは。」
孝枝「おいしいわ ほんまに。」
孝枝「カレー なんぼでも食べられるからな。」
栄之助「里香ちゃん まだ お代わりある?」
里香「ある。」
高山「いいすか? 企画ってのは とにかく ありとあらゆる情報を 自分のものにしなきゃ 駄目なんです。 あと 人脈もないと 駄目なんです。
孝枝「はあ~ けど 私 人脈なんか…。」
高山「だから~ 企画担当 孝枝さんに やれなんて 誰も言ってないじゃん。 組織の中で 誰が何をやるのかを 決める。『それを 今から形づくっていこう』って言ってるんです。 ね? 孝枝さんに 企画仕入れ担当ができるなんて 誰も思ってねえっつうの。」
孝枝「はあ~?!」
高山「すいません。 先 いきます。」
孝枝「はい!」
譲「進めよう 進めよう。」
栄之助「『ええ柄の生地』言わはったんで こんなところかなと思て 持ってきたんですけど どないでしょう?」
糸子「やっぱしな。 これ ドレスに使お! こないだ言うてたドレス こんで 作ろ。」
譲「えっ?」
栄之助「これで ドレスですか?」
浩二「けど 先生 これ こないだのとは 勝手が ちゃいますよって 柄合わせが そない簡単には いかへんのと ちゃいますか。」
糸子「う~ん。」
譲「そら 模様の入り方も これ 全然 別物やさかい ごっつい 計算 ややこしなりますよ。」
糸子「まあな。 せやけど この柄 おもろいで。 ええで やっぱし! よし やってみよ!」
譲「え?!」
糸子「ハハハ! 若い子らが無理やと思う事ほど やったらんで どないすんねん! 年 取ってる意味 ないがな。」
栄之助「はあ…。」
糸子「浩ちゃん ボディー 持ってきて。」
浩二「はい!」
糸子「あ せや…。 こっちを こう 持ってきたら ええんや。 な?! ほな ここ つながるがな。 ほら。」
浩二「ほんまです。」
糸子「やった… でけんで。 はあ~ やっと分かった。」
浩二「先生?!」
里香「おばあちゃん?!」
糸子「何もない。 ちょっと めまいしただけや。」
<調子乗って 無理し過ぎる>
浩二「先生?!」
里香「おばあちゃん?!」
浩二「先生?!」
里香「おばあちゃん?!」
寝室
浩二「しっかりして 先生。」
里香「大丈夫?」
<うちの人生 何べん そんで 怒られてきた事か>
里香「大丈夫? おばあちゃん。 おばあちゃん お水とか いる?」
糸子「ううん ええ。」
浩二「無理せんといて下さい… 先生。」
糸子「里香。」
里香「え?」
糸子「お母ちゃんらに言うたら あかんで。」
里香「うん…。」
<ちゅうて 周りは どないか ごまかせても 体だけは ごまかせません>
浩二「先生…。」
糸子「あ あ いたたたた…! いたたたた… う~ん!」
<『相変わらずアホやなあ…』ちゅうて 見てんやろ>
糸子「そのとおりや。 おはようさんです。 あ たたたた! あっ つつ~っ!」
オハラ洋装店
糸子「宣伝?」
高山「はい そろそろ 準備していきましょう。」
糸子「いや けど 娘らは 別に関係ないやろ。」
高山「関係ない訳ないじゃないですか! あんな超ビッグネームが 3人も いるんですよ!」
糸子「せやかて うちは 嫌やで?! あの子らの名前に ぶら下がって 宣伝すんのなんか!」
高山「そんあ 甘っちょろい事 言ってる場合じゃないですよ。」
糸子「ああ? 何が 甘っちょろいや! うちは 自分の商品に 自信あるし 娘らなんか 客寄せに使わんかて やれるちゅうんや!」
高山「そりゃ 3年先の話です。」
糸子「何?」
高山「先生 今 全国で どれだけの人が オハライトコを知ってますか?」
糸子「そら… 全国ちゅうほど 知られてはないけどな うっとこの服 いっぺん着てもろたら…。」
高山「そんな悠長な事 言ってる暇 ないです。 あっという間に 次 作る資金 無くなりますよ。 いいですか 先生。 僕達は このオハライトコの服を 買った事がない人達に この価値を バシッと 言い切らないと いけないんです。『岸和田の洋裁屋のおばちゃんが 作った服です~』。 そんな地味な話に 誰が 耳 貸すんですか。 オハライトコには どんな価値があるのか そこに もう のっけられるだけのものは のっけていかないと駄目なんです。 娘さん達には 何が何でも 宣伝協力して頂きます。 それなしは 絶対に成功しません!」
糸子「う~ん うう~ん! むき~! う~ん… 孝ちゃん! こいつ 腹立つ!」
孝枝「知りませ~ん。 うちは ちゃんと耐え抜きましたよって 先生も耐えて下さい。」