あらすじ
春太郎(小泉孝太郎)と一緒だった奈津(栗山千明)のことを心配しつつ、家へ帰った糸子(尾野真千子)。善作(小林薫)に洋裁教室やミシンのことを話すが、激しい怒りを買ってしまう。だんじり祭の日、糸子は奈津を見つけて春太郎とのつきあいを注意し、大ゲンカになる。ある日、善作が井戸端にいると、パッチ屋の桝谷(トミーズ雅)がやって来た。桝谷は、糸子が将来有望だと褒め、洋服がこれから主流になるだろうと話す。
21回ネタバレ
パーラー・浪漫堂
勇「あそこに おるん 中村春太郎ちゃう?」
貞子「また こないだと ちゃう子 連れとう。 はあ~ あの若い子も あんなタラシに コロッと イカれてしもて アホやなあ。 どうせ すぐに 泣かされるに決まっとんのや。」
春太郎「ほな 僕 帰るわ。」
「おおきに ありがとうございます。」
客「かわいなあ。」
店員「毎度 おおきに!」
店員達「春太郎様 またのお越しを!」
糸子「奈津…。」
貞子「えっ 何や 知り合いか?」
糸子「同級生や うちの。 あかん 奈津! そんな男に ついていったら あかん!」
勇「落ち着いて 落ち着いて。」
糸子「何で? 悪い奴なんやろ? あれ。」
貞子「そやけどな ここで言うたら あかん。 今は あかん。 なあ! ここは そっとしとき。」
糸子「けど 大変や! 泣かされてしもうたら。 奈津!」
小原家
玄関前
糸子「ほんま あんな男に引っ掛かって どないすんのや。 アホが!」
<あれ? うち 人の心配してる場合ちゃうやん>
糸子「お父ちゃんに ミシンの話 せなあかんやん!」
小原呉服店
糸子「ただいま!」
ハル「お帰り! ちょいちょい ちょいちょい! ちょっと ちょっと!」
糸子「何?」
ハル「何や?」
糸子「何が?」
ハル「また お父ちゃんに 何か ややこしい話 あんのか?」
糸子「何で 分かんの?」
ハル「顔に書いちゃあら。 やめとき! 今日は お父ちゃん 機嫌悪いさかい。」
糸子「機嫌のええ時なんか ないやん!」
居間
糸子「お父ちゃん!」
善作「あかん!」
糸子「まだ 何も言うてへんやん。」
善作「言わんでも 分かるんじゃい。 お前が いきりたってる時は 大概 ロクでもないんじゃ。」
糸子「ミシン 買うてもらいたいんやけど。」
善作「アホか お前。 そんな金 うちの どこにあんねん? 」
糸子「お父ちゃんに ちゃう!」
善作「ああ?」
糸子「神戸のおばあちゃんにや。」
善作「何?」
糸子「今まで 黙っちょってんけど うち こないだ 木之元のおっちゃんとこに来てた 根岸先生のミシン教室 通てんねん。 そやけど そこでは ミシンの使い方しか 教えへん。 けど うち もっと 洋裁の勉強したいよって。」
糸子「そやけど… その店のミシン買わなあかんねん。 今日な たまたま 神戸のおばあちゃんに 心斎橋で会うてな その話 したら おばあちゃん『ミシン買うたっても ええ』て 言うてくれて。」
善作「何やて? 心斎橋? ミシン? 神戸? 親に隠れて 何 コソコソ やっとるんじゃ お前は!」
ハル「ちょっと やめとき。」
善作「わしを コケにしくさって! なめてるのか? このボケが!」
糸子「コケになんか してへん! うちは 洋裁 習いたいだけなんや。 洋裁 習うには…。」
子供部屋
(糸子の泣き声)
<お父ちゃんは 許してくれませんでした>
(泣き声)
<うちには もう… 夢も希望も ありません>
(泣き声)
町中
「ソーリャ ソーリャ!」
<けど 祭りは あります!>
(お囃子)
「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」
<今年も 祭りが やって来ました! 何があっても 祭りだけは きっちり来てくれる! ありがたいこっちゃなあ!>
「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」
<泰蔵にいちゃんは 去年で 大工方を引退しました。 おばちゃんも やっと 気絶せんで 済むようになりました>
糸子「うわ~!」
「うわ~!」
糸子「うわ~い!」
<だんじり 見とったら ちっこい事で悩んでるんが アホらしゅうなります>
♬~(お囃子)
八重子「ほれ お父ちゃん 来たがな。」
(太郎の泣き声)
奈津「ふん!」
糸子「ちょっと あんた これ 持っとって。」
糸子「奈津! 奈津! ちょっと待ち! あんたな あの歌舞伎役者 あかんで!」
奈津「はあ?」
糸子「こないだ 心斎橋で 会うちゃったやろ。 ごっつう ニヤケの しゃべり方 変な男!」
奈津「何やねん あんたに関係ないやろ。」
糸子「うちのおばあちゃんがな『あの男は タラシや。 あんたが 絶対 泣かされる』て 言うちゃってん。」
奈津「ふん! おばあちゃん? あんたんとこの おばあちゃんが 春太郎様の何を知ってんよ?」
糸子「おばあちゃんゆうても うちにおる おばあちゃんと ちゃうで。 うちにはな 神戸に もう一人 おばあちゃんが おってやな そっちは ごっつ金持ちで 有名人の事も よう知ってんやし。」
奈津「嘘つきいな! あんたに そんな 金持ちのおばあちゃんがおる訳ないやろ。」
糸子「ほんまや。 ほんまに いてんのや。 そのおばあちゃんがな『あの男は タラシやし』。」
奈津「黙り! うちに 偉そうな口 利きな! 何や? あんたなんか 仕事もせんと プラプラしてるくせに!」
糸子「何やて?」
奈津「うちは立派に女将修業してんねん。 あんたより 100倍 上等や!」
糸子「何?! もう一回 言うてみい!」
奈津「何回でも 言うたるわ! この出来損ないの すねかじりが!」
糸子「すねかじりと ちゃうわ!」
八重子「何してんの?!」
泰蔵「おい!」
奈津「アホ!」
糸子「お前かてアホや!」
泰蔵「おい やめ~!」
奈津「キャッ! あ… 嫌~!」
小原家
庭
(カラスの鳴き声)
♬~(お囃子)
枡谷「あの~ わし 糸子さんに 勤めてもらってた パッチ屋です。」
善作「ええ… ああ! こら どうも!」
枡谷「ほんま 糸ちゃんには すまん事しましたなあ。」
善作「いや。 不況ちゅうのは ほんまに えげつないもんですさかいなあ よう分かります。」
枡谷「どないなりますねんやろなあ この先。 わしが こんな事 言えた義理ちゃいまんねんけど 糸ちゃんみたいな娘が いてたら ごっつい羨ましいですわ。」
善作「いやいや。 実際 うち おったら たまりまへんで。 次から次に 変な事ば~っかり 言いだしよって…。」
枡谷「いやいや あれは 将来 有望です。」
善作「いや…。」
枡谷「ほんまでっせ。 わしかて これまで 何人も 職人 雇てきてまんのや。 あれは 女にしとくのは もったいない。 腕もある 頭もある 先も読める。 呉服屋のおやっさん捕まえて 何でっけど あの糸ちゃんが あんだけ 熱上げるんやから 洋服ちゅうんは ほんま これから 主流になるんやろと わしも このごろ 思てまんねん。」
枡谷「こない 商売が うまい事 いけへんわ 自分も 年 取ってくるわ ゆう時に あんな頼もしい子供が 目の前 ウロチョロされちゃったら そんなええ事 あらへん!」
善作「おおきに。 そない言うてもうて。」
枡谷「糸ちゃんが わしの娘やったら さっさと 店 任せますわ。 わしなんぞが やるより よっぽど もうかりまっせ。」
安岡家
(鳥の鳴き声)
居間
八重子「あっ あった! 中村春太郎!」
糸子「こ… これ! こいつ!」
玉枝「どれどれ 見せて。 はあ~ 男前やし!」
糸子「いや おばちゃん けど ごっつ タチ 悪そうやろ?」
玉枝「いや 悪いんは悪いかしらんけど 男前や! そらなあ 若いうちは こんなに ニカ~ッて笑われたら コロッと いってしまうわなあ。」
糸子「奈津に説教したってえな。 頼むわ おばちゃん。」
玉枝「うん そやなあ。 まあ おばちゃんも そない 偉そうに言えるほど ぎょうさん 男前 知っとる訳ちゃうけどな。」
♬~(ラジオ)
木之元電キ店
善作「毎度。」
木之元「おう 毎度! 何や?」
善作「あの・・・こないだ 来ちゃったやろ? ここに。」
木之元「はあ?」
善作「何や 偉そうな…。 女や! ミシンの! 教えに。」
木之元「うん?」
善作「そやさかい ミシンの先生や! 来ちゃったやろ?」
木之元「あっ 根岸先生の事か!」
善作「そや! あれ 今 心斎橋に いてんのか?」
木之元「そうや。 心斎橋のステンガーミシンで ミシンの講師 やってら。」
善作「う~ん…。」
木之元「それが どないしたんや?」
善作「お前 場所 分かるか?」
木之元「ああ 分かんで。 わし 週に1回は 心斎橋に出るさかい。 おもろいど~ 心斎橋は! 珍しい店 ようけあるしなあ!」
善作「わし 連れていってくれ。」
木之元「おう 行こ 行こ! 今度。」
善作「今度ちゃう! 明日や。」
木之元「明日?」
善作「明日 その… ステンガーミシンに 連れてってくれ。」
木之元「明日なあ。 あっ 明日は わし ちょっと あかんわ。」
善作「ええさかい 連れていけ!」
小原家
小原呉服店
善作「売りもんのために 仕入れた古着や。 今日中に 修繕やら 直し 全部 しとけ。」
糸子「へえ…。」
<次の日 うちに 山ほどの仕事を言いつけて お父ちゃんは珍しく…>
木之元「あっ あっ! おはようさん!」
糸子「おはようさん!」
木之元「ほな ほな! ほな ほな!」
<木之元のおっちゃんと どこかへ出かけていきました>
心斎橋
木之元「そこや。 そこ 入って キュキュッと行ったとこにな ごっつ うまい店 あんやし! ちょ 行こや!」
善作「あかん! ミシン屋が先じゃ。」
木之元「はあ~! はあ~!」
スティンガーミシン教室
木之元「おお ここや!」
善作「聞いてきてくれ。」
木之元「はっ?」
善作「先生 おるか 聞いてきてくれ。」
木之元「何で わしが?」
善作「ええさかい 聞いてきてくれや!」
木之元「はあ~! はあ~!」
木之元「いてんで。」
善作「ああ…。」
店員「いらっしゃいませ!」
根岸「こんにちは!」
善作「こんにちは。」