ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第29回「私を見て」【第5週】

あらすじ

無事、期日に納品を間に合わせた糸子(尾野真千子)。正月セールでそれを身に付けた店員を目にして感激する。糸子は手伝いの礼に訪れた安岡髪結い店で、奈津(栗山千明)に会い見合いの話を聞くが、奈津が片思いしている泰蔵(須賀貴匡)のことを口にして怒らせてしまう。一方、制服の後に新しい仕事が入るでもなく、小原呉服店はますます左前になっていく。しかも妹の静子(柳生みゆ)が、就職せず糸子を手伝いたいと言い始める。

29ネタバレ

心斎橋百貨店

応接室

「問題ありません。」

「ええ こっちも。」

「こっちも ありません。」

花村「はいはい 結構。 いやあ ほんまに よう 間に合わせてくれたねえ。 おおきに ご苦労さん。 小原さん 小原さん。」

糸子「え? あ どないですか 何か まずいとこ ありませんでしたか?」

花村「はい もう はよ帰って寝なさい。」

糸子「あ… おおきに。 はあ~!」

電車

<気ぃが抜けました。 それから うちは まず電車で寝て>

小原家

ハル「よかった よかった。」

ハル「糸子 そんなとこで寝んと 布団敷いて寝り。」

<居間で寝て…>

子供部屋

<やっと 布団にたどりついて 晩御飯も食べんと 次の朝まで こんこんと寝ました>

心斎橋百貨店

入口

糸子「あっ 来たで。」

「あけましておめでとうございます。 それでは 心斎橋百貨店 開店でございます!」

「あけましておめでとうございます。」

「いらっしゃいませ!」

糸子「え?」

「いらっしゃいませ! あけましておめでとうございます。」

糸子「おめでとうございます!」

「いらっしゃいませ! こちら 今年の冨久箱でございます。」

「今年の福をお持ち帰り下さいませ。」

「ありがとうございます。」

「いかがですか?」

エレベーターホール

「お待たせいたしました。 上へまいります。」

「ちょっと ちょっと!」

花村「はい。」

「あんた ここの人?」

花村「はい。」

「制服 変わったんやな。」

花村「あ はい。」

「えらい ええわ。」

花村「は… ありがとうございます!」

電車

静子「早く開けたいなあ。」

光子「うん。」

静子「何が入ってんやろなあ。」

清子「ころころちゅうたわ ころころって。」

光子「へえ~。 飴ちゃう?」

<正月が明けたら あの空っぽんなった店で 家族7人 どう食べていくか 考えんとあきません>

光子「ピカピカの真珠が入っちゃったら うち 欲しい!」

清子「あかん うちのや。」

光子「うちのや!」

清子「あかん!」

静子「2つに割ったら ええやん。」

清子「そんなん 嫌やんな。」

光子「うちかて 嫌や。」

<まっ 明日の事は 明日考えよか>

安岡家

居間

糸子「こんにちは!」

玉枝「はれ 糸ちゃん。 あけましておめでとうさん。」

糸子「おめでとうさん。 これ 心斎橋土産!」

玉枝「ああ おおきに!」

糸子「よいしょ。 ここ置いとくで。」

玉枝「はい。 百貨店の仕事 うまい事いって よかったな。」

糸子「うん 八重子さんにも勘助にも 世話なったわ。」

玉枝「糸ちゃんやで。」

糸子「あ!」

奈津「相変わらず騒がしな! あんた。」

道中

(雨の音)

糸子「何すんねん?」

奈津「はあ?」

糸子「あんた 今 投げたやろ?」

奈津「何なん? 仕事って。」

糸子「は?」

奈津「おばちゃん 言うちゃったやんか。 百貨店の仕事が どうとか。」

糸子「ああ 百貨店の制服の仕事や。」

奈津「うまい事いったんけ?」

糸子「まあな。」

奈津「は… しょうもな。」

糸子「うっさいなあ あんたこそ どないやねん。」

奈津「はあ?」

糸子「あの アホの歌舞伎役者 どないしとんねん。」

奈津「ふん。 あんた いつの話してんよ? とっくに切れたわ あんな どんくさい男。」

糸子「ほんまけ? よかったな そら。」

奈津「うちは もう 立派な吉田屋の 若女将やさかいな。 あとは そろそろ婿取りや。」

糸子「婿?」

奈津「見合いの口が ようさん来てて 忙しいねん。」

糸子「もう結婚け? はっや~! うち そんなまだ 考えた事もないわ。」

奈津「そら そやろ? 花は きれいな順に売れるんや。」

糸子「あんた 泰蔵にいちゃんみたいな人 婿さんに来たらええのにな。」

奈津「アホ! アホ アホ 不細工!」

心斎橋百貨店

入口

「いらっしゃいませ!」

<お父ちゃんが ミシンを買うたんには 制服をあんじょう 納めさえすれば うちが 百貨店に ごっつい見込まれて 洋裁の仕事も どんどん 回してもらえるんとちゃうか ちゅう計算が あったそうです。 けど 百貨店からは あれ以来 な~んも声も かかりません>

小原家

小原呉服店

<さて ここは 小原呉服店。 せやのに 反物の棚は 空っぽ。 代わりに ミシンが置いちゃって 小物が ちょろっと売ってます>

糸子「何屋やねん これは…。」

<とうとう 小原呉服店は 何の店かさえ よう分からんようになってまいました。 一個だけ言えんのは 何屋か分からんような店には お客は 来んちゅう事です。 このままやと 絶対 潰れてまうっちゅう事です>

静子「糸子姉ちゃん。」

糸子「ん?」

静子「今 ちょっと 話ええ? ちょっと。」

糸子「うん。」

<あ… そやけど ええ事もあります>

井戸

<あと 2か月で 静子が女学校を卒業します。 成績優秀な静子は ちゃんと 就職も決まったよって 賃金が入ってきます>

糸子「そういえば あんた いつから 働きにいくんや?」

静子「え?」

糸子「会社や。 4月からか?」

静子「その事なんやけどな。」

糸子「何や?」

静子「やっぱし 就職せんとこか思て。」

糸子「就職せえへんて? 何でや?」

静子「うちな 姉ちゃんの手伝いしたい。」

糸子「手伝い?」

静子「うん。 こないだも 百貨店の制服 みんなで 作ったん 楽しかったしな。 よそで ほかの人 手伝うより 姉ちゃんの手伝いしたいなあて。」

糸子「アホか! アホ!」

静子「え?」

糸子「あんた 何も分かってへんな はあ~! ああ~!」

静子「何で? 何で怒るん?」

<失敗や… 大失敗です。 妹らには 気苦労させたのうて お金の話は 一切してけえへんかった。 そら うちも アホやったけど この子も どんだけ のんきやねん>

糸子「うちは 苦しいんや! もう 呉服屋でものうなったし まだ 洋裁屋にもなられへん! このままやったら 家族全員 飢え死にや! せっぱ詰まってんねん!」

静子「ごめんなさい!」

糸子「四の五の言わんと 会社 働きにいき! それか どないしても うちの手伝いがしたい ちゅうんやったら 自分で外回って 洋裁の仕事 取ってき!」

静子「仕事?」

糸子「そうや。 姉ちゃんに仕事入って 初めて あんたも 手伝いができるんや!」

静子「はい。」

糸子「どこ行くねん?」

静子「仕事 取ってきます。」

糸子「はあ? ちょっと 待て! 静子!」

<まあ ええわ。 商売が どんだけ厳しいもんか あの子も 勉強せなならんのです>

<その小一時間後 なんと 静子が 仕事を取ってきました>

小原家
小原呉服店

糸子「パッチですか?」

「どっこも引き受けてくれんし もう何十軒 回ったか知らん。 けどな さっき断られとる時に ちょうど この お嬢ちゃんが 前通って そこの店主が お宅やったら パッチ縫える言うて 教えてくれたんや。」

糸子「縫えます 縫えます パッチやったら 何枚ですか?」

「きっかり100枚。」

糸子「ひ 100枚?!」

「明日の朝までに。 あ~ やっぱり無理かいな?」

糸子「いや やりましょう。 やります!」

「ええ ほんまか?」

糸子「ええ。」

善作「お前 何ちゅう仕事 引き受けてんじゃ! あのな 朝までに100枚て どう考えても無理な話やろ?」

糸子「しんどいけどな どないか なるかもしらん。 パッチやったら 手が覚えてるし。」

善作「お前な 仕事ちゅうのは 受けたらええちゅうもん ちゃうんやど! 聞け!」

糸子「けど お客さん 困ちゃったし。」

善作「困っちゃったし そやから何や? 仕事はな 人助けちゃうんじゃ。 お前が むちゃな仕事 引き受けて とばっちり食らうんは うちのもんなんじゃ! 1人では やれんちゅう事は こないだの お前 百貨店の仕事で よう分かったやろ! お前が仕事 選ばんと どないすんのじゃ!」

糸子「そやけど。」

善作「そやけど 何や?」

糸子「今の小原呉服店は 仕事選べる立場ちゃうよって。」

善作「何やと?」

糸子「むちゃな仕事かて 受けていかな 家族7人 食べていかれへん!」

善作「勝手にせえ! 分かった! お前の理屈は よう分かった! ふふ~ん! 結構な事ですね! ほな しまいまで お前 1人でやれ。 静子 手伝うな。」

静子「え?」

善作「糸子が勝手に引き受けた仕事や。 1人でやらせい。」

静子「けど うちは姉ちゃんの手伝い…。」

善作「やかましい!」

静子「あ!」

善作「やめときちゅうてんだ! ほら! よいしょ!」

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