ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第3回「あこがれ」【第1週】

あらすじ

吉田屋で客の同情を買って、まんまと集金に成功した糸子(二宮星)。父・善作(小林薫)に喜ばれて有頂天になるが、善作は女である糸子に商売を仕込む気はなかった。正月、糸子は妹たちとともに母・千代(麻生祐未)の実家へ挨拶に行く。千代は善作に代わり、祖父・清三郎(宝田明)に借金を申し込む。一方、糸子はいとこに誘われ、近所の洋館での外国人の舞踏会をのぞく。夢のように美しいドレスに我を忘れてみとれる糸子だった。

3ネタバレ

小原家

居間

善作「吉田屋ちゅう料理屋や。 あっこの親父は 手ごわいど。 お前 よっぽど ここを使ていけよ。」

糸子「うん… 分かった。」

吉田屋

勝手口

糸子「おっちゃ~ん!」

奈津「何 言うてんねん。 子供の使いやんか。」

糸子「おっちゃん! うわっ!」

奈津「うっさい うっさい。」

玄関

「今日は 何 うまいもん 食わしてもらおうかの?」

「そろそろ まったけが 出る頃ちゃうけ?」

「ああ ええのう!」

「おっ? 何や 嬢ちゃん どないしたんや?」

「はよ 帰らな 家の人 心配するぞ。」

糸子「へえ お金 払てもらえるの 待ってますねん。」

「何や 集金け。」

「ちっさい子が 御苦労なこっちゃのう。」

糸子「お金 持って帰らんと うち 今晩 御飯 抜きですねん!」

「大将 払いよらへんのかいな?」

糸子「『今日は ないさかい また明日 おいで』って言われましてん。」

「かなわんな おっさん! もうけとるくせしやがって もう。」

「おい 大将!」

吉田克一「ああ いらっしゃいませ! お待ちしとりました。 さあ どうぞ どうぞ。」

「大将! 何ぼか知らんけど 払ちゃりや。」

克一「えっ? あ… へえ。 何や さっき来た子やないか。 何や おっちゃん 『また 明日 払う』ちゅうたやろ?」

「今日 払うちゃらな 家で 飯 抜かれるらしいで。」

克一「まあ とにかく 中へ どうぞ どうぞ!」

「大将! ほんまに払ちゃらな あかんで。 こんな小さい子 かわいそうやし。」

克一「ああ 分かってます。 なあ! あんたな 裏 回りや。 さあ どうぞ どうぞ! さあ さあ さあ! さあ どうぞ どうぞ! ハハハッ。 そんなとこ おられたら 商売の 邪魔になって かなわんな。 ふん! さあ どうぞ お上がり下さい。」

糸子「へえ 確かに。」

志津「あんた おとうちゃんより よっぽど商売上手やな。」

糸子「おおきに!」

「おねえさ~ん こんばんは~!」

「こんばんは!」

志津「こんばんは! もう 遅いやん。 さっきから 村上さんら えらい 首 長うして お待ちやで。 はい! はよ帰り!」

道中

糸子「お父ちゃ~ん! 払てもろたで~!」

善作「おう ほんまけ?!」

糸子「払てもろた!」

善作「でかした 糸子! ようやったで!」

糸子「うん! うち ようやった!」

善作「おう! ハハハハッ。 何や お前 まだ 赤ん坊のつもりかよ。 もう こんな大きいなってんのに。 ああ キュッ キュッ キュッや! キュッ キュッ キュッ キュッ キュッ キュッ キュッやで! ハハハ!」

♬~(『船頭小唄』)

♬『おれは河原の』

善作「どや? うまいか?」

糸子「うん!」

善作「ほんま お前が男の子やったら どんだけ おもろかったやろのう。」

糸子「えっ?」

善作「お前が 娘やのうて 息子やったら そらもう 着物の事も 商売の事も わしが 一から十まで きっちり 仕込んじゃったでえ。 お前ぐらいの 頭と根性があったら あっちゅう間に いっぱしの商売人に なれる。 ほんなら お前 わしと2人で 小原呉服店を 岸和田一の店に しちゃろやないかい。 ばんばん 上物 仕入れてな ぱっぱか 売って がっちり 集金。 おもろかったやろなあ!」

糸子「女かて できるで!」

善作「えっ?」

糸子「女かて 商売人になれる!」

善作「アホぬかせ。」

糸子「アホ言うてへん!」

善作「女はな ええところ 嫁に行って 婿はんに あんじょう仕える。 それが一番じゃい!」

糸子「何でやねん? 何で 女は そんな おもろないねん?」

善作「行くで。」

松坂家

(汽笛)

玄関

糸子「明けまして おめでとうございます~!」

松坂清三郎「おう ハハッ! 来ましたか ごんた娘が!」

糸子「来たで おじいちゃん!」

松坂貞子「明けまして おめでとうございます~。」

糸子「おめでとうございます おばあちゃん!」

3人「明けまして おめでとうございま~す!」

<お母ちゃん方のおじいちゃんの 家は 神戸にあります。 おじいちゃんの家は ごっつい 大きくて おせちも ごっつい豪華です>

ダイニング

糸子「その栗 うちのやで うちは 姉ちゃんやさかい 1個 多く食べても ええんやで。」

清三郎「どうや? 糸子。 おいしいか?」

糸子「うん おいしい!」

清三郎「そうか。」

糸子「こら 静子! その栗 うちのや 言うてるやん!」

静子「そやかて うち 栗 食べてへん。」

糸子「こら! うちのやて! うちのて 言うてるやろ! うちのやて! あかん!」

清三郎「こら! こらこらこら! けんか しなや。」

リビング

清三郎「ちゃんと 食べさしたっとんか?」

千代「食べさしてます。」

清三郎「あない 『栗 栗』言うとうやないか。」

貞子「やっぱし かいらしいなあ 女の子は。 うちにおる孫は 男ばっかしやろ しょうもないねん。 着物でも 何でも そっけのうて。 はい! あんたも 甘いもん お食べ。」

千代「あ~ チョコレート!」

貞子「あんた 好きやったやろ。」

千代「うわ~ うれしい!」

貞子「そういうたら こないだ ヨシオちゃん 来とったんやで ヨシオちゃん。」

清三郎「(せきばらい) それで… 今度は なんぼ 貸してほしいねん?」

千代「えっ? あ…。 あの… 30円ばかし。」

清三郎「うん?」

千代「月末に 問屋の支払いが あるさかい どうにか お父様に… 都合つけてもろたら 助かるんやけど…。」

清三郎「う~ん…。」

貞子「そや 千代ちゃん。 ココアって 知っとう?」

千代「ああ。」

貞子「入れてあげよか!」

松坂正一「お母さん。」

清三郎「う~ん… そもそもや 何で お前が 毎回 借りに来んねん? 金の事や 善作君が来るのが 筋やろうが?」

千代「あ~ あの… どうしても… 商売の方が忙しいて。」

清三郎「はっ! 繁盛も してないのに どない忙しいねん?」

千代「う~ん?」

清三郎「う~んや ないがな。 お前が そんな ぼけ~っと しとるから 旦那が つけあがるんやないか。」

千代「はあ…。」

清三郎「ほんまに あの善作の かい性なしが! そもそも わしはな お前と あの男の結婚なんぞ 許した覚えは ないんやぞ!」

貞子「ハハッ。」

清三郎「何や?」

貞子「嫌やわ おとうさん 今更 そんな。」

清三郎「今更も へったくれも ない! わしは 断じて反対やったんや。 あんな 貧相な呉服屋の番頭に 誰が すき好んで うちの大事な娘 くれてやんねん。 あんな 駆け落ちみたいな まね せんかったら お前も こんな金の苦労せんで 済んだやろが。 うん?」

糸子「駆け落ちって 何?」

清三郎「あっ!」

貞子「あれ! 何もない。 何もないよ。 フフフッ。」

清三郎「おい どうだ? おなかいっぱい お食べになりましたか?」

糸子「食べた! おいしかった!」

清三郎「そうか! ハハハハッ。」

正一「そうか そうか。 あ…。 糸。 おい 勇!」

廊下

松坂 勇「はい!」

正一「ああ 糸子にな あの 何か 面白いもん 見せたり。」

応接室

勇「これは タイタニック号。 イギリスの 豪華客船やったんやけど 氷山に ぶつかって 沈没してしもてん。」

糸子「ふ~ん…。」

勇「なあ 糸ちゃん。 日本て どこか知っとう? これやで!」

糸子「あっ! 何 これ! きれえ! きれえな~! ああ…。 触っても ええ?」

勇「ええよ。」

糸子「ほんま!」

勇「あ… ほんまは ママに聞かんと あかんかもしれへんけど。」

糸子「ウワ~きれいな着物やな!」

勇「そんなんが 好きなん? ついといで。 もっとええもん 見せたるわ。」

糸子「要らん! うち これがええ。」

勇「ええから ついといで。」

洋館

糸子「なあ どこ行くん? なあ!」

廊下

勇「シ~ッ!」

糸子「うち 帰るで。 何?」

ホール

糸子「うわ~!」

糸子「ああ…。」

糸子「わっ 見っかった!」

(手拍子)

勇「糸ちゃん?!」

「Oh, I guess we habe another child.」

(手拍子)

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