あらすじ
糸子(尾野真千子)が家に戻り、末松商店は連日客でいっぱい、結局今までどおりの生活が続く。しかし、ある日の夕方、善作(小林薫)は突然、吉田屋で盛大な宴会を催す。若おかみの奈津(栗山千明)は泰蔵(須賀貴匡)が気になり座敷をのぞくが、内容を知ることはできなかった。その翌日、善作は店の貼り紙をはがし、小原呉服店の看板を見上げる。そして、いつもどおり仕事から戻ってきた糸子を、あぜんとさせる事態が待っていた。
42回ネタバレ
末松商店
<年が明けて あっちゅう間に 2か月が たちました。 結局 うちの生活は 何も変わってません>
店内
客「初めて見たな。」
<相変わらず 店には 毎日 ごっつい お客さんが 押し寄せてきて それに追われてる間に 一日が終わります>
糸子「すんません。 ちょっと 待っといて下さい。」
客「はれ。 お昼? そら こんな忙しかったら 食べる間ないわなあ。」
(柱時計の時報)
糸子「すんません。 どんなん しまひょ?」
客「いや あの… これやねんけどなあ。 どうやろう?」
糸子「うん… うん うん。 ええわな!」
小原家
座敷
弟子♬『さす腕には 魔縁を祓い 納むる手には』
善作「はあ… そやから… 稽古は 今日が最後ちゅう事で…。」
弟子「分かった!」
善作「すませんなあ。 勝手 言うて。」
弟子「まあ けど そら しゃあない。 気にしな!」
善作「はあ。」
弟子「ほんまは わしも 弟子が わし一人になってもた時から『こら わしは やめられへんなあ』ちゅうて 困ってたんやし。」
善作「そうでしたか…。」
弟子「謡やめて 何か やるんか?」
善作「いや もう… きれえ さっぱり… 千秋楽や。」
木岡履物店
物売り「石焼き芋~!」
美代「あんた! また 飲みに行くん ちゃうやろな?」
木岡「いや 今日はな 今日は 行かなあかんやて。」
美代「ええかげんにしいや! 毎晩 毎晩!」
木岡「きょ 今日だけはな 今日だけは 行かせてくれ。 善ちゃんがな… 善ちゃんのな その善ちゃんがな…。」
美代「善ちゃんが 何や? 善ちゃんが どないしたんや? 言うてみ!」
木岡「ちょ ちょ… ちょっと…。」
木之元電キ店
木岡「毎度!」
木之元「おう 毎度!」
木岡「いや~『鬼も頼めば 人食わず』。」
木之元「はあ?」
木岡「うちの おかあちゃんにな 今晩の訳 話したら『ほら 行ってこい!』ちゅうて 小遣いまで くれよった。」
木之元「ほう~!」
木岡「『鬼の目ぇにも涙』ちゅうんは このこっちゃで。」
木之元「あ~ そら よかったのう!」
木岡「アッハハハハ! おっ これか! でけたんけ?」
木之元「おう でけたで!」
木岡「そやけど どないして運ぶよ?」
木之元「リヤカーやな。 うん。」
木岡「そら 大ごとやのう。」
木之元「ま しゃあないわ! 善ちゃんのためや。」
木岡「そやの!」
(笑い声)
吉田屋
座敷
(笑い声)
康夫「今日も別嬪さんや! ほんまやで。」
(笑い声)
奈津「ちょっと あんた! この忙しいのに 何してんの? あんたら 竹の間で お客さん 待ってんやで!」
2人「すんません。 すんません。」
玄関
奈津「お待たせしました~。 いらっしゃい!」
泰蔵「こんばんは!」
奈津「えっ あっ… 何?」
泰蔵「えっ?」
奈津「うちに 何か 用?」
泰蔵「あ… いや 今晩 小原さんに ここへ呼ばれてるよって。」
奈津「ああ! そうか。 すんません! ど どうぞ! あがって下さい。」
泰蔵「おおきに。」
座敷
(ざわめき)
奈津「失礼します。 安岡さんが お着きです。」
善作「おう! 来た 来た。」
泰蔵「失礼します。 すんません。 遅なりました。」
善作「いやいや よう来てくれた。」
木之元「座り 座り! ついじゃって ついじゃって!」
善作「これで みんな そろたな。」
木之元「そろた そろた。」
善作「ほな 始めよか。」
木之元「おう!」
善作「おっ! よっしゃ!
「いよっ! ハハッ!」
「待ってました。」
善作「え~ 今日は みんなに ご足労かけて ほんま 申し訳ない。」
一同「いやいや。」
善作「集まってもろたんは 他でもない。 これまでの お世話になった 岸和田の商店街 五軒町の皆さんに お礼と 一つ 頼みたい事があっての事です。」
奥中「その前に 善ちゃん!」
善作「何や?」
奥中「さっきから 気になってんやけど それ 何よ?」
木之元「何 言ってんのや お前!」
善作「それを 今から しゃべんのやないかい!」
「奥中 ほんまに この 野暮天が! 黙って聞いとけ でこ!」
奥中「そんなん言わんかて ええやないか。」
善作「大事なところで ちゃちゃ入れんな ほんまに!」
木之元「いこ いこ! 善ちゃん。」
善作「え~… えへん うん! この~ 小原善作 岸和田商店街で 呉服店を開いて 22年。 皆さんの お力添えがあって…。」
仲居「若女将。 若女将。」
奈津「えっ?」
仲居「梅の間のお客さん お帰りです。」
奈津「はい。」
玄関
奈津「おおきに! また よろしゅう!」
客「若女将!」
奈津「はい。」
客「あんた ようやってんなあ! おやっさん死んでもうて なあ! わしに でける事あったら 何でも言うてくれ な!」
奈津「はあ おおきに!」
客「おろろ? 山ちゃん! そんなとこで寝たら あかなし。」
客「ああ~!」
奈津「大丈夫ですか?」
客「しっかりせえよ!」
廊下
奈津「酔っ払いが! 何もせんで ええから はよ帰ってくれ!」
♬~(三味線)
奈津「あ… 終わってしもてる。 何やったんやろ? 話。」
座敷
♬~(三味線)
芸子♬『エライヤッチャ エライヤッチャ ヨイヨイ ヨイヨイ』
小原家
居間
(小鳥の鳴き声)
(足音)
糸子「行ってきます~!」
千代「行っちょいで~!」
(下駄の音)
糸子「うわ~ さっぶ~。」
(足音)
静子「あんた その肩掛け 穴 開いてらし。」
清子「う~ん こないだ 引っ掛けてしもてん。」
(下駄の音)
3人「行ってきま~す!」
千代「行っちょいで~!」
光子「うわ さぶ!」
清子「さぶ~!」
千代「おはようございます!」
ハル「朝や。」
善作「うっ う~ん…。」
ハル「今日やろ?」
善作「ああ…。」
ハル「そやけどな あんた…。」
善作「言うな。 わしが決めた事や。 好きなように さしてくれ。」
玄関前
(剥がす音)
糸子「おっちゃん ただいま!」
木岡「おっ! お おう…。」
糸子「うん? えっ? 看板 どこ行ってん? あ…。」
旧小原呉服店
糸子「うん? 何? これ。 おばあちゃん? お母ちゃん? おばあちゃん?! お母ちゃん?! みんな どこ行ってんな?」
台所
(揚げ物の音)
糸子「おばあちゃん!」
ハル「何や 帰っちゃあったんか。 ああ びっくりした。」
糸子「何べんも呼んだわ!」
ハル「そうか? 油の音で聞こえなんだ。」
糸子「もう… どないしたん?! みんな どこ行ったん?! 何で 家ん中 空っぽなん?!」
ハル「まあ 落ち着き。」
(揚げ物の音)
糸子「何があったん?」
ハル「あんなあ… 今日から うちとあんたの 二人っきりや!」
糸子「えっ?」
(揚げ物の音)