ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第15回「熱い思い」【第3週】

あらすじ

かぜでパッチ屋から帰らされ、寝ている糸子(尾野真千子)は弱気になる。しかし千代(麻生祐未)が「自分の力で好きなことをやりとげる糸子は偉い」と褒める言葉が聞こえ、元気を出す。翌日にはかぜも治り、また張り切ってパッチ屋で仕事をする糸子。雑用をこなすことからも学ぶものがあると気づき、いつかミシンに触れる日が来ると確信する。その様子を見ていた店主・桝谷(トミーズ雅)は、夜間はミシンを使ってもよいと言う。

15ネタバレ

道中

回想

田中「小原!」

田中「おい 小原! まだ 泣いてんか? はよ 手伝わんかい!」

岡村「お前みたいなもん いてても いんでも 一緒じゃ。 風邪うつされる方が迷惑じゃ。」

回想終了

糸子「辞めたる! あんな店 辞めたる!」

(泣き声)

子供達「うわ~!」

<泣いて 泣いて 泣きまくったら やっと 涙も止まったさかい うちに帰る事にしました>

小原家

子供部屋

糸子「暑い…。」

ハル「我慢しい。 風邪はな 冷やしたら あかんやち。 ほら! な! あっ お湯 飲もか? お湯 飲み。 今 こしらえてきたるさかい。 待っときや!」

糸子「重たい… ああ…。」

<辞めたいなあ 店。 辞めて 女学校 戻りたいなあ。 あ~ うちは なんちゅう アホな事したんやろ>

2階 座敷

(カラスの鳴き声)

静子「風邪なん? 糸子姉ちゃん。」

千代「せやなあ。 風邪と… 頑張り過ぎやなあ。」

静子「ふ~ん…。 あのな お母ちゃん。」

千代「うん?」

静子「うちが 昨日 言うた事…。」

千代「何やった?」

静子「忘れたん? 着物の事。」

千代「あ~ 何や 言うてたなあ。」

静子「うち ほんまに あの着物 欲しいねん。」

千代「あかん。」

静子「えっ 何で?」

千代「あんな ぜいたくな着物 あんただけに買われへん。 清子かて 光子かて お下がりで我慢してやんのに。」

静子「ええなあ 糸子姉ちゃんは。 糸子姉ちゃんばっかし 新しい着物 着れるし 好きな事 さしてもらえるんやさかい。『学校 やめたい』ちゅうたら やめさしてもうて『働きたい』ちゅうたら 働かしてもうて。」

千代「そない 羨ましいんやったら あんたも 姉ちゃん 見習うたら よろし。」

静子「えっ?」

千代「こないなとこで お母ちゃんに グジュグジュ言わんと 自分で お父ちゃんに『着物 買うて下さい』て 頭 下げといで。」

静子「そんな事 うち ようせん。」

千代「好きな事するちゅうんはな 見てるほど 楽と ちゃうんやで。 女は余計や。 大変なんや。 姉ちゃんは偉いやん。 やりたい事あったら 全部 自分で どないかしよる。 どんだけ しんどうても 音ぇ上げへん。 ええなあ思うんやったら 何ぼでも まねしい。 けど まねでけんと 文句だけ言うんは あきません! さあ そろそろ おとうちゃん 帰ってくるよって 降りとこか。」

静子「お母ちゃん 今日の晩御飯 何?」

子供部屋

<偉いやて… 姉ちゃんは偉いやて>

居間

千代「はれ! 起きてきた。」

糸子「あ~ おなか すいた。」

千代「御飯 食べるか?」

糸子「うん!」

ハル「ちょっと あんた これ着ぃ!」

糸子「いや いや もう ええて。」

ハル「『いや』や ないねん。 ここ。」

糸子「いや もう ええて。」

ハル「これも しぃて! ちゃんと着ぃ。 ちゃんと 手ぇ通して。」

千代「店 明日 もう一日 休ましてもらうか? お母ちゃん 言いに行ったるさかい。」

糸子「ううん。 明日は もう行ける。 いただきます!」

善作「勉強やで。 勉強しに行くと思え。」

糸子「そやな。」

善作「うん?」

糸子「ほんまやな お父ちゃん 勉強やと 思て行ったら ええんやな。」

善作「何 初めて聞いたような顔して 言うとんねん。」

糸子「そやけど ほんまに 初めて 聞いたような気ぃするわ。」

善作「はあ~? 何 言ってんだ? お前は!」

糸子「そや 勉強やな!」

枡谷パッチ店

仕事場

<窓を開けたら 朝の風が入って 空気が入れ代わるんやな こんなして 机が きれいに拭かれとったら 気持ちが ええんやな>

糸子「あ…。」

岡村「おろっ! 風邪 もう ええんけ?」

糸子「へえ 元気になりました。」

岡村「そうけ…。 せや… ちょう来い。」

糸子「はい…。」

岡村「飴 やろ!」

糸子「おおきに。」

<怖い人が 飴 くれる事も あるんやな>

糸子「縦 縦 縦 縦。」

<縦に拭いてから 横に拭いたら 汚れが残れへん>

小原家

台所

<お茶は 少し待って ちょっとずつ 入れたら おいしなる>

子供部屋

<その気になったら 勉強できる事は 山ほどあるんや よし! うちには もう こんだけ 知恵ついた。 知恵ちゅうのは 増えていくばっかしのもんやし 10年ちゅうのは 減っていくばっかしのもんや>

糸子「今日で…。 10… 6日目や。 あと 9年と… 300… 40… 9日!」

(ため息)

糸子「大丈夫や。 うちは ちゃんと ミシンに近づいてる。」

枡谷パッチ店

仕事場

(小鳥の鳴き声)

(戸の開閉音)

枡谷「そない うれしいんけ?」

糸子「えっ? あっ おはようございます!」

枡谷「ごっつ うれしそうに 磨くのう。」

糸子「へえ! そら ミシン 大好きですさかい!」

枡谷「ええ事 教えたろか。」

糸子「えっ?」

枡谷「そいつはな。」

糸子「へえ。」

枡谷「夜なったら 遊んでんで。」

糸子「へっ?」

枡谷「誰と 遊んでんですか?」

枡谷「いや 違うがな! 遊んでるて 別に こいつが 誰かと おしくらまんじゅう してる訳や ないよ。」

糸子「うん。」

枡谷「そやなしに… 誰も使わんのを『遊んでる』ちゅうんや。」

糸子「あ~あ。」

枡谷「遊んでるもんを ちょびっと 使わせてもろたかて 誰も怒らへんで。」

糸子「あ… えっ? えっ? えっ? えっ? いや… ひょっとして みんなが帰ったあとやったら 練習さしてもうても ええちゅう事?」

枡谷「うん。」

糸子「ええっ! いや ほんまですか! えっ! えっ!」

<ほうか… いつぞや 山口さんが やたらと うちを はよ帰らせたがったんは…>

回想

山口「もう あとは わしが 洗とくさかい はよ帰れ! もう。」

糸子「へえ…。 ほな お先です。」

山口「うん!」

回想終了

<そういう事やったんやなあ>

山口「おい! あとは わしが やっとくさかい はよ帰れ。 おい! はよ帰れて!」

糸子「山口さん!」

山口「はあ?」

糸子「あの…。 うち… 山口さんが終わってからで ええよって ミシン 使わせて下さい。」

山口「え… お前 もう 大将から お許し 出たんけ?」

糸子「へえ。 夜は ミシン使て ええて 言われました。」

山口「うっ… 何じゃ そら! わしなんか ミシン触んのに 1年かかってんぞ。 何で お前 2か月やねん? かあ~! むかつくの~!」

山口「おい! ほれ。」

糸子「やった! おおきに。」

山口「さっ 帰ろ 帰ろ。 さぶいし 腹 減ったし。」

糸子「お疲れさんでした。」

山口「おい 戸締り ちゃんとせえよ。」

糸子「へえ。」

糸子「おおきにな 待っててくれて。 そやけど… 案外 早かったわ。 今日 大将に言われたとこやさかい 縫うもん ないねん。 明日から 山ほど きれ 持ってくるわ。 あと おばあちゃんに 夜用のお握り こさえてもらうわ。 何ぼ 遅なっても ええように。 よろしゅうなあ…。」

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