ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第18回「熱い思い」【第3週】

あらすじ

善作(小林薫)を説得しようと、男物のアッパッパを贈ることにした糸子(尾野真千子)。工夫を重ねたアッパッパが完成するが、機嫌が悪い善作に捨てるよう言われる。千代(麻生祐未)は困った末、店に隠すが客に見つかり50銭で売れることに。驚いた善作は洋服作りの条件として、糸子にアッパッパを商品として作らせる。結局は善作も気に入り、それを着て商店街をかっ歩する。しかし糸子には新たな苦難が降りかかろうとしていた。

18ネタバレ

安岡家

玄関

糸子「お父ちゃんに? 何を?」

八重子「洋服!」

糸子「洋服?!」

八重子「まず お父ちゃんに とにかく 着てみてもらうねん。」

枡谷パッチ店

仕事場

(せみの鳴き声)

糸子「ああ! ああ… ああ。」

枡谷「あっついのう。」

職人達「お帰んなさい!」

枡谷「夏やど おい!」

糸子「大将! 大将 大将! ちょっと見せて下さい。」

枡谷「うん?」

糸子「ちょっと すいません。 難しそうやなあ やっぱり。」

枡谷「何をしとんねや。」

糸子「すいません。」

枡谷「何しとんのや?」

休憩室

枡谷「そら お前 そない簡単に 縫えるもん ちゃうで 洋服ちゅうんは。」

糸子「はい。」

坂本「着物と 全然 違て ごっつ難しいんやで。」

糸子「ほうか やっぱりなあ。」

山口「お前に 洋服なんか 無理や 無理や。 諦め。」

岡村「いや そら シャツやら 背広やらは 無理やろけど もっと簡単なもん 縫うたら ええんちゃうんか?」

糸子「例えば?」

岡村「例えばやな…。」

田中「アッパッパ!」

岡村「何でやねん お前。 考えたら分かるやろ。 アッパッパて。」

枡谷「あら お前 女の着るもんやろ。」

田中「いや うちの親父も わしも 家で着てますで。」

岡村「ほんまけ?」

田中「おう。 うちのおかんが 古い浴衣ほどいて 親父に縫いよってな それが『ごっつ ええで』ちゅうて 親父が言うさかい わしも 嫁に縫わせたんや。 ええど~ アッパッパは。 楽やし 涼しいし。」

糸子「ほんまですか?」

田中「おう! アッパッパに せえや。 あれやったら 縫えるやろ?」

糸子「縫えます。 うち アッパッパ ごっつ得意やし。」

枡谷「ほな ちょっとええ生地 使てやな まあ これやったら 着てみたろかて思える アッパッパちゅうとこかの!」

岡村「ええな 大将 それ。 ええな!」

糸子「あ~。」

仕事場

さよ「ご苦労さん!」

糸子「あっ お疲れさんです。」

さよ「糸ちゃん あんな これ! ちょっと古いけどな 物は ええんやよ。 これ おとうちゃんが『アッパッパに使い』て。」

糸子「ええです そんなん。」

さよ「ええから もろとき。 あんたは 洋服 作れるよに ならんと あかんさかい。 な! これで お父ちゃんに アッパッパ 作ったり。 ほんで 必ず 認めてもらい。」

糸子「へえ おおきに。」

小原家

座敷

糸子「よっしゃ! おばあちゃ~ん!」

ハル「何 縫うんよ?」

糸子「それは まだ 言われへん。」

ハル「何や そら! ハハッ。」

糸子「はよ乾かな お父ちゃん 帰ってきてまうで。」

糸子「お~! はよ せな。」

子供部屋

<お父ちゃんに 嫌がらんと着てもらえるよう いろいろ 工夫してみました あんまり 脚が出んよう 丈は長めにしました>

枡谷パッチ店

仕事場

<首のところも ちょっと 着物みたいにしてみました>

糸子「出来た!」

<我ながら ほれぼれするほどの 出来栄えです>

休憩室

(足音)

糸子「はい!」

枡谷「ほお~!」

坂本「あら~!」

糸子「おかげで ええのん 出来ました!」

枡谷「こら ほんま ええわし!」

坂本「おう!」

枡谷「これやったら 男が着たかて おかしないわ。 わしも おばはんに 作ってもらおかのう。 ハハハハッ。」

岡村「ほんまやな。 欲しなんな これ。」

田中「おやっさん これやったら 絶対 ええて言うな。」

岡村「言うわ。」

糸子「おおきに。 頑張ります!」

岡村「あ~ すごいやんけ!」

田中「すごいな~!」

岡村「かなり ええわ~!」

木岡履物店

♬~(ラジオ)

善作「けたくそ悪い!

♬~(ラジオ)

善作「靴?! どういうこっちゃ? 木岡! 靴て どういうこっちゃ? 靴て?」

木岡「あわわわ… 善ちゃん。」

善作「説明せえ! お前 あんだけ 靴は 置かんちゅうとったやないけ?!」

木岡「いや そやけど これはな 時流やからな。」

善作「何が時流じゃ! 今更。『そんなもんに乗って たまるかい』と ほえとったのは どこのどいつじゃ?!」

木岡「そ そ… そやけどな。」

美代「小原さん しゃあないがな。」

善作「何や?」

美代「世間の人が 下駄より 靴 買うように なってきてんやし。 うちかて ほとほと 下駄が 売れへんかったんが 試しに 靴 入れてみたら 今日かて 飛ぶように売れと。 あんなあ うちのおとうちゃんも お宅もな 日本人の誇りやとか そないなもんに しがみついちゃあたら もう あかんねん。 世の中 変わっていってんやて。」

木岡「お前 女のくせに 善ちゃんに 何ちゅう 偉そうな事 言うねん! 善ちゃん すまん! 堪忍やで! このとおりや。」

善作「とうとう わしを怒らしたな!」

小原家

(カラスの鳴き声)

糸子「お父ちゃん! お父ちゃん! あのな これな…。」

善作「やかましい!」

糸子「何や?」

居間

ハル「ほれ あんたも手伝わんかいな。」

糸子「お父ちゃん あのな… 渡したいもんがあんねん。」

ハル「あとにしたら どや? なあ 御飯のあとに。」

善作「何や? これ。」

糸子「アッパッパや。」

善作「何やと?!」

糸子「お父ちゃんに着てもらいたて 作ってん。 生地かて ごっつい ええのんやし 男の人が着ても おかしないし 夏は涼しいし 動きやすい!」

善作「おい ほかせ!」

糸子「何で? うち お父ちゃんに 着てもらいたて…。」

善作「うるさい! はよ ほかせ!」

千代「へ… へえ。」

翌日

善作「うん。」

千代「へえ。」

<お母ちゃんの事やさかい ほんまに ほかしては ないやろうけど 返してもろたかて どうなるもんでも ないしな。 負けへんで! うちは 次の手ぇ考えたる>

糸子「ごちそうさんでした!」

小原呉服店

客「毎度!」

善作「へえ いらっしゃい!」

客「いや~ あっついなあ。 かなわんで この暑さ。」

善作「ほんまでんなあ。 浴衣ですか?」

客「いやいや 今日はな 足袋だけ 買いに来たんや。」

善作「そうですか。 へえ。 そう言わんと まあ 見ていくだけ 見てって下さいな。」

客「いやいや 今日は ええって。 ほんまに。 うん?」

千代「あっ! ああ… あ…。」

善作「何ですか? それ。」

千代「あの すんません。 あの それ…。」

客「アッパッパか? これ。」

千代「いや あの… すんません。 ちょっと そこに うちが 昨日… すんません。」

客「なんぼや?」

善作「それ 売りもん ちゃいますがな。」

客「何や 売りもん ちゃうんかいな。」

善作「アホやな お前。 ほかしとけ 言うたやろ!」

千代「へえ あの… すんません。」

客「ほかすんやったら 売ってえな。」

善作「えっ?」

客「何ぼ? ええがな これ~。 ちょうど こんなん 探しちゃったんじょ。 そやけど なかなか 売ってへんしなあ。 何ぼ?」

善作「いや… 50銭もろときまひょか。」

客「50銭! やっすいなあ! もらう もらう!」

<そんなこんなで その夏 うちは アッパッパを 2日に1着の割合で こしらえるはめに なりました。 それが 洋服作りを許す代わりに お父ちゃんが出してきた条件です>

玄関前

(善作の鼻歌)

木岡「おう! 善ちゃん!」

善作「おう! ハハハッ。」

木之元「あれ 善ちゃん! えらい 何や 変わったもん 着てらし。」

善作「ヘヘヘッ。」

木岡「お前 知らんのんけ! これは アッパッパや。」

木之元「アッパッパ?」

善作「知らなんか? これな 今 うちで ごっつ売れてんねん。 涼し 動きやすい。 こら 言う事ないで おい! ハハハハッ。 ほれ!」

木之元「よう似合うてるやん!」

枡谷パッチ店

仕事場

(ミシンの音)

糸子「あ~ もう 今日 盆踊り あんのになあ。 あ~。」

枡谷「小原。」

糸子「あれ お疲れさんです。」

(ため息)

糸子「どないしたんですか?」

枡谷「あんなあ…。 ほんま すまんけど… 店 辞めへてくれへんか?」

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