あらすじ
踊り子のサエ(黒谷友香)の進言で、糸子(尾野真千子)は善作(小林薫)に、自分で洋裁の店を開きたいと頼む。しかし酒を飲み過ぎているフシがある善作は、もう一軒別な店を繁盛させたら考えてやってもよいと答え、糸子をいら立たせる。突然辞めると言いだした糸子に、紳士服店の店主(団時朗)は頭を抱えてしまう。一方入籍を控えた奈津(栗山千明)は玉枝(濱田マリ)のもとに髪を結いに行き、そのさりげない優しさにふれる。
38回ネタバレ
紳士服・ロイヤル
店内
<店は えらい事に なってました。 サエのドレスを見た 他の踊り子さん達が 一斉に 注文に やって来たんです>
試着室
「あ~ おおきに!」
<踊り子さんらのドレス作りは 順調に進んでました>
店内
店主「また どうぞ!」
糸子「おおきに!」
<やっと注文分が 半分ほど済んだ頃 最初の踊り子さんが 戻ってきました>
「こんにちは!」
糸子「あ 毎度!」
「こないだは おおきに!」
糸子「あれ? ドレス 何か まずい事ありました?」
「ううん ちゃうねん あんな あんた ドレスと 違て 普通の洋服も 作れんけ?」
糸子「あ そら!」
店主「もちろんや さあ どうぞどうぞ!」
「あんな ワンピースが欲しいんやけど。」
糸子「うん。 ほな ちょっと これで見て。」
<大将が 何をそない うれしそうに 計算してるんか うちは 見んでも分かりました。 この調子で 踊り子さんらが 次々 洋服を 注文してきたとしたら 儲けが どんぐらいになるかです。『こら オモチャは 儲かんで』そんなとこでしょうか>
小原家
居間
(歓声)
妹達「おおきに!」
サエ「いろいろ買うてきたよって 好きなん 選んで。」
妹達「うん!」
<サエは あれから 店やのうて うちに 直接 会いに来るようになりました>
小原呉服店
サエ「せやかて うち あの店主 嫌い。 あいつ 愛想はええけど 絶対 うちらの事 子ばかにしてるやろ。 糸ちゃん 嫌い ちゃうん?」
糸子「そら 嫌いは 嫌いやけどな。」
サエ「うちが 仕事 頼みたいんは 糸ちゃんやねん。 お金かて まるまる 糸ちゃんに払いたい。 一銭でも あいつに流れる思たら 腹立つ。」
糸子「そこまで嫌いか?」
サエ「なあ 糸ちゃんはよ 自分で店しいよ。」
糸子「うん。」
サエ「他の子らかて すぐ顧客なんで。 この店で すぐ出来らし。 ミシンあるし。」
糸子「うん。」
(足音)
糸子「あ お帰り。 お父ちゃん うちの店のお客さん。」
サエ「こんにちは お邪魔してます。」
善作「ああ こんにちは。」
糸子「そやけど あんた 春太郎は あかんで 春太郎は。」
サエ「また始まった。 糸ちゃん 誤解してるて あの人の事。 はら? シャンプーや。 これ 売ってんのん?」
糸子「うん このごろ それが よう売れるらしいて お父ちゃんが 置いてんやし。」
サエ「ちょうど ええわ。 切れてたんや。」
木之元電キ店
糸子「毎度!」
木之元「おう どないしたん。 仕事の帰りけ?」
糸子「どないしたん ちゃうやん。 今日 約束の日ぃやん。 忘れたん? おっちゃん。」
木之元「え?」
糸子「電気扇。」
木之元「おう! そやった そやった!」
糸子「これ 楽しみに 帰ってきたのに 忘れとんといてよ。」
木之元「すまんすまん これ 半値や ちゅうちゃったけど 4がけで ええわ。」
糸子「え ほんま? やった! おおきに おっちゃん!」
木之元「そのかわり 一夏 ほとんど 使いっぱなしやったさかいな。」
<木之元のおっちゃんから 電気扇の見本を 安う売ってもらいました。 うちなりに 家族を 支えてるっちゅう証しです。>
小原家
居間
善作「はあ~! 何や 気ぃ悪いのう。 あっちゃ 向いとけ。」
台所
<その夜 うちは お父ちゃんに 話がありました>
糸子「よっしゃ! ん?」
ハル「言っとくけどな。 うちの とっくりは それ入れて あと4個しか残ってへんさかいな。 割れたら 困る。 割れんように 話しいや。」
糸子「そら分からん。」
ハル「糸子…。」
居間
善作「この煮つけ 何や辛いな。」
糸子「お父ちゃん。」
善作「あん?」
糸子「話あんねん。 仕事の事なんやけど。 あんな 今の洋服屋で うち かなり お客つかめてるんや。」
善作「ふ~ん。」
糸子「うちに 客がついたよって 洋服屋 ごっつ 儲かってる。 大将かて 毎日 そろばん はじいちゃ ホクホクしてる。 けど うちが ほんまに 繁盛させたいんは うちの店や。 うちの 小原…。 小原洋裁店や。 今のドレスの仕事が 一段落したら ロイヤル 辞めさしてほしい。 ほんで もう一回 ここで 洋裁屋 始めさしてほしい。」
善作「小原洋裁店…。 お前 何 勝手に 看板 変えてんねん。 うちはな 小原呉服店じゃ。」
糸子「そやけど もう 呉服も置いてへん。」
善作「あかん!」
糸子「え?」
善作「お前 ちょっと 客が ついたくらいで 何 調子 乗ってんねん。 ええか? わしは お前に 商売の 勉強してこいちゅうたはずや。 今の店で お前がやってる事は 相も変わらん。 ただの職人ごっこやないけ。 わしは お前に『商売人として 成長せえ』ちゅうたはずや。」
糸子「もう成長した!」
善作「してない。」
糸子「ほんなら うちが どうなったら認めてくれんの? うちは 今の洋服屋を 十分 繁盛さしてる。 それを認めてもらえへんやったら どないしたら認めてくれんのか うちは 分からへん。」
善作「せやなあ! もう一軒やなあ。」
糸子「はあ?」
善作「もう一軒 別の店 繁盛させたら 認めてやらん事もない! ハハハ! うん!」
<くそ~! この酔っ払いが! そいでも お父ちゃんが そない言うかぎり うちは 従うしかありません>
紳士服・ロイヤル
店内
店主「辞める?!」
糸子「はあ。」
店主「『はあ』やないよ! 何でやねん?! 注文 どないすんねん?」
糸子「いや ドレスは とりあえず 最後の お客さんまでやらしてもらいます。」
店主「洋服は? 洋服の注文も お前 調子よう 取っちゃあったやないか? あれ どないすんねん?」
糸子「それは お客さんに 謝るしかないです。」
店主「謝るって お前… 謝って済む事と 違うど。 どういうこっちゃ!」
糸子「すいません!」
店主「あ そうか 分かっと。 ちょっと 客ついたもんやさかい 調子乗って 独立け。」
糸子「ちゃいます。」
店主「嘘つけ!」
糸子「ちゃいます! ほんまは そのつもりやったけど。」
店主「何や。」
糸子「父に言われて 他の店 繁盛させなあかんのです。」
店主「何じゃそれ? 何のために?」
糸子「うちが聞きたいです。」
安岡家
居間
(小鳥の鳴き声)
奈津「こんにちは! こんにちは!」
玉枝「あ 奈ちゃん。」
奈津「丸髷に結うて。 明日 入籍すんやし。」
玉枝「ああ そら おめでとうさん。」
奈津「何も めでたないわ。」
玉枝「え?」
奈津「喪中やさかい 式も挙げられへんやで。 お父ちゃん せっかく 高い花嫁衣裳 貼り込んじゃったくせに 自分で パーにしてしまいよった。 アホらしい。」
玉枝「そら 堪忍な。」
奈津「ええけど 別に。」
玉枝「大変やったなあ お父ちゃん。」
奈津「こないだ。」
玉枝「ん?」
奈津「おばちゃんとこの 上の おにいちゃんにも おんなじ事 言われた。」
玉枝「あ 泰蔵か?」
奈津「うん。 あの人 うちの名前 知っちゃあ てんな。 びっくりしたわ。」
玉枝「いや そら知ってるやろ。 吉田屋の奈っちゃんゆうたら ここいらで有名な別嬪さんやんか。 なあ こないして髪下ろしたら 奈っちゃん まだ 女学生みたいやな。」
奈津「おばちゃん。」
玉枝「ん?」
奈津「うちな ちびの頃。 あの おにいちゃんの事…。 好きやってん。」
玉枝「あ… そうか。」
奈津「うん。」
(泣き声)
奈津「ずっとな…。 好きやってん。」
(泣き声)
(八重子と子供達の声)
玉枝「ちょっと あんた。 散歩しちょいで。」
八重子「はあ? けど 今 散歩から 帰ってきたばかりやさかい。」
玉枝「ええから! もう一回 行っちょいで! ちょ… 散歩 行っちょいで。」
(泣き声)
玉枝「泣き! 奈っちゃん。」
(泣き声)