あらすじ
糸子(尾野真千子)は「小原呉服店」で洋服作りを始め、妹の静子(柳生みゆ)が作ったチラシを配る。それを見た吉田屋の芸ぎ・駒子(宮嶋麻衣)が糸子の初めての客となる。別の店で作った洋服は失敗だったという駒子だが、糸子は体型や雰囲気に似合うデザインを考えて張り切る。しかし生地代を善作(小林薫)から借りるのに一苦労する。一方、奈津(栗山千明)は結婚を控え、糸子には絶対に洋服を作ってもらわないと言い張る。
31回ネタバレ
小原家
座敷
<最近 お父ちゃんは また 何を思てか 2階で びわの葉温灸ちゅうのを 始めました。 体の悪いとこに びわの葉を当てて 治すんやそうです>
善作「熱かったら『熱い』言うて下さいね。」
「ええ。 熱い。」
<一個だけ言えんのは 何屋か分からんような店には お客は来ん ちゅう事です。 このままやと 絶対 潰れてまうちゅう事です>
居間
糸子「わあ~! ええのん 出来たな。」
<この春から 印刷屋に勤めだした静子が うちに チラシを作るんを 勧めてくれました>
ハル「この絵 根岸先生に似てんな。」
静子「おばあちゃん 洋服の人 見たら みんな 根岸先生やな。」
善作「しかし 何やなあ。 洋裁店の名前が 小原呉服店って 格好悪いのう。」
糸子「しゃあないやん。」
善作「親のすね かじってんの バレバレや。」
糸子「かじってへんやん 親のすねなんか。 うちかて アッパッパやら前掛けやら こさえて 家に お金 入れてるやん…。」
善作「いいや かじってる。 大体 お前はな わしの事を 頼りにし過ぎてんねん。」
<お父ちゃんは このごろ ちょっと酒癖が 悪なりました>
善作「そんな かじってばっかりいたらな 歩かれんように なんねん。」
木之元電キ店
糸子「こんにちは!」
木之元「おう 毎度!」
糸子「うん。」
木之元「おう おお!」
糸子「おっちゃん チラシ 置かして。」
木之元「おお ええで。 ワンピース… スカート…。」
糸子「ラジオの上!」
木之元「そこへけ?」
糸子「うん。」
木之元家
「上手やなあ!」
糸子「なあ おばちゃんらも 洋服 作りに来てよ。」
「いや~ うちは あかんわ。 また このごろ 肥えたよって。」
糸子「肥えても かめへんて 大きい作るさかい。」
美代「そやけど 肥えちゃったら 値段 高なるちゅう事ちゃうけ?」
「そらそやな。 きれかて ようさん 要るし。」
糸子「そんなん おまけしとくやん。」
「ほんまけ!」
「え~?!」
「同じ値段にしてくれんけ?!」
吉田家
座敷
「いや~ ええ支度ができたやんか!」
「さすが 大将。 こら 相当 気張ったやろ。」
「そら 一人娘の結婚や 気張らななあ!」
克一「いやいや まあ そない 言うほどでも ないねんけどな。」
「婿さん どんな人なん?」
克一「う~ん まあ 素直な ええ子や。 ちっと頼んないとこ あんねんけどな 何せ この子が 面食いやよってな。」
「ほな 何や 男前なん?」
奈津「ふん。 まあまあ ちゃう?」
芸子達「ひゃ~ ほんまかいな!」
書斎
志津「ただいま。」
「お帰りなさい。」
奈津「ちょっと お母ちゃん 遅いわ。 また どこで道草 食うちゃったん。 今日は お客さん 5時には 来るんやで?」
志津「堪忍 堪忍。 ついでに 安岡さんとこで 髪 結うてもろちゃってん。 どない?」
奈津「何も変わってへんやん。」
志津「ほんで 何や こんなん くれたで。」
奈津「何 これ?」
志津「小原さんとこの嬢ちゃん 洋服 作んやて。」
克一「はあ? 今度は また あっこ 洋裁屋 始めよったんかいな。」
奈津「うちは 嫌やわ! 岸和田で 洋服 作んのなんか。 作るんやったら やっぱし 心斎橋の もっとええ店で作るわ。」
志津「けど 心斎橋より 安するんちゃうか?」
奈津「なんぼ安ても うちは 嫌!」
克一「奈津の同級生がな 洋裁屋 始めよったんやて。」
駒子「洋裁? どこで?」
「岸和田の店ですか?」
克一「小原呉服店 商店街にあるやろ。」
駒子「小原呉服店?」
「知らんなあ。」
志津「駒ちゃん。 髪結い屋の安岡さん 分かるやろ?」
駒子「ちょうど うち 明日 髪 結うてもらいに行きます。」
志津「あっこの若奥さんが くれたよって 詳しい事 聞いてみい。」
駒子「はあ そうします!」
小原家
小原呉服店
八重子「こんにちは~。」
糸子「あ 八重子さん。 いらっしゃい。」
八重子「糸ちゃん お客さん。」
糸子「あ いらっしゃい。 ああ すんません。 今 お父ちゃん ちょうど 集金に 出てて…。」
八重子「糸ちゃん ちゃうちゃう。 糸ちゃんの お客さんや。」
糸子「え? は…? ひょっとして 洋裁の…? はあ どうも! 初めまして! うちが 洋裁屋の小原糸子です!」
駒子「どうも…。」
糸子「エヘヘッ ああ 昨日 チラシ 置いたとこやさかい そない急に お客さん 来ると 思てへんかったさかいに。 あ どうぞ どうぞ! ええ!」
駒子「あのう…。」
糸子「え?」
駒子「ほな うちが 初めての客なんですか?」
糸子「あっ いえ 心配せんとって下さい。 腕は確かですよって。」
座敷
糸子「どれか ええなあ ゆうの ありますか?」
駒子「まあ… これ? あと これとか。」
糸子「これ… なるほど。」
駒子「そんなもんやな。」
糸子「ふ~ん…。」
<お客さんは パリッとした 格好ええ感じの服が 好きなようでした。 けど… 本人は 丸顔で 背ぇも そない大きない>
糸子「う~ん けど お宅やったら もっと こう ふわっとした感じのが 似合うんと ちゃいますか?」
駒子「え?」
糸子「襟も丸こうて… 生地も柔らこうて…。 ああ… これとか。」
駒子「はあ そんなは うちは 似合わへん。」
糸子「そうかなあ?」
駒子「絶対 似合わへん!」
糸子「けど お宅 どっちか言うたら 顔も おぼこい… いや かいらしよって こんなんより…。」
駒子「いや 分かってんねん。 うち 去年 作ったよって そんなん。」
糸子「え?」
駒子「せっかく 小遣い ためて 心斎橋まで行って 作ってもうたんに 何や 着てみたら ごっつい変やねん。」
糸子「どう?」
駒子「え?」
糸子「どう変やったん?」
駒子「う~ん 何や… 不細工に見えた。 顔色が悪て… 脚も短 見えた。」
糸子「そら 店が下手やったんや。」
駒子「下手?」
糸子「うん。 生地の選び方が 間違うてるから 顔色が 悪う見えんねん。 スカートの丈が 脚に合うてへんから 短 見えんねん。」
駒子「何かな 服は かいらしいのに うちは 不細工に見えんねん。 そやから うちみたいな不細工は こんな かいらしいの 着たら あかんて 言われてる気ぃして…。」
糸子「うちやったら もっと 似合うように作っちゃる。」
駒子「ほんま?!」
糸子「絶対 お宅 こうゆう かいらしいのが 似合うと思うで!」
駒子「そうかのう?」
糸子「うん!」
駒子「そやったら うれしいなあ! うち… ほんまは こうゆう かいらしいのが 好きやねん!」
糸子「そやろ?」
駒子「うん。」
<お客さんが ごっつい うれしそうに笑てくれたよって ほんまに 必ず 必ず 似合うように 作っちゃろと思いました>
小原呉服店
駒子「こんにちは。」
善作「あ~あ こんにちは。」
糸子「お父ちゃん。 お客さんや 洋裁の。」
善作「ああ こらまた どうも! ハハハ…。 何や珍しい 友達 連れてきたんかな 思うた。 お客さん。 おお~。」
駒子「ほな 楽しみにしてるよって。」
糸子「任しといて。」
糸子「気ぃ付けて。 お父ちゃん!」
善作「何や?」
糸子「生地代 貸して!」
善作「わしに 金は ない!」
糸子「嘘や! パッチ代 まだ残ってるやろ!」
善作「ないちゅうたら ない!」
糸子「あっ! う~ん。 な~ 頼むわ! 必ず返すさかい! うち チラシ 作ってしもたさかい ほんま 全然 ないねん! なっ お願い!」
善作「う~ん…。 なんぼやねん?」
糸子「2円… あ やっぱし 2円50銭!」
生地屋
店主「あとは これやな。」
糸子「う~ん…。」
店主「全部 同じように見えるけど ちょっとずつ ちゃうよってな。」
糸子「やっぱし じかに当ててみんと 分からへんなあ…。」
店主「そらそや。」
糸子「ちょっとずつ買うて 試す… 訳にもいかへんしな。 お客さん ここに 連れてこようかな…。」
店主「まあ それだけ あれなんやったら…。」
糸子「え?」
店主「見本 貸したろか?」
糸子「見本?」
店主「必ず返してや そんかわり。」
糸子「ああ… うん おおきに! 返す。 すぐ返すわ!」
吉田屋
玄関前
駒子「あっ。」
糸子「あ さっきは どうも。」
駒子「小原さんやんか。 どないしたん?」
糸子「あんな ちょっと 生地 顔に当ててみたいんやけど…。 そうかあ… おしろい 塗ってんかあ…。 あかんわ。 全然 分からへん。」
駒子「ああ どれがええか 見てくれてんの?」
糸子「そやねん。 生地 買いに行ったんやけどな やっぱし 当ててみて 選んだ方がええ 思て。」
駒子「ほしたら 明日の昼にでも うちが また 店 寄るわ。」
糸子「ほんま?! ええの?」
駒子「うん。」
糸子「おおきに 助かるわ! ほな また明日 待ってるよって!」
駒子「分かった。 さいなら!」
糸子「さいなら!」
書斎
2人「こんばんは~。」
志津「ああ あんたら。 堪忍やけど 今日は 帰って。」
2人「えっ?」
志津「大将が倒れたんや。」
駒子「大将が?!」
志津「今 お医者に 診てもろうてんやけど ちょっと 明日も どないなるか 分からへんわ。 とりあえず 今日は 帰って そっちのおかあさんに そない言うといて な。」
2人「分かりました。」
小原家
小原呉服店
糸子「えっ 奈津のお父ちゃんが?」
駒子「うん…。 今日も お座敷 入ってたん 無くなったしな。 やっぱし 結構 大ごとなんかもしれへんわ。」
糸子「奈津…。」
駒子「え?」