ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第142回「奇跡」【第25週】

あらすじ

病院に貼りだされたモデル募集の貼り紙を眺める奈津(江波杏子)。糸子(夏木マリ)と行きあい、病院の廊下での競走になる。糸子は相川(山田スミ子)とモデルの選考に入る。重症患者もモデルにと望んだ糸子だが、さすがにそれはかなわない。モデルに決まった女性たちが集まり、糸子は美しくなってほしいと語りかける。それぞれに合うドレスを考える糸子。ついでに奈津の病室を訪ねたが、ベッドが片づいているのを見て、仰天する。

142ネタバレ

病院

院長室

糸子「半分… いや1/3でも いや 一人でもええわ。 希望する患者さんを 参加させちゃあって下さい。 このとおりや。」

小原家

リビング

孝枝「また ほんなドス 利かせはったんですか?」

糸子「別に ドスとちゃう。 ちょっと 腹に力入れて 声 出しただけや。」

孝枝「それが ドスなんやんか。 なあ? はあ?」

浩二「はあ。」

糸子「せやけど あんた いっぺん その総婦長 見てみ。 ほんな うちのドスに ビビるようなタマ ちゃうで。 ほんま 怖い女ちゅうんは 何で あない怖いんやろなあ?」

孝枝「ハハハハハ。 よう そんな ひと事みたいに…。 なあ?」

浩二「はあ。」

孝枝「うん?」

糸子「うん 何て?」

孝枝「聞こえへんや あんた。」

病院

待合所

(チャイム)

館内放送『お呼び出し致します。 内科の龍村先生…』。

龍村「糸子先生!」

糸子「ああ こんにちは。」

龍村「どうも すんません。 あれ! 桜井さんと?」

奈津「こんにちは。」

龍村「これは これは かつてのご学友が おそろいで。 すてきやないですか~ ねえ ほんまに。 先生 そろそろ 総婦長らも そろってる頃です。」

糸子「はあ。 ほな 行かせてもらいます。」

龍村「お願いします。 じゃあ 桜井さん また。 桜井さんて 何か 独特の雰囲気がありますね。 あれは さぞかし モテたでしょうねえ… あの気高さは。 ハハハ。」

糸子「まあ 気高いんも 変わってませんけど 男の趣味も変わってませんわ。」

龍村「ええっ! そうなんですか。 で ちなみに どんなんです?」

院長室

龍村「さあ どうぞどうぞ。」

糸子「こんにちは。」

相川「こんにちは。」

香川「あ こんにちは! どうもどうも どうぞ。」

龍村「ほな あとは よろしゅう頼むね。」

香川「いや 院長 どこ行くんですか?」

龍村「僕は ちょっと… アレやんか ハハッ。」

香川「院長 院長!」

香川「糸子先生が あっこまで言うてくれたよって とりあえず 試しに 患者さんも含めて 希望者を募ってみようか ちゅう事になりました。」

糸子「おおきに。」

香川「ほんで とりあえず 2週間 院内に この貼り紙を 貼ってみたんです。 ほしたら まあ 来ました来ました。 合計 54人! うち 13名は 職員で 残り 41名が 患者さんです。 41人の中には 通院患者と 入院患者とが いてます。 まあ どっちからも 病状の軽い患者さんに 出てもらう事にしたら それほど 問題も ないんやないかちゅう事で。 ね?」

相川「ええ。」

糸子「この 赤い人ほど 悪いちゅう事ですか?」

相川「そうです。」

糸子「ほな… この人らで いきましょ。」

香川「は?」

相川「はあ?!」

糸子「これで いかせて下さい。」

相川「ちょっ…。 小原さん この人らは 症状が より重いんです。」

糸子「せやからこそ です。 こんなもん 重い人から順に かなえちゃりましょう。」

相川「そんな事 でけますかいな! この人らは より 危ないちゅうてるんです。 万が一の事が 起こりやすいんですよ!」

糸子「せやけど… 考えてみて下さい。 病気の重い人らが 10月のショーに 出てみたいと 夢を 今 持った。 その夢を 病気が重いからちゅう 理由で 奪う。 そら… ひどないか?」

相川「いや… ひどいやら ひどないやら… そんな事は うちらが 論ずるべき事やありません。 病院は 患者さんが 治療に専念する場所です。 我々の仕事は その環境を守る事です。 我々が 責任を放棄せなあかん ような イベントなんて できません。」

糸子「せら せや…。 分かった… むちゃ 言うたな。 ほな どうしようか?」

<結局 職員から7人 通院患者 入院患者のうち 病状の軽い人を それぞれ 4人ずつ 選ぶ事になりました>

糸子「うん… ほな こっちは この4人 ちゅう事で いこか?」

相川「ええ。」

龍村「どうも! …どんな感じ?」

香川「あ 今 モデルの選考をやってます。」

龍村「なるほど! ほう。」

<当たり前ちゅうたら 当たり前やけど… 奈津の名前は ありませんでした>

小原家

オハラ洋装店

糸子「けどなあ 一応 こさえるんは こさえとこかと思ってんや。」

浩二「はあ。 何をですか?」

糸子「その 奈津ちゅう子の服も。」

浩二「はあ。」

糸子「うちと… そろいにしてな~。」

(拍手)

<うちが赤で 奈津が白。 一番 最後にな>

(拍手)

浩二「そろいの 赤と白…。 正月の 漫才師みたいな感じですか?」

(からすの鳴き声)

<また 鼻で笑うやろか? せやけど 長い長い 腐れ縁の果てに…>

(拍手)

<ほんな事が あったかて ええやないか>

病院

ホール

(拍手)

糸子「え~ 皆さん 初めまして。 小原糸子でございます。 ご存じのとおり 10月に 皆さんと一緒に ファッションショーを やらせてもらう事になりました。」

糸子「私も こちらに 膝と ヘルペスちゅう 皮膚の病気で 通わせてもろてる患者の一人です。 88歳。 せやけど やるとなったら 手抜きは しません。 立派なショーにしたいと思てます。 まず 皆さんに お願いしたい事は 今日から とにかく 美しくなってもらいたい ちゅう事です。」

「美しく?」

「なるかねえ 難しい。」

糸子「そら そうです。 このショーは 皆さんが キラキラ輝いて 初めて 見る価値が出るんです。 絶対 自分は 輝くんやと信じて 努力して下さい。 自分が輝く事が 人に与える力を 信じて下さい。 必ず ええもんに しましょ。 よろしくお願いします。」

(拍手)

糸子「後ろ 向いて。 はい… 前 向いて。」

糸子「80歳? まだまだ 女学生みたいなもんやな。」

「それ 先生に言われたら かなわんわ。」

糸子「ハハハハハ。 うちかて やっと このごろ どないか 一丁前になれてきたかな ちゅうくらいやで。」

「そうですか。」

糸子「ほれ!」

「うわ! いや~ うれしい。」

糸子「どない? 好き?」

「好き 好き。 エヘヘヘ。」

糸子「白が ええ。」

「ご苦労さんでしたなあ。」

「どうも。」

孝枝「ほな 先生 行きましょか?」

糸子「孝ちゃん ちょっと待っといて。」

孝枝「は?」

糸子「すぐ戻るよって。」

孝枝「はあ。」

病室

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