ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第33回「乙女の真心」【第6週】

あらすじ

善作(小林薫)は糸子(尾野真千子)の独立はまだ早いと、紳士服専門店へ修業に行かせる。意地の悪い店主(団時朗)や同僚に苦労する糸子だが、ひとり川本勝(駿河太郎)という職人だけは、愛想がよい。一方玉枝(濱田マリ)から、勘助(尾上寛之)の帰りが遅く、家に給料を入れなくなったと相談される。探るうちに糸子は、勘助がダンスホールに入り浸っていることを突き止める。目当ては美しい踊り子・サエ(黒谷友香)だった。

33ネタバレ

小原家

小原呉服店

<『金は要らん。 喜んでくれたら そんでええ』。 なかなか言えん事を言うて うちは 自分を立派やと思いました。 けど よう考えたら 何で それが なかなか言えん事かゆうたら…>

善作「で お前 結局 今日 何ぼ 集金してきたんや?」

糸子「えっ?」

善作「今日 何ぼ 集金したんや?」

糸子「堪忍…。」

善作「何や?」

糸子「もうてへんねん…。」

善作「へっ?!」

<そんなもん 商売と ちゃうからでした>

(ミシンの音)

(下駄の音)

善作「全部 返してもうた。 お前が商売すんのは 100年早い!」

糸子「はい…。」

善作「もういっぺん 外 働きに行け。 よその店で 一から修業してこい!」

紳士服・ロイヤル

玄関前

<そう言うて お父ちゃんが 見つけてきたんは… 隣町の紳士服の店でした>

写真屋「あっ そちらの方も どうぞ。 入って下さい。」

糸子「あ… はい。」

写真屋「じゃあ 撮りますよ。 はい!」

店内

店主「また どうぞ!」

<女物に比べて 男物の洋装は もう このころ かなり 世間に 広まってきてるよって この店も 結構 繁盛してます>

客「何や やっぱし 洋服っちゅうんは こそばいもんやのう。」

店主「まあ 着慣れんうちは そういうもんや。」

<この大将が まあ とにかく 威張っちゃって…>

糸子「お疲れさんです。」

店主「入れ直せ。」

糸子「薄かったですか?」

店主「何? 入れ直せ!」

糸子「けど… どない まずいんか 言うてもらわんと。」

店主「ええから 入れ直せ!」

作業場

糸子「お疲れさんです。」

<大将が ああなせいか 働いてる人らも 何や みんな 感じ悪うて…『新入りの しかも 女の職人となんぞ まともに 口きいて たまるか!』ちゅうふうでした けど 一人だけ…>

糸子「お疲れさんです。」

勝「おおきに。」

<やたらと 愛想のええ人が いてました 名前 何やったかな? この人 確か… む… 村田?>

職人「おい 川本!」

勝「はい。」

<あっ 川本や>

小原家

玄関前

物売り「おかず~ おかず~!」

居間

糸子「ただいま!」

ハル 玉枝「お帰り!」

糸子「おばちゃんやん。 いらっしゃい。」

玉枝「あ~ お邪魔してます。」

糸子「あ~ くたびれた~。」

玉枝「ご苦労やな。 なあ。」

糸子「あ~ アハハッ!」

ハル「あらら! ハハッ。」

糸子「あっ お父ちゃんは?」

ハル「飲みに出た。」

糸子「また? このごろ しょっちゅうやな。 体 大丈夫なんか? 大して 酒も強ないのに…。」

ハル「体なんぞより 金や! 心配なんは。」

糸子「うん。 そやな。」

玉枝「あ… ところでなあ 糸ちゃん。」

糸子「うん?」

玉枝「最近 勘助から 何か聞いてるけ?」

糸子「勘助から?」

玉枝「うん。」

糸子「何を?」

玉枝「いや まあ そやから『このごろ どないしてる?』とか。」

糸子「ううん。 そうゆうたら 最近 顔 見てへんな。」

玉枝「はあ… そうけ。」

糸子「うん。」

玉枝「どうもなあ… 変なとこでも 通てんちゃうかと思うねん。」

糸子「変なとこて?」

玉枝「うん それが分からへんやけどな。 何せ よう 出ていって 夜 遅うまで 帰ってけえへん。 で 一番おかしんはな 家に 賃金 入れよらへんやし。」

糸子「えっ?」

玉枝「で『何でや?』て 聞いたらな『菓子屋の主人が 賃金 くれんようになった』ちゅうねん。」

糸子「ええっ?」

ハル「玉枝さん それ おかしいで。」

玉枝「うん!」

糸子「えっ どういう事?」

ハル「いや 勘助さんな どっかで使てんやで。 使たって事 言われんもんやさかい『主人に もらわれへん』ちゅうたんやで。」

玉枝「そやねん。『そんなんな賃金くれへんやったら 働きに行きな』ちゅうても 毎日 仕事には ちゃんと行きよるしな。」

糸子「そら 通とんな どっか。」

玉枝「そやろう。」

糸子「どこやろ?」

玉枝「糸ちゃん… ちょこっと 聞き出してくれへんやろか?」

糸子「あ~ 何しとんねん? あいつ! おばちゃんに 心配かけよって。 うちも アホやけど あいつも 大概やな!」

ハル「ちょっと! 何や 何や? 何やね?」

糸子「ちょっと とっ捕まえてくるわ。」

玉枝「いやいや 糸ちゃん そんな慌てて行かんで ええがな。」

糸子「行ってくら!」

玉枝「お茶ぐらい…。」

カフェー

<最近 岸和田商店街にも カフェーが出来ました。 うちは 入った事なかったけど 勘助の連れの平吉が ここで働いてるっちゅうんを 聞いてました>

平吉「何や 小原やんけ。 珍しいのう。」

糸子「堪忍。 客ちゃうねん。 あんた このごろ 勘助に会うたか?」

平吉「勘助?」

糸子「うん。」

ダンスホール・カンカンホール

ホール

(談笑)

勘助「サエちゃん。」

サエ「はれ! いらっしゃい! はれ! こないだは どうも! また 来てくれたん?」

客「そうやで。」

サエ「うれしいわあ。 おおきに! あっ 勘助ちゃん 堪忍。 次の曲で。 なあ!」

糸子「お前 どういう…。」

勘助「堪忍。」

糸子「どういうこっちゃって…。」

勘助「堪忍! 全部 俺が悪い。 堪忍! ほんま 堪忍! そやけどな しゃあないねん。」

糸子「ああ?」

勘助「好きになってもうたんや。」

糸子「ほんまは 菓子屋から 賃金 もうてんねやろ? 全部 ここで使てしもたんか? お前 菓子屋のおっちゃん 悪者にして おばちゃんに 賃金 渡さんと こんなとこで 女と踊って 喜んじゃったんか。 帰るで。 帰るで!」

勘助「嫌や!」

糸子「ああ?」

勘助「『次 俺と踊る』て 言うてくれたんや。 今 帰ったら… 今 帰ったら 俺 サエちゃんと踊る資格 のうなる気ぃする。」

糸子「お前 どこまでアホやねん。 初めっから お前に 資格なんか ないんじゃ! お前は まず おっちゃんに 義理 果たす。 おばちゃんに孝行する。 それが 何より 先なんじゃ!」

勘助「そやけど そんな事 しちゃったらな。」

糸子「何や?」

勘助「サエちゃん ほかの男に とられてまう。」

(殴る音)

糸子「このボケナス! ふぬけんのも ええかげんにせえ!」

(悲鳴)

糸子「どの頭が そこまで腐っとうねん! 見せてみ! 見せてみ! ほら 見せてみ!」

フロア係「お客さん 困ります。 落ち着いて下さい。」

糸子「離せ!」

フロア係「ほかのお客さんに 迷惑かけますから。」

糸子「離せ!」

フロア係「お客さん お願いしますから。」

控え室

支配人「ふ~ん… 珍しいのう。 まあ うちで起こる けんかちゅうたら ほとんどが 痴話げんかや。 踊り子の取り合い。 客の取り合い。 旦那が入り浸ってんのを 嫁はんが連れ戻しに来る。『親孝行せんならん』か… 修身で習たのう。」

糸子「こいつが ここで踊るんは 100年早いですわ。」

支配人「ねえちゃん なかなか ええ性根しとるな。 うちで雇たろか?」

糸子「いや うちは もう 洋裁の職人やってますよって。」

支配人「洋裁? どこでよ?」

糸子「ロイヤルちゅう店です。」

<結局 あの 顔の怖い支配人は『金輪際 勘助を店に入れへん。 踊り子とも会わさへん』ちゅうて うちに約束してくれて。 勘助は ベ~ ベ~ 泣いちゃったけど 慰める気ぃにも なりませんでした>

道中

(勘助の泣き声)

泰蔵「おう…。 どないしたんや?」

糸子「なんも聞かんといちゃって。 そやけど… 1発 殴っといちゃって。」

(下駄の音)

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