あらすじ
二階の改装が完成し、糸子(夏木マリ)は着物のリフォーム教室「撫子(なでしこ)の会」を開くと言いだし、孝枝(竹内都子)をあきれさせる。にぎやかに会が開かれ、着物から作られたドレスに女性たちは歓声をあげる。栄之助(茂山逸平)に父を亡くして元気がない譲(川岡大次郎)のことを尋ねる糸子。ある夜、2人が訪ねてくるが親の死や自分の年齢を思い悩み元気がない。糸子は“強くなくても、なんとかやっていける”と励ます。
147回ネタバレ
小原家
2階 サロン
(小鳥の鳴き声)
<2階のサロンが完成しました>
糸子「何 飲む? ビールけ?」
糸子「はあ~!」
孝枝『先生! そろそろ支度して下さいよ!』
オハラ洋装店
糸子「なあ 孝ちゃん! ええ事 思いついたわ。 着物のリフォーム教室 やろよ。」
孝枝「は?」
糸子「2階で。 あないええのん でけてしもたら もったいな なってきた。 どんどん 人呼んで 使およ。」
孝枝「よ~う見てから 言うて下さい。 いつやるんですか?」
<やるちゅうたら やるんや>
フミ子「2階です。 どうぞ。」
「お邪魔します!」
2階 サロン
「まあ~! すてき!」
糸子「いらっしゃい! どうぞ! 何 飲む?」
「ありがとうございます!」
栄之助「先生 こんにちは。」
糸子「はれ 社長 いらっしゃい!」
栄之助「こちら うちのお客さんの…。」
森元「森元です!」
崎田「崎田といいます 先生 握手して下さい!」
森元「うちも! あれ~! うれしい! ずっと ファンやったんです!」
糸子「ほんまいない おおきに。」
糸子「え~ 皆さん 撫子の会へ ようこそ いらっしゃいました。 講師の小原糸子です。 どうぞよろしゅう お願いします。」
(拍手)
糸子「ある日 押し入れを ひっくり返してたら 古い着物が 山ほど出てきました。 洋服は捨てられても 何や知らん 着物ちゅうんは 捨てられへんもんです これが。 せやけど 着るかちゅうたら なかなか機会もない。 そないして たんすの 肥やしになってる着物が どこのお宅にも ようさん あるんとちゃうかと 思います。」
「そうですねえ!」
糸子「そこで あちらを見て下さい。」
(歓声)
糸子「ほんで これが…。」
(歓声)
糸子「うちの一張羅やった着物を ばらして こさえた ドレスです。 ご存じのとおり 着物の反物と 洋服の生地は 幅が違います。 しかも 模様が入ってるよって 洋服にすんのは 大変 難しい。 私も随分 頭を使て やっと 見つけた やり方があります。」
糸子「言うたら 企業秘密みたいなもんやけど ほんなセコい事 言うてたら 日本中の たんすに 肥やしが増えていくばっかしです。 1日も はよ 1枚でも多く 着物が生き返ってくれる方が ずっと うれしい。 実は うちの父親は 呉服屋やったんです。」
「あかん! やっぱり あきませんわ 先生!」
糸子「うん?」
「着物に ハサミ入れるなんて なかなか できへんもんなんですね!」
糸子「分かるけどなあ。 ハハハ!」
栄之助「そこが 気のもの不思議 いうやつですな 先生。」
糸子「ええ?」
栄之助「いや どんだけ お金持ちの お客さんでも 着物いうたら 皆さん 絶対に よう粗末にしはりませんもん。」
糸子「せやなあ!」
「分かります。 うちも お米と 着物だけは どないしても。」
糸子「ああ なるほど お米と着物なあ。 ハハハハ! ほれ 思い切って いけ! ほれ!」
「よし!」
糸子「せ~の! いくで!」
「わあ~! やった~! あんたも いけ ほら! いくで!」
「せ~の!」
栄之助「せやけど ほんまに ええサロン 出来ましたね。」
糸子「ふん せやろ。」
栄之助「これ だんじりの時とか ええのん ちゃいますか?」
糸子「ところで。 どないや 譲。 ちょっとは 元気なったか?」
栄之助「ああ。 おふくろさんが 亡くならはった時よりも 今回の方が だいぶ参ってますわ。」
糸子「ほな 連れてき あんた。 今度 な!」
栄之助「はい。」
<先月 譲のお父ちゃんが 亡くなりました>
オハラ洋装店
糸子「はれ 来たか。 フフフ!」
譲「先生!」
糸子「ええ~!」
譲「すんません。 いや 先生の顔 見たら 気ぃ緩んでしもた。」
糸子「はれはれ 大の男が かなんな もう!」
(泣き声)」
糸子「ほら!」
譲「すんません。」
糸子「これ 台拭きやな。 きれいなタオル どこや。」
栄之助「いや もう…。 台拭きで ええんちゃいますか 先生。」
糸子「そうか。」
譲「すいません!」
リビング
譲「いや~ 参りました。 おふくろん時かて こたえてたはずやけど 今回ほどと 違いましたわ。 年のせいですやろか。」
糸子「は? あんた 今 なんぼや?」
譲「45です。」
糸子「あと倍ほど生きてから ほんな言葉は 使い。」
譲「はい。」
糸子「そら あんたのお母ちゃん時と ちゃうんはな あんたは いよいよ ほんまに 自分の力だけで 会社と家族 背負わなあかんよう なってしもたんや。 その不安と怖さに こたえてんや。」
譲「そのとおり… そのとおりです。」
糸子「けどそら 誰もが 通らんならん 道なんやで。」
譲「はい。」
(泣き声)
糸子「何や あんた?」
栄之助「へ?」
糸子「あんたまで 泣く事ないがな。」
栄之助「いや… 僕もですやろか?」
糸子「あ?」
栄之助「いつか 僕も 通らなあかんのですやろか?」
糸子「そら あんたのお父ちゃんらかて 不死身やないやろしな。」
栄之助「何や 切ないですね。」
糸子「はあ! まだまだや。」
栄之助「え?」
糸子「あんた 自分のお父ちゃんの事 思い出してみ。 あのころ 会長 確か65~66や。 ほの年で 大事な奥さんに 先立たれて どんなけ寂しかったか 考えてみんかいな。 ほんでも アホ息子と 社員らのために どないか立ち上がって 最後の最後まで 支えてくれはったんや。 あの立派なお父ちゃん 見習うて やっていき!」
譲「無理です。」
糸子「はあ?」
譲「僕 そんな 強ないですもん。」
糸子「アホか! ハハハ! ほんなん 誰かて強ないわ。 弱ても どないか つないで つないで やっていくしか ないんや。 みんな そうや。 うちのボーイフレンド 見てみ。 91人もおるがな。 群れたり ごまかしたり 慰め合うたりしてるうちに 人間は やっていけるんや。 あんたらが やっていけん訳がないがな。 心配しな。」
栄之助「先生。」
糸子「あ?」
栄之助「いつか うちの奥さんが 先 死んでしもたら 僕も 先生のボーイフレンドに 入れて下さい。」
糸子「あんた そん時 うち なんぼやねん?」
栄之助「130歳くらい?」
(笑い声)
糸子「ま 飲み! しっかりしいや。 アホぼんらが。」
孝枝「これ 昔 金ぱく 貼っちゃあった やつちゃいます?」
譲「そうです。」
糸子「金ぱくカステラけ? もう貼らへんよう なったんやな。」
篠山「あれ やっぱり 時代の流行 やったんちゃいます?」
フミ子「バブルやったよってなあ。」
篠山「そうゆう事です。」
糸子「余計なもん 貼らんかて 十分 価値あんでなあ。 おいしいわ!」
孝枝「うん。」
糸子「納骨は あんじょう済んだか?」
譲「はい おかげさんで。」
<なあ 譲。 キラキラを剥がされて むき出しになってしもた 40男の本性は あんたが思てるより もっと ずっと きれえなんやで>