ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第146回「あなたの愛は生きています」【第26週】

あらすじ

平成17年、糸子(夏木マリ)は店の2階を改装して、皆が集まるサロンにする計画をたてる。新聞取材では91人のボーイフレンドについて話し、自分ではなく相手のためを思ってすることの喜びを語る。自分のブランドで紳士服を始めるなど、糸子は、まだまだ意気軒こう。改装のため2階を取り壊す前日、広々とした畳に寝転がり、今までに思いをはせる。当日、孝枝(竹内都子)は感傷的になるが、糸子は今を生きるのだと言い切る。

146ネタバレ

小原家

座敷

孝枝「え~っ 重た…! これ 何やろ?」

糸子「ああ そら 神戸箱やな。」

孝枝「神戸箱? いや 何や おもろいもんばっかし ようさん入ってますわ。 これも 捨てて ええんですか?」

孝枝「ハハハハ! 誰 そない ピアノ 欲しかったんですか?」

糸子「うん?」

孝枝「これ! ハハハハハハハ!」

糸子「娘らや。 もう。 ピアノ 習いに行かせてしもたら 3人そろて もう 毎日 ほんまに うるそてなあ…。」

<平成17年4月 古いもんを 全部 捨てる事にしました。 何でかちゅうたら>

糸子「ぶち抜いてな ここ スト~ンちゅうて!」

「ここですか。」

糸子「ほんで 一部屋にしてほしんや。」

「はい。」

糸子「ほんでな この辺が バーカウンター。」

「バーカウンター。」

糸子「ここで お酒 つくって お客さんらに 出す。 ほな お酒 飲みながら だんじり 見てもらえるやろ。」

「そうですよね。」

優子のオフィス

優子「2階を改装?! 何で また 今頃 ほんな事 言いだしたん?」

小原家

オハラ洋装店

孝枝「何や 前々から 思てたそうですわ。『ようさん お客が だんじり 見に来てくれるんやさかい』て。」

優子『ほんな 年に1回の事のために 改装までせんでも。』

孝枝「まあ 言いだしたら 聞きませんから。 ほんで 2階の整理してたら 優子さんのもんも ようさん 出てきたんですわ。 勝手に ほかしてええか どうか 分かれへんよって そちらにお送りしますんで よろしくお願いします…。」

記者「はあ! 2階を改装。 つまり サロンのようにされる という事ですか?」

糸子「そうです。 設計は 高崎信彦先生に してもらう事になりました。」

記者「高崎先生ですか。」

糸子「ああ アッハッハ。 先生も あれですわ。 例の うちのボーイフレンドの一人で。」

記者「88人の?!」

糸子「ヘヘヘッ いや 今は 91人なんです。 うちが 91やさかい。 ハッハハハハ!」

記者「年の数だけ 増えていくんですね。」

糸子「そうです。 人の輪ほど ありがたいもん ないですわ。」

記者「はあ ほんまですねえ。」

糸子「まあ うちかて まだ 人生が どないなもんか よう分かってませんけど たった一つ 自信持って言える事が あるんです。」

記者「はい 何でしょう?」

糸子「うちが 何かをして それが 成功した時ちゅうんは 必ず 自分やのうて 相手のためを思て した時なんです。」

記者「はい。」

糸子「欲かいて 自分のためにした時は 全部 失敗しました。 そら見事に。 エッヘヘヘヘ ハハハ!」

記者「ああ それは つまり あの『与えうるは 受くるより 幸いなり』っていうやつですか。」

糸子「何それ?」

記者「『聖書』の言葉です。」

糸子「それですわ! あげんのは もらうより ずっと得や。 ほんまに そない思います。」

孝枝「はあ~ ええ言葉やなあ…。」

糸子「も~! まだけ うなぎ! ちょっと遅すぎんでなあ?」

篠山「いや 電話して まだ15分ですよ。」

糸子「せやけど おなかすいた~! ちょっと 浩ちゃん もっぺん 電話してみ。」

孝枝「やめて下さい 恥ずかしい。」

糸子「何が恥ずかしいんや! こっちは 早う うなぎ食べとうて 待ってんや。『早うしてや』って 言うてるだけや。」

孝枝「新聞に こない ええ格好 言うといて。」

糸子「ああ? せらせや あんた。 こんなん 人一倍 欲深い人間やないと 言わんで。」

浩二「そういうもんですか。」

糸子「当ったり前や! 初めから 欲無いような人は こんな事 考えんで ええんや。 欲深いからこそ さんざん 痛い目に遭うたあげくに たどりつくんやないか。 あ~あ も~! うなぎ~! 早う~! うなぎ 来いや~!」

回想

糸子「待っとれ!」

<あれから4年。 うちには 2つ 手柄があります。 1つは オハライトコで 紳士物のラインを立ち上げた事。 これも ボーイフレンドらが応援してくれて ひとまず 順調に行ってます。 もう一つは>

香川「はい 撮りますよ~! 皆さん 笑って下さ~い! 笑って下さ~い! 桜井さんも 笑って下さ~い!」

<奈津を 老人ホームに 放り込むんに 成功した事です>

回想終了

病院

待合所

龍村「糸子先生。」

糸子「はれ 院長。 こんにちは。」

龍村「今日は 診察ですか?」

糸子「はあ そうです。」

龍村「あ そないゆうたら こないだ 奈津さんが ホームから 検診に来られてましたよ。」

糸子「はあ どないでした?」

龍村「う~ん 大丈夫ですよ。 まあ 相変わらずの お姫さんぶりでしたけどね。」

糸子「ほうですか。 お世話になりました。」

龍村「いいえ。 ま 先生も お体 お大事に。 じゃ。」

糸子「香川さん。」

香川「あ 先生。 あ 院長 見ませんでした?」

糸子「院長 ハハハッ 出ていきはったで。」

香川「はあ~ また もう逃げられてしもた。」

糸子「ご苦労さん。」

香川「ほんまに あの人 ワインとゴルフの事しか 頭に ないんやさかい。」

糸子「まあまあ。」

<ほんでも『何で 今更 小原のサルの世話に ならなあかんねん』。 そない言うて 渋る奈津を 根気よう説得してくれたんも あの人やったさかい うちも もう 悪口 言えません>

小原家

(小鳥の鳴き声)

寝室

糸子「うう うん うん うん う~ん… う~ん!」

リビング

ラジオ『力強く 素早く手足を 動かしましょう! 足を開いて 斜め下 左斜め下に 2度 曲げて…』。

(鼻歌)

寝室

(鈴の音)

糸子「おはようございます。 今日も一日 よろしゅうお願いします。」

リビング

(テレビ)

糸子「ええ子やなあ。」

テレビ『家との別れが やって来る』。

糸子「は~。」

テレビ『8時半になりました。 ニュースをお伝えします。 今日未明 東京・品川区の…』。

玄関前

「おはようございま~す!」

糸子「ああ おはようさん!」

フミ子「おはようございます。」

糸子「なあ なあ なあ!」

糸子「どないなんやろなあ? 優のお父ちゃん とうとう 家 売ってまうで。」

孝枝「う~ん。 まあ 一家離散ちゃいますか?」

糸子「えっ せやろか?!」

「おはようございます!」

糸子「おはようさん 行っちょいで。 せやけど うちの話も ドラマにならんかいなあ!」

孝枝「だから なりませんて!」

糸子「ちょっと また テレビの人に 聞いといて!」

孝枝「だから もう 何べんも聞きましたて!」

糸子「もう一回 聞いといて 試しに。 なあ! なあ!」

孝枝「もう 先生 しつこい もう!」

糸子「なあ 孝ちゃ~ん。」

2階

(からすの鳴き声)

「せ~の!」

(崩れる音)

オハラ洋装店

孝枝「何や 切ないもんですね。」

糸子「ん?」

孝枝「思い出のある部屋が 壊されるちゅうんは。」

糸子「ハハハッ! ほうか?」

孝枝「ほんな事 ないですか?」

糸子「90過ぎたら 思い出なんぞ もう どうでもええで。」

孝枝「え?」

糸子「それより 今と これからや。 こ れ か ら!」

孝枝「そら まあ 結構な事で。」

糸子「なあ 浩ちゃん。 今日のお昼 何にしよう?」

浩二「何にしましょうか?」

糸子「肉 食べたいわ!」

孝枝「また 肉?! 先生『控えなさい』て 言われてるやないですか!」

糸子「かめへん うちは 今を生きるんや。 ヘレカツ!」

孝枝「え?」

篠山「ああ ええですね。」

糸子「なあ ヘレカツ! ヘレカツがええな。」

浩二「ええですねえ。」

糸子「浩ちゃん あれ どこのやった? こないだの ごっつい おいしいの。 佐々木さんが 買うてきてれたやんか。」

孝枝「もう 好きにして下さい。」

糸子「フミちゃん あれ!」

フミ子「どこでしたっけ?」

糸子「ほら あれや。 ヘレカツや ヘレカツ。 あ~ ヘレカツ 食べたいなあ。」

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