あらすじ
ある日、糸子(尾野真千子)が仕事から帰ると、千代(麻生祐未)が妙に浮かれている。意外にも紳士服店の職人・勝(駿河太郎)が訪ねてきていたのだ。不思議がる糸子に勝は「顔を見にきた」と告げ、なぜか千代が照れる。一方ヤス子(中村美律子)が洋服の出来に満足し、新たな客を連れて店に来る。糸子の生地選びと立体裁断のサービスは、たちまち評判になり、客は次々に増え、店の縫い子たちまでが洋服を作りたがるようになる。
40回ネタバレ
小原家
玄関前
千代「はあ…。」
糸子「さっぶい!」
「お帰り 糸ちゃん 寒なったなあ。」
糸子「なあ 今日から 急に寒いなあ。」
「ほんまやなあ。」
千代「糸子 糸子!」
糸子「どないしたん お母ちゃん?」
千代「あんた 男の人が訪ねてきてんで。」
糸子「はあ? あっ 山口さん?」
千代「山口さんって 誰や?!」
糸子「パッチ屋の人や 昔も 一回 うち 来たやろ。」
回想
山口「よう!」
回想終了
千代「ちゃう ちゃう あの人ちゃう。」
糸子「ほな 誰や?」
千代「あんた… そういう人なんか?」
糸子「はあ…。」
千代「いや~!」
糸子「山口さん時も お母ちゃん 一人で喜んじゃったな。 残念やけどな 万が一にも お母ちゃんが思てるような人 ちゃうで。」
千代「もう! ウフフフフフ…。」
糸子「え~?」
小原呉服店
糸子「川本さん?!」
勝「おう。」
糸子「どないしたんですか?」
勝「ん? まあ 顔 見に来ただけや。」
千代「え~っ?!」
糸子「どないしたん お母ちゃん。 よう うち 分かりましたね。」
勝「うん。 そら 岸和田商店街で 小原呉服店ちゅうたら 一軒しか ないさかい。」
糸子「近くで 何か用事でも あったんですか?」
勝「そやから 顔 見に来ただけや。」
千代「ひゃ~! フフフフフ…。」
糸子「どないしたん お母ちゃん。」
カフェ・太鼓
店内
(カラスの鳴き声)
♬~(『私の青空』)
糸子「残念やけどなあ。」
平助「え?」
糸子「あんたが思てるほど おもろい話ちゃうで。」
平助「何が?」
糸子「この人はな うちが 前 勤めちゃあった店の 兄弟子や。」
勝「こんちは。」
糸子「ぜんざい 頂戴。 ぜんざいや。」
平助「あ ぜんざい ぜんざいな。」
勝「僕 コーヒー。」
平助「ぜんざいと コーヒー。 ぜんざいと コーヒー。」
糸子「そやけど ほんまに 何しに来たんですか?」
勝「ああ そやから 顔 見に来たんや。」
糸子「誰の?」
勝「あんたの。」
糸子「何で?」
勝「身に来たかったからや。」
糸子「ふ~ん。」
勝「ああ あれから うちの店な。」
糸子「あ~ はい。」
勝「大将が あんたの代わりに 新しい婦人服の洋裁師 入れよったわ。」
糸子「へえ?」
勝「あんたが受けた洋服の注文 全部 そいつに やらせてんで。」
糸子「何や ほんな簡単に 次の人 見つかんのやったら うちかて あんな怒られる筋合い なかったのになあ。」
勝「そやけど わしが見るかぎり あいつ あんたほどの腕 ないわ。」
糸子「え?」
勝「まあ きっちり仕事するさかい 大将は 気に入ってるみたいやけどな お客らの顔が 全然ちゃう。 やっぱし あんたが相手してる時の方が ず~っと うれしそうやったし 楽しそうやったで。」
糸子「はあ…。」
勝「うん…。」
糸子「フフフ…。 エヘヘ… ふ~ん。」
玄関前
勝「ほなな。」
糸子「ごちそうさんでした!」
勝「また…。 ちょっくちょく 顔 見に来るよって。」
糸子「何で?」
小原家
居間
(鈴の音)
ハル「ありがとうございました。」
(鈴の音)
ハル「せやけど 今度の店 あんた ぎょうさん 賃金くれる。 ありがたいこっちゃな!」
糸子「うん。」
ハル「セーラー服て ほんな堅い商売なんかなあ。 うちも セーラー服 やろか。」
静子「姉ちゃん?!」
糸子「えっ…?」
静子「大丈夫かいな…。」
糸子「う~ん。」
静子「昨日 何時まで かかったん?」
糸子「う~ん 2時半。」
静子「無理し過ぎや… 体 壊すで?」
糸子「う~ん うっさいなあ! ほんな事 言うんやったら あんたかて もうちょっと…。」
静子「『手伝うたら どうや』って 言いたいん?」
糸子「う~ん けど あかん。 もう それより 眠い…。 やっぱり もうちょっと寝るわ。 あんた 出る時 起こしてな。」
末松商店
作業場
縫い子「せやがな そらあ 悲しいなあ。」
<確かに 無理が 体に たたってきました。 そやけど ここが ふんばりどころなんや。 小原洋裁店を開くまで 負ける訳には いけへん>
縫い子「あ コロッケ もう一個 おくれ。」
縫い子「はい。 これか?」
店主「小原… 小原? おい! 小原?!」
糸子「はい!」
店主「小原 ちょっと来い。」
糸子「はあ はい…。」
店内
店内「はよ来い。」
ヤス子「ああ おった そや あの人や。」
糸子「ああ。」
ヤス子「こないだ おおきにな。」
糸子「あ~ こちらこそ。 あれ!」
ヤス子「そやねん 見て~。 でけてん!」
糸子「うまい事 出来ましたねえ! いや~ 似合うてるわあ!」
ヤス子「おおきに。 ほんでな もう うれしいて うちのご近所さんらに 見したら この人らも やっぱし 洋服 縫いたいて ず~っと思ちゃあったんやてえ。」
「そやねん。 けどな 洋服ちゅうたら 着物と違うて 難しやろ? 型紙やら 何やら 要るしなあ? そやけど お宅 生地 切るところまで してくれんやて?」
大山「『それやったら うちらでも 縫えるんちゃうか』ちゅうてなあ。」
糸子「任しといて下さい。」
2人「ほんまけ?!」
糸子「はい。 生地 選んでもうたら うちが 裁断しますよって あとは 縫うたら こんなん 出来ます。」
ヤス子「こんなん!」
2人「いや~ うれしい!」
ヤス子「ほな 早速 生地 選んでもらいな。 この人 それも上手やよって。 ほんまに よう似合うんを『これです!』ちゅうて 選んでくれるで。」
2人「いや~ うれしい~!」
「ほな 選ぼうか。」
「どんなんが ええんやろ?」
糸子「こっち 生地 あるし。 こっちにも あるよって。」
「いや~ すてきやなあ!」
縫い子「何?」
縫い子「よう 分からへんねけどな 何や 小原さん 洋服の裁断 やっちゃるみたいやで。」
縫い子「洋服け?」
縫い子「うん。」
糸子「いや…。」
ヤス子「ああ~!」
糸子「ああ やっぱし お宅 こっちです。」
大山「いや~ ほんまや カンダさん。 そっちやで。 うん!」
「そうかあ?」
ヤス子「そっちやで。 顔が映えるわ。」
「ほんまけ?」
糸子「うん。」
店主「ほれ! 休憩時間 過ぎてるで!」
一同「え~?」
店主「仕事 仕事!」
「おおきに!」
店主「はい ありがとうございます。」
糸子「おおきに!」
「おおきにな!」
糸子「おおきに!」
「おおきに。 出来たら 着てくるわ。」
糸子「はい! 見せて下さい。 おおきに!」
ヤス子「また 来るわな。」
糸子「ええ!」
「楽しみやわ~!」
「なかなか やるわな あの子。」
糸子「おおきに!」
(柱時計の時報)
店主「そやけど…。」
糸子「え?」
店主「あんた あんな腕 持っちゃあったんけ。」
糸子「はあ…。 まあ 一応 洋裁師ですさかい。」
店主「まあ 客も あんだけ 喜んじゃったちゅう事は ちょっとは ええおまけに なったかもしれんけど…。 そやけど あんなんで 簡単に繁盛する 思うなよ。」
糸子「はあ。」
店主「商売ちゅうのは そない…。 何や?!」
縫い子「もう定時ですよって。」
店主「お おう。 はよ帰りんかいな。」
縫い子「ちょっと ええ? 小原さん!」
糸子「はい?」
縫い子「うちにも あれ やって。」
糸子「何?」
縫い子「洋服 縫いたいんやし うちも!」
縫い子「うちも!」
縫い子「うちも ずっと 縫いたい 思ちゃあったんやし!」
縫い子「なあ 大将。 生地代 払うよってに ええやろ?」
店主「まあ… そら ええけど。」
一同「わあ おおきに 大将!」
縫い子「決まりや! な 頼んだで! 頼むで!」
縫い子「小原さん!」
<その次の日ぃから>
作業場
(柱時計の時報)
縫い子「10時や!」
縫い子「10時や!」
縫い子「10時や!」
<一日3回ある休憩の時間に 縫い子のおばちゃん達が 一斉に うちのところへ 集まってきて 順番に 生地を 買うていくように なりました>
縫い子「小原さん!」
縫い子「小原さん!」
糸子「堪忍。 今日は 堪忍 ほんま眠たいねん。 寝かして…。」
縫い子「そやった… あんた 夜中も 仕事してんやったなあ。」
縫い子「そら こんな 一人で働かすん 悪いわなあ。」
縫い子「そうやなあ。」
縫い子「小原さんの分 うちらが手分けして やっちゃあったら どやろ?」
縫い子「そやそや! そないしよ!」
縫い子「やっちゃる! やったるで!」
糸子「ほんま?」
縫い子「やっちゃる。 やっちゃるよ。」
糸子「おおきに…。」
縫い子「やっちゃるでえ。」
縫い子「うん やっちゃるよ。」
糸子「おおきに…。」
縫い子「ありゃ~ あ~ん ああ…。」
縫い子「あっ! シ~ッ…。」
<おかげで うちは やっと ゆっくり寝れるようになって その分 ますます 店の方を 頑張れるように なりました>
店内
糸子「はい。」
縫い子「おおきに!」
縫い子「良かったなあ! 早速 うち帰って 縫いやあ!」
縫い子「うん。 もちのろんや。」
店主「はいはい 仕事仕事。」
縫い子「は~い。」
糸子「やれやれ…。」
3人「こんにちは!」
糸子「こんにちは いらっしゃい!」
2人「どない~?!」
糸子「いや~ うまい事 出来ましたねえ。」
3人「ご近所さん 連れてきてん!」
ご近所さん「こんにちは~1」
糸子「どうも!」
「選んじゃって。」
「選んでもらいな。」
<おばちゃん ちゅうんは すごい人らで。 いっぺん気に入ったら どんどん 横に広げてってくれる>
糸子「いらっしゃい!」
<…と思ちゃあったら どっこい 横だけやのうて>
縫い子「これな うちの娘や。」
糸子「こんにちは。 どうも。」
「どうも。」
糸子「こんにちは。」
「こんにちは。」
縫い子「この子もな 洋服 縫いたいんやて。」
糸子「うん。」
縫い子「頼むわ 小原さん。」
<なんと おばちゃんは 縦にも強い>
縫い子「うちの お姉ちゃん。 ほんで これが めい。」
糸子「どうも…。」
<縦 縦 縦>
「ご近所さん 連れてきて~ん! はよ おいで!」
<横 横 横。 つながって つながって あっちゅう間に 店は お客さんで いっぱいになりました>
「どんだけ かかる?」
店主「まあ 半時か1時間。」
「はあ けど しゃあないなあ。」
店主「おおきに。」
「ちょっと すんません。 ほいほい。」